スカイ・クロラ The Sky Crawlers(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』とは、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』で有名な押井守監督による作品である。声優陣に加瀬亮や菊地凛子、竹中直人を迎える。完全な平和が成立している時代。戦争はショーとして存在している。ショーは空でのみ繰り広げられ、殺し合いを成立させているのは年を取らない子供たち「キルドレ」である。彼らは毎日同じ日々を過ごす。戦争を仕事としてこなしながら、死なない限り、毎日同じ日々がやってくる。何かを変えたくても変えられない人々の日常。

ショーとしての戦争を運営しているのが民間軍事会社である。現実世界の民間軍事会社と違い、国や武装勢力などの組織に、兵士と兵器を派遣する企業ではない。スカイクロラの世界では国同士の戦争や紛争は存在しない。完全な平和が成立している世界とされているが、殺し合いをする道具が揃っており、草薙の「戦争はどんな時代でも、完全に消滅したことはない。それは人間にとってその現実味がいつでも重要だったから―。」という台詞から、以前は戦争があったと推測できる。プロ野球の試合のように、人々は戦争のショーについて日常的に会話をしている。
劇中では民間軍事会社としてラウテルン社とロストック社が登場する。函南たちが所属するのはロストック社である。実際この二つの会社だけなのかは明らかではない。この二つの民間軍事会社に所属し、戦っているのはキルドレたちである。ショーとしての戦争に一般人は参加していない。ロストック社とラウテルン社の役割はショーとしての戦争を終わらせないことにある。そのために、何度でも出現するキルドレを使っている。一般人が犠牲にならない戦争をして、兵器を生産し経済と雇用を回転させる。草薙が語った戦争の現実味を維持するのが民間軍事会社の目的である。一般人は民間軍事会社とキルドレが、戦争を構成していることが当たり前と認識している。戦っている者のなかで、キルドレではない大人なのはティーチャーだけだとされている。そのティーチャーも、この戦争の現実味を維持するためのものだと草薙は言っている。実力が突出したキルドレが、二つの会社のバランスを崩すことがないように、絶対に倒せない「大人」が必要になる。それがティーチャーである。
戦場は空に限定され、一般住居などには被害が及ばないように配慮されているようにみえる。しかし、大規模な戦闘は、より多くの人に見せるためなのか、本編では都市の近くで繰り広げられている。小説のシリーズ内では、草薙とティーチャーの一騎打ちが大都市で行われた。このようにキルドレと兵器と戦闘空域をショーとして提供するのが民間軍事会社である。

プッシャ式とトラクタ式

飛行機は前進することで翼の上下に気圧の差を発生させ、それによる上向きに働く力、揚力で空を飛んでいる。前進するための力が強ければ速度が上がり、翼上下の気圧の差は大きくなり、その差によって揚力も大きくなる。つまり、推進力が重要である。前進させる力が強ければ強いほど、高く速く飛ぶことができる。プッシャ式とトラクタ式はその推進器の場所が名前になっている。プッシャ式は後ろに推進器があり機体を押し出すように前進する。トラクタ式は推進器が機体を引っ張るように前進する。どちらの形式も、設計者や整備士、そしてパイロットにとっても一長一短がある。特にパイロットは、技量が上がるほど使いたい技や戦法が増えていき、それらにあった形式を選択したくなる。ティーチャーはトラクタ式が好みであり、草薙と函南はプッシャ式派である。

『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』に登場する兵器

ロストック社の機体

ロストック社はショーである戦争を請け負っている企業の一つ。現実世界ではPMCと言われる民間軍事請負企業(Private Military Company) の一つと言える。スカイクロラの世界では完全な平和が成立しており、その中で戦争はエンターテインメントとして存在している。エンターテインメントとするために兵士の中に民間人はおらず、函南たちのように造られた兵士、キルドレが戦っている。ロストック社は戦闘機を開発している企業であり、自社の戦闘機とキルドレを引き合わせ、戦う社員として登用している。
ロストック社の機体思想を最も明確に表している機体が散花である。散花は機体バランスが崩れてしまうことを覚悟しつつ、ギリギリまで軽量化して機動性を獲得している。
つまり、ロストック社の機体思想はパワーよりも軽さである。

散香(さんか)

散花の設定図面

函南と草薙、土岐野たちの愛機。名前の通り、花が散るようにヒラヒラと小回りが利く。函南はこの性能を活かして、わざと失速させ急速に機首を上向きにして、そのまま反転させ、後方の敵機を攻撃するという戦法を取っている。映画の製作スタッフが言うには、デザインの段階で小回りが利いてしっかり飛ぶということを意識したら、太平洋戦争末期に日本海軍が開発した震電に似てしまったという。

染赤(そめあか)

染赤の設定図面

三ツ矢の愛機。左右の主翼に一機ずつエンジンを搭載する双発と呼ばれるタイプの戦闘機。都市へ移動の際、散花が増槽が必要なのに対し、増槽なしで同じ距離を移動できることから、飛行可能時間が長いと考えられる。左右のエンジンの推進力を合わせる必要があり、笹倉と整備士がメンテナンス性が悪いことを話しているシーンがある。

泉流(せんりゅう)

函南の操縦する散花を見て、函南と目が合う草薙

二人乗りの偵察機。操縦席が進行方向を向いているのに対し、もう一つの席は後ろを向いている。函南たちが所属基地から都市へ向かう際、どこかの街の上空を夜間飛行しながら、函南が愛機の散花から地上を見下ろすと、函南機よりも少し先行した泉流の後部座席から、草薙が見上げる形で散花を見ており、函南と草薙の目が合う印象的なシーンがある。

空中給油機(くうちゅうきゅうゆき)

映画でのみ登場する機体。函南たちが、所属する基地から大規模プロジェクトがある都会への移動中にワンカットだけ登場する。散花は航続距離が長くないため、満タンにしても長距離では燃料が足りなくなる。しかし、途中で飛行場に着陸して給油して再び目的地に向かうのでは、時間と手間がかかる。そこで、飛んだ状態で給油をするという発想になる。これを実現するのが空中給油機である。浮舟(フロート)がついていることから水上飛行機であると考えられる。

翠芽(すいが)

劇中では登場していない。ロストック社の数少ないトラクタ式の戦闘機で、ティーチャーがロストック社に所属していた時は現役として活躍していた機体。プッシャー式だけの構成にするというロストック社の方針から徐々に退役していった。

鈴城(すずしろ)

第二次世界大戦で、ドイツが使用した爆撃機によく似た機体。頭上高は低いが船首から船尾まで畿内を移動できる。前方は全面ガラス張りになっており、対空時の索敵に優れている。しかし、市街地や敵基地、工場などの爆撃を目的とした機体のため、戦闘機からすれば的に見えるほどの機動力しか持たない。

紫目(むらさめ)

映画では登場していない大型の爆撃機。分厚い主翼を持つとされているが詳細は不明。映画ではその役割を填鷲(テンガ)が担っている。

填鷲(てんが)

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