オペラ座の怪人(2004年の映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『オペラ座の怪人』とは2004年にアメリカで公開された、ガストン・ルルー原作の小説『オペラ座の怪人』を映画化したミュージカル映画作品である。19世紀のパリ・オペラ座、その地下には醜い顔をした怪人が住んでいた。彼は若く美しいコーラスガールのクリスティーヌに恋をしており、彼女の音楽の才能を見初めて姿を見せずに音楽を教えていた。怪人の目論見通りに主役に抜擢されたクリスティーヌだったが、幼馴染のラウルと再会を果たし恋仲になってしまう。そこから嫉妬に狂った怪人の復讐劇が始まっていく。

2人の愛

クリスティーヌは怪人から贈られた赤いバラを手に、怪人の住処でのできごとを語った。
怪人の顔や、自分に対する執着はクリスティーヌにとって恐怖であった。しかし同時に怪人の深い悲しみを思うと、そこに背を向けることは長年自分を支えてくれた存在を裏切ることになるのではないか。
クリスティーヌの心は不安と迷いでいっぱいだった。

ラウルはクリスティーヌに愛を語り、永遠にクリスティーヌを守ると誓い安心させる。クリスティーヌもラウルの愛にこたえ、二人は情熱的なキスを交わす。抱き合って愛を確かめ合っているうち、クリスティーヌの手からは怪人の赤いバラが零れ落ちていた。
物陰に隠れてその様子を見ていた怪人は、クリスティーヌが落としたバラを拾い上げ、悲しみに打ちひしがれる。愛を拒絶された悲しさは、やがて憎しみへと変わり、怪人は復讐を胸に誓うのであった。

仮面舞踏会

秘密の婚約

『イル・ムート』上演中の怪事件から3ヶ月が過ぎ、オペラ座では新年を祝う仮面舞踏会が盛大に行われていた。クリスティーヌはラウルと婚約し、婚約指輪をネックレスにかけて参加していた。人々は怪人が消え去ったと信じ、楽しく盛り上がっている。

怪人からの要求

そこへ突然怪人が登場。自分が書き上げたオペラ『ドン・ファンの勝利』を上演するように要求した。
そしてクリスティーヌに対しては、もてる才能をさらに伸ばしたければ自分にところに戻ってもっと学ばなければならないと諭す。
吸い込まれるように怪人に近づいていくクリスティーヌ。だが怪人がクリスティーヌの胸にかけられた婚約指輪を発見したとたん怪人の表情が一変する。
怪人は指輪を引きちぎり「離すものか!お前は私の物!」と言い捨て、床に仕掛けられた穴に消えた。

怪人の正体

ラウルは怪人を追いかけ穴に入るが、幾面にも鏡が張り巡らされた空間で怪人をとらえることができず、首に縄を掛けられそうになったところを間一髪でマダム・ジリーに救出される。マダム・ジリーは怪人の正体を知る唯一の人物であり、多岐にわたる彼の豊かな才能を崇拝し、その意向に沿って行動していた。
マダム・ジリーはラウルの求めに応じて、怪人の生い立ちを語り始めた。

マダム・ジリーがまだオペラ座の寄宿生でバレリーナになるのを夢見る少女だったころ、パリにジプシーサーカス団がやってきた。
そこに少年時代の怪人の姿があった。彼は「悪魔の落とし子」として、その醜い容貌を見世物にされていたのである。
屈辱と虐待に耐えかねた怪人は、人目を盗んで親方を殺してしまう。その現場を目撃したジリーは彼の逃亡を手助けし、オペラ座の地下に匿った。それ以来、オペラ座が彼の世界のすべてになったのだ。

墓所へ

クリスティーヌは怪人から逃れラウルと幸せになりたいと思っていたが、それが怪人に対する裏切り行為のように感じられ、両者の間で苦悩する。
クリスティーヌはラウルが寝ている隙に馬車を雇い父の墓所に向かうが、その御者は怪人が成りすましていた。一方目覚めてクリスティーヌがいないことに気づいたラウルは、急いで墓所へと向かう。

父の墓の前で揺れる思いを吐露するクリスティーヌに、父の墓から「音楽の天使」の声が聞こえる。
魂のまま「音楽の天使」の元に向かおうとするクリスティーヌ。そこにクリスティーヌを追ってきたラウルが到着し、「音楽の天使」の正体を暴く。
姿を現した怪人と一騎打ちになり、ラウルが怪人を追い詰めとどめの一撃を刺そうとした瞬間、クリスティーヌが止めに入り怪人の命を救う。二人は馬に乗って墓所を離れ、残された怪人は二人に戦争を宣言する。

最終決戦

ラウルの計画

『ドン・ファンの勝利』の上演に合わせ、ラウルは怪人をとらえるための計画を練っていた。
クリスティーヌが歌えば、彼は必ず観に来る。そこを武装した警察に包囲させようというのだ。
クリスティーヌは怯え、計画に反対するが、ラウルはこの異常事態を終わらせるためだとクリスティーヌを説得する。

ドン・ファンの勝利

『ドン・ファンの勝利』の舞台は幕を開けた。怪人は、ドン・ファン役の男性歌手ピアンジが袖にはけた瞬間を狙って襲い掛かりピアンジを殺害。自身がドン・ファン役になりすまし舞台で演じ始めた。それはオペラに乗せたクリスティーヌへの愛の告白だった。
ラウルやマダム・ジリーは様子がおかしいことに気づき始めていたが、舞台は一見何事もなく進行しており、成すすべもなく見守ることしかできない。
オペラはクライマックスとなり、舞台中央で近づく怪人とクリスティーヌ。キスをかわそうかというところで、クリスティーヌは怪人の仮面を剥ぎ取り、彼の醜い顔を目撃した観客は大騒ぎとなる。
怪人はシャンデリアを落下させさらなる混乱を作り出し、そのすきにクリスティーヌを連れて地下の隠れ家に逃亡した。

怪人の住処へ

オペラ座が混乱に陥る中、ラウルはマダム・ジリーから怪人の住処を聞き出し、クリスティーヌを助けに向かう。
一方怪人は奪った指輪をクリスティーヌに渡しベールを被せて、闇の世界の花嫁になるように求める。クリスティーヌはもう怪人の顔に驚くことはなかったが、真に歪んでいるのは絶望的な孤独から、他者を殺害することも厭わなくなった怪人の魂であることに気づき嘆く。
ラウルは、マダム・ジリーも足を踏み入れることが許されていない領域に踏み込んだ。そこには怪人の罠が仕掛けられていたが、危機一髪でかいくぐりやっとのことで怪人の住処に到着した。

愛と憎しみ

怪人と対峙したラウルであったが、隙をつかれ首に縄を掛けられてしまう。怪人はラウルを人質に取り、自分を受け入れるようクリスティーヌに迫った。
どちらの選択もできないクリスティーヌ。今まで抱いていた怪人への憐れみの気持ちは、憎しみに変わった。
しかしクリスティーヌには今まで怪人と積み重ねた時間があった。怪人の行動は許しがたいものではあったが、クリスティーヌにとっては音楽を教えてくれた恩人であり、父の代わりに自身の成長を見守り孤独を癒してくれる存在であったのだ。

「あなたは独りぼっちではない」
言葉にならない思いを伝えたいクリスティーヌは、真正面から怪人に近づきじっと顔を見つめ、情熱的にキスをした。生まれて初めて人の愛に触れた怪人は、衝撃を受けて身を震わせ、その目からは幾筋もの涙が零れ落ちた。

愛の行方

怪人はクリスティーヌからのキスによって本来持っていた優しさや思いやりを取り戻した。
ラウルを開放すると、クリスティーヌとともに去りここでのことをすべて忘れるように言って奥へと下がっていった。

1人残された怪人が、サルのオルゴールの前で歌を口ずさんでいると、そこにはクリスティーヌの姿があった。怪人がクリスティーヌへの変わらぬ愛を伝えると、クリスティーヌは婚約指輪を怪人に手渡し、ラウルとともに静かに怪人の前から立ち去った。
狂気のような支配欲は消え失せ、愛するクリスティーヌの幸せを願って、怪人は去っていく二人の姿を見送った。
やがてクリスティーヌを探すメグと警官隊が隠れ屋に到着するが、怪人はすでに秘密の通路を使って姿を消した後だった。主を失くした地下の住処には、サルのオルゴールと白い仮面のみが残されていた。

エピローグ

回想から目覚めたラウルは、落札したばかりのサルのオルゴールを亡き妻クリスティーヌの墓前に供えた。しばらくの間物思いにふけっていると、ふと墓の横に一輪の赤いバラが供えられえていることに気づいた。
バラには黒いリボンで、クリスティーヌの婚約指輪が結び付けられていた。ラウルが辺りを見回しても、そこに人の姿はない。
赤いバラは今も色あせることはなく、クリスティーヌへの愛を物語っているのであった。

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