カメラを止めるな!(カメ止め)のネタバレ解説・考察まとめ

『カメラを止めるな!』とは、2017年制作の日本映画。映画・演劇の専門学校「ENBUゼミナール」のワークショップ 《シネマプロジェクト》の企画として制作された。監督は本作が劇場長篇デビューとなる上田慎一郎。本作は2017年に先行上映されると、またたく間に評判が広まり、国内外の映画祭でも数々の賞を受賞した。
ゾンビ映画の撮影中、本物のゾンビに襲われてしまう撮影クルーの恐怖と、その映画の撮影秘話を二部構成で描く。

本作が社会現象となった理由として、何よりも「サプライズ」の存在が挙げられる。
前半部分の劇中劇「ONE CUT OF THE DEAD」までを観た観客の誰しもが、本作をインディーズ映画の典型的作品と思うだろう。
実際、そこには低予算の自主制作映画にありがちな特徴が多分に含まれている。
安っぽい舞台設定に、どこか間延びした脚本。アドリブくさい不自然な台詞。おまけに「ゾンビ映画」という題材。
なるほど「ワンシーン・ワンショット」の大胆な撮影を試みたという点で、一部の目の肥えた観客は喜ぶかもしれない。
しかし、それにしても「ONE CUT OF THE DEAD」には粗が目立つ。
SNSで話題になっていたので観に来たが、何のことはない。インディーズ映画としては及第点かもしれないが、傑作というほどのものではないだろう。

そんな観客のため息は、映画の後半部分が始まると一気に吹き飛ばされる。
「ONE CUT OF THE DEAD」に覚えた違和感は、すべて伏線だったのである。
役者の不自然な言動やカメラワークにはこんな裏側があったのか、と観客は納得する。
撮影を完遂するために奔走するキャストやスタッフたち。彼らの奮闘に観客は腹を抱えて笑わずにはいられない。
また、本作は映像制作に対する「こだわり」を主題とした物語でもある。
次第にメッセージ性が明らかになっていくにつれ、私たちの胸も熱くなってくるはずだ。
ラストの大団円を迎えたとき、『カメラを止めるな!』は最高の「ゾンビ映画」として心に刻まれるだろう。
そして、誰かにつぶやきたくなってしまうのだ。

『カメラを止めるな!』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「撮影は続ける。カメラは止めない!」

劇中、ゾンビのいる屋外へ出ようとする山越を追いかける際、日暮が発した台詞。
その不自然な台詞とカメラ目線は、前半の劇中劇で強烈な違和感を残す。
映画後半、その台詞が舞台袖のプロデューサーに向けられていたことが判明する。
『カメラを止めるな!』というタイトルの二重性を象徴する台詞だ。

「どうなってるんですか色々……親父にもぶたれたことないんだ!」

晴美にビンタされた二枚目俳優の神谷が、日暮に向かって言い放った台詞。
生真面目で役作りに余念のなかった彼も、トラブル続きの撮影に冷静さを欠いている。
直前のキャスト交代に加えて、酔っ払って本番中に嘔吐する細田、お腹を下し勝手に退場しようとする山越、そして暴走を始める晴美。
相次ぐ混乱で地獄絵図と化した現場に普段のクールな姿は失われ、この後「もう何も考えられない」とつぶやき倒れることになる。
もちろん台詞の元ネタは「機動戦士ガンダム」のアムロ・レイだろう。
そのあまりに唐突すぎるパロディに、笑いを通り越して事態の異常さが伝わってくる台詞である。

「落ち着いているわよ私は落ち着いてる」

役に入り込むあまり脚本を完全に無視し始めた晴美の台詞。
はじめ、心配する日暮に対して舞台袖で言った台詞であるが、その後、まったく同じ台詞をカメラの前でもつぶやくことになる。
おそらくは自分に言い聞かせようとしたのかもしれないが、彼女の顔は無表情で目の焦点も合っておらず、どうみても落ち着いているようには思えない。
おまけに全身は血糊塗れで右手には斧を持っているのだから、その姿は完全にサイコホラーの一場面である。
ゾンビ映画の撮影中に起きた惨劇「ONE CUT OF THE DEAD」であるが、本当の惨劇はこの台詞によって頂点に達したように思える。

クレーンショットを諦めようとする日暮を「待った」と制する真央

度重なる障害を乗り越え、ついに「ONE CUT OF THE DEAD」の撮影も佳境を迎えるが、ラストを前にしてカメラクレーンが破損してまうという事態が起きてしまう。
プロデューサーの古沢は、日暮に予定していたクレーンショットを諦めるように促す。
そんな中で娘の真央が立ち上がるシーンである。
妥協ばかりの作品を撮る日暮の仕事に、普段はまったく興味を示していなかった彼女も、「ONE CUT OF THE DEAD」の現場を通してともに奮闘してきた。
父の作品に対する熱意を知り、さらには日暮の台本に自分の写真が貼ってあることに気がつき、父の「こだわり」を捨てさせないため立ち上がるのである。
親子の物語でもある本作品が、その主題をはっきりと表出させる名場面である。

「コウちゃん、目を覚まして!」と同じ台詞を繰り返す松本

劇中作「ONE CUT OF THE DEAD」のクライマックスで松本が神谷に向かって説得を試みる場面。
「コウちゃん」とは神谷が演じている男優の役名で、彼は松本が演じている女優の恋人という設定。
要するに、ゾンビとなってしまった恋人に向かって、女優が懸命に言葉を投げかける重要な場面である。
しかし、「ONE CUT OF THE DEAD」の舞台裏を知っている観客からすると、それは一転してシュールな台詞に聞こえてしまう。
というのも、この時カメラの裏手ではスタッフとキャストが総出となって人間ピラミッドを組んでいたからである。
ピラミッドが完成しなければ、決めのラストショットは撮れない。
なんとか準備の時間を稼ごうと、松本は同じ台詞を何度も繰り返して引き伸ばす。
そのせいで明らかに不自然なシーンとなってしまっているのだが、そんなことは最早どうでもいいのかもしれない。
映画の前半と後半で180度印象が変わる『カメラを止めるな!』のラストに相応しい場面である。

『カメラを止めるな!』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

著作権をめぐる騒動

上田監督は本作の構想を劇団PEACE(現在は解散)による舞台『GHOST IN THE BOX!』から得たとしており、劇場公開時は原案としてクレジットされていた。
しかし、劇団の主宰であった和田亮一は本映画の著作権が自身および劇団にあると主張し、その告発記事が週刊誌「FLASH」(2018年8月21日)に掲載された。
これに対して制作のENBUゼミナールは直ちに声明を出し、著作権侵害には当たらないと主張。
上田監督もツイッター上で自身のオリジナル作品であることを強調している。
こうした経緯もあり、DVD/BDおよび配信版では「原案」のクレジット表記がなくなっている。

上田監督の関連作品

『カメラを止めるな!』のヒットにより、上田監督の他作品にも注目が集まることになった。
最初期の長編映画『お米とおっぱい。』のDVDの発売、および20代の頃に自費出版したSF小説『ドーナツの穴の向こう側』の再販が決定している。

『カメラを止めるな!』の関連動画

特報

予告編

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