お結び(ゲーム)のネタバレ解説まとめ

『お結び』とは2020年4月25日に公開された日下部一製作によるフリーゲーム。ジャンルはマルチエンディング型和風ホラーゲームで操作キャラクターの選択によって5種の結末が用意されている。主人公・日向子には、幼い頃近所の森で迷子になった時、自分が落としたお弁当を届けに来てくれた不思議な存在におむすびを分け与えた記憶があった。時が流れ高校生になった日向子は、車に轢き逃げされて迷い込んだ天国と地獄のはざまの世界・辺獄で、一茶と名乗る不思議な男と出会い、彼の力を借りて現世へ帰る為の冒険を繰り広げる。

日向子は風呂場で湯に浸かり汗を流す。入浴中、日向子は傍らで背を向けて待っている一茶に、天にいる大事な人のことを聞く。一茶の話によると、その人物は気立てがよくて心優しい働き者だったが、普通なら聞こえないはずの神の声が聞こえたせいで周囲から気味悪がられ孤立していたらしい。祠通いをする娘と懇意にしていた一茶は、彼女と話せるのが嬉しくて注意しそびれてたが、もう祠へ来るなと止めていれば村人に忌避されるのを防げたのにと悔やむ。それを聞いた日向子は「私と話せるのが楽しい?」と問い、一茶が肯定すると、「ならそんな哀しいこと言わないで、その子も一茶さんとお喋りするのが楽しくて祠に言ってたんだよ」と励ます。一茶は日向子を「優しい子だねェ」と褒め、2人の絆が強まる。
さらに探索を続けていると、食材が揃った炊事場に迷い込む。ちょうど空腹だったので、日向子は自分と一茶の分のおむすびを作る。日向子のおむすびを食べた一茶は「おいしいじゃないかい」と褒め、日向子は「私の唯一の特技なの」と得意がる。一茶にいちばん好きな具を聞くと小梅だと答え、日向子はまた機会があれば握ってあげようとしっかり覚える。
2階へ進んだ日向子と一茶だが、一茶の顔色は酷く青褪め、身体の不調を訴える。辺獄の穢れが身の内に溜まってきたみたいだ。日向子を心配させまいと空元気を装う一茶。廊下を進むと複数の天人が大広間を横切っている。一茶曰くあれは既に天人ではない、辺獄に長く滞在しすぎて物の怪に堕ちた姿だと指摘する。日向子は屏風の裏や並んだ壺の隙間に逃げ隠れし、徘徊する天人に捕まらないように広間を抜ける。
広間を抜けてホッとする日向子だが、一茶の体調はさらに悪化する。とりあえず近くの小部屋で休ませるが、彼の穢れは限界に達していた。一茶の身を案じる日向子は「ここで休んでいて」と懇願し、1人で探索に赴く。
日向子は隣の小部屋で「ありんこと神様 三」を読む。蟻たちは神様と仲良しの蟻を捕まえるが、暴れるものだから次々脚を噛みちぎっていく。全部の脚をもがれた蟻は死んでしまうが、仲間の蟻たちは「死ねば仏になって会えるから神様も喜ぶ」と考える。
実は雨から守ってくれていたのは神様ではなく蟻たちの村に差し掛かる木の葉だったが、その木の葉は既に枯れてしまい役に立たないことを、蟻たちはとうとうおしまいまで気付かなかった。
次の部屋の襖は固く閉ざされていたが、中から半狂乱で子供をさがす母親の叫びが響く。どうやら子供とはぐれてしまったようだ。今は混乱しているけど子供と会えれば落ち着いて通してくれるのではと考えた日向子は、彼女の子供さがしの手伝いを決意する。さっき通り抜けた広間には壺が沢山並んでいた。ひょっとしたらあの中で隠れんぼしているのではと推理し、日向子は再び広間に戻る。
日向子が睨んだ通り、広間に飾られた壺に金色の赤ん坊が隠れていた。

日向子が赤子をさらったと思い込んで襲ってくる金色の女神。

日向子は赤ん坊をあやして抱き上げ、母親のもとへ連れていく。しかし母親はヒステリーを起こし、赤ん坊を抱いた日向子に「貴様盗んだのか」とあらぬ疑いをかける。襖を開け放って出てきたのは、全身が金色に光り、両手に沢山の赤子を抱いた女神だった。
廊下を抜けて逃げた日向子は、池に架かる橋の前で女神に追い付かれるが、そこへ疲労困憊の一茶が現れて時を止める。しかしすぐに一茶の力は切れ、今度こそ絶体絶命のピンチに陥るが、日向子の手から這い出した赤子が自ら母親の懐に飛び込む。赤子が無事帰ったことで女神は落ち着き、日向子への誤解を謝罪し、天への抜け道の詳細な場所を教えてくれる。
その抜け道は先程女神が暴れていた部屋の先にあるようだ。一茶は物の怪になりかけているし急がねばならない。女神は子供を助けてくれた恩人である日向子に感謝し、彼女の旅の前途を祈る。
一茶を伴って抜け道に通じる障子の前に立った日向子。
ここで一茶と別れれば日向子は1人ぼっちになる。俗世へ帰る道はまだわからない。一茶は1人残していく日向子の身を案じるが、心優しい日向子は一茶の為を思い、彼と大事な人の再会を優先する。日向子はここまで付き合ってくれた感謝を伝え、「一茶さんが天に行って1人になる事が寂しいんじゃない、一茶さんとの縁がここで終わっちゃうように感じるのが寂しい」と弱音を零す。
日向子と一茶がしんみり別れを惜しんでいると、正面の障子が突然開き、天道隊と名乗る黒ずくめの侍集団に囲まれる。彼らは天界の秩序を守る組織で、穢れに侵された一茶の侵入を禁じ、彼の仲間と見なした日向子を捕縛する。元の世界に戻りたい日向子は天へ連れて行かれるのを拒むが、「お前はもう死んだんだ」と断言され絶望のどん底に突き落とされる。しかし彼らの言葉が正しいなら、死んだ日向子が直接天に行かず辺獄に来たのは矛盾する。一茶は「おひなだけは返してくれ」と懸命に頼むが、天道隊はまったく取り合おうとしない。そればかりか一茶に輪町の産土神の罷免を言い渡し、彼を辺獄の牢獄に幽閉する。

天界編

日向子は夢を見ていた。夢の中の村娘は、もうここへは来れないと時神の祠に詫びる。彼女は村人たちに追われていたのだ。時神に最期の別れを言いに来た村娘は、「あなたといるとほっとするから」と前置きし、予め考えてきた一茶という名前を授ける。
村娘は村人たちに捕まり、時神に捧げる生贄として殺された。村娘と懇意にしていた時神は、彼女を失った悲嘆から村の禊を怠り、土地に飢饉と伝染病を流行らせた。万物の神は彼の怠惰を責め、罰として輪の土地に縛り付け、永遠の禊を命じる。時神として時を操る力も封じられ、天へ昇るのも禁じられ、愛した娘には2度と会えない。仮に天を目指せど辿り着けず、辺獄を彷徨い続けるのが一茶の宿命だった。祠の前に平伏す村人たちによって恋人の生首を捧げられた一茶は、「木乃葉(きのは)!」とその名前を呼ぶ。
日向子は天界の牢獄で目覚めた。無理矢理一茶と引き離された記憶がぶり返し涙ぐむ日向子。もう元の世界には帰れないのだろうかと悲観するが、「怖くて泣いているだけじゃ何も変わらない」という最愛の祖母の言葉を支えにもう一度立ち上がる。もしここが死後の人間が行く天界なら、死んだ祖母もどこかにいるはずだ。祖母ならば俗世へ帰る助言を与えてくれるかもしれない。気力を回復した日向子は牢内を調べ、木製の格子窓が老朽化しているのを発見する。

日向子を辺獄の牢に案内する天道隊の隊士・志鶴。

そこへ天道隊の一員・志鶴が通りかかり、日向子に「解放されるまで妙な真似をするな」と警告する。彼は日向子の監視を担当しているらしい。日向子は彼と会話を試み、自分が今いる場所が天道隊が所有する施設内の牢獄であること、天道隊とは武家の男によって構成された部隊で天界の秩序を司る事を知るが、俗世への帰り方だけは頑として教えてもらえない。「大人しくしていろ」と窘められしょげる日向子だが、牢内で手頃な石を拾い、志鶴がよそ見をしている時に反対側に投げる。物音に反応した志鶴が様子を見に行った隙に格子窓を壊し、紙一重で脱出する。
日向子の脱獄が知れ渡ってけたたましい警鐘が鳴り響く中、裏手の森に逃げ込んだ日向子は、そこで猫のクロと一緒の早苗に再会する。彼女たちは無事天界に辿り着いていたのだ。日向子は早苗の案内でひとまず安全圏へ逃れる。
日向子は早苗に森崎絹という祖母の名前を教え、どこにいるか知らないか尋ねる。祖母は親切きぬちゃんの愛称で皆に慕われてるらしく、早苗も会ったことがあるそうだ。天界には普通に民家が並んでいた。早苗の説明によるとここは「次に行く前の人たち」が住んでる場所で、それがどこだかわからないが、早苗も漠然と次に行かなければいけない場所があると察しているようだ。
日向子は早苗に道案内を頼み祖母の家へ行く。玄関先に出てきたのは日向子が幼い頃に他界した祖母、その人だった。「薩摩芋を蒸したからどうぞ」と応対に出た祖母を一目見るなり、懐かしさと嬉しさで日向子は泣き崩れる。祖母は日向子が死んだのかと慌てるも、これには理由があると弁解する日向子を優しく受け入れ、詳しい事情を聞こうと居間へ導く。
居間で祖母と向かい合った日向子は、「天と辺獄への抜け道を教えてほしいの」と祖母に縋る。日向子は一茶を助けに行くのを諦めていなかった。祖母は辺獄への抜け道を知っていたが、「その前にお世話になった人にお礼をしてきなさい」と謎めいたことを言い、日向子を町はずれの森へ連れて行ってくれるように早苗を促す。
祖母との感動の再会を経た日向子は、早苗の道案内に従って、町はずれの森にある禊場へ連れて行かれる。禊場には清涼な滝があり、滝行ができるようになっていた。禊場に辿り着いた日向子は、祖母もまた一茶と同じく、自分の身体に溜まった穢れを見抜いたのだろうかと考えを巡らせる。日向子が禊場の水に浸かっていると、不思議な映像が脳裏に流れ込む。
それは木乃葉と一茶が、森の祠で対話する光景だった。木乃葉は「時神様のおかげで今年も豊作だ」と喜び、お供え物のおむすびを置く。一茶は木乃葉と話せるのを純粋に喜び、逢瀬を重ねるごと2人の絆は強まっていく。一茶は木乃葉に穢れを祓う紐飾りを贈る。木乃葉は名前がない時神を憐れんで、とびきり素敵な名前を贈ると約束する。
しかしその後にやってきた木乃葉は酷く思い詰めた様子で、もう祠には来れないと告げる。彼女は村で唯一一茶の声が聞こえる事から、一茶への生贄に捧げられる事に決まったのだ。何も言えない一茶を安心させるように微笑み、木乃葉は「おむすびには縁を結ぶ力があるから、きっと縁が導いてくれます」と断言するが、彼女は結局逃げきれなかった。木乃葉を救えなかった事に絶望した一茶は己の無力を呪い、もし自分が人の子なら木乃葉と逃げられたのにと悔やむ。
束の間の白昼夢から覚めた日向子は、一茶と木乃葉の間に起きた過去の出来事を知り、一茶が天界で会いたがっていたのが木乃葉だと悟る。
戻ってきた早苗が、天道隊が森に来ていると報せる。森には志鶴と上司が訪れていた。日向子を逃がしてしまった手落ちを志鶴は責められ、上司に斬り捨てられそうになる。それを木陰から目撃した日向子は、自分の行動のせいで彼が罰されるのを捨ておけず、早苗に「迷子のふりをして」と頼み、上司を引っ張って行かせる。「おうちに帰れないよー」と泣き喚く早苗によって上司が連れ去られ、1人残された志鶴の前に日向子が歩み出る。
日向子は勝手に逃げたことを志鶴に謝罪するが、志鶴は自分の落ち度の一点張りだ。志鶴は堅苦しいほど真面目な性格で、自分に厳しい男だった。志鶴は日向子を再び牢獄へ引き立てようとするが、そこへ祖母が登場する。「天道隊は規律やルールを守るのに、今のあんたらはたまたまと理由を押し付けて、私の可愛い孫を拘束しようとしてる」「人としての筋よりくだらない定め事を優先してどうするの」と祖母に一喝された志鶴は、何故か頬を赤らめて「絹さん……」と呟く。親切きぬちゃんの噂は天道隊にも轟いており、志鶴はその篤実な人柄に心酔していたのだ。
祖母に諭された志鶴は一転従順になり、日向子を辺獄への抜け道まで連れて行くと申し出る。天界でも健在の祖母の影響力に圧倒される日向子。抜け道へ行く前に禊場へ戻ると、大岩にどこかで見た赤い紐飾りが置かれている。

無事天道隊の男を遠ざけた早苗とも合流し、日向子・祖母・早苗・志鶴は辺獄への抜け道の鳥居へと赴く。
辺獄への抜け道の前には、立派な朱の鳥居が聳えていた。祖母の話によると、この鳥居は死んだ人間はくぐれないらしい。死者は俗世と幽世を行き来できず、例外があるなら死んでない人間だけだ。もし日向子がこの鳥居を通ることができれば、日向子がまだ死んでないと証明できる。もしそうなら天道隊の一員である志鶴が責任をもって、日向子を現世へ送り届けると約束する。
日向子は意を決して鳥居をくぐる。結果、日向子は無事通り抜けに成功する。日向子の生存が証明され湧く一同。しかし日向子には辺獄へ行く前に聞かなければいけない事があった。日向子は志鶴に「木乃葉という人を知りませんか」と問うが、志鶴はもちろん祖母や早苗も、そんな名前の人物は知らないと答える。どういう事か困惑する日向子。しかしぐずぐずしている暇はない、辺獄の牢獄では穢に侵された一茶が助けを待っているのだ。
日向子は皆と別れを惜しみ、早苗には礼を、祖母には「これからもずっとずっと大好きだよ」と想いを伝える。祖母も「日向子のことがずっと大好きだよ」と返し、2人は互いの幸せを祈る。
「成長した孫娘の姿を見れるなんて私は幸せ者」としみじみ噛み締める祖母に見送られ、日向子と志鶴は先を目指す。鳥居の先には両側に灯が並ぶ石段が続く。石段を下りながら、日向子は何故人の子である自分が辺獄で耐えられたのか考える。それは一茶が日向子が受ける分の穢れまで引き受けていたからだ。道中、志鶴は何故危険な目にあってまで一茶を助けようとするのか日向子に疑問を呈す。しかし日向子は笑顔で「それでも一茶さんを助けに行きます」と答える。鈍くさくて頭もよくない日向子だが、今自分にできる精一杯をすると心に決め、もし志鶴が自分を助けてくれたら祖母も見直すと餌をたらす。日向子の祖母にぞっこん惚れこんでいる志鶴に、この仄めかしは効果絶大だった。
漸く辺獄の牢に到着するが、牢は既に破壊され、一茶が外に出てきていた。「もし穢れが溜まって変貌するとしても、牢を壊せるほどの化物になるはずがない」と訝しむ志鶴。そこで日向子は輪町の祠のご神体の鏡が割れていたのを思い出す。一茶は過去の過ちを償う為に輪町で禊を続けていたが、祠の鏡が割れた事で、それまで溜め込んだ穢が全開放されたのだ。
化物に成り果てた一茶を志鶴と手分けして捜す日向子。これまで通過した部屋には穢が実体化した黒い塵が至る所に積もっていた。
あれだけ化物であふれていた部屋や廊下は静まり返り、天井からは黒い塵がはらはらと降り注ぐ。天人と対峙した橋が架かる池は干上がり、鯉の死体が散乱していた。「このままでは辺獄全体が崩壊する」と危ぶむ志鶴。2人が今いる橋は崩れ落ち、日向子は暗闇に包まれる。
暗闇に呑まれた日向子の脳裏に、一茶の思念が流れ込んでくる。一茶は木乃葉を救えなかったことをただただ嘆き、「お前を愛したかっただけなのに」と繰り返す。
次の瞬間、日向子の前に長い黒髪を生やした巨大な骸骨が出現する。穢が回り、物の怪と化した一茶の末路だった。一茶は木乃葉と目の前の日向子を混同し、「そんな所にいたのか」と追いかけてくる。しかしまだかすかに一茶の理性が残っているらしく、「木乃葉を傷付けたくない」「早く逃げろ」と日向子に叫ぶ。

END

END1『結』

物の怪と化した一茶の手にかかって命を落とす日向子。

物の怪化した一茶から逃げきれず、最後の部屋に辿り着けずに死亡した場合のエンディング。冒頭へ戻り、序盤で日向子に憑依した何者かの正体が明かされるループエンド。

絶望的な状況の中、日向子は「自分と一茶には縁があるんだ」「また会えたのにもきっと意味があるんだ」と信じ、全速力で彼から逃げる。迷路のように入り組んだ辺獄を逃げ回ると、周囲の風景が懐かしい輪の森へと変わる。日向子はとうとう力尽き、物の怪の手にかかって命を落とす。すると物の怪に変化が起き、眼窩から血の涙を流す。日向子を殺めてしまった慚愧の念が荒れ狂い、「私にこの子を守る力があれば」「もういい、全部アタシのせい」と今在る現実をすべて否定して嘆く物の怪。
突然場面が切り替わる。
そこは冒頭の森の祠だった。祠の傍らにはふわふわと影が浮かぶ。森を浮遊する影は、1人で泣いてる迷子の女の子と出会い、途中で拾ったお弁当を渡す。女の子は無邪気に喜び、お礼におむすびをくれる。影の正体とは物の怪と化して暴走した一茶が、最期の力を振り絞って時を遡り、幼い日の日向子の前に現れた姿だった。「一緒にくる?」と日向子に聞かれ、一茶は彼女に憑いていく。日向子の中に溜まる膨大な穢れは、時を遡った一茶を取り込んだが故だった。
そこへ祖母が迎えに来て、「日向子が無事なのは時神様のおかげだ」と伝える。今度こそ日向子を守る覚悟を秘め、祖母と手を繋いで帰っていく日向子の中で、力を使い果たした一茶は深い眠りに就くのだった。

END2『断』

消えゆく一茶を背に祖母と家路を辿る幼い日向子。

冒頭幼い日向子と森で出会い、おむすびを恵んでもらう何者かの選択肢で「日向子と行く」「日向子と行かない」がでた際に「日向子と行かない」を選択した場合のエンディング。
一茶が最後の力を使い果たして冒頭にループするところまではEND1と同じ。

日向子を殺めてしまった一茶は凄まじい後悔の念に駆られ、最期の力を使い果たして時を遡る。
ボロボロに擦り切れた彼が次に現れたのは、時神の祠がある神社の森だった。
森で出会った日向子の誘いを断った一茶は、自分が何者で日向子が誰か、忘れてはいけない何もかもをどんどん忘れていく。
祖母と手を繋いで森を去る日向子を見送った一茶は、「随分と最低な疫病神に付き合わせてしまった」と嘆き、「哀れな神をどうか許しておくれ」と独白する。これで日向子と一茶が出会うことはなくなり、日向子が辺獄に巻き込まれる時間軸の未来も消えた。縁は切れてしまったが、それでもまた日向子に会えて幸せだったと一茶は述懐する。遂に力尽きて一茶が消えた後、日向子は少しだけ振り返り、蛍のように乱舞する光の軌跡を見るのだった。

END3『絶』

天界の禊場の大岩にて、木乃葉が残した飾り紐を「持っていく」「持っていかない」の選択肢がでた際に「持っていかない」を選択した場合のエンディング。
現世へ帰還し、登校前に森の祠に行くまではEND4、END5と同じ。

どうにか森を抜け一茶から逃げきった先は、行き止まりのだだっ広い広間だった。
「一茶に伝えなきゃいけないことがある」「戻ってきて」と恐怖に竦む足を叱咤し、切実に訴える日向子。そこへ金色の女神が降臨し、日向子に恩を返す。時間稼ぎに物の怪を食い止める女神。どうやら天道隊もこちらへ向かっているらしく、それまで持ちこたえれば日向子は生き残れる。
物の怪の力は強大すぎて、女神をもってしても食い止めるのは困難だった。日向子はもう一度物の怪と向き合い、「一茶さんが私と縁があるって言ってくれて嬉しかった」「一茶さんの為に私も何かしたいかった」と本当の気持ちを叫ぶ。共に困難を乗り越えていく中で、日向子は一茶への信頼を育み、彼と結んだ縁を失いたくないと望んだのだ。
日向子の切ない叫びを聞いた物の怪は、別れ際の木乃葉の言葉を思い出す。
木乃葉は微笑んで再会を契り、その面影が眼前の日向子と重なった物の怪一茶は、日向子こそ愛した人の生まれ変わりだと悟る。
物の怪一茶に理性が戻り、光に包まれ浄化されていく。
光が消えると笠を脱ぎ、端正な素顔をさらした一茶が立っていた。一茶は日向子を「おひな」と呼び、心配かけたことを詫びる。「一緒に輪町に帰ろ」と促す日向子に対し、一茶は「アタシは幸せ者さね」と儚く笑い、穢れに侵されすぎた自分は消えゆくさだめだと告げる。
紐飾りを持ってこなかった日向子は一茶の消滅に干渉できない。しかし一茶は満足げで、日向子を守る約束を果たせた事を喜ぶ。

「さよならしたくない」と駄々をこねる日向子を「帰るんだ」と力強く促す一茶。
「ありがとう日向子、アタシと縁を持ってくれて。もしまた縁があってどこかで会えたら、のんびり日向子とおむすびを食べたいねェ」

一茶の最期を看取った日向子のもとへ駆け付けた志鶴は「よくやった」と彼女を褒め、俗世への帰り道へ導く。
別れ際に志鶴は「お前のおかげで未熟者から脱することができた」と日向子に礼を述べる。日向子を守り導く中で、彼も半人前から一皮剥けたのだった。日向子は「私帰るよ、一茶さん」と一言呟いて最後の鳥居をくぐる。
朝の日課として森の祠に寄った日向子は、車に轢き逃げされて入院したもののすぐ回復したことを祠に報告する。俗世へ帰った日向子は一茶の事をちゃんと覚えていた。一茶が消えてもなお彼との縁と記憶は残る。日向子は祠におむすびを供え、「また来るからね」と約束して背を向ける。そんな日向子を見送るように、祠の中の鏡がかすかに光った。

END4『繋』

飾り紐で一茶が浄化された際に神様の間に呼ばれ、「記憶を差し出す」「記憶を差し出さない」の選択肢がでた際に「記憶を差し出さない」を選択した場合のエンディング。
現世へ帰還し、登校前に森の祠に行くまではEND3、END5と同じ。

木乃葉が残した紐飾りの力で物の怪化を防げた一茶。
しかし日向子は神様の要求を拒む。辺獄で一茶と過ごした思い出は大事なもので、たとえ神様に差し出せと言われても肯うことはできなかった。そんな日向子を「アタシもお前さんに忘れられたくないさ」と一茶は許す。神様は「人の子と神の良い絆を見せてもらいました」と告げる。
最後の鳥居をくぐって俗世へ帰還した日向子。久しぶりの登校前に森の祠に寄り道する。今日のおむすびは日向子の手作りで、具は一茶が好きだと言った小梅だ。日向子は「一茶と食べたくておむすび作ってきたんだよ」と嬉しそうに報告するが、祠からは反応がなくうなだれる。
その時背後から声をかけられ仰天する日向子。

森の祠で現役産土神の一茶と仲良くおむすびを食べる日向子。

一茶はまだ罪の贖いとして輪町の産土神でい続けていた。日向子も辺獄の記憶を引き継いだままだったので、2人は現世で再会を果たすことができた。2人はおむすびを食べながら仲良く話す。
「せっかくの縁なんだ、お前さんのこともっともっと話しておくれ」
「うん!」
爽やかな朝の森に、日向子の元気な返事が響き渡るのだった。

END5『結』

風呂場で「私とも、お話しするの楽しい?」「その子のことが大好きなんだね」の選択肢がでた際に「私とも、お話しするの楽しい?」を選択。
天界の禊場の大岩にて、木乃葉が残した飾り紐を「持っていく」「持っていかない」の選択肢がでるので「持っていく」を選択。
物の怪一茶から逃げきる。
飾り紐で一茶が浄化された際に神様の間に呼ばれ、「記憶を差し出す」「記憶を差し出さない」の選択肢がでた際に「記憶を差し出す」を選択。
以上の全条件を満たした場合のエンディング。現世へ帰還し、登校前に森の祠に行くまではEND3、END4と同じ。スタッフロールと音楽が流れる実質上のトゥルーエンド。

消えゆく一茶に泣いて縋る日向子。その時彼女の胸元が淡く発光し、一茶が実体を取り戻す。それは日向子が持ってきた、禊の飾り紐の効果だった。

日向子は木乃葉の生まれ変わりであり、2人の面影を重ねた一茶は約束を果たせた感慨に浸る。

一茶が木乃葉に渡した飾り紐には穢れを祓う力があり、一茶の穢れも浄められた。
一茶は再会を約束した木乃葉の幻を見て、その面影が日向子と重なるのに気付く。日向子は木乃葉の生まれ変わりであり、彼女に会いたい一茶の願いはとっくに叶えられていたのだった。
次の瞬間、日向子と一茶は真っ白く清浄な空間に飛ばされる。どこからか温かく不思議な感じのする声が聞こえ、2人の働きを褒める。声の正体が神様だと思った日向子は、「一茶さんの罰をなんとかできるんですか」と訴える。神様は「人の子が代償を払うなら一茶に許しを与える」と言い、日向子の人生の一部、即ち辺獄に来てから出るまでの記憶の全てを差し出せと要求する。
日向子が承諾すると、一茶は輪町の産土神の務めから解放される。
自由の身になった一茶と日向子のもとにはぐれていた志鶴が駆け付ける。志鶴は一茶の暴走の非の一部は天道隊にあると殊勝に詫び、日向子と一茶を俗世へ戻る道へ連れていく。そこは日向子が最初に目覚めた部屋だった。志鶴が襖を開けると、暗闇に包まれた細道がずっと奥まで続いている。

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