Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀（サンファン）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

目覚めた魔剣

一方、西幽から逆賊・殤不患を追ってきた嘯狂狷は鬼鳥（キチョウ）と名乗る査察の役人と出会う。殤不患の西幽での所業に大悪党だと喧伝する嘯狂狷に対して鬼鳥は捜査に協力することを提案する。

そんな2人の暗躍を知る由もない殤不患は魔剣目録の一部を確認し修復するため町に向かっていた、そして蠍瓔珞は目録の断片から二振りの魔剣を回収し、打倒・殤不患に燃えていた。
修復のため落ち着ける場所を探してきた殤不患はなんとか目録の修復を終えたが、蠍瓔珞に奪われた二振りが喪月之夜（もづきのよ）と妖女・七殺天凌（ななさつてんりょう）だと気づく。どちらも人間の精神を支配する魔剣と悟った殤不患は浪巫謠とともに町から離れようとする。
しかし時すでに遅く、そこに現れたのは喪月之夜を携えた蠍瓔珞だった。そして住人たちを支配し、城下町は混乱に巻き込まれたのだ。蠍瓔珞がなりすましていた住民を助けようとした殤不患は猛毒仕込みの爪によって負傷し、絶体絶命の窮地に立たされる。なんとか浪巫謠によって戦線を離脱したが、一足遅くやってきた嘯狂狷と蠍瓔珞が激しい戦闘にもつれ込みさらに戦況は悪化する。
なんとか嘯狂狷を振り切った蠍瓔珞の耳元で怪しく語りかけるのはもう一本の魔剣・七殺天凌だった。蠍瓔珞は危うく手に取ってしまいそうになるが何とか思いとどまった。

一方そのころ、蠍瓔珞の猛毒に苦しむ伯陽侯を助けるべく仙鎮城の護印師たちは街中で治療を施していた苦行僧・諦空と巡り合ったのだ。行く当てもない行脚の道と言い、仙鎮城にたどり着いた諦空はその氣功術で伯陽侯を見事治療して見せたのだった。

共闘

そして、同じく蠍瓔珞の毒に苦しめられていた殤不患のもとに突然、凜雪鴉が現れたのだ。殤不患を追っていたがなかなか捕まらず方法を変えて、凜雪鴉は身分を偽り刑部に潜り込んでいたというのだ。彼の相変わらずの態度にあきれていた殤不患だったが凜雪鴉はあろうことか解毒に協力すると言い出した。解毒のための薬を作るには龍の角が必要だと知り、凜雪鴉と浪巫謠は龍が住まう鬼歿之地に向かうのであった。しかし鬼歿之地に関して凜雪鴉は「最近鬼歿之地の敷居が低くなった」と言い出したのだ。そう簡単に行き来ができない鬼歿之地にはいくつもの難所があるが、殤不患は龍の翼を片方切り落とし、食人族の村を全滅させ、そのことごとくを返り討ちにしたというのだ。
その頃、森の中で毒草を採集していた蠍瓔珞だったが禍世螟蝗の招集の狼煙が上がっていることに気づく、この東離においてありえないことだと訝しみながらも狼煙のほうへ向かっていくとそこには、嘯狂狷がいたのだった。

嘯狂狷は蠍瓔珞に一時休戦を申し出たのだ。嘯狂狷の目的は殤不患の首と魔剣目録が西幽にあること、そして蠍瓔珞の目的は目録を禍世螟蝗の御前に献上すること、お互いに利害が一致しているという嘯狂狷に蠍瓔珞は疑心暗鬼になるが、取引に応じることに。
一方、鬼歿之地に降り立った凜雪鴉と浪巫謠は、業火の谷を目指して歩き出していた。
目的の龍とついに対面した二人だったが、凜雪鴉は浪巫謠にある提案をする。それは凜雪鴉の話術によって龍を油断させ浪巫謠が物理攻撃をするというものだった。浪巫謠は自分たちを囮にして逃げるつもりでは、と訝しんだが凜雪鴉の計画通り話術によって龍を煽り地に伏せさせ、見事龍の角を手に入れたのだった。

しかし立ち振る舞いのすべてが悪だ、と察した浪巫謠は凜雪鴉に牙をむくのだった。惜しくも凜雪鴉に逃げられてしまう。
そのころ、不眠不休で調息を続けていた殤不患はすでに限界が来ていた。が、その殤不患に迫るかすかな足音が。危険を察知した殤不患はなんとか隠れていた場所から離れることができたが毒に侵され続ける身では遠くには行けず、すぐに衛兵たちに追いつかれてしまう。
そして西幽で出会って以来、嘯狂狷と再会した殤不患は蠍瓔珞と組んでいることに憤慨する。殤不患は無様にも追い込まれていくが、窮地を救ったのは解毒剤を作った浪巫謠だった。そして解毒剤を飲んだ殤不患は見事に意気を取り戻したのだった。

嘯狂狷の裏切り

殤不患はついに嘯狂狷に反撃を開始する。自らの毒から回復した殤不患に蠍瓔珞は毒使いの誇りを傷つけられたとして殤不患に全力で斬りかかる、しかし殤不患に敗れた蠍瓔珞はさらに嘯狂狷の裏切りによって喪月之夜を奪われてしまう。殤不患と嘯狂狷が戦闘になるかと思いきや、そこに現れた鬼鳥によってその場は丸く収まった。
一方、命からがら逃げ出した蠍瓔珞は浪巫謠に追われていたが、自分の力が及ばず禍世螟蝗の目的すらも遂行できないことに涙を流し、そのまま逃げた先で意識を失ってしまう。蠍瓔珞を追っていた浪巫謠は行きついた先で行脚僧、諦空と出会い、そこに殤不患も合流する。蠍瓔珞の居場所を問うたが諦空は答えず、「殺生もやむを得ない」と殤不患が言うと、「女を探すその意味は？」と問い返してきた。それを聞いた浪巫謠と聆牙は「人の命についてすら意味の在処を問うのか」と、牙を向けるのだった。
そして根城にしている小屋で目を覚ました蠍瓔珞は自分を助けた諦空に出会う。なぜ助けたのか問うが「あらゆる縁、目の当たりにした生と死のすべてについて意味を問いたださないと気が済まない」と諦空は言う。
その頃、蠍瓔珞が取り出した魔剣は喪月之夜だけではなくさらに危険な魔剣が他にもあると踏んだ嘯狂狷は、鬼鳥に対して「掠風竊塵はご存じか」と問い疑いの目を向けるが鬼鳥は見事にかわしてみせた。その後、鬼鳥（凜雪鴉）は殤不患を呼び出し、嘯狂狷についての情報を聞き出した。凜雪鴉はさらに、嘯狂狷は蠍瓔珞を襲撃するため西の街道に網を張っていることを殤不患に告げる。

魔剣の誘惑

一方、蠍瓔珞はせめて最後の魔剣だけは守り通し禍世螟蝗に献上することを目的とし逃げ惑うが、身を潜めていた西幽の衛兵たちに取り囲まれる。しかしその折、手にしていた七殺天凌から誘惑せんとする声が聞こえ、蠍瓔珞はその誘惑に負け剣を抜いてしまう。無双の力を手にした蠍瓔珞は次々と衛兵たちを惨殺、血を欲した七殺天凌に精神を支配された蠍瓔珞に嘯狂狷でさえも我を見失い、部下をも手にかけるのであった。
魔剣の輝きに支配され狂暴化した嘯狂狷に手こずる浪巫謠、七殺天凌に斬られ膝をつき殤不患は絶体絶命だったが七殺天凌の気まぐれにより難を逃れた。嘯狂狷を助けた凜雪鴉に甘さを見せる殤不患に対して憤慨する浪巫謠は殤不患のもとから去ってしまう。

悪夢にうなされていた蠍瓔珞は七殺天凌の誘惑に勝てず、さらに血を得るために命を削るように命令する。そして蠍瓔珞は村人たちを次々と手にかけ殺傷を続ける、そんな自分自身にこのまま七殺天凌の言われるがまま死体の山を築いてもいいのかと思案する。そしてそこに浪巫謠が現れる。西幽きっての楽師・浪巫謠は目を閉じた状態で蠍瓔珞の足音、鼓動、息遣いを感じながら蠍瓔珞を圧倒していく。しかし、そこに思わぬ邪魔が入る。

喪月之夜を携えた嘯狂狷と凜雪鴉の幻覚によって、浪巫謠は蠍瓔珞を取り逃がしてしまう。
あまりのふがいなさに七殺天凌の逆鱗に触れた蠍瓔珞は自らの血を差し出してしまう。

そして浪巫謠と分かれ蠍瓔珞を探していた殤不患の前に現れた蠍瓔珞は、どちらか勝ったほうが七殺天凌を手にすることができると条件を出す。彼女は全力で向かっていくがまったく歯が立たず敗北してしまう。そんな彼女に殤不患は命を奪わず立ち去るのであった。殤不患は七殺天凌が隠されている小屋に出向いたがそこに七殺天凌はなく、なんと苦行僧・諦空が七殺天凌を奪い蠍瓔珞を手にかける。「婁震戒」と名乗り七殺天凌を「姫」と呼ぶのであった。
殤不患と合流した浪巫謠は諦空を「やはりあの時殺しておくべきだった」と殤不患の甘さを非難する。そして再び殤不患のもとから去っていった。
一方、仙鎮城を襲撃した婁震戒は護印師たちを次々と手にかけて行く。それだけでは飽き足らず仙鎮城の衛兵たちを殺し、このままでは陥落してしまうと危惧した伯陽侯は城から逃げるのであった。
そして仙鎮城を破滅に追いやった婁震戒の前には闘志を滾らせる浪巫謠が待ち受けていた。目を閉じ優れた聴覚で音だけを頼りに婁震戒に手を休めることなく押し切っていくが婁震戒の策略により浪巫謠は負傷する。窮地に立たされた浪巫謠だったがどこからともなく飛んできた魑翼（みよく）を掴まされ戦いの場を去ったのである。二人の戦いに水を差したのは凜雪鴉だった。
そして傷が癒えぬまま浪巫謠は嘯狂狷を追い続けるが魔剣・喪月之夜の力で傀儡化された衛兵たちがそれを阻むのであった。人が変わったようにさらに卑劣な行動をとる嘯狂狷に手も足も出ぬまま押し切られていく浪巫謠の前に殤不患が現れる。喪月之夜を手にした殤不患は見事な剣さばきを見せ嘯狂狷を圧倒していく。

魔脊山の底へ落ちていく魔剣

殤不患は凜雪鴉、浪巫謠ととも逃げ出した嘯狂狷を追いかける。そして殤不患に対する恨みの念が頂点に達した婁震戒は魔脊山で迎え撃つのであった。凜雪鴉は喪月之夜で殤不患を支配し、彼を操るという詐術をもって婁震戒を追い詰めていく。殤不患は凜雪鴉、浪巫謠との見事な連携によって七殺天凌もろとも婁震戒は魔脊山の底へ落ちていき行方不明になってしまう。

そして丹翡たちの元へ戻った殤不患たちを待ったいたのは3本の神海魔械を持った伯陽侯だった。仙鎮城が再建されるまで魔剣目録にて預かってほしいというものだった。殤不患はさらに手放せなくなったと思いながらも渋々引き受け、剣をめぐる冒険譚は終幕したのである。

Thunderbolt Fantasy 西幽玹歌（劇場版2作目）

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』で活躍した浪巫謠の過去と西幽での物語。浪巫謠のボイス担当の西川貴教とテレビシリーズに引き続き劇伴を担当する澤野弘之がタッグを組んだ新曲「Crescent Cutlass」も劇中のあらゆる場面で流れるところに注目だ。

異能の歌声をもって生まれてきた浪巫謠は雪が降りしきる中、盲目の母親・咒旬瘖（ジュシュンイン）とともに厳しい修行に明け暮れていた。幼き体にはいくつもの傷ができ修行を激しさを物語っていた。「歌に生き、歌に死すならば、その声は劔と同然」という信条の元、母親の望みは、歌声を天無双のものにし宮廷へと送り込み、帝の御前に献上すること。
しかしある日、修行中に浪巫謠は喉を痛め寝込んでしまう。母親は浪巫謠の回復を願い祈りをささげる毎日だったが、次に目を覚ました浪巫謠の声を聞いた母親は絶望した。間違いなくそこにいるのは浪巫謠だったが母を呼ぶ声の変わりように、盲目のため姿が見えない息子の声をケダモノのようだと言い吹雪の中、浪巫謠を探しに行くのであった。しかし、不運なことに崖から足を踏み外して落命してしまう。
母を亡くし一人になった浪巫謠は家も何もかもを燃やし、母の形見である琵琶を携え流浪の身となった。町の酒場でなんとかご飯にありつき、そこで「この声が母を殺した」と後悔に苛まれる。そんな中、居酒屋の店主が「金がないならなにか置いていけ。それか何か演奏してみろ」と言い、浪巫謠は携えていた琵琶・聆牙を手に歌を披露するのであった。

店主はその歌に魅了され、浪巫謠に毎夜のように客寄せとして歌を披露させていた。自身の声を心無い人たちに利用されるようになった浪巫謠の心は次第にすり減っていた。そんな中、睦天命という一人の女性と出会う。かつて修行時代に鍛えた歌を彼女が歌っていたことに興味を持ち声をかける。
そして浪巫謠はいつも通り歌を披露していたが、酒場の店主は浪巫謠の歌を目当てにしていた客から高額の席料をとり、アヘン酒を振舞っていた。歌を聴くために強盗や追いはぎなどの犯罪を誘発したとして朝廷の役人である嘯狂狷によって捕らえられてしまう。

嘲風は楽師たちが命がけで演奏をしながら衛兵たちの攻撃をかわしつづけるという残酷な遊戯を楽しんでいた。しかし、嘲風の前で浪巫謠は歌を披露し母が夢見た栄達「天籟吟者」の称号を賜る。
そんなある日、浪巫謠は嘯狂狷から西幽各地で魔剣を強奪している大罪人・啖劍太歳（タンケンタイサイ）が宮中に帝が隠し持っている聖剣を狙っていると耳にする。
「天籟吟者」を得た浪巫謠はあろうことか睦天命とともに嘲風の前で歌を披露するのであった。しかしお互いに命を燃やし殺しあいながらの演奏をすることに戸惑いを隠せない浪巫謠。
二人が演奏し嘲風やほかの客たちが夢中になっている中、宮中内の別の場所では、啖劍太歳こと殤不患は宮中に侵入し、衛兵が守る聖剣、幽冥・萬世神伏（ゆうめい・まんせいしんぷく）を盗み出した。それを待っていたかのように演奏をしていた睦天命は皇女の前から姿を消し、それを追いかけるように浪巫謠もその場を去ったのだ。
歌に魅了され骨抜きにされた宮中のものたちの隙を狙って啖劍太歳の侵入を許したことに嘯狂狷は「浪巫謠、お前のせいだ」と憤慨。浪巫謠のあとを追ってきた皇女は嘯狂狷に「絶対に宮中より外に出すな」と命令する。

睦天命と殤不患のあとを追っていた浪巫謠は「わからない、本当に悪を成す者なのか？」と問う。そして浪巫謠のあとを追ってきた嘯狂狷とその部下たちを振り切るため、睦天命は強大な力を持ち大地を砕く萬世神伏を地面に突き刺し、大地を分断して何とか逃げ切った。
殤不患は皇帝が蛮族を従わせるために萬世神伏を振るったことで地形を変え、滅びたことを受け盗み出したという。その事実を知った浪巫謠は「もう人と関わりたくない」と言って二人のもとを去ってしまう。行き場を失った浪巫謠はかつて母とともに修業した雪山へ戻ってきていた。

そのころ、殤不患と睦天命は今まで収集した魔剣たちを巻物にあつらえてもらうため天工詭匠（テンコウキショウ）に依頼していた。完成するまで身を潜めていたが、嘯狂狷が大勢の部下を連れて周囲を取り囲み二人は時間稼ぎをしている間に巻物の完成を急がせていた。次から次へと現れる敵に対して疲弊していた二人の前に、浪巫謠が現れた。自分の存在意義を認識し、魔性の劔となる決意をする。

そして今まで鳴りを潜めていた琵琶・聆牙が変形し真の姿を表す。浪巫謠自身も「白から朱へ」姿を変え、嘯狂狷をも圧倒する。巻物が完成しそれを手に三人でその場を離れたが、逃げた先には村人に扮した禍世螟蝗の一派である蠍瓔珞と玄鬼宗の姿が。これ以降、浪巫謠は殤不患たちとともに行動をすることになった。

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』の登場人物・キャラクター

主要人物

凜雪鴉（リンセツア）

CV：鳥海浩輔 / 宝塚版：紅ゆずる
二つ名 は「掠風竊塵」（リョウフウセツジン）。煙管を持った美少年で、物語前半までは「鬼鳥」という偽名を使っている。博識かつ狡知に長け、優雅な立ち居振る舞いで顔が広いが恨みを買うことも多い。その正体は悪名高き大怪盗だ。幻術や魔術に長けているため幾千もの人を欺き、陥れてきたのだ。そんな彼は剣術の腕も見事なものだが普段はひた隠しにしている。1期の終盤には殤不患に興味をもち、そのあともなにかと殤不患を追って現れる敵や物事に対して執着している。

殤不患（ショウフカン)

CV：諏訪部順一 / 宝塚版：七海ひろき
二つ名は「啖劍太歳」（タンケンタイサイ）。西幽をめぐり歩いてきた流浪の剣客。物語は主に彼の目線で語られることが多い。良くも悪くも大雑把な性格で、憎まれ口を叩くこともかなり多いが、実は義に厚い人情家だ。西幽から鬼歿之地（きぼつのち）を超えて東離に来たというのだから相当の力量の持ち主であるが、英雄好漢という言葉の通りまっすぐな人柄である。魔剣、聖剣、妖剣、邪剣を36振り収めた魔剣目録を持ち歩いている。「刃無鋒」という二つ名は捲殘雲が皮肉としてつけたものである。

主人公の仲間たち（第1期）

丹翡（タンヒ）