サマーゴースト(アニメ映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『サマーゴースト』とは、イラストレーター「loundraw(ラウンドロー)」が描いた1枚のイラストから生まれた物語をアニメ映画化した作品である。インターネットで知り合った3人の高校生たちは、花火をすると現れると言われる女の幽霊「サマーゴースト」に会いにいこうと思いたつ。それぞれに悩みを抱えた3人の高校生たちと、女幽霊サマーゴーストとの忘れられないひと夏の出会いを描いた青春群像劇である。悩みを抱え、生きる意味を見出せずにいる人たちに「何か新しい答え」を見出してくれるような作品。

『サマーゴースト』の概要

『サマーゴースト』とは、イラストレーターloundraw(ラウンドロー)が描いた1枚のイラストを元に創作された作品である。現代青春群像劇を描くアニメ映画として、2021年11月公開に公開された。本作は原案であるloundrawが自ら監督を務める。キャラクターデザインをはじめ背景美術や作画など実創作にも参加。loundrawは住野よるの恋愛小説『君の膵臓をたべたい』・佐野徹夜の小説『君は月夜に光り輝く』などの装画や、青山剛昌の漫画を原作とするアニメ『名探偵コナン』の劇場版のイメージボードも手掛けた経験があり、本作に幅広く関わっている。脚本は『GOTH リストカット事件』で「第3回本格ミステリ大賞」を受賞した安達寛高(乙一)が手掛けた。それぞれに悩みを抱えた3人の高校生たちを主人公に、「都市伝説として囁かれる"サマーゴースト"を巡る忘れられない"ひと夏の出逢い"」を描く。
さらに『スプートニクの少女』で「ヤングジャンプ40周年記念宇宙漫画賞」準大賞を受賞した井ノ巳吉により本作がコミカライズされ、2021年10月から2022年6月まで「となりのヤングジャンプ」にて連載された。
そして、脚本の乙一が執筆した小説版は2021年10月に発売。「サマーゴースト」の姉妹作としてオリジナル小説『一ノ瀬ユウナが浮いている』が11月に発売された。
また通信教育事業を展開するZ会が、様々な悩みや葛藤を抱えながら今を生きる若者たちへの応援メッセージとなる映像製作をloundrawにオファー。これを受けて、『サマーゴースト』の世界に存在するもうひとつの物語『一番近くて遠い星』も製作された。これは監督・演出・キャラクターデザイン・作画監督・美術監督・撮影監督・編集の全てをloundrawが担当したコンセプトムービーである。

『サマーゴースト』のあらすじ・ストーリー

サマーゴーストとの出会い

高校3年の杉崎友也(すぎさきともや)は母親や教師の期待を背負い、受験勉強に勤しんでいたが、絵を描きたいことや絵の仕事をしたい夢をひた隠しにしていた。母親の執拗な期待に鬱屈とした日々を送る。やがて死にすら魅力を感じるようになっていた友也は、夏の間に花火をすると若い女幽霊「サマーゴースト」が現れるという都市伝説に興味をもつ。友也は、サマーゴーストに会うためにインタネットで知り合った高校2年生の春川 あおい(はるかわ あおい)と高校3年の小林 涼(こばやし りょう)らと画策する。
3人にはそれぞれサマーゴーストに会わなくてはならない理由があった。3人は意を決して大量の花火を買い込み、使われなくなった飛行場で花火を決行する。手持ち花火に興じる3人だったが、一向にサマーゴーストが現れる気配がない。しかし、最後の線香花火に火をつけたとき、火花が大きく炸裂した。友也はいち早くその来訪者の気配に気づく。友也の視線の先には、黒いワンピース姿の若い女性が呆然と立っている。それはまごうことなきサマーゴーストこと佐藤絢音(さとうあやね)だった。
「一体何の用?わたしみたいな死んだ人間に」と絢音は3人に尋ねる。あおいと友也は思い思いの質問を絢音にぶつけた。絢音はすべてを見透かしたように「わたしは誰にでも見えるわけじゃない。わたしが見えるのは死に触れようとしている人だけ」だとあおいにささやく。自分が置かれた環境のせいで望む人生へ踏み出せずにいる友也。スクールカーストに悩み、学校でいじめられ居場所をなくしているあおい。病魔におそわれ余命9ヶ月を宣告された涼。3人に共通していたのは「死に触れようとしていること」だった。絢音は二言三言質問に答えるだけですぐに消えてしまう。
数日後、友也は絢音に会うために1人で飛行場に向かい線香花火をした。絢音は友也の心情をくみ取り、自分はどうしたいのかと問う。友也はわからなかった。しかし、幽霊になれば悩みや辛い気持ちがなくなるのか知りたかった。絢音は友也の手をとり、彼の魂を連れ出した。友也はそこで初めて幽体離脱を経験する。
幽体離脱した友也は心のおもむくままに、行きたい場所にどこへでも行くことができた。友也が真っ先に訪れた場所は美術館だった。絵をやめたと公言していた友也だったが絵に対する情熱は忘すれられなかった。周りの意見に圧迫されて縮こまっている友也の現状を絢音は「もったいない」と嘆く。

サマーゴーストとの別れ

美術館をあとにした2人は絢音の実家に飛ぶ。絢音は自殺したのではなく誰かに殺されたということや、今は母親が1人で暮らしていることを友也は知った。台風の夜、絢音は母親とつまらない喧嘩して家を飛び出した。道を渡ろうとしたところで絢音は信号無視をした車にひかれてしまう。まだその時点では息があったが、運転手は事故をなかったことにしたいがために、彼女を殺して地中に埋める。幽霊になった絢音は、初めのうちは自分の遺体を探そうとしたがあきらめていた。友也の大切な時間を遺体探しに使うのは申し訳なかったからだ。しかし、友也は絢音の密かな願いを叶えたいと考える。後日、友也はファミレスで待ち合わせして、あおいや涼にも絢音の遺体探しを手伝ってほしいと頼んだ。しかし、涼はそれを拒んで店を飛び出す。あおいは涼を追いかけ、彼の胸の内を聞いた。涼は余命を宣告され、残された時間も限られている。なにもかもうまくいかない。そんな時、自分が辛くなることはわかっていたのに、友也やあおいと出会ってしまった。どうせ死ぬなら1人でいればよかったと泣き崩れる。あおいも涼に自分の胸の内を明かした。自分は学校でいじめられて居場所がないことや、ずっと苦しくて生きている意味が分からなくなっていたこと、何か新しい答えがほしくて幽霊をさがしていたことを打ち明けた。「きっと友也も思い悩んでいるはずだ」、「私たちが出会ったことには意味があるはずだ」と、あおいは涼を励ます。
友也は1人で絢音の遺体を探したが一向に見つからなかった。手持ちの線香花火もなくなり途方に暮れていると、あおいと涼が大量の線香花火を手に駆けつける。涼の気持ちも考えず自分本位で考えていたことを友也は詫びた。自分は全部わかった気でいる、自分は一番かわいそうだって顔をしている、そんな友也が嫌いだと涼は言った。こうして涼とあおいも遺体探しを手伝うことになった。3人は絢音の力を借りて幽体離脱をし、捜索する。そのかいあって遺体の入ったスーツケースは見つかった。「最後にいい思い出ができたよ」と絢音は友也に微笑む。遺体が見つかれば絢音はきっと成仏するに違いない。誰もがそう予感していた。友也ら3人は肉体に戻り現場に向かう。

自分の道を進むことを決めた友也

現実世界に戻った3人は絢音の遺体が埋まっているとみられる地点に向かった。しかし、そこは有刺鉄線付きの金網の柵で仕切られた敷地だった。友也は柵をよじ登り、敷地内へ侵入する。友也はすぐに地面に露出したスーツケースを見つけた。このスーツケースに絢音の遺体が入っている。スーツケースに友也が触れた時だった。友也は再び幽体離脱してしまう。気がつくと目の前には絢音がいる。友也は長い間魂の状態にいたために死の世界へと足を踏み入れようとしていた。周囲は真っ白な世界が広がり、何もない。しかし、この世界には友也のいたい場所や思い出のすべてが集まる場所だ。絢音は1本の線香花火を取り出す。これを燃やせば友也は完全に死ぬ。絢音はそう言って線香花火に火をつけようとする。友也は一瞬受け入れそうになったがそれを拒んだ。しかし、どっちつかずの複雑な表情をしている友也に、絢音は「どうしたいの?」と問う。その時、「ちゃんと最後までやり遂げろ、こんなところで諦めることは許さない」と涼の声が聞こえて友也はハッとする。友也は現実世界に戻ろうと踵を返したが、たちまち突風が吹いて押し戻された。「現実世界は辛いのにどうしてそんなにしがみつくの?」と絢音は友也を引き留める。それでも友也は引き返そうとする。しかしそのたびに突風がふいて引き戻されてしまう。絢音はどうして友也が現実世界に戻りたがるのかがわからない。現実世界はたしかに辛いが、前を向けばあおいや涼のように新しい出会いがあることを友也は知った。目の前にいる絢音は絢音ではなく、死ぬ理由を探していた友也自身だった。友也の必死の訴えにより、もう1人の友也は姿を消す。友也は地面に転がっていた線香花火の火を踏み消すと現実世界へと戻った。両手で土を払いのけ、スーツケースを開ける。そこには絢音の亡骸があった。「ありがとう。見つけてくれて」と絢音の魂は友也を抱きしめる。友也の目からはとめどなく涙がこぼれていた。
1年後、友也とあおい、サマーゴーストになった涼は再び飛行場跡に集まり花火をした。友也は周りの反対を押し切り、絵の道を進んでいた。母親や周りの人たちの言う通りにしていた方が楽だったかもしれない。しかしどんなに辛いこともどうせいつか終わると思ったら怖くない気がしてきたのだと、友也はしっかりと自分の道を選び、歩むことができた。あおいもまた自分の中で少しずつ変わり始め学校生活に順応しつつある。涼は半年前にすでに死んでいた。死ぬ間際に友也とあおいもいたが、涼は話すことができず別れの言葉も言えなかった。しかしまたサマーゴーストとして友也たちと話ができてよかったとほほ笑む。「友也とあおい、2人なら全部何とかなる。保証はないが自分が保証する。頑張って生きろ」と言って涼は消えた。

『サマーゴースト』の登場人物・キャラクター

杉崎 友也(すぎさき ともや)

CV:小林千晃
何でもそつなくこなしてしまう高校3年生。母親や教師の期待に応えるために受験勉強をしている。しかし本音はいい大学に入って大金を稼ぐよりも、絵の道に進みたいと考えている。お気に入りの場所は美術館で絵を見て回るのも好き。従順でおとなしい性格のため勉強や進路について執着する母親に、はっきりと不満を口にすることはなかった。しかし、毎日その期待に応えようとするがあまり、自分の本当の気持ちが分からなくなっていた。やがて、死に魅力を感じるようになり、あおいや涼とサマーゴーストに会う計画を立てる。

春川 あおい(はるかわ あおい)

CV:島袋美由利
高校2年生。学校ではスクールカーストの底辺と認識され、いじめられている。スクールカーストに悩み、鬱屈とした毎日を送っている。大人しく優しい性格で本心を表に出すのが苦手。

小林 涼(こばやし りょう)

CV:島﨑信長
高校3年生。バスケが大好きで実力もあったが、大病を患い余命を宣告されてしまう。そのため、大好きなバスケもやめてしまった。幽霊の存在を信じている。

佐藤 絢音(さとう あやね)

CV:川栄李奈
夏に花火をすると現れるという噂の幽霊。その噂は都市伝説と化している。誰かに殺されて、その遺体はどこかに埋められていることは確かだが、魂となった自分の力だけでは探すことができずにいた。そんな時に友也らと出会い、共に遺体探しをする。

『サマーゴースト』の用語

サマーゴースト

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