還願(Devotion)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『還願(Devotion)』とは台湾の「Red Candle Games」が開発したホラーゲームでSteamから配信されていた。主人公の脚本家・フォンウが次元が歪んで時代が錯綜する台北の集合住宅を彷徨いながら元女優の妻・リホウや娘・メイシンを捜すうちに、過去の断片を集め家庭崩壊に至る経緯を徐徐に思い出していく。当時の社会情勢や精神病への偏見、新興宗教の問題などを盛り込み、消えた娘を追う過程で自らのエゴを突き付けられる主人公を通し、親子愛や家族愛とは何かを問う作品に仕上がっている。

『花と愛』

メイシンが愛読していた絵本。狩人の娘が父親を助ける為に豊饒神から万能薬となる花の種を貰い、それを育てる神水を得る為の冒険をくり広げる。しかしせっかく辿り着いた泉の水は枯れており、家に戻った娘は病床の父の枕元で涙を流す。それが落ちた途端に種が芽吹き、黄色いチューリップが咲いた。父親はめでたく全快し、丘の上には一面に広がるチューリップの花畑ができた。最後のページに挟まっていたメイシンお手製の折り紙のチューリップは、重要なキーアイテムとなる。

『港のお嬢さん』

リホウが主演も兼ねた映画の主題歌で彼女の代表曲のレコード。フォンウがこの映画の脚本を担当したのが二人の馴れ初めであり、したがってフォンウとリホウの思い出の曲でもある。メイシンは『港のお嬢さん』を歌番組で熱唱し高得点を獲得した。

アンティークドール

メイシンの部屋にあった彼女そっくりのアンティークドール。度々フォンウの前に現れ、ベッドの上でおもちゃの椅子に掛けてままごとをしていたり、手足に注射をされていたりと当時のメイシンの状況をなぞったポーズをとる。

バレリーナの人形

フォンウが入手した飴細工でできたバレリーナの人形。本来メイシンの誕生日ケーキの装飾用で、これを居間に出現したケーキにさすと誕生日当日の出来事が再現される。

金属のレリーフ

1987年を開ける鍵となる金属のレリーフ。これを1987年の扉に嵌め込むことでフォンウは全ての記憶を取り戻す。

折り紙のチューリップ

『花と愛』の最後のページに挟まっていた、メイシンが折った黄色いチューリップ。1980年、集合住宅に引っ越してきたばかりの5歳のメイシンがフォンウの没原稿で遊んだエピソードに由来する。折り紙を折っている時は息をしやすくなると闘病中のメイシンが語っており、父娘の絆を示す重要アイテム。

『還願(Devotion)』の登場人物・キャラクター

主要人物

杜豐于(ドゥ・フォンウ)

左端の人物。本作では写真の顔も全て塗り潰されるか切り抜かれるかして見えない仕様。

本作の主人公で脚本家。元女優のリホウと結婚し一人娘のメイシンを授かる。
プライドが高く神経質な上、独善的で迷信深い性格。全盛時は有名な賞をとったが、一家が集合住宅に引っ越した時点で既に時代遅れの作風となり干されていた。しかし己の作風が時代の需要と合わず廃れていくのを断じて認めず、一日中書斎にこもって売れない脚本を書き続けた。リホウに度々現実を見ろと諭されても聞く耳を持たず、逆に彼女を非難している。生活苦にも関わらず財運を招くといわれるアロワナを飼育するなど散財が直らない。妻譲りの美貌と歌唱の才に恵まれたメイシンの活躍だけが楽しみだったが、彼女のストレス発作によってそれも叶わず、メイシンの快癒を祈って怪しげな新興宗教に傾倒していく。執筆に集中すると周囲が見えなくなるがメイシンへの愛情はちゃんとあり、夜寝る前に絵本を読み聞かせる、彼女の為を思い大量のビタミン剤を投与するなどしていた。
リホウとは毎日のように夫婦喧嘩を繰り返すなど決して良好な関係とは言えなかった。生活苦から彼女が芸能界復帰を相談した時は、自分の甲斐性のなさを棚に上げ恥をかかすなと激怒している。当時の台湾では女が働きに出るのは旦那の体面を潰す行為と見なされ、保守層の反感を買っていた。その後もホー先生ならびに彼女がご神体として仰ぐ慈孤觀音に多額の寄付を続けた為、愛想を尽かしたリホウに遂に捨てられる。
妻に捨てられてからはますますホー先生の新興宗教にのめりこみ、結果ホー先生に唆されて行なった荒療治で娘を死なせてしまった現実を否定し、妄想の世界に囚われていく。
本作では顔が登場せず、絵や写真に描かれたいずれの顔も塗り潰されるか切り抜かれるかしている。

杜美心(ドゥ・メイシン)

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