カメラを止めるな!(One Cut of the Dead)のネタバレ解説まとめ

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『カメラを止めるな!』とは、2017年制作の日本映画。映画・演劇の専門学校「ENBUゼミナール」のワークショップ 《シネマプロジェクト》の企画として制作された。監督は本作が劇場長篇デビューとなる上田慎一郎。本作は2017年に先行上映されると、またたく間に評判が広まり、国内外の映画祭でも数々の賞を受賞した。
ゾンビ映画の撮影中、本物のゾンビに襲われてしまう撮影クルーの恐怖と、その映画の撮影秘話を二部構成で描く。

『カメラを止めるな!』の概要

『カメラを止めるな!』とは、映画や演劇、俳優養成の専門学校「ENBUゼミナール」のワークショップ企画《シネマプロジェクト》の第7弾として制作された作品である。
監督の上田慎一郎は、もともとかつて見た小劇場演劇に着想を得て本作の構想を練っていたという。
その構想が「ENBUゼミナール」に集まった役者たちとの出会いを経て、脚本として結実することになった。
2017年11月に新宿K'Cinemaで先行上映されると、またたく間に評判となり、連日満員となる異例の事態に。
2018年6月には都内2館で劇場公開されたが、SNSを中心に口コミの勢いは止まらず、公開から二ヶ月あまりで累計上映館数200館を突破する。
ちなみに、略称の「カメ止め」はこの年の流行語大賞にもノミネートされた。
また、配給は公開当初「ENBUゼミナール」のみであったが、上映館の拡大にあわせてアスミック・エースとの共同配給になっている。
2018年10月には「第31回東京国際映画祭」の「Japan Now部門」にも選出。
低予算(制作費は300万といわれている)のインディーズ映画としては異例とも言える本作のヒットは、メディアでも多く取り上げられることになった。
監督の上田慎一郎も多くのテレビ番組に出演し、全国で過去作品のリバイバル上映などが行われている。

『カメラを止めるな!』の主な受賞歴

「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」(北海道):ゆうばりファンタランド大賞(観客賞)
「ファンタスポア2018」(ブラジル):インターナショナルコンペティション部門 最優秀作品賞
「ウディネ・ファーイースト映画祭 2018」(イタリア):シルバーマルベリー(観客賞2位)
「プチョン国際ファンタスティック映画祭 」(韓国):EFFFFアジアン・アワード(ヨーロッパ審査員特別賞)

『カメラを止めるな!』のあらすじ・ストーリー

前半部(劇中劇「ONE CUT OF THE DEAD」)

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ゾンビとなってしまった恋人に襲われる女優。

舞台となるのは人里離れた廃工場。斧を抱えた血まみれの若い女性が、今まさにゾンビに襲われようとしていた。
恋人であるはずの彼女の言葉も、ゾンビと化してしまった男の耳には届かない。
必死の呼びかけも虚しく、ゾンビはじりじりと彼女との距離を詰め、その首もとに襲い掛かる。

「ハイ、カット!」とカチンコが鳴らされ、疲れきった表情の撮影スタッフが監督の顔をうかがう。
どうやらこれで42テイク目らしいが、不満そうな監督は首を縦には振らず、怯える女優に詰め寄る。
彼女の演技にリアリティが欠けていることに納得がいかないらしく、声を荒げて「本物をくれよ!」と罵倒。スタッフの制止によって、撮影は一時中段することになった。
憔悴する彼女を、ゾンビ役の男とメイク担当の女性スタッフが慰める。俳優の二人は実生活でも恋人であるらしい。
どこか不自然でぎこちない談笑を三人が続けているあいだ、場面はノーカットで廃墟の外へ。

そこで一服していた助監督の前に、不意に土気色の顔をしたカメラマンがあらわれた。
血まみれの格好でよろめくカメラマンを見て、最初はたちの悪い冗談と思い、たしなめようとする助監督。
だが、カメラマンは紛れもないゾンビと化していた。
胃液を噴出し、助監督の首もとに噛みつくカメラマン。もぎ取られた助監督の右腕は、廃墟のなかへと転がった。

突然転がり込んできた右腕に、屋内にいた女優たち三人も唖然とする。
よく出来た小道具だ、と恐るおそる右腕を取り囲むのだが、やがて片腕を失った助監督を見つけるに至り、三人はパニックに陥る。
助監督はそのまま息絶えてしまった。
ゾンビと化したカメラマンが屋内に入ってくる。
三人は躍起になってゾンビのカメラマンを外へと押しやることに成功するが、それも束の間、今度は先ほど死んだはずの助監督がゾンビとして蘇り、三人を追い回す。
男優の奮闘もあり、なんとかゾンビの助監督も屋外に締め出すことができた。

と、そこへ入ってきたのは、正気とは思えない様子でカメラを手に持つ監督だった。
「これが映画だよ!」とカメラを回し続ける監督。どうやらこの異常事態は彼の手によって呼び起こされたらしい。
狂気に陥った監督をよそに、女優たち三人は廃墟からの逃走を図る。
いまや助監督とカメラマンに続き、録音マンまでもが本物のゾンビと化してしまった。次々にゾンビが女優たちに襲い掛かる。

この修羅場に奮起したのはメイク担当の女だった。護身術を身につける彼女の活躍によって、三人は命からがら屋外へと脱出する。
しかし、乗り込んだ車の鍵が見つからない。結局、ゾンビに追われた三人は廃墟のなかに戻ってきてしまった。
息も絶え絶えに倒れこむ女優をメイクの女が見下ろす。彼女の冷たい視線は、女優の足首についた傷を見つめていた。
ゾンビに噛まれたのか、と斧を手に詰問するメイクの女。その血まみれの顔は、とても正気であるとは思えない。
斧を振り上げる女を必死で押しのけ、女優と男優の二人はふたたび廃墟の外へ。
自分が感染してしまったことを悟った女優は、恋人である男を守るため、ひとり距離を置こうとする。

逃走につぐ逃走の後、屋上への階段を登る彼女だったが、そこにいたのはゾンビと化した男優だった。
奇しくも冒頭の撮影シーンと同じように、追い詰められた彼女にゾンビの男が迫る。
なぜだか知らないが不意に姿をあらわした監督が「その顔だよ!」と興奮気味にカメラを回している。
女優は最後に愛の言葉を投げかけ、彼に向かって斧を振り下ろした。そして予想外の事態に動揺する監督に向けても、斧は振り下ろされる。
血まみれで佇む女優を捉えたまま、カメラは次第に上昇していく。
俯瞰するクレーンショットを背景にエンドロールが流れ出し、いくつかの違和感を残しながらも、こうして全編ワンカットのゾンビ映画「ONE CUT OF THE DEAD」が幕を閉じる。

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出典: kametome.net

ゾンビが迫る中「カメラは止めさせない!」と叫ぶ監督。なぜかカメラ目線。

後半部(劇中劇「ONE CUT OF THE DEAD」の舞台裏)

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日暮はプロデューサーから無謀ともいえる企画を聞かされる。

話は一ヶ月前に遡る。映像監督である日暮隆之(「ONE CUT OF THE DEAD」の監督役)のもとに、一件の企画が舞い込んできた。
その企画とは、新しく開局するゾンビ専門チャンネルの記念企画としてドラマ番組を制作して欲しい、というものだった。
しかも提示された条件は「生中継」の「ワンシーン・ワンカット」。一台のカメラによるノーカット・30分生中継のゾンビ作品を作って欲しい、というのである。

無謀としか思えないこの企画を最初は断わろうとする日暮だったが、キャストの神谷(映画での男優役)は大学生の娘・真央のお気に入りだった。
真央もまた映像監督を志しているが、父の仕事にはまったくの無関心。
リアルな作品のために妥協を許さない性格の真央の目には、日暮の映像は嘘くさく中途半端なものに映っていたからだ。
だが、そんな真央でも好きな俳優が出るとあれば、父の作品に興味を持ってくれるだろう。
そう考えた日暮は「ONE CUT OF THE DEAD」の依頼を承諾する。

後日、制作スタッフとキャストが集まり台本の読み合わせが行われた。
やって来たのは事務所を盾に文句を並べるアイドル・松本(映画での女優役)に、飲んだくれの俳優・細田(映画でのカメラマン役)。
話に聞いていた俳優・神谷もなかなかの堅物で、登場するゾンビの設定に納得がいかない様子だ。
一癖も二癖もある面々に途惑いながらも、日暮は撮影へ向けた準備を進めていく。

ついに迎えた撮影当日。舞台となる廃墟に集まり、セットや小道具、機材の準備を進めていく撮影クルー。
そこには番組プロデューサーの古沢と話す日暮の妻・晴美と娘・真央の姿もあった。
真央はお気に入りの俳優である神谷を一目見ようと、父の現場についてきてしまったのである。
一方の舞台裏では、クランクインに向けて最終確認が行われている。
「最後までカメラは止めません、くれぐれも無茶だけはしないように」と、日暮はキャスト全員に言い聞かせる。

ところが、ここで思わぬトラブルが発生してしまう。
監督役だった黒岡とメイク役の相田が、移動中の事故により撮影に参加できなくなってしまったのだ。
万事休す。撮影は中止になるかと思われた。
しかし、プロデューサーの古沢は番組の予定を変えることはできないという。かといって、今から代役を呼ぼうにも時間がない。
苦肉の策として、日暮監督自身が「監督役」を演じることになった。
そしてメイク役に抜擢されたのは妻の晴美。元女優である彼女なら演技の心配は要らない。
そればかりでなく、普段から夫の仕事に理解を示してきた晴美は、「ONE CUT OF THE DEAD」の台本もこっそり読み込んでいたのである。

こうして、いくつもの不安を抱えながらも、生放送の撮影が始まった。
カメラが回り始めた途端、何かが乗り移ったかのように役へと入り込む監督の日暮。アドリブを交えながら、演技は次第に熱を帯びていく。

しかし、ここで第二のアクシデントが起きる。カメラマン役の俳優・細田が倒れてしまったのである。
緊張のためか、差し入れの日本酒を飲んでしまったのが原因だった。
細田の出番まではあとわずか。もちろんカメラは止められない。
必死のアドリブで晴美たちが時間を稼ぐなか、酩酊する細田は急遽ゾンビへと仕立て上げられ、カメラの前に立たされることになった。
演出ではない本物の吐瀉物にまみれ、俳優たちは役そっちのけでパニックに陥る。

阿鼻叫喚の中、カメラマン役の山越はおもむろに立ち上がると、脚本を無視して屋外に出て行こうとする。
デリケートで軟水しか飲めない彼だったが、本番前に誤って硬水を飲み、腹を下してしまったのである。
彼が退場してしまっては話がつながらない。すべて台無しだ。
それでも「撮影は続ける。カメラは止めない!」とカメラに向かって叫び、山越を追いかけていく日暮。
その場しのぎのアドリブで残された役者たちも演技を続けようとするが、この非常事態に万策も尽きたのか、プロデューサーの古沢は放送中止の判断を下そうとする。

そんなプロデューサーを制止し、舞台裏に飛び込んできたのは真央だった。
彼女はその場で脚本を書き換え、山越をゾンビとして劇中に戻すように提案。その後もきびきびとスタッフに指示を出していく。
用便を足しながらゾンビの化粧をさせられた山越が、カメラの前に戻される。
真央の機転を利かせた行動により、なんとか撮影は続行されたのである。

度重なるトラブルを乗り越え、それでもカメラは回され続ける。
松本は心の底から憔悴した表情を見せ、神谷は「どうなっているんだ」と日暮監督を問い詰める。
そんな中、晴美が脚本を完全に無視し、ついには暴走を始めてしまう。役に入り込むと我を忘れてしまうのが、女優だった頃の彼女の悪い癖だったのだ。
ゾンビの細田と山越の制止を力づくで振りほどき、泣き叫ぶ松本を追いかける晴美。
これにはスタッフも大慌てで奔走することになったが、やっとのことで彼女の気を失わせることに成功。
斧と血糊によって、彼女は死体に仕立て上げられた。

いよいよクライマックスへと向かうカメラの前に、最後の壁が立ちはだかる。
ラストショットを撮るためのカメラクレーンが、騒動の最中に壊れてしまったのだ。
クレーンがなければ、予定していた俯瞰ショットは撮ることができない。しかし、日暮はその構図に強いこだわりを持っていた。
ここで妥協したくはない。しかし、プロデューサーの古沢は無事に撮影を終えることを望んでいる。
彼に持論を押し通すことが出来ず、諦めかける日暮。
その横で真央は父の台本を開いていた。ふと裏表紙に貼ってあった一枚の写真に気がつく。
そこに映っていたのは、父と並ぶ幼い頃の自分だった。

「待った!」と、父の愛情に気づいた真央が振り返る。
それはクレーンの代わりに人間ピラミッドを使ってラストショットを撮ろう、という妙案だった。
松本と神谷が間を持たせている側で、キャストとスタッフが総出となり、急いでピラミッドを組んでいく。
その頂上では日暮に肩車された真央が震える腕でカメラを掲げている。
放送終了まであと少し。
屋上に佇む松本を背景に「ONE CUT OF THE DEAD」のタイトル文字が浮かび上がる。
こうして波乱万丈の撮影は終了した。
緊張が解け自然と笑顔で溢れるキャストとスタッフの表情が映し出され、『カメラを止めるな!』は終幕となる。

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出典: kametome.net

いざ本番が始まると、監督役・日暮の演技は熱を帯びていく。

『カメラを止めるな!』の登場人物・キャラクター

監督およびその家族

日暮隆之(演:濱津隆之)

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出典: kametome.net

「早い」「安い」「質はそこそこ」がキャッチフレーズの映像監督。
ゾンビ専門テレビ局「ゾンビ・チャンネル」の企画として、ゾンビ映画「ONE CUT OF THE DEAD」の制作をすることになる。
仕事に対するプライドはけっして高い方ではなく、スタッフやキャストの要望に折れてしまうことも多々ある。
自分と同じ映像監督を目指している娘の真央を気にかけているが、彼女からは相手にされていない。
代役として「ONE CUT OF THE DEAD」の監督役を演じ、撮影を通して娘との絆を取り戻していく。

日暮真央(演 :真魚/幼少期:左右田陽菜)

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出典: kametome.net

隆之の娘で大学生。父と同じく映像監督を志しているが、こだわりの強い性格が災いしてしまい、撮影現場でトラブルを引き起こすこともある。
父の作品に興味はないが、お気に入りの俳優である神谷和明が出演していることを知り、その撮影現場に同行することに。
そこで急遽「ONE CUT OF THE DEAD」の撮影に参加することになり、監督代行として采配を振るう。

日暮晴美(演:しゅはまはるみ)

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出典: kametome.net

隆之の妻。もともと女優だったが今は引退して主婦となっている。
何か夢中になれる趣味を探しているが、どれも長続きしない。最近は護身術を習っている。
夫の作品には一定の理解を示しており、彼の脚本をこっそり読んでいる。
娘の真央とともに隆之の撮影現場を訪れることになる。
代役として「ONE CUT OF THE DEAD」のメイク役を演じる。

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