本好きの下剋上(ラノベ・漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』とは、香月美夜が『小説家になろう』に投稿したweb小説である。「TOブックス」より書籍版が発売され、その後、漫画化・アニメ化された。シリーズ累計発行部数850万部を突破する人気作品である。本が大好きな主人公が、マインとして異世界に転生してしまう。その世界でマインは本を入手することができず、自分の手で本を作るために奮闘する。マインが成長していく姿や、家族を大切にする姿が丁寧に描かれており、読者の心を打つ。

『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』の概要

『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』とは、香月美夜が小説投稿サイト『小説家になろう』に投稿したweb小説である。また、それを原作として、ライトノベル、漫画、アニメが制作されている。
Web小説は、2013年9月から2017年3月まで連載された。全5部677話で構成されている長編作品である。
2015年1月には、「TOブックス」より書籍版が発売された。イラストは椎名優が担当。書籍版は36巻で完結。宝島社発行の『このライトノベルがすごい!』では、2023年に単行本・ノベルス部門で第1位を獲得し、殿堂入りを果たした。
漫画版は、2015年10月より「TOブックス」の『comicコロナ』にて連載が開始された。作画は第一部と第二部を鈴華が、第三部を波野涼が、第四部を勝木光が担当。合計31巻が発売されている。
書籍版、漫画版共に人気を博しており、シリーズ累計発行部数は850万部を突破している。
2019年10月から12月には、TVアニメ第1期が放送された。それに続いて、2020年4月から6月に第2期、2022年4月から6月に第3期も放送された。

何よりも本が大好きな本須麗乃(もとす うらの)は、念願の図書館への就職が決まった途端に、大量の本に埋もれて亡くなってしまう。目が覚めた時、麗乃は異世界でマインという幼い女の子に転生してしまっていた。マインはとても虚弱で、すぐに熱を出して寝込んでしまう。さらに、転生した世界では本はとても貴重なもので、貧しい家庭のマインが入手することは不可能だった。そこでマインは、「本がないなら作ればいい」と決意を固めた。その後、麗乃だった頃の知識を使って、マインは自らの手で本を作るために奮闘する。

マインが底辺の生活から前世の知識を使って下剋上していく様子や、周囲の人間を無意識に翻弄する様子は非常に痛快である。また、本作では「家族の絆」が丁寧に描かれており、マインが家族を大切にする姿は、読者の心を打つ。特に女性から人気の高い、マインの成長と下剋上を描いたビブリアファンタジーである。

『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』のあらすじ・ストーリー

やむを得ず別れる家族のため最後に精一杯の「祝福」を施すマイン

本のない世界

三度の飯より本が好きな主人公の本須麗乃は、図書館への就職が決まった途端、本の下敷きになり、亡くなってしまう。そして死の間際「生まれ変わっても本がたくさん読めますように」と強く祈った。

目が覚めると、麗乃は異世界でマインという幼女に転生していた。マインの体はとても虚弱で、家の外に出るだけでも一苦労する。それでも本が読めるなら耐えられる、と思うマインだが、周囲に本はない。唯一街で見つけた本は、平民のマインでは触れることもできず、「本はお貴族様のもの」というこの世界の常識に打ちのめされる。しかし、マインは諦めることなく、「自分で作るしかないでしょ」と決心した。

マインの家庭は貧しく、本を作る前にまず生活環境の改善から取り組んだ。その過程で髪をまとめる簪を作ったり、髪を綺麗にするシャンプー代わりの「リンシャン」を作り出した。
ある日マインと姉のトゥーリは、父親のギュンターに忘れ物を届けるため、街の南門へ行く。
そこでマインはギュンターの部下のオットーと出会う。元旅商人のオットーは、文字の読み書きと計算ができる。オットーはマインに文字を書くための石板と石筆を与え、文字を教えた。マインは教えられたことをすぐに吸収し、オットーの書類仕事を手伝うようになる。

その一方で、マインは幼馴染のルッツと共に、本作りのための試行錯誤も行なっていた。古代エジプト文明のパピルスやメソポタミア文明の粘土板、中国文明の木簡など様々なものに挑戦するが、上手くいかない。周囲はマインの行動を訝しむが、ルッツは真剣に手伝ってくれた。その代わりマインは、商人になりたいと言うルッツに、オットーを紹介した。オットーは、マインとルッツをベンノと引き合わせる。ベンノは、ギルベルタ商会を営む商人だ。「マインの考えたものは俺が作る」と宣言したルッツはベンノに認められ、7歳の洗礼式までにマインと共に植物でできた紙を作ることができれば、ギルベルタ商会の見習いになることが決まった。洗礼式は、マインたちが暮らす国・ユルゲンシュミットにおいて、7歳になったすべての子供たちが受ける儀式だ。そこで子供たちは、街で暮らすための市民権を得る。

トゥーリの洗礼式の日、マインはかぎ針編みで作った花の髪飾りをプレゼントした。その髪飾りは一際目を惹き、話題となった。そして、マインはベンノを通じて商人ギルドのギルド長・グスタフと、その孫のフリーダと出会う。フリーダは、マインと同じく熱に体を蝕まれていた。マインやフリーダのような人間は「身食い」と呼ばれ、貴族のみが持つはずの魔力を持って生まれた平民のことをいう。暴れる熱の正体は、魔力だ。身食いの大半は、洗礼式を迎えることなく死に至る。フリーダは貴族と契約を結び、成人後に愛人となる代わりに、魔力の暴走を抑える魔術具が与えられ、生きることができた。

その後、マインとルッツは、ベンノの協力のおかげで順調に紙作りを進めることができていた。しかし、マインが発揮する能力は異常で、ルッツは違和感を募らせる。そしてついに紙が完成した時、ルッツはマインに「お前誰だよ」と問いかける。マインは、ルッツに自分が転生してマインになったことを話した。その上で、ルッツが望むならいつでも魔力の熱に飲み込まれて消えると覚悟を決める。けれどルッツは、「オレのマインは、お前でいいよ」と言い、マインを受け入れた。ルッツが思い浮かべるマインは、元のマインではなく、今のマインになっていたからだ。

マインの身食いに対処するには、非常に高価な魔術具を入手するしかない。そのため、マインは完成した紙だけでなくリンシャンや髪飾りをベンノに売った。他にも商品化できるものがないかルッツやベンノと話しをしていた時、かつてないほど急激に魔力の熱が溢れ出し、マインは意識を失って倒れる。ベンノが急いでグスタフに連絡し、魔術具を譲り受けたおかげでマインは一命を取り留めた。しかし、マインは残された時間があと1年しかないと告げられる。悩んだ末、マインは貴族と契約して家族と離れて生きるのではなく、残された1年を家族と共に過ごし、果てる道を選んだ。

マインとルッツは洗礼式を迎えた。洗礼式が行われる神殿でマインは迷子になり、図書室を発見する。部屋いっぱいの本を見たマインは感激し、その勢いのまま神殿長のベーゼヴァンスに神殿の巫女になりたいと直談判する。しかし、神殿の巫女や神官は孤児がなるものであるため、家族の猛反対を受ける。渋々巫女になるのを諦めようとした時、ベーゼヴァンスと神官長のフェルディナンドにマインが身食いであることを知られる。すると、マインの両親であるギュンターとエーファを神殿に呼び出し、話し合いが行われることになった。現在の神殿は魔力を奉納できる貴族出身の青色神官や巫女の数が少なく、マインの魔力を欲したのだった。そして何より、魔力を奉納することでマインは生き延びることができる。話し合いの当日、貧しい格好のギュンターとエーファを見たベーゼヴァンスは態度を豹変させ、マインを無理矢理閉じ込めようとする。両親を守るため、マインは魔力を暴走させてしまうが、フェルディナンドが身を挺して止めたおかげで大事には至らなかった。その結果、マインは貴族出身の者と同じ青色巫女見習いになることが決定した。

平民と貴族

マインが神殿の青色巫女見習いとなると、フラン、ギル、デリアという3人の側仕えが付くようになった。
ある時、マインは孤児院を訪れ、劣悪な環境に放置されている洗礼式前の子供たちを目にする。子供達を助ける方法はないかとフェルディナンドに相談し、マインは孤児院長に就任した。そして、孤児院に紙を生産するためのマイン工房を設立したのだ。孤児たちに仕事を与え、環境改善に成功し、本を作るための紙の生産量も増やすことができた。さらに、マイン工房でカルタやトランプを作り、孤児達に遊びながら文字や数字、簡単な計算を学ばせる。

本作りも次の段階へ進み、聖典に載っている神話を元にした聖典絵本を作り始める。そのために、マインは新しく2人の側仕えを迎え入れた。ヴィルマとロジーナだ。この頃からマインは、フェルディナンドから貴族としての教養を身につけるよう指示され、勉強を始めた。そしてマインは、版画の技術を使って作った初めての本を完成させる。

その後、マインはフェルディナンドの指示で記憶を見る魔術具を使い、フェルディナンドと共に麗乃時代の記憶を見る。トロンベ討伐の後、森を癒すために使ったマインの魔力量が想像以上だったため、記憶を見て危険か否かを判断する必要があったのだ。結果、フェルディナンドはマインが以前は本須麗乃という成人女性で、高度な文明を持つ日本で生きていたことを知った。そのことを領主やカルステッドに報告し、マインが悪い貴族に利用されないよう、自分たちの側へ囲い込むことを画策する。

冬が目前に迫ると、ベンノから悪い知らせが舞い込む。聖典絵本の販売を始めたことで、インクの製造・販売を取り仕切るインク協会が文句を言ってきたというのだ。聖典絵本に使用しているインクは、マインが植物紙用に考えて作ったものだった。マインとベンノはインク協会との衝突を回避するため、インクの製造方法をインク協会に売却した。しかし、その後もギルベルタ商会で見習いをしているルッツが、怪しい男に絡まれるという事態が発生し、マインは神殿に籠ることになる。
マインは家族に会いたい気持ちを我慢し、冬を過ごした。マインのことを嗅ぎ回っているインク協会の代表・ヴォルフは、貴族との繋がりがあり、時には犯罪にも手を染めるという黒い噂のある人物だ。そのため、マインには護衛騎士として下級騎士のダームエルが付くことになった。

神殿に篭っていても、マインは本作りのために邁進する。版画で作った聖典絵本に続いて、活版印刷を実現しようと考えた。そのため、鍛治職人のヨハンのパトロンになり、金属活字の制作を依頼した。金属活字が完成すると、マインは感動のあまりヨハンにグーテンベルクの称号を与える。また、木工職人のインゴに依頼し、簡易的な印刷機が完成した。これにより、活版印刷でより綺麗な本を、より多く生産できるようになる。

春、祈念式が終了し、神殿に帰ってくると、ジルヴェスターが孤児院やマイン工房を視察したいと言い出す。その結果、フェルディナンドも一緒に視察を行うことになった。マインが行った改革のおかげで孤児たちが飢えることはなくなり、文字の読み書きや計算ができるようになっていた。ジルヴェスターたちは、孤児たちの急成長に驚きを隠せない。また、活版印刷での本の量産を目の当たりにし、フェルディナンドはマインに説教する。マインの行う印刷は、今まで写本を生業としていた下級貴族の恨みを買うからだ。視察が終わるとジルヴェスターは、マインにお守りだと言って、黒い石のついた魔術具のネックレスを渡した。
その後、マインが予想以上に多くの魔力を持っていたこと、印刷技術を生み出したことで、貴族と衝突する可能性があることから、フェルディナンドはマインに10歳になったらカルステッドの養子になるように言う。家族と離れたくない気持ちから、マインは魔力を暴走させてしまいそうになるが、家族を危険にさらさないために、養子縁組を受け入れた。

マインが自宅に帰った後、マインたち一家に新しい家族が増えた。マインは弟のカミルを溺愛する。それと同時に、孤児院に新しい孤児がやってきた。ディルクと名付けられたその子はまだ赤ちゃんで、デリアが率先して世話を引き受けた。デリアは、ディルクを自分の弟だと言って可愛がるようになるが、その裏でベーゼヴァンスと繋がっており、マインの情報を流していた。
ある時、ディルクが身食いであることが判明する。ディルクを生かすため、マインはフェルディナンドに頼んでディルクを貴族の養子にできないかと考える。しかし、ベーゼヴァンスにディルクのことを知られないように隠しながらでは、養子縁組先を見つけることはできなかった。すると、デリアは良かれと思ってディルクのことをベーゼヴァンスに相談してしまう。その結果、ベーゼヴァンスの紹介で、他領の貴族であるビンデバルト伯爵と従属契約を結ばされてしまう。ベーゼヴァンスは、ディルクとマインにビンデバルト伯爵との従属契約を結ばせ、マインを神殿から出す代わりに、ディルクを神殿に置いて魔力を補おうと考えたのだ。

ディルクが契約を結ばされている一方で、マインはダームエルの護衛の元、トゥーリと共に帰宅する途中だった。その時、ビンデバルト伯爵の手の者が襲撃してきた。ギュンターの助けもあり、間一髪逃れることのできたマインは、神殿へ逃げ込む。しかし、そこでベーゼヴァンスやビンデバルト伯爵と鉢合わせしてしまう。ビンデバルト伯爵は、マインにも無理やり従属契約を結ばせようと迫り、魔力の撃ち合いになる。その騒ぎを聞きつけたフェルディナンドが現れ、ベーゼヴァンスとビンデバルト伯爵は拘束された。さらに、ジルヴェスターとカルステッドがやってくる。なんと、ジルヴェスターの正体はマインたちの住むエーレンフェストの領主、アウブ・エーレンフェストだったのだ。そして、ジルヴェスターがマインに渡したお守りは養子縁組の証で、マインは領主の養女となる。これによりベーゼヴァンスとビンデバルト伯爵は、領主一族へ危害を加えた罪で処刑されることとなった。

襲撃事件がひと段落ついた一方で、マインには大きな問題が残されている。この一件を丸く収めるためには、マインが今すぐジルヴェスターの養子になる必要があった。マインとその家族は、魔術で「今後一切家族としての関わりを持つことを禁ずる」という契約を結ぶことになった。マインは溢れ出た魔力で家族へ精一杯の祝福を送り、別れた。

貴族の世界

マインはローゼマインと名を改め、カルステッドとその第1夫人・エルヴィーラの子として、洗礼式を受け直すことになった。そして、洗礼式と同時に領主の養女となる。それまでの期間は、カルステッドの屋敷で過ごし、貴族の娘としての教育を受けた。
領主の養女となるにあたり、ローゼマインはフェルディナンドによる健康診断を受けた。結果、身体中で魔力が固まってしまっており、そのせいで頻繁に倒れるのだと判明する。固まった魔力を溶かす薬はあるが、虚弱なローゼマインが薬の材料を集めるのは非常に難しい。よって、フェルディナンドやカルステッドが入念に準備を行い、1年以上の時間をかけて素材集めを行うことが決定した。

ローゼマインの洗礼式の日、ローゼマインはフェルディナンド、ジルヴェスター、カルステッドの策略で、衆人環視の中魔力の多さを見せつける。さらに、神殿でベーゼヴァンスから不当な扱いを受けながらも、孤児たちを救おうと奮闘したことが語られ、エーレンフェストの聖女と呼ばれることになった。そのおかげで、領主の養女になることも貴族たちの反発なく、受け入れられた。また、処刑されたベーゼヴァンスに代わって、ローゼマインが神殿長に就任する。印刷業についても貴族たちに説明され、ローゼマインを主軸にエーレンフェスト全体で取り組むことが宣言された。

ローゼマインが居住場所を領主の城へ移すと、護衛騎士としてダームエル、ブリギッテ、コルネリウス、アンゲリカが付くようになった。側仕えも新しくリヒャルダとオティーリエが付く。

領主の養女になると、すぐに教育が行われると思いきや、家庭教師の授業が行われる予定もなく、ローゼマインは拍子抜けする。それは、ジルヴェスターの息子・ヴィルフリートのせいだった。同い年の2人の勉強の進度を合わせるために、ローゼマインは待たされていた。しかし、ヴィルフリートは授業を抜け出し、一向に勉強しようとしない。ローゼマインはヴィルフリートの新しい教育計画を作成し、環境改善を図った。

ローゼマインは、フェルディナンドから魔術の指導を受け、自分の騎獣を作れるようになる。秋の収穫祭はその騎獣に乗って、各農村を回った。収穫祭にはフェルディナンドは同行できなかったため、フェルディナンドの指示を受けたエックハルトと、ユストクスが同行した。ユスとクスは、リヒャルダの息子で、非常に有能だが趣味の情報集めのためには何でもする変人だ。収穫祭の途中、ローゼマインの固まった魔力を溶かす薬・ユレーヴェの素材採集を行う。しかし、不測の事態によって採集は失敗に終わった。

冬の素材採集では、フェルディナンドや騎士団の協力があり、無事成功する。
カルタやトランプ、聖典絵本だけでなく、ローゼマインの考えた商品を次々と売り出すギルベルタ商会は、貴族や平民の富豪の顧客が急増した。しかし、ギルベルタ商会は元々服飾関係の商会であるため、周囲の混乱もあった。そこでベンノは、妹のコリンナに商会を継がせて、自身は新しい商会を設立することにする。ローゼマインは新しい商会の名付けを任され、「プランタン商会」と名付けた。
また、トゥーリは、ギルベルタ商会の見習いになり、髪飾り職人を目指す。そうすれば、髪飾りの注文や納品の時、少しでもローゼマインに会えると考えたからだ。
ローゼマインは再びエーレンフェストに印刷業を広めるために尽力する。護衛騎士のブリギッテの実家であるイルクナーは林業が盛んとのことで、イルクナーに製紙工房を設立することになった。イルクナーはエーレンフェストの街とは違って、平民と貴族の距離が近く、製紙工房は順調な滑り出しを見せた。

その後、ローゼマインは初めてジルヴェスターの娘・シャルロッテと顔を合わせ、一緒にお茶会をしていた。すると、突然ヴィルフリートが乱入し、ローゼマインを罵る。護衛騎士に取り押さえられたヴィルフリートから話を聞くと、ヴィルフリートはヴェローニカから「ローゼマインとフェルディナンドの謀略によって陥れられた」という話を聞いたと言う。ヴェローニカは現在白い塔に幽閉されており、白い塔に許可なく入ることは禁じられている。ローゼマインたちから諭され、ヴィルフリートはヴェローニカの言っていたことが真実ではないと理解した。しかし、それでヴィルフリートの罪が消えるわけではなく、廃嫡の処分を受けることとなった。

秋の収穫祭で昨年採集に失敗した素材を採集し、ユレーヴェの材料が揃った。ローゼマインはフェルディナンドの手解きを受けながら、ユレーヴェを完成させる。
冬になり、シャルロッテの洗礼式が行われた。その夜、ローゼマイン、ヴィルフリート、シャルロッテの3人が城の廊下を歩いていると、賊の襲撃を受ける。シャルロッテの救出には成功するが、ローゼマインは何らかの毒を受け、賊に連れ去られる。毒のせいで声を出すことができず、手足も動かなくなった時、カルステッドの父であるボニファティウスが救出しに来た。その後フェルディナンドも駆けつけるが、ローゼマインは一刻を争う状態だ。フェルディナンドはローゼマインにユレーヴェを使用する。これによって、ローゼマインは2年間眠りにつくことになった。

貴族院での生活

ローゼマインが眠っている2年間、印刷業やローゼマイン工房に関する仕事は、フェルディナンドが引き受けていた。また、祈念式などローゼマインの魔力を必要としていた神事は、ヴィルフリートとシャルロッテが分担して行なった。冬の子供部屋での教育についても、シャルロッテと家庭教師のモーリッツが中心となり、ローゼマインのやり方を引き継ぐ形で続けられた。

ローゼマインが目を覚ますと、周囲の者たちは2年間で成長している。さらに、2年経って10歳になったローゼマインは、貴族院の入学を目前に控えていた。状況についていけないまま、急いで貴族院へ行くための教育を受ける。
そうして入学した貴族院で、ローゼマインは図書館に引きこもり、本に囲まれた日々を過ごそうと考えていた。貴族院の授業では、初日にテストが行われ、それに合格すれば、授業は終了だ。ローゼマインはフェルディナンドから、全ての授業に合格しなければ図書館に行ってはならない、と言われていたため、初日で全教科合格を目指していた。しかし、ヴィルフリートから「1年生全員が合格しなければならない」と言われてしまう。本のためなら周囲を顧みないローゼマインは、成績向上委員会を設置し、全生徒に死ぬ気で勉強するように迫る。その結果、エーレンフェストの1年生は全員が初日合格を果たした。

貴族院入学にあたって、ローゼマインには新しく側近がついた。側仕え見習いは、ブリュンヒルデとリーゼレータ。護衛騎士見習いは、コルネリウスとアンゲリカ、ユーディット、トラウゴット、レオノーレ。文官見習いは、フィリーネとハルトムートに決定した。

図書館へ足を踏み入れたローゼマインは、大量の本に感動し、英知の女神・メスティオノーラへ祈りを捧げた。すると、図書館に置かれていた人型のウサギのような2体の魔術具、シュバルツとヴァイスが動き出した。シュバルツとヴァイスは、過去の王族が図書館業務を行わせるために作った魔術具で、代々図書館司書が主として魔力の供給と管理を行ってきた。しかし、政変の影響で司書が減り、現在ただ一人の司書であるソランジュでは、シュバルツとヴァイスを動かすのに魔力が足りなかった。ローゼマインは、魔力を提供することで図書館の運営を助け、ソランジュと仲良くなることにする。

シュヴァルツとヴァイスの一件などで、ローゼマインは最高学年に所属する第2王子・アナスタージウスと関わりを持つようになった。学生でありながら、王族の役割として貴族院の管理も行っているアナスタージウスは、次々と問題を引き起こすローゼマインに、苦言を呈する。ローゼマインの貴族院での行動に関する報告書を受け取ったフェルディナンド、ジルヴェスター、カルステッドは、エーレンフェストへの帰還命令を出した。

冬の終わり頃、ローゼマインは再び貴族院へ向かう。さらにローゼマインは1位の領地クラッセンブルクの領主候補生・エグランティーヌと親しくなり、エグランティーヌとアナスタージウスが互いに思い合っていることに気づく。ローゼマインの仲立ちによって、2人は卒業後に結婚することが決まった。

春になると、ローゼマインたちは印刷業に精を出し、貴族院で広めたローゼマイン考案の商品を他領へ向けても販売する準備を整える。また、注目されているローゼマインが他領に引き抜かれることのないよう、ヴィルフリートとの婚約を結ぶことを王が承認した。
そうしてあっという間に1年が過ぎ、ローゼマインたちは2度目の貴族院へ向かった。今年は、シャルロッテが新しく入学した。

ある日、騎士見習いの学生たちが素材採集のため、森へ向かった。すると、強い魔獣が出たと言って救援を求めてきた。その魔獣・ターニスべファレンは、特殊な黒の武器でしか攻撃することができない。神殿長でもあるローゼマインは、黒の武器を作るための祝詞を知っていた。それによって、辛くもターニスべファレンを倒すことに成功した。しかし、通常ならば学生が黒の武器を扱うことは禁止されていたのだ。報告を受けたフェルディナンドたちは、すぐさまローゼマインに帰還命令を出す。こうして、1年生の頃より遥に早い時期にエーレンフェストへ戻ることとなった。

ローゼマインが貴族院へ戻り、ターニスべファレンの件についての事情聴取を終えると、すぐに領地対抗戦の日を迎えた。エーレンフェストの騎士見習いたちは、それぞれの役割を果たし、昨年からの成長を見せた。全ての領地の競技が終了し、王からの表彰式が始まろうとした時、政変で敗北した者たちによる自爆テロが発生する。フェルディナンドやカルステッド、ダンケルフェルガーがすぐに事態の収集に動き、大事には至らなかった。

春の領主会議では、留守番をしていたフェルディナンドが呼び出しを受ける事態が起こった。その後、帰還したジルヴェスターはフェルディナンドに対して怒りを露わにしており、フェルディナンドも不機嫌な様子だ。王命により、フェルディナンドとアーレンスバッハの領主候補生で、ゲオルギーネの娘のディートリンデの婚約が決まったのである。アーレンスバッハに婿入りしたフェルディナンドが無事でいられる保証はない。ジルヴェスターが何とか理由をつけて断ろうとしていたところ、理由があったフェルディナンドが先に王と話をつけて、命令を受け入れてしまった。

慌ただしく婿入りの準備を整え、あっという間に迎えた秋、フェルディナンドは側近のエックハルトとユストクスと共に、アーレンスバッハへ向かった。別れ際、フェルディナンドは自身の持つ館をローゼマインに図書館として譲る代わりに、エーレンフェストを守ってほしいとお願いする。ローゼマインは、エーレンフェストを守ることを約束し、最上級の祝福をもって送り出した。

メスティオノーラの書

ローゼマインが3年生になり、貴族院へ向かうと、エーレンフェストでは、ヴェローニカ派の大規模な排除が行われた。これにより、エーレンフェストの多くの貴族が粛清される。

3年生から領主候補生の専門授業も始まり、ローゼマインは異例の速さで授業を終えていた。すると、アナスタージウスから呼び出しを受け、王族専用の書庫にある古い文献の判読を手伝ってほしいと頼まれる。王族は、古い文献からグルトリスハイトを入手する方法を探ろうと考えていた。

卒業式当日、ディートリンデは目立つために魔石を光らせようと、大量の魔力を使っていたため、真の王を選定する魔法陣が浮かび上がる。魔法陣は浮かび上がっただけで、作動しなかった。そのため、ディートリンデは王として力不足ということなのだが、現在の王を正当な王と認めない人々は、ディートリンデこそが真の王だと主張し始める。それに気を良くしたディートリンデは、調子に乗って王族に対しても無礼な態度を取る。通常ならば、不敬罪で処刑になるのだが、ディートリンデが少しでも真の王になる可能性があるのなら、と処刑は先送りにされる。
もし、ディートリンデが処刑されれば、婚約者であるフェルディナンドも連座で処刑されてしまうため、ローゼマインの心配は増す。そのため、何としてでもグルトリスハイトを見つけ出し、王族と取引してフェルディナンドを助けようと考えた。

文献から貴族院に点在する祠の存在を知ったローゼマインは、全ての祠を巡り、魔力を奉納した。すると、貴族院の上空に巨大な魔法陣が浮かび上がった。王族から現在最もグルトリスハイトに近いと判断されたローゼマインは、王の養女となり、成人後には第1王子・ジギスヴァルトの第3夫人になるよう命令される。その代わり、養女となるまでの1年の猶予と、フェルディナンドの連座回避など、好条件を引き出すことができた。

ローゼマインがエーレンフェストの領主候補生として最後に過ごす冬、貴族院が始まると順調に授業をこなしていた。すると、シュバルツとヴァイスがローゼマインの手を引き「じじさま」に魔力を注ぐように言う。連れてこられたのは、図書館にあるメスティオノーラの石像の前だった。そして、石像の魔石に魔力を注いだ後、ローゼマインは忽然と姿を消した。

皆がローゼマインの安否を心配していた頃、ローゼマインはじじさまと呼ばれる存在・エアヴェルミーンと対面していた。ローゼマインが何らかの影響で成長を阻害されていると言ったエアヴェルミーンは、育成の神アーンヴァックスの力で年相応の姿に成長させる。また、エアヴェルミーンに言われるがままメスティオノーラの英知を得たいと祈ったローゼマインの脳内には、処理しきれないほど膨大な知識が流れ込んできた。その中には、ゲオルギーネがエーレンフェストを奪おうとしている方法に関するものもあった。しかし、その内容は3〜4割が欠けてしまっている。エアヴェルミーンによると、10年以上前に祠を巡って魔法陣を浮かび上がらせた人物がいたと言う。その者が残りの知識を持っているとのことだ。そして、それはフェルディナンドのことだと判明する。魔力が枯渇しかけているユルゲンシュミットを救うため、エアヴェルミーンはローゼマインにフェルディナンドを殺害し、全ての知識を得た真の王になるよう指示する。しかし、ローゼマインはその指示を拒否して帰還した。

貴族院に戻ってきたローゼマインは、急いでジルヴェスターに話をする。メスティオノーラの書によると、各領地の礎がある場所は、神殿の図書室と繋がっているのだ。よって、ゲオルギーネはそのルートを使ってエーレンフェストの礎を奪いに来る可能性が高い。防衛のための会議を行なっていた時、ローゼマインの脳内に毒を受けて倒れるフェルディナンドの姿が浮かぶ。ダンケルフェルガーに協力を要請したローゼマインは、すぐさまアーレンスバッハへ向かった。
アーレンスバッハはランツェナーヴェの者を引き入れていた。到着早々アーレンスバッハの礎を奪い、アウブ・アーレンスバッハとなったローゼマインは、間一髪のところでフェルディナンドの救出にも成功する。その後は、フェルディナンドが指揮を取り、ランツェナーヴェのものたちを掃討した。しかし、その一方でエーレンフェストはゲオルギーネたちの襲撃を受けていた。
アーレンスバッハの状況が落ち着き、ローゼマインたちはエーレンフェストへ援軍に向かう。防衛に備えていたエーレンフェストは、勝利を収めた。ゲオルギーネも、礎を奪おうと侵入したところをジルヴェスターに捕えられた。

それぞれの功を労っていたところ、貴族院に怪しい者たちが侵入しているという情報がもたらされる。ローゼマインやフェルディナンドが貴族院へ向かうと、そこにはランツェナーヴェの者やディートリンデ、そしてラオブルートまでもがいた。彼らはランツェナーヴェの王・ジェルヴァージオをユルゲンシュミットの王にしようと画策していたのだ。エアヴェルミーンもまた、王として魔力を満たす意欲があるジェルヴァージオを王にしようと考える。そのために、エアヴェルミーンはフェルディナンドを排除しようとする。ローゼマインが「助けてよ、神様!」と強く願うと、メスティオノーラがローゼマインの体に憑依した。メスティオノーラはこれ以上の争いを禁止し、血を流さない方法で王を決めるように指示した。
意識を取り戻したローゼマインは、ジェルヴァージオとフェルディナンドとともに3人で、誰が最も早くユルゲンシュミットに魔力を供給し、戻ってこられるかの競争をすることになったと告げられる。ルール通り魔力供給を行うローゼマインとジェルヴァージオに対し、フェルディナンドは魔力供給をすることなく暗躍し、ジェルヴァージオを閉じ込めることに成功した。

後日、王族と共に今後についての話し合いが行われる。ローゼマインは神から直接メスティオノーラの書を受け取り、その身にメスティオノーラを降臨させた女神の化身とされ、王族からも敬われる存在になった。話し合いの結果、ジギスヴァルト王子ではなく、エグランティーヌが王になることが決まり、グルトリスハイトが与えられた。このグルトリスハイトはフェルディナンドがメスティオノーラの書を模して作った魔術具で、次代に引き継がれることなく消滅する。それまでの間に、王族の中から正しい方法でメスティオノーラの書を得られる者を育てることになった。

一方、体にメスティオノーラを宿したローゼマインは、体に残った神々の力を放出するのに苦労していた。さらに、神々の力の影響で、平民時代の記憶を失ってしまったのだ。荒れたアーレンスバッハの土地に魔力を注いで癒し、魔力を使い切ることができた。
その後、フェルディナンドは記憶を見る魔術具を使って、ローゼマインにフェルディナンドが知る限りの平民のマインを見せる。記憶からフェルディナンドの抱いていた感情までもが伝わってきて、ローゼマインはフェルディナンドがマインたち家族を憧れの目で見ていたことを知る。

ローゼマインが記憶を取り戻すと、フェルディナンドは3つの選択肢を提示した。ローゼマインはその中から、フェルディナンドと婚約してアウブ・アーレンスバッハになる選択肢を選んだ。
アーレンスバッハは、新しいアウブの就任と共に「アレキサンドリア」と名を改めて再出発した。
夏になり、ルッツが成人式を迎えた日、ギュンターの家でベンノたちも集まり、食事をしていたところ、「ただいま、皆!マインだよ!」と言ってローゼマインが部屋に入ってくる。家族の関わりを禁じていた契約魔術は、エーレンフェストでのみ有効なもので、アレキサンドリアでは家族として過ごすことができるのだ。フェルディナンドが、ローゼマインの図書館の隠し部屋からギュンターの家へ繋がる転移陣を作成してくれたため、これからは定期的に家族で過ごすことができる。家族との温かい時間を過ごした後、ローゼマインは「またね、皆!」と言って別れた。

『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』の登場人物・キャラクター

マインの家族

マイン/ローゼマイン/本須麗乃(もとす うらの)

CV:井口裕香
本作の主人公。
前世では、3度の飯より本が好きな大学生・本須麗乃だった。図書館への就職が決まったところ、大地震で崩れ落ちてきた本の下敷きになり、亡くなった。
マインに転生してからは、本を欲するあまり、自ら作ることを決意する。
平民では珍しく魔力を持って生まれた身食いで、体が非常に虚弱。そのため、同年代の子供よりも体が小さい。麗乃がマインになってからは、生活環境を改善したおかげで、寝込むことが少し減った。
本が関わると後先考えずに突き進む性格。そのため、周囲の大人に怒られることが多い。唯一本よりも優先するのが家族のことで、ギュンターやエーファを守ろうとして魔力を暴走させた。貴族に攻撃した罪で処刑されるのを逃れるため、領主の養女となってからは、元の家族との細い繋がりを大切にしてきた。また、自分のために何かと手を尽くしてくれるフェルディナンドをしたっており、「家族同然」と言うようになる。弟妹を溺愛する傾向があり、実の弟のカミルはもちろん、シャルロッテやメルヒオールのことも溺愛している。
貴族になった際には、名前をローゼマインと改め、カルステッドとエルヴィーラの子として洗礼式を受けた。同時にフェルディナンドやジルヴェスター主導で、脚色された功績が語られ「エーレンフェストの聖女」と呼ばれるようになる。
貴族院入学後は、フェルディナンドの教育のおかげで毎年最優秀を獲得。エーレンフェスト全体の学力向上にも貢献した。
他領から注目を浴びるようになってからは、多くの婚約の申し入れがあったが、ヴィルフリートとの婚約を理由に断っていた。しかし、ローゼマインが最もグルトリスハイトを入手する可能性が高いとわかると、王の養女となるよう王命が下ってしまう。その後、メスティオノーラの書を手に入れ、女神を降臨させたことから「女神の化身」として王族よりも高い地位につく。
最終的に、フェルディナンドと婚約してアウブ・アレキサンドリアとなり、図書館都市の建設に邁進する。

ギュンター

CV:小山剛志
エーファの夫で、マイン、トゥーリ、カミルの父親。
エーレンフェストの街で兵士をしている。
家族を溺愛しており、「うちの娘は可愛い!」と公言する。その愛情は確かな者で、家族を守るためならば貴族相手でも退かない。

エーファ

9bty_0603_2011
9bty_0603_2011
@9bty_0603_2011

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