呪術廻戦 死滅回游とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

思惑通りに事を運んだ羂索は、続いて覚醒させた術師たちが“呪術を使わざるを得ない”状況を作り出すために死滅回游の開催を告知する。伏黒の義姉である津美紀も羂索に望まず覚醒させられた術者の一人で、泳者として巻き込まれてしまっていた。
伏黒は彼女を守るため、罪の意識から仲間たちとは離れて行動していた虎杖を探し出し、彼に「共に戦ってほしい」と願う。

総則9の追加

死滅回遊開始から数日。虎杖悠仁、伏黒恵、パンダが、呪術高専3年生の秤金次に助力を請いに来ていた時に動きがあった。泳者の一人である鹿紫雲一（かしも はじめ）によって総則6「泳者は自身に懸けられた点を除いた100点を消費することで、管理者と交渉し、死滅回游に新たな総則を1つ追加できる。」を利用して新たな総則が追加されたのだ。

鹿紫雲は死滅回遊数日で既に得点200点を所持しており、少なくも40人の人間を殺していることになる。もっともそれは術師だけを殺していた場合であり、非術師も手にかけている場合は41人以上の人間を殺していることになる（術師は5点であるが、非術師は1点である）。鹿紫雲は「400年前の方が幾分かましだった」と発言しており、偽夏油／加茂憲倫／羂索と契約を交わした術師の成れの果てだと思われる。両面宿儺と何らかの因縁があり、宿儺を探しやすくするために総則9「泳者は他泳者の情報 ― " 名前 " 、 " 得点 " 、 " ルール追加回数 " 、 " 滞留結界 " ― を参照できる」を追加した。

総則9が追加されたことにより、虎杖達も自由に泳者の情報の閲覧が可能になった。しかしここで「何故既に虎杖悠仁が泳者として認定されているか」という疑問が浮上した。虎杖は自身が飲み込んだ両面宿儺が羂索と契約をした術師の一人だったのではないかと予想するが、虎杖が特級呪物「両面宿儺の指」を飲み込んだのは虎杖自らの意志であり、伏黒を助けようとした結果偶発的に起こったできごとである。このことは現時点では考えてもわからないから後回しにしようと伏黒が提案したことで話が終わった。

伏黒はこの追加された総則9を利用して、人を殺さずに死滅回遊を進める方法を考えた。過去に羂索と契約した術師達は、各々何かしらの思惑を持っているかも知れないが、それが必ずしも死滅回遊への高いモチベーションにはならないはずである。つまり鹿紫雲のように得点を多く所持しているが、その得点を持て余している人間がいるはずだと考えたのだ。「『100点以上の得点を持っていて、ルールの追加を行う気がない者』を探し出し、その人間に津美紀が死滅回遊を抜ける穴を作らせる」、これが伏黒達が次に取る行動である。

虎杖についているコガネに100点以上得点を持っている泳者を検索させた結果、対象は2名に絞られた。総則9を追加した鹿紫雲ともう一人・日車寛見（ひぐるま ひろみ）。伏黒達はこの二人を狩るために動き出す。

状況を総合的に判断し、秤金とパンダが第2結界、虎杖と伏黒が第1結界にて「死滅回遊」に正式に参加することになった。実力的に今一番危険なのは、「死滅回遊」開始数日から200点を獲得している鹿紫雲であり、これに秤が当たる。パンダも同じ第2結界に行くがパンダの仕事は来栖華の捜索である。虎杖と伏黒は第1結界で100点以上の得点を獲得している日車。別の地方結界で既に「死滅回遊」に参加しているはずの乙骨から連絡がないことから、結界内で携帯電話が使えないことを想定し、綺羅羅は連絡係として結界の中には入らず待機することとなった。

東京第2結界

虎杖と伏黒は東京の第1結界に、パンダと秤は東京の第2結界にいよいよ乗り込む。しかし内部ではすでに術師同士の殺し合いが平然と行われており、結界内部の特定の地点に個別に転移させられた虎杖と伏黒はいきなり襲撃を受ける。それぞれに襲撃者を退け、虎杖と伏黒は情報源となりそうな相手に日車の居場所を問い質す。
普通の高校生だった頃の虎杖を知る甘井凛（あまい りん）という青年は、彼に「日車は池袋にいる」と答える。一方、伏黒に襲い掛かった女術師の麗美は「日車は新宿にいる」と答える。その頃、どことも知れぬ場所で、腕に“不退転”という刺青を入れた術師が「あの子はいつ次のカモを連れてくるのか」と不平を漏らしていた。

虎杖と日車の接触

結論からいえば、騙されていたのは伏黒の方で、彼が麗美に案内されていった先には“不退転”の刺青をした術師・レジィが待ち構えていた。麗美が共犯者の強さを誇る一方、伏黒は静かに憤怒をたぎらせながら「時間の無駄だ」と吐き捨てる。
一方、虎杖が甘井に案内された先には、果たして日車の姿があった。早速「死滅回游の終息のため、人殺しを強制される仕組みの解消のため、得点を使わせてほしい」と頼み込む虎杖だが、日車はこれを拒否。彼は弁護士という立場から、現状の仕組みには問題が多いことを認めた上で、死滅回游を新たな法システムとして運用することを考えていた。そのためには「死滅回游で何ができるのか、できないのか」を見極める必要があり、現時点でそこに手を加えるのは得策ではない。

話が通じるようで通じない日車の説得に手を焼き、これ以上は時間が惜しいと判断した虎杖は、「言い方を変える、100点を使わせろ」と言って拳を構える。彼の本気を見て取り、日車もまた戦闘態勢を取る。
日車の戦法は、「裁判を模した領域展開“誅伏賜死”を発動し、この中で有罪を勝ち取ることで相手に強制的に様々な罰則を与える」という、元弁護士らしいものだった。虎杖もこの裁判風の領域に捕らえられ、ルールを説明された上で、過去にパチンコ店を利用していたことを罪状として裁判に臨むこととなる。

誅伏賜死は必ず有罪になるわけではなく、日車を相手に無罪を勝ち取れば効果を発揮しないという。知恵を絞って切り抜けようとする虎杖だが、日車の理路整然とした追及に歯が立たず、有罪判決を受けてしまう。“没収（コンフィスケイション）”という罰則を受けて呪力が練れない状態となった虎杖に、巨大化したガベル（木槌）を手にした日車が襲い掛かる。
持ち前のタフネスでなんとか凌ぐも劣勢に追い込まれ、必死に打開策を考える虎杖。「日車の術式が裁判をなぞらえたものなのであれば、控訴することができるのではないか」と閃いて二審を要求すると、果たして強制的に誅伏賜死が発動する。

ここで無罪を勝ち取れば呪力を取り戻せると意気込む虎杖だったが、今回取り上げられた罪状は“渋谷事変における宿儺の暴走”、つまりは「虎杖は渋谷で大量殺人を犯した」というものだった。目の前の少年がそれほどの重罪人だとは思っていなかった日車が驚く中、虎杖は自身の罪を認めてしまう。「伏黒のために力を尽くす」と約束はしたが、「自分の罪から逃げるわけにはいかない」というのも、虎杖の偽らざる本音だったのだ。
判決は“死刑（デス・ペナルティ）”。誅伏賜死の効果で、“斬りつけた相手を即死させる”力を持つ処刑人の剣を手にした日車は、しかし自分の罪とあまりにも真正面から向き合おうとする虎杖に、言いようのない憤りと歯痒さを抱く。裁判の中で渋谷事変における虎杖の行いの全てを知った日車は、「大量殺人は虎杖の内に潜む宿儺が行ったことで、その時の虎杖は刑法39条1項にある“制御能力を失った状態”であるため無罪」だと断じ、戦闘を放棄する。

そう言われても、なお「自分が弱かったせいで宿儺を暴走させた」と罪の意識に囚われたままでいることを打ち明ける虎杖。己の罪と真摯に向き合おう、本来無罪になって然るべき悪行まで背負おうとする彼の姿は、日車の心にかつて弱者救済のために奔走していた頃の情熱を蘇らせる。
自分が救うべき、救わなければならない弱者がまだいることを悟った日車は、「100点を使わせてやる」と虎杖に提案。改めて話し合いの体勢を作った日車から、「人を殺したことはあるか」と尋ねられた虎杖は、それに素直に「ある」と答える。真人の実験の犠牲者、壊相や血塗、そして渋谷事変で宿儺が切り刻んだ人々。その命の重さを痛いほど感じながら口にした虎杖の返事を聞いた日車は、自身がかつて怒りのままに裁判官と検察の人間を撲殺したことを思い起こしつつ、「最悪の気分だったろう」とその心を慮るのだった。

「泳者は他泳者に任意の得点を譲渡することができる」という10個目の総則を追加すると、日車は虎杖の前から姿を消す。今度は自身が己の罪と向き合う番で、そんな自分には今の虎杖の姿は眩しすぎるというのがその理由だった。「良ければ自分たちを手伝ってほしい」と乞う虎杖に、日車は「またな」と再会を期す言葉を残していく。

新たな“爆弾”

伏黒の力量を見て取ったレジィは、彼に仲間になるよう誘いをかけていた。「羂索は泳者たちの呪力を利用して大規模な呪術を行おうとしている」という伏黒たちの見立てに対し、レジィは「それは恐らく第2第3のプランで、羂索は別の計画を進めている」との予想を口にする。
泳者たちの呪力を利用するつもりなら、「死滅回游が延々と続いて、泳者たちがどこまでも切磋琢磨していく」状況になるよう羂索は工夫しているはずである。ところが鹿紫雲や日車といった圧倒的強者の存在によって死滅回游内部での戦闘は終息しつつあり、それに対して羂索の側が何か介入してくる様子もない。つまり羂索にとって今の流れは既定路線で、強者だけが残った死滅回游に近々“爆弾”こと新たな仕掛けが為されるはず。レジィはそれに備えて腕の立つ仲間を集めているというのだ。

虎杖が日車への説得を成功させることを確信していた伏黒は、レジィたちの持つ得点を全て差し出すなら仲間になってもいいと提案。レジィがこれを拒絶したことで交渉は決裂し、伏黒は彼らと交戦することとなる。鵺との連携でレジィの手下たちを圧倒する一方、レジィ自身は渾を退け、「殺す気でやらないと死んだ時に後悔するよ」としたたかに笑んで見せる。
その頃、レジィの推測を証明するように、果たして羂索は中国語を話す何者かと接触。話し合いに応じる姿勢を見せる相手に対し、「お招きいただきありがとうございます」と言葉を返していた。

仲間と共に一転して攻勢を仕掛けるレジィに、相手の命を奪わないよう加減する伏黒は追い詰められていく。餌としての利用価値しか認められていなかった麗美は諸共に殺されそうになるも、なお「レジィは自分を守ると言ってくれた」と泣きながら伏黒を攻撃する。そんな彼女を口先だけのクズだと伏黒が断じた時、コガネが総則の追加を報せる。虎杖が日車の説得に成功したことを知った伏黒は反撃を開始し、レジィの仲間の1人を殺害。相手を殺すことに躊躇しないレジィたちの攻撃で消耗し、当初の目的だった総則の追加に安堵し、「降りかかる火の粉を払う」と決意して殺意を解き放った結果だった。
仲間を殺されてなおレジィたちは追撃の手を緩めず、これを切り抜けるために全力で戦うべきか、先のことを考えて呪力を温存すべきか伏黒は悩む。そんなところに突如髙羽が現れ、「2体1は卑怯だ」と言いながら伏黒を庇ってレジィたちの前に立ち塞がる。

突然の乱入に困惑する伏黒を尻目に、髙羽は「顔を見ればどちらが悪か分かる」と言って滑りまくりのギャグを織り交ぜつつレジィの仲間の術師・黄櫨折（はぜのき いおり）を攻撃。羂索と契約した術師であるかどうかを確認しようとしたのか、黄櫨に「どっちだ」と問われるものの、「それは面白いか面白くないかということだな」とわざとなのか天然なのか曲解し、侮れないほどの呪力を発揮して相手を攻め立てる。
意外な実力を見せつける髙羽をレジィが警戒する中、伏黒はコガネに日車の得点を表示させる。それが100点分減っていることを見て、先ほどの総則追加が日車の得点を使ったものであること、つまりは虎杖が彼の説得に成功したことを改めて確認する。伏黒たちがこの結界の中にやってきた目的は、すでに達成されていたのだ。

これ以上の戦闘は無意味だと判断し、レジィにも手を引くよう告げる伏黒。しかしレジィは「お前が倒した仲間の分は点を回収させてもらう」と、あくまで伏黒を殺す姿勢を崩さなかった。これに対し、伏黒は「当面の目的を達成した以上、余力を考えて出し惜しみする必要は無くなった」として、本気を出す旨を宣言する。
レジィの術式がレシートを用いたものであると推測した伏黒は、満象に大量の水を吐かせ、さらに式神と連携して相手を攻め立てる。しかしレジィの術式は正確には“契約の再現（レシートの場合は売買という契約を再現している）”効果を持つ「再契象（さいけっしょう）」というもので、攻撃や防御のみならず疲労の回復まで行える汎用性の高い代物だった。ただでさえ呪力消費の激しい満象を発動した状態でしたたかに食い下がられた伏黒は、消耗戦になれば分が悪いと判断して結界内の体育館にレジィを誘い込む。

勝負所だと見たレジィは、車の売買の契約書を再契象で再現し、体育館にトラックを突撃させる。慌ててこれを避けたところに猛攻を加えられて大きなダメージを負う伏黒だったが、ここで切り札の領域展開・嵌合暗翳庭を発動する。彼が体育館にやってきたのは、まだ未熟な領域展開を“室内”という区切りでイメージし、発動しやすくするためだったのだ。伏黒完全優位の空間に閉じ込められたレジィは、「まさかこのレベルの術師だったとは」と驚愕する。
シン陰流の簡易領域の原型ともなった「彌虚葛籠（いやこつづら）」という術を発動し、領域展開の必中効果から逃れようとするレジィ。しかし嵌合暗翳庭は領域展開としては不完全で、必中効果を切り捨てる代わりに伏黒の能力を上昇させる方向に特化していた。伏黒の戦い方からこれを見抜き、さらに彼の術が“影”を媒介にしたものだと察したレジィは、実質的に効果の無い彌虚葛籠を解除して「再契象」で何台もの車を呼び出す。

様々な道具を自身の影に収納して持ち運んでいる伏黒だったが、どんなものでも無限に運べるわけではなく、“影に収納した物”の重量は伏黒の肉体に直接かかっていた。領域展開で拡張した伏黒の影は、レジィが放った何台もの車を飲み込んでしまい、その重さで彼の動きを封じる。
いつまで耐えられるのやらと嘲笑するレジィの前で、呪力で自身を強化して必死に耐える伏黒。この状況から逃れるには領域展開を解除するしかないが、それは伏黒が戦闘不能になることとほぼ同義である。一転して窮地に陥りながら、伏黒は凄絶な笑みを浮かべてレジィの頭上に満象を召喚。この重量でレジィもまた動きを封じられ、潰されないよう耐えることしかできなくなる。互いに動きを封じられたまま、どちらの限界が早く訪れるかの“我慢比べ”が始まった。

互いに超重量に耐える中、先に動いたのはレジィの方だった。再契象で“家”を召喚し、その重量を加えることで一気に伏黒を潰そうとしたのである。しかし伏黒は咄嗟に嵌合暗翳庭を解除し、家の衝突の衝撃で体育館の床を破壊してその下にある温水プールにレジィを叩き込む。超重量を背負ったままの伏黒に組み付かれ、このままでは脱出不可能と悟ったレジィは慌てて術を解除。互いに呪力を消耗した状態でプールサイドに這い上がった伏黒とレジィは、決着をつけるべく格闘戦を開始する。
伏黒を相手に攻勢を維持しつつ、レジィは「この男はまだ奥の手を隠している」と判断していた。なんらかの式神を繰り出してくるはずだと警戒しながら戦うレジィだったが、彼の頭の中から唯一抜け落ちていたのが戦い始めてすぐに倒した玉犬の存在だった。実際には玉犬は倒れておらず、“すでに倒した玉犬以外の式神”を警戒するレジィの隙を突く形で彼に致命傷を負わせる。「玉犬はそんなにヤワじゃない」と豪語する伏黒に、レジィは「呪術師は嘘ついてなんぼ…か」と自嘲気味につぶやいて倒れ伏すのだった。

完敗を認めたレジィは、自分たちを利用する羂索への意趣返しとして、「その方がおもしろそうだ」と自分の点の全てを伏黒に譲渡して絶命。自分を攻撃してきた麗美も始末しようとする伏黒だったが、完全に追い詰めたところで自分を制止する津美紀の姿を幻視し、トドメを刺さずに立ち去っていく。そこで力尽きて倒れる伏黒の下に、彼らが探している“天使”こと華が舞い降りる。
その頃、髙羽は黄櫨を翻弄していた。髙羽の術式“超人（コメディアン）”は、自身が「こうしたらウケる」と思ったことを実現するというもので、使い方次第では五条にも対抗しうる強力なものだった。黄櫨の爆撃の全てをギャグマンガ程度のダメージに留め、何度倒されても平然と起き上がる。その異常なタフネスに辟易としたところで、レジィが敗死した旨をコガネから聞かされた黄櫨は、これ以上の戦闘は無意味と悟って撤退していく。

仙台結界