ふしぎ駄菓子屋 銭天堂(児童小説・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』とは廣嶋玲子による児童小説。挿絵はjyajyaが担当し、2013年から刊行されている。全国の小学生が投票する「小学生がえらぶ!“こどもの本総選挙”」(第3回)で1位を獲得。2020年にアニメ映画化され、その後NHKのEテレにてアニメ放送が開始。2024年には実写映画が公開される。舞台は幸運な人だけが辿り着ける駄菓子屋「銭天堂」。銭天堂の駄菓子はどれも客の悩みに寄り添う不思議な力を持つ。だが、食べ方や使い方次第では不幸を招くこともある。主に1話完結の短編構成の作品である。

駄菓子を買った客から代金を受けとる紅子

小説1巻「型ぬき人魚グミ」で、客から代金を受けとった後に紅子が言うセリフ。

駄菓子を買った客から代金を受けとる時には必ず「昭和42年の10円」というように、硬貨の製造年といくらの硬貨なのかを言う。
紅子は毎日、本日のお宝=“代金となる硬貨”をガラガラ抽選機を回して決めるのだ。そこから出てきた玉には、銭天堂に辿り着ける人物と特定の製造年の硬貨が映し出されている。その硬貨を持っている人物だけが選ばれし客になるというわけだ。小説の1巻では、紅子がいつも言葉の語尾に使う“ござんす”をつけて「昭和42年の10円。まちがいなしで。お宝、ありがとさんでござんす」と代金を受けとった後に言うのであった。紅子は毎日、本日のお宝=“代金となる硬貨”をガラガラ抽選機を回して決めるのだ。そこから出てきた玉には、銭天堂に辿り着ける人物と特定の製造年の硬貨が映し出されている。その硬貨を持っている人物だけが選ばれし客になるというわけだ。小説の1巻では、紅子がいつも言葉の語尾に使う“ござんす”をつけて「昭和42年の10円。まちがいなしで。お宝、ありがとさんでござんす」と代金を受けとった後に言うのであった。

よどみ「ここは『たたりめ堂』。あんたの欲望をかなえる店だよ。」

たたりめ堂を訪れた客を迎えるよどみ

小説4巻「ヤマ缶詰とずるずるあげもち」で、たたりめ堂を訪れた客によどみが言うセリフ。

勉強が大きらいな雄太(ゆうた)はテストで100点をとりたいと願い、銭天堂で「ヤマ缶詰」を買う。これを食べればテストに出る問題がわかるという。ところがその帰り道、たたりめ堂に誘いこまれ、店主のよどみに「ずるずるあげもち」をすすめられる。これを食べると全く勉強しなくともテストの点数が上がるというのだ。
たたりめ堂を訪れた雄太は、よどみから「ここは『たたりめ堂』。あんたの欲望をかなえる店だよ」と見た目からは想像もつかない、しゃがれた声で言われるのであった。

“あんたの欲望をかなえる”という言葉には、人間の持つ心の闇の部分を刺激し、悪意を利用するたたりめ堂を象徴するセリフとなっている。

紅子「人の生き様をみるためでござんす。お金というものは人間の欲がかたまったもの。でも、悪いものではござんせん。使う人間によってお金は幸運にも不幸にもなる」

小説の4巻、アニメ第20話「虹色水あめ」の最後で、よどみから「なぜお前は客を選ぶのか?」と問われた時の紅子のセリフ。

銭天堂は、毎日抽選で小銭を選び、その小銭を持った客しか銭天堂に辿り着けない。そんなまどろっこしい事をするのは何故か、よどみは理解できなかったのだ。
そんなよどみに「人の生き様をみるためでござんす。お金というものは人間の欲がかたまったもの。でも、悪いものではござんせん。使う人間によってお金は幸運にも不幸にもなる」と紅子は言った。
紅子はお金によってチャンスを与えられた人間がその後、幸運を呼ぶか、不幸を呼ぶかそれを見たいのだった。

紅子「理由はどうであれ、あなたは才能を手に入れた。名声もお金も手に入れたはず。それを幸運と思わぬのはあなた自身の選択でござんす」

六条教授から恨みをぶつけられる紅子(右)

アニメ第97話「デジタルト」にて、銭天堂の駄菓子に人生を狂わされたと怒る六条教授に紅子が返すセリフ。

六条教授は少年の頃、父親から銭天堂の「天才サイダー」を飲まされ天才になった。
彼は、自分の才能が人工的に作られたものだと後に知って苦悩の人生を送ってきたのだった。
紅子に恨みをぶつける六条教授に紅子は「理由はどうであれ、あなたは才能を手に入れた。名声もお金も手に入れたはず。それを幸運と思わぬのはあなた自身の選択でござんす」と言い放つのであった。

“与えられた幸運をどのように捉えて活かしていくかは、その人次第である”という、これまでの紅子の考えがよく表れたセリフである。

紅子が変化の術を使って硬貨を「金色の招き猫」に変化させるシーン

アニメ第100話「その名は『銭天堂』」にて変化の術を使うシーン

アニメ第100話「その名は『銭天堂』」では、銭天堂誕生の秘話が明らかになる。
かつて行商として駄菓子やおもちゃを売り歩いていた紅子は、ある雪の夜、子猫の墨丸を拾う。家族ができた紅子は行商をやめて店を構える決意をしたのであった。これからは猫の手も借りたくなるほど忙しくなるが、それでも銭天堂の駄菓子で客の人生がどうなったかを見ていきたいと考えた紅子は、客からもらった硬貨を手の平に包み、変化の術をかけて「金色の招き猫」に変化させるのであった。不思議な駄菓子を作り出す金色の招き猫たちが誕生した経緯が描かれた、重要なシーンである。

『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

作品誕生のきっかけはjyajyaのイラスト

『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』誕生のきかっけは、作者・廣嶋玲子が本作の絵を手掛けるイラストレーター・jyajyaの「猫蛙町」というイラストを見たことだった。その中でも独特の世界観がある横町の絵を見てインスピレーションを得たという。廣嶋は、イラストの昭和レトロな雰囲気に魅了され、もしここにお店があったらどんなお店になるだろうと想像した。駄菓子屋がいい、それもただの駄菓子屋ではなくて、ふしぎな駄菓子屋がいいと思った。女主人はすごく大きくて白髪で、インパクトのある紅子さん、と連鎖的にどんどん発想が降りてきたという。大人にとっては、子どもの目を通して見たキラキラとした駄菓子屋が追体験できるような懐かしさを感じ、子どもにとっては新鮮で不思議な空間に見えるのかもしれない。

作者の子どもの頃の体験から生み出される駄菓子

「ヤマ缶詰」「みせびら菓子」「アドベン茶~」などダジャレのきいたものも多い銭天堂の駄菓子。作者はだいたいは駄菓子の名前を先に考えて、それに合った悩みを考えるそうだ。例えば1話の「型ぬき人魚グミ」は自分が子どもの頃に好きだった駄菓子が何だったのかを考えていて浮かび上がったネーミングだ。そこから周りに泳げない子がいたことを思い出し「型抜き人魚グミ」という話が生まれた。また、自身が悩んだことを思い出してネーミングのアイデアに生かすこともあるという。

戦国時代からお菓子を売る紅子

紅子はその昔、行商スタイルでひとり駄菓子を売り歩いていた。時代に合わせて売る駄菓子を変え、古くは戦国時代から、時代に応じた駄菓子を売ってきたようだ。六条教授の調べでは、紅子の存在は室町時代の古書にまで記録されているという。昭和に入り、猫の墨丸と出会ったことでこれまでの行商スタイルをやめ、「銭天堂」を開店することになったのである。

『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』の主題歌・挿入歌

アニメ放送版

OP(オープニング):野田愛実「奇想天外ふしぎをどうぞ」

keia
keia
@keia

目次 - Contents