煉獄 弐(RENGOKU II)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『煉獄 弐 RENGOKU II The Stairway to H.E.A.V.E.N.』とは、ハドソンが開発したPSP専用のSFアクションRPG。プレイ人数は1~4人。前作『煉獄 The Tower of Purgatory』の続編で、よりグラフィックが美麗になっている。舞台は”煉獄”という巨大な塔であり、塔の中から目覚める戦闘用アンドロイド”A.D.A.M.”。彼は記憶がなく、この機械の身体とこの場所は何かを知る為、他の”A.D.A.M.”と戦いながら、頂上を目指す。

新参者のAIが死んだ傭兵部隊の隊長”GRAM”である事を知ったベアトリーチェは、亡き恋人GRAM復活に心血を注ぐようになる。今まで育ててきたデータを全て破棄し、カリキュラム内にGRAMの渡り歩いてきた戦場を再現することで、彼のための世界に作り変えた。
だが、AIがトレース出来るのは思考パターンだけで、特に戦闘に関わる思考のみであった。つまり、愛しいGRAM本人の思考、もっと言えば人間の思考をトレース出来る訳ではなかった。
ベアトリーチェにはそれは痛いほど解っていたことであるが、それでも僅かな可能性に賭け、ありとあらゆる手段を尽くし、恋人GRAMの記憶を呼び覚まそうとする。忙しい彼女の望みは一つ。死した愛しい人にもう一度逢いたかったのだ。

【第五階層:貪欲者】

八階層ある煉獄も、半分を上り詰めて、後半へと差し掛かる。この第五階層は重力のフロアだけあり、所々に設置してある柱が上下し行動が制限される。行く手を阻まれたり攻撃を防がれたりするが、柱を上手く利用し捌いていく。敵の武装も「グラビティグレネード」という重力兵器、「プラズマグレネード」といった電子の剣などを駆使してくる。
半分の階層を上ったことで強さも増してきたGRAMは第五階層のボス「スピンクス」と対峙する。戦闘空間が細い通路で構成されており、マルスと同等の巨体をもつスピンクスは近距離は突進攻撃と殴打を繰り出し、遠距離からは装備した「グレネードランチャー」と「グラビティグレネード」をGRAMへと撃ち込んだ。
GRAMは負けじと武装を展開し、スピンクスの体力を0にして倒す事に成功する。スピンクスも隊長としてGRAMの事を知っていた。スピンクスはGRAMが指揮する傭兵部隊の中でも血の気が多い男で、倒した敵を必要以上に切り刻む残忍な性格であった。故に同じ部隊内でも異端の目で見られるようになる程、腫物の様に扱われていた。そして、スピンクスと仲間内の亀裂はある事件によって決定的になってしまう。その事件はスピンクスの仲間であるマルスがAIセルの事故で死亡した事が発端となる。マルスが死んだことによって、彼のAIセルを仲間である男が奪い逃走。それに対してリカオンとミノスは激怒し、裏切り者となった男を追うが、二人とも返り討ちに遭って二人のAIセルも奪われてしまった。リカオンとミノスの死亡を受けて、隊長であるGRAMは裏切った男を討伐する事を残ったブリアレオス、アルクマイオン、スピンクス、スタティウスと自身を含めた5人で行うと提案。だが、裏切った男は自分自身を含めたマルス、リカオン、ミノスのAIセルを四つ所持している事と、強さで言えば隊長であるGRAMに匹敵する強さがあるとし、簡単に倒せない。そんな中スタティウスとスピンクスは相手が4つのAIセルを使うなら、こっちは5人いるから1人が残りの5つのAIセルで戦えばいいと、スタティウスとスピンクスはブリアレオスとアルクマイオンへ発砲。こうして、二人の裏切りによって敵討ちどころか、同士討ちを引き起こし、決定的に傭兵部隊を壊滅へと導いたのであった。
そして、A.D.A.M.となったスピンクスは満たされることの無い渇きのせいで、長らく狂気に囚われていたと言い、GRAMの手で解放される。スピンクスは待ち望んでいた解放の時を喜び、近いうちにGRAMが解放される事を祈り沈黙した。その際のやり取りで混乱するGRAM。解放とは一体なんなのか。自分達は死なず、時が経てば復活するのではないのかと思うGRAM。そのとき、マルスを倒した時からGRAMを苦しめていたノイズは消えていき、次第に浮かび上がってくるのはノイズが消えた事でより鮮明になった戦闘記録。そこには、死んだ傭兵時代のブリアレオスが倒れており、これが何時の戦闘記録なのか分からずGRAMは狼狽えてしまうのであった。

『A.D.A.M.誕生』

GRAMとベアトリーチェの奇妙な再会から三年経った。そして、遂に研究機関”デウカリオーン”の所長であるヴェルギリウスが、人間の身体を一切必要としないAIセルのみで構成されたアンドロイド「A.D.A.M.」を完成させたのだ。敵の攻撃により負傷してもAIセルが自力で再結合することで、自己再生が可能。また、読み込んだデータから自在に武装を展開する事で、既存の機械兵器よりも迅速かつ強力な力で戦場を制した。彼等の戦績は最強に近付いており、正しくデウカリオーンが求めていた”理想の機械兵器”であった。
そして、後は相応しいAIを組み込むことで、文字通り最強の人造兵士になる。ヴェルギリウスは最強に相応しいAIはどうするべきかを考えた時、部下であるベアトリーチェが育てていたAI、つまりGRAMに目を付けた。三年の月日を経たGRAMのデータは初期よりも洗練されており、間違いなく最強のAIだと断定。ヴェルギリウスはベアトリーチェに彼のAIを全A.D.A.M.にインストールするように指示をした。
だが、ベアトリーチェは愛しきGRAMの精神がどうでもいい無数のアンドロイドにコピーされることを快く思わなかった。そこで、GRAMの精神ではなく、あくまで彼が収めてきた戦闘思考のみを抽出したコピーを渡し再度彼女はGRAMの作業に戻った。彼女にとって、GRAM以外の事などどうでも良かったのだ。
かくして、不死身の身体に最強のAIを宿したA.D.A.M.達の活躍で、長らく続いた戦争は終結へ向かいつつあった。

【第六階層:貧食者】

徐々に第八階層に近付くGRAMは第六階層へ来る。第六階層はアイテムのドロップ数がかなり少ない場所だった。第六階層からは外の景色が分かり、荒涼した大地が見えた。「Ⅹ式地対全ミサイル」という素早いミサイルやチャージする事で敵へ誘導するビーム粒子兵器「素粒子ビーム砲」を駆使しする敵も現れだす。
だが、それでも強力なランカーを倒すGRAM。そして、待ち構えるのは、自ら移動はしないが多彩な武装で攻めてくる。固定砲台と言っても差し支えの無い巨大ボス「アルクマイオン」であった。ナパーム弾、プラズマカッター、素粒子ビームなどを一斉に撃ってくるアルクマイオン。だが、アルクマイオンがその場から一切移動していないと考えたGRAMは、自分もありったけの弾薬や斬撃をアルクマイオンに浴びせた。かくして、激しい弾幕戦はGRAMへと勝敗が上がった。やはりアルクマイオンはGRAMの事を知っていた。此処に至るまで自身の”隊長としての記憶”が蘇ってきているGRAMもアルクマイオンの名前を知っていた。かつて彼はGRAMに憧れを抱き、共に戦えることを喜び、時には彼に近付くため真似をしたりしていた。しかしどれだけ努力しても結局はGRAMに届く事は無かった。そして、アルクマイオンとGRAMの双方がA.D.A.M.となった今もGRAMの方へと勝利の軍配が上がった。GRAMはアルクマイオンが消えていった後、アルクマイオンの死亡を思い出していた。アルクマイオンは仲間であった傭兵から裏切りの攻撃を受けて、それが致命傷になり死んでしまったのだ。目の前で突如として起こった事であるが、GRAMは死なせてしまったアルクマイオンへ謝意の言葉を述べるのであった。

『塔の建設』

最強の人造兵士として誕生したA.D.A.M.は恐ろしいほど強かった。一撃で敵を倒し、損傷をしても直ぐに自己再生、そして高度な頭脳を駆使した戦闘を行える事が出来た。正に最強の人造兵士の名に相応しい活躍をしたことで、長きに渡った代理戦争は遂に終結を迎えた。だが、”戦う”という目的を無くした彼らを今度はショービジネスとして利用すべく、塔『煉獄』が建設されることになった。今度の敵は自身と同じ”最強の兵士”。彼等の戦いは人智を超える戦いであり、観戦していた人間達は熱狂をしていた。
しかし、そんな人間達は露知らず、研究機関"デウカリオーン"にはA.D.A.M.を造った真の理由、すなわち"隠されたもうひとつの目的"があった。
その隠された目的を設けていたのは研究機関デウカリオーン所長"ヴェルギリウス"。彼はいずれ人類が絶滅する事を予測していた。その根拠は度々重なる戦争によって地上が荒れ果ててしまい、人類が生存できる環境が失われてしまったことにあった。このままでは人類が絶滅すると考えたヴェルギリウスはA.D.A.M.を造り出した。A.D.A.M.は長年続いた戦争を終わらせる"最強の人造兵士"という事であったが、ヴェルギリウスにとってはA.D.A.M.は滅びゆく人類に代わる新しい知的生命体であった。そう、ヴェルギリウスの隠された目的とは、A.D.A.M.達を人類が滅亡した後の世界でも次世代の知的生命体として繁栄させる事にあった。
故にA.D.A.M.同士を戦わせ続ける煉獄は"ショービジネス"として建てたのではなく、未だ自我が芽生えてないA.D.A.M.を次世代の知的生命体として育む場所として建てたのであった。
そして、ヴェルギリウスはA.D.A.M.を知的生命体として育ませる管理を煉獄のマザーブレインに任せ、そのマザーブレインの名を"デウカリオーン"と名付けた。ヴェルギリウスに管理を任された”デウカリオーン”は、塔の中に閉じ込められているA.D.A.M.へのエネルギーの供給やA.D.A.M.自身の強化やメンテナンスをする傍ら、戦いの中でA.D.A.M.達に自我が芽生えてくるのを待つように見守り続けた。更に彼らが自我に目覚め外界へ出た後、独自のヒエラルキーを構築できるよう、複数の塔を造り戦闘能力の多様化と自我の個性化を促したのだ。
”A.D.A.M.を次世代の知的生命体として育ませる”、そんなヴェルギリウスの隠された目的を知る者は居なかったと思われたが、たった一人ベアトリーチェだけはヴェルギリウスの真意に気付いていた。この目的を利用すればGRAM復活も叶わぬ夢ではないかもしれない。彼女は独自に行動を開始した。

【第七階層:愛欲者】

第七階層へ辿り着いたGRAM。そこはこれまでの建造物と違い、前時代のヨーロッパ造りのフロアであった。ランカールーム以外は狭い部屋で構成されており、基本的にある一定の手順を踏まないと扉が開かないので少々ややこしいフロアだった。敵もガトリングガンの強化系である「回転式六竜連砲」、数ある武装でも最強クラスの量子兵器 「クァンタムキャノン」といったトップクラスの武装を使い分けてくる。だが、GRAMは、最上階へ目掛けて一気に敵を倒しに掛かった。
最上階では夕日に照らされるボスフロアで、第七階層のボス「スタティウス」が待ち構えていた。そして、スタティウスはA.D.A.M.の戦闘を観る人類は既に絶滅しているとGRAMへ告げた。最早A.D.A.M.達は戦う理由が無いが、自分達が楽しめばいいと魅せる戦いに拘りを持つ彼は近接戦のみで挑んでくるが、距離を離し遠隔武装で挑もうにも瞬時にこちらの近くへワープしてくる。
流石第七階層の番人であるが、それでも数々の戦いで強さを増していたGRAMはスタティウスを打ち倒した。スタティウスもまたこの永遠の戦いから解放されることを安堵していた。
散々言われてきた解放とはどういう意味か問うGRAM。だがスタティウスは答えず、GRAMが何時解放されるのかと笑いながら溶けていった。
思えばこれまでGRAMと対峙した各階のボスは、彼に倒される事を待っていたかのようだった。マルス、リカオン、ミノス、ブリアレオス、スピンクス、アルクマイオン、スタティウス。
死んだ筈の彼らがA.D.A.M.という機械仕掛けの身体になったという事は、あの忌まわしい事件を起こした元凶である奴もいるに違いないと確信を得るGRAM。既に彼は「傭兵GRAM」の記憶と心を宿していた。

『心の鍵』

これまでの功績からか、塔の一つの設計を任されたベアトリーチェは、人知れず細工を施していた。その細工とは、彼女が今日まで調整してきたオリジナルのGRAMの思考を1体のA.D.A.M.にインストールし、塔内に送り込むことであった。そのA.D.A.M.が各フロアの番人を倒した時にGRAMの記憶へのフラッシュバックが発動するように仕組んだ。そのフラッシュバックとはGRAMが死の間際に起こったAIセルを巡る事件の記憶を起こす因子であり、彼が持つデータとフラッシュバックが結びつき、最終的にはGRAMが復活の時を迎える筈と考えた。

「目覚めなさい…GRAM…」
「時は来ました…GRAM…私は…」

GRAMが自らの記憶と心、そしてベアトリーチェとの記憶を呼び覚ます日まで、彼女は永遠に彼を待ち続ける。

【第八階層:祝福者】

第一階層から着実に強くなってきたGRAM。そして、GRAMは彼が傭兵部隊の隊長であった記憶を思い出していた。これまで戦ったマルス、リカオン、ミノス、ブリアレオス、スピンクス、アルクマイオン、スタティウス。彼等七人の正体が自身の部下であり、GRAMが知る残りの一人にしてAIセル強奪事件を引き起こした”元凶”はこの最上層で待ち構えていると確信に至り、此処まで辿り着いたのだ。
最上層は、今までの無機質なフロアと雰囲気が明らかに違っていた。雲を超える高さがある最上層は青空がどこまでも広がる場所であり、草木や花に彫刻物が並んでいた。まるで、神話の世界の様な場所である。
敵は最上層という文字通り頂点に至るA.D.A.M.達ばかりであり、「MXデトネイター」「レールガン「疾風」」「レールキャノンD型」 「LOSAT-3 KEM」 等の強力無比な兵器を駆使していた。だが、此処に辿り着いたA.D.A.M.は短い期間で強力な力を得たGRAM。単身でトップクラスのA.D.A.M.達を次々と打ち倒していった。彼の中にある戦う目的は、只機械的に敵を倒す他のA.D.A.M.とは一線を越えていた。この記憶は何なのか。解放とは。全ての答えはここにあるに違いないと確信を得ているからこそ、戦えるのだ。
遂に最上階へ歩を進めたGRAMの前に広がったのは、緑に包まれ花が舞い散る庭園。ここが最終到達地点であった。辿り着いたGRAMの眼前には、深紅のA.D.A.M.が立っていた。
かつての戦友であり、あのAIセル強奪事件の引き金となった裏切り者、グリュプス。彼はGRAMに倒された筈だったが、A.D.A.M.の身体を得て文字通り蘇っていたのだ。
全ての決着をつけるべく、2体のA.D.A.M.は武器を交えた。煉獄史上最も壮絶な戦いは、GRAMが最後の一撃をグリュプスに叩きこむ事で決着が付いた。
だが、グリュプスはGRAMに倒されたことに本気で満足していた。グリュプスからしてみれば、憎い敵である筈のGRAMに倒されるのを自ら待ち望んでいたのだ。
何故かというと、実はGRAMは既に最上層へ何度か辿り着いたが、グリュプスを倒せる程の実力を持っておらず何度も最下層に送られていたのだ。グリュプスはA.D.A.M.は最下層に送られると負けた時点での記憶を失うと語った。そして、グリュプス自身はこの煉獄で一度も負けた事が無く、記憶を失った事は一度も無かった。更に、グリュプスはA.D.A.M.となった時点で人間であった傭兵時代の記憶をずっと持ち続けており、人間の精神状態のまま、限りない時間を生き続けていたと語った。つまり、自害が許される事なく、永遠ともいえる時間をグリュプスは人間の精神を持ったまま、煉獄の最上層の番人として生き続けていた事になるのだ。そんな、グリュプスが解放されるのには自分を超える力を持ったA.D.A.M.に倒されるしかいない。その可能性を持っていたのがGRAMであり、グリュプスはいつか自分を倒せる様にGRAMを負かし、最下層に送っていた。だからこそ今、グリュプスはGRAMに負けたことで永遠ともいえる時間に解放されるのを心から待ち望んで満足していたのだ。

そんな中、GRAMは誰が自分達をこんな姿で蘇らせたのか必死に問い掛けるが、既に身体も精神も満身創痍であるグリュプスはある人物の名前を呼んで、消えていく。

「ベアトリーチェ、終わったよ…これでいいんだろ?…もう眠らせてくれ。」

ベアトリーチェの間

グリュプスを倒したGRAMであったが、グリュプスは真相を語らぬまま消えていった。しかし、グリュプスを倒した事で、転移装置が現れた。これまでと同様に上の階層に行けば、自分が求める答えがあるのではと考えたGRAMは先へ進むことにした。

最後の転移装置を使って辿り着いた場所は、青空と草原が広々としており、花々が咲く自然豊かな場所であった。しかし、問題は此処が何処かという事である。GRAMは周りを見渡したその時、ある人物がGRAMの方へ向いていた。その人物は白いウエディングドレスを着た金髪の女性であり、穏やかな表情でGRAMを見つめていた。

彼女の元へゆっくりと歩いていくGRAM。近づいてくるGRAMに感極まったのか彼女は話しかけた。
「GRAM…やっとやっと会えましたね。ずっとずっと、アナタを待っていました。近付いて…顔を見せて。」
GRAMへと感慨深く喋りかける女性。この女性こそデウカリオーンの女性研究員であったベアトリーチェその人であった。

肝心のGRAMはこれまでの戦いを経て、仲間であった傭兵部隊の面々を思い出していたが、ベアトリーチェの事は記憶が完全に蘇っていなかった。その為にこの状況が理解出来ずにいた。
とはいえ、彼女の声は塔の最下層で聴いた謎の声の正体であると思い、何故自分はこんな姿になっていて、自分の仲間は自分と同じ化け物の姿になっているのかと、自分のこれまで抱いていた疑問をぶつけた。
その答えを知っているベアトリーチェは語った。端的に言えば、A.D.A.M.と塔の番人になった彼等は罪を犯していた。だからこそ、GRAMによって全員を倒される事で、犯した罪から解放されたのだという。そして、部下たちを倒し、GRAMは自身の記憶を取り戻し、ベアトリーチェは最愛の人であるGRAMに出会えたと言った。

ベアトリーチェはこうも言った。「貴方に倒される事で、皆救われたのです。」と。

だが、GRAMとしてはこんな事を聞いたところで納得が出来ない。GRAMからしてみれば、あの事件で自分と部下達は死んでそこで終わった命なのだ。
それでも、ベアトリーチェは亡き恋人であるGRAMにどうしても逢いたかった。その逢う方法が、亡き恋人を望まぬ化け物の身体に変えて、部下を再び殺させ、もう一度自分に逢うというもの。しかし、それは傭兵部隊や肝心のGRAMが心から望んだ事では決してない。望まぬ身体に望まぬ殺し合い。ベアトリーチェの事が記憶にないGRAMにとっては、彼女の方法は怒りでしかない。
激怒したGRAMはベアトリーチェに向けて攻撃を仕掛けた。

だが、その攻撃は不発に終わっていた。ベアトリーチェの身体は立体映像であり、本物の人間の身体では無かった。この世界にはもう人類は既に死滅しており、人間の心を持っている者はGRAMと私しかいないのだと、ベアトリーチェは告げた。

故にベアトリーチェは語った。自分はGRAMが復活するまで待っていた。GRAMが復活した今、彼が彼でいられる場所をプレゼントとして用意していた。それは”H.E.A.V.E.N.”。終わりなき殺戮の世界。
「そこで永遠にいましょう。二人でずっと。」

そうして、彼女はGRAMを終わりなき殺戮の世界に永遠に居続けようと誘うのであった。

AIセル強奪事件

主人公であるGRAMは、当時の大戦時代から活躍する名うての傭兵部隊を率いる隊長であった。そして、塔の番人として配置されていた8体のA.D.A.M.であるマルス、リカオン、ミノス、ブリアレオス、スピンクス、アルクマイオン、スタティウス、グリュプスはGRAMの部下として戦っていた。
彼等は、研究機関”デウカリオーン”からの依頼を受けて、AIセル製の強化スーツを着用しての戦闘実験に参加。ところがAIセルの事故でマルスが死亡した事によって、以前からAIセルの力に魅了されていたグリュプスは死亡したマルスのAIセルを奪い逃走する。
グリュプスの強奪に怒ったリカオンとミノスは彼を追いかけるが、部隊内でもGRAMに次ぐ実力者であったグリュプスに返り討ちにされ死亡。これによってグリュプスは強奪どころか仲間殺しという許されざる裏切り者となる。
GRAMはグリュプスの凶行を止める為に、残ったブリアレオス、スピンクス、アルクマイオン、スタティウスと自身を含めた五人でグリュプスを倒す事を提案。ところが、グリュプスに感化されたのか、血の気が多かったスピンクスとスタティウスも裏切り、GRAM、ブリアレオス、アルクマイオンへ攻撃を仕掛けた事により、同士討ちが勃発してしまう。
部隊内で最も実力があったGRAMは生き残り、裏切ったスピンクスとスタティウスを倒すが、ブリアレオスとアルクマイオンを護り切れずに二人ともスピンクスとスタティウスに殺されてしまう。しかも、どさくさに紛れてグリュプスはGRAM以外のAIセルを強奪し、その手中に収める。
とうとう、部隊内はGRAMと裏切り者であるグリュプスだけを残し、ほぼ壊滅状態になる。グリュプスは今度はGRAMを殺して、彼のAIセルを奪おうと襲い掛かる。接戦の末、GRAMはグリュプスに止めを刺されそうになる。
ところが、グリュプスを倒したいという強いGRAMの意志を受けて、GRAMのAIセルが変形し、逆にグリュプスを倒す事に成功するのであった。その後はAIセル自体はデウカリオーンによって回収されたが、肝心のGRAMはその時点で死んだかどうか分からず、助かった可能性は無いと考えられる。

H.E.A.V.E.N.

ベアトリーチェから終わりなき殺戮世界として誘われた”H.E.A.V.E.N.”は全100階から構成された煉獄よりも巨大な天に到達する程の超高度建造物。ベアトリーチェは此処では傭兵GRAMとしてずっと戦う事が出来る最高の遊び場と評している。
H.E.A.V.E.N.はABCと三つのエリアに分けられている。Aはこれまで所持していた武装が全て無くなり、エリクシルスキンで強化してきたパラメーターが初期値になった状態で転送される1階から33階構成のエリア。次のBはパラメーターは初期値になるが、武装はそのまま持ち越す事が出来る。階層は34階から66階。最後のCはBとは逆にパラメーターは持ち越しができ、尚且つレアアイテムをゲットできるエリアである。階層は67階から99階。そして、三つのエリアには煉獄と同様にH.E.A.V.E.N.の番人がおり、前作「煉獄 The Tower of Purgatory」に出てきたボスA.D.A.M.と戦える。内訳はAにはマルス、ブリアレオス、スタティウス。Bにはリカオン、スピンクス、グリュプス。Cにはミノス、アルクマイオン、前作主人公であるGRAM(今作のGRAMと別人)。
GRAMは三つのエリアを制することで、H.E.A.V.E.N.最上階へ転移出来る装置に乗り込んだ。
H.E.A.V.E.N.最上階である100階では、これまでの何処の階層よりも一番多くの敵A.D.A.M.が出現して、GRAMへと襲い掛かる。しかし、今のGRAMにとっては彼等は全くと言っていいほど脅威ではなかった。そもそも、此処にいるA.D.A.M.は大戦を終わらせた最強の機械兵器である。その最強の機械兵器の中でも、群を抜いて強かったマルス、リカオン、ミノス、ブリアレオス、スピンクス、アルクマイオン、スタティウス、グリュピスを倒し、更には煉獄よりも過酷なH.E.A.V.E.N.の三つのエリアを制した今のGRAMの強さは、最強を超えて、”無敵”に達していた。故にこの最上階の戦いは数は多いが、強さはGRAMからしてみれば完全な弱者であり、単なる掃討戦でしかなかったのだ。
最早、彼を倒せるA.D.A.M.はこのH.E.A.V.E.N.にすらいなかった。彼こそが”真の最強の機械兵器”と言えよう。だが、当の彼にとって戦いは虚しいだけであった。

エピローグ

H.E.A.V.E.N.最上階を制したGRAMはその先の部屋へと入っていく。辿り着いた部屋の中に鎮座するのは巨大な人の顔をしたコンピューター。マザーブレイン”デウカリオーン”であった。このデウカリオーンこそがこの煉獄を全て管理している。このデウカリオーンにはなんとベアトリーチェの人格が存在していた。そう、彼女はGRAMと永遠に生きる為にマザーブレインとして自らの人格を移植していたのだ。
ベアトリーチェは最早敵なしの強さを持つGRAMの為にこのH.E.A.V.E.N.を調整しなければと言い、気遣う。そして、最下層へと戻る為の転移装置を起動させる。文字通り、ベアトリーチェは永遠にGRAMの為にH.E.A.V.E.N.を稼働し続けるだろう。
だが、GRAMは何も言わず、ベアトリーチェへ武器を振り下ろした。GRAMはこれ以上の戦いを望んでいなかったのだ。
かくして、ベアトリーチェは消え失せた。すると、ベアトリーチェがそれまで居たところに一つのカプセルが落ちていた。GRAMがカプセルの中身を確認すると、そこにはエンゲージリングがあった。このエンゲージリングはベアトリーチェがGRAMの為に用意していたものだろう。

指輪を手にしたGRAMはそのまま、煉獄の屋上から外の世界を見下ろす。視界に入ってくるのは荒れ果てた大地、分厚い雲は光を遮る正に死滅した大地。人類が滅んだこの世界で彼は虚無の自由を手に入れたのだった。

『煉獄 弐』の登場人物・キャラクター

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