スカイ・クロラ The Sky Crawlers(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』とは、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』で有名な押井守監督による作品である。声優陣に加瀬亮や菊地凛子、竹中直人を迎える。完全な平和が成立している時代。戦争はショーとして存在している。ショーは空でのみ繰り広げられ、殺し合いを成立させているのは年を取らない子供たち「キルドレ」である。彼らは毎日同じ日々を過ごす。戦争を仕事としてこなしながら、死なない限り、毎日同じ日々がやってくる。何かを変えたくても変えられない人々の日常。

草薙水素に向けて銃を撃った後の函南優一、命中させなかった

再び、函南たちはいつもように、空を飛ぶ。函南はいつもはしない敬礼を、草薙に向けてした。
函南は考える。
「いつも通る道でも、違うところを踏んで歩くことができる。いつも通る道だからって、景色は同じじゃない。それだけではいけないのか?それだけのことだから、いけないのか?」
黒豹のマークを付けた敵機を発見する。他のパイロットたちが逃げろと言う中、函南はティーチャーに挑んだ。函南が乗る飛行機に、無数の穴が空けられていく。その穴の数が実力の差を物語っていた。
基地では、笹倉、草薙瑞季、草薙水素らが遠くの空を見つめていた。長い時間がたっても、空に機影が現れることはなかった。他の人間が空を見つめるのをやめて立ち去る中、草薙水素だけはずっと函南優一の帰りを待っていた。しかし、その機体が帰ってくることはなかった。

新任のパイロットに草薙水素は言った「草薙水素です。あなたを待っていたわ」

ある日、新しいパイロットが着任した。そのパイロットは、函南優一がそうしたように飛行機を着陸させ、格納庫の前で飛行機を停めた。すぐに司令室へ報告に行った。パイロットが部屋に入ると司令官である草薙水素は言った。「草薙水素です。あなたを待っていたわ」

『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の登場人物・キャラクター

キルドレ

函南優一(かんなみゆういち)

飛行機を降りたばかりの函南優一

物語の主人公。自分のことは「ぼく」と言っている。見た目はどこにでもいる普通の10代後半の少年。常にボーっとしているように見えるが戦闘機のエースパイロット。腕前は物語の後半で会う、三ツ矢まで噂が広まるほどである。他のことに関しては表情を変えない函南だが、飛行機に乗ることに関しては普段見せない心からの笑顔をみせるほど、空を飛ぶことを愛している。繰り返される日常への不安は忘れっぽくなることで対応している。
草薙水素は函南に特別な感情を抱いているため、彼女の方から函南との距離を近づけている。彼女が愛していたジンロウに彼が似ているからだ。函南の前任者はジンロウであるということが、草薙水素がジンロウにしたことやジンロウと一緒にした行動から明らかになっていく。
キルドレたちは自分たちがどこで生まれ、どのような経緯で飛行機に乗っているかを正確には覚えていない。また、キルドレたちには前任者という存在がある。彼らが分かっていることは、彼ら自身が現在地に来る前に、彼らの代わり、つまり前任者がいて、その前任者がいなくなったから現在地に来たということ。キルドレたちは前任者という存在を認めてはいても意識はしていない。それに対して、函南は他のキルドレたちとは、何か違う感覚を最初から持っている。それは、前任者の痕跡を強く知覚している感覚であり、ジンロウが乗っていた飛行機に搭乗した際も、乗ったことがあるようだと言い、馴染んでいるようなことを述べている。
草薙は函南との距離を縮めようとし、それに呼応するように函南も草薙水素に対しての特別な感情が、物語の進行と共に大きくなっていく。彼は同時に、日常の繰り返され続ける違和感に対しても、前任者であるジンロウを認識していくことで、核心を見付けていくように見える。函南にとっての日常の違和感とは、自分たちキルドレの不明確な経歴と繰り返される毎日である。繰り返しの日々の中で、ずっと生かされている感覚や周りにも大きな変化が起こらないという違和感である。草薙と触れ合うことで、確かに過去に自分と同じような存在がいたことを知り、繰り返される日常は、自分たちがキルドレであるためと、前任者がいることで成り立っているということを実感してしまう。
函南にとってのもう一つの謎は、草薙水素とティーチャー、草薙瑞季の父親、ジンロウたちの関係であり、それらについて函南の中では何かが判明しているような素振りを見せている。
函南は土岐野に、ダイナーのミートパイを食べたことがある味と表したり、フーコたちの館に初めて訪れた時も、来たことがある気がすると告げている。函南はタバコの火をマッチでつけ、そのマッチを折って捨てる癖がある。折れたマッチを草薙が拾い上げるシーンがあり、ジンロウのことを思い出しているような表情を浮かべている。これらのことから、ジンロウが函南の前任者であることがわかり、湯田川とアイハラがそっくりであったように、函南の容姿や行動もジンロウによく似ていることが想像できる。

草薙水素(くさなぎすいと)

函南に煙草の火をつけてもらう草薙水素、その行動はずっと前から繰り返されているように見える

物語のもう一人の主人公。函南優一とその前任者とされるジンロウを愛している。また、大人だといわれているティーチャーに対しても特別な感情がある。ティーチャーはかつての同僚である。函南たちが赴任している基地の司令官であり、戦闘機の腕前も、エースパイロットである函南が「凄かったらしい」と言うほど。司令官という任務に就いているため、キルドレの中でも最も飛ぶ機会を奪われている。本当は誰よりも空を飛ぶことを愛している。司令官に専用の機体は用意されておらず、劇中のような専任のパイロット不在時や緊急時にしか、飛行機を操縦できない。
キルドレは永遠に生き続ける。キルドレの死は空戦での戦死のことを言う。そのため、エースパイロットで司令官の草薙は、誰よりも長く生きている。生き続けることを誰よりも恐れており、空を飛べないためか、いつも不機嫌な顔をしている。

土岐野尚史(ときのなおふみ)

初めて函南と出撃して、互いの生還を喜び一杯飲もうとしている土岐野

函南たちがいる基地のムードメーカー的な存在で函南の相棒ともいえる。草薙や函南と違い常に口角をあげて明るい態度でいる。頻繁に娼婦の館へ行き、朝帰りを繰り返しいい加減な生活を送っている。しかし、明るさといい加減さの裏側も時折みせ、どこか達観している発言や熱く仲間思いの行動もする。函南との会話で「どこへ行っても、同じような連中しかいねーよな、本当。こんなやつ初めてみたぜっていうやつには、最近めったにお目にかかれないもんな」と繰り返される日常に対しても不満がある。退屈している表情も見せるが、草薙と一緒に出撃した時、彼女が帰ってこないことを誰よりも心配していた。函南のことを親友のように慕っており、エースパイロットとしても認めている。

三ツ矢碧(みつやみどり)

草薙瑞季を見つめる三ツ矢

物語の中盤から登場するキルドレの女。自分がキルドレであることに悩んでおり、キルドレでなくなることを望んでいる。永遠に生き続けることと変わらない日常に対する不安がある。自分がどこから来て、いつから今の生活を始めているのかが分からないことに絶望している。周囲のキルドレが精神的に落ち着いて見えており、彼らがどのように精神的バランスを取っているのか知りたいと思っている。草薙水素は子供なのに草薙瑞季を産んだ。いつか草薙瑞季は母親を年齢的に追い越す。そんなキルドレの矛盾を現した草薙水素の行動と存在は、三ツ矢にとっては大きな負担になっている。

湯田川亜伊豆(ゆだがわあいず)

函南や土岐野と同じパイロットでありキルドレである。ティーチャーに果敢に挑んで撃墜される。特徴は白い頭髪と丁寧な新聞の折り方。新聞を丁寧に折りたたむ描写は、小説版ではない設定である。この癖が、湯田川がいなくなった後のアイハラにつながっている。アイハラも湯田川と同じ白い頭髪であり、新聞を丁寧に折りたたむ。過去の記憶がアヤフヤなことや死んでも同じ人間が出現するなどの三ツ矢が感じているような違和感と、繰り返されるだけの日常を、白髪や癖で視覚的に視聴者にわかりやすく表現する役割を担っている。登場するキルドレの全員が自分たちの記憶に整合性がない。おそらく幼いころの記憶がある人間は一人もいないだろう。彼らはどこかで製造されて突然任地にやってくる。クローニングまたは人口培養なのかはっきりとしたことは劇中でも語られていないが、キルドレは生まれるのではなく製造されている。製造に使われている設計図は遺伝子だと考えられる。遺伝子が設計図であるならば、戦死してしまったキルドレの同じ設計図を流用すれば、同じようなキルドレが製造される。函南も、アイハラの新聞を折りたたむ癖を見たことで、自分を含めたキルドレが、生と死を繰り返していること、または、再生産物であることを確信したかのような表情をする。

篠田虚雪(しのだうろゆき)

キルドレでパイロットの一人。函南が自己紹介をしても、手を上げるだけで、声を発して応えないなど、できるだけ喋らないようにしている。草薙が司令官をしている基地では最古参の飛行士。数少ない発言の一つに、函南に見学者たちについて「きっと、ぶっ殺してやりたくなる」と告げている。彼ら自身の代わりにキルドレを戦わせているという認識がなく、無責任と言える立場の人々に対しての自分の意見を率直に述べている。このように、篠田自身が本当に伝えたい気持ちと、それを共有してくれそうな立場の相手と内容だけを選んで喋っている。都市での大規模作戦時に戦死した。湯田川がアイハラになったような後任の人物は登場していない。

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