パンズ・ラビリンス(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『パンズ・ラビリンス』とは、「パシフィック・リム」「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督による、内戦後もゲリラ戦が続くスペインを舞台にしたダークファンタジー。母の再婚相手である軍人が暮らす山奥の砦にやって来た少女が、つらい現実から逃れるため童話の世界に浸っていく物語で、現実世界と少女が見る幻想世界が巧みに絡み合うストーリー展開。06年スペイン・メキシコ・アメリカ製作ながら第79回アカデミー賞で撮影賞・美術賞他を受賞。07年・日本公開。

『パンズ・ラビリンス』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「世の中は残酷なのよ。それを学ばなくては。たとえ傷ついても」

母のベッドの下入れたマンドラゴラの根をヴィダルに見つけられたとき、母のカルメンがオフェリアに言うセリフ。
現実に目をそむけて、おとぎ話の世界に夢中になる娘に言い聞かせる言葉だが、先の夫を戦争で失い苦労を重ねて再婚した母だけに説得力がある。だが、オフェリアにとって現実は辛い事ばかりだけに、母の言葉を素直に受け入れることが出来ないところも妙に納得してしまえる。彼女にとって、おとぎ話の世界に浸ることが唯一の心のよりどころだったから。

「豚は さばいてやる」

ヴィダルに掴まり拷問されそうになったメルセデスが、エプロンに巻き込んでいたナイフで縄を解き、彼を刺して口に突き入れる場面でヴィダルに向かって吐くセリフ。
「腐った豚め、あの子(オフェリア)に手出しはさせない。豚はこうやってさばいてやる」と言い放ってヴィダルの唇を一気に引き裂く、メルセデスの勇ましさが際立つシーンでもある。
唇を切り裂かれたヴィダルが、自分で傷口を縫う場面が後に出てくるが、この場面は見ているだけで生理的にヒリヒリしてしまいそう。

切り裂かれた唇を縫うヴィダル。

「無垢なる者の代わりに君は血を流した。それこそが最も重要な最期の試練だった」

オフェリアが死の間際に見たおとぎ話の世界で、彼女はモアナ王女として地下の王国に迎え入れられたとき、王が彼女に言うセルフ。
王だけでなく、パンも現れ「あなたの選択は正しかったのです、王女様」とお辞儀をする。現実世界では不幸にも命を落としたのに、夢見たおとぎ話の世界で王女になれたことを心から喜ぶオフェリアの笑顔が何とも愛おしくなってくる。

オフェリアが第1の試練で大ガエルをやっつける

オフェリアが第1の試練として、イチジクの大樹の下に巣食う大ガエルを退治する印象的な場面。
オフェリアは薄暗い地中で泥だらけになりながら大ガエルに立ち向かい、「私はモアナ王女よ。怖くなんかないわ」と勇気あるところを見せるところがいい。そして、知恵を働かせて見事に魔法の石を大ガエルに飲ませる。ぼってり太った大ガエルの気味悪さと言ったらないが、そんな相手に恐れずに向かっていく彼女がなんとも頼もしい。

第2の試練でペイルマンに襲われるオフェリア

オフェリアが第2の試練として、異様な風体の怪物・ペイルマンがいる部屋で黄金色の短剣を見つける場面。
妖精の助けを借りて短剣を手に入れることはできたが、パンから注意されたことを守らず、豪華な料理が並んだテーブルからブドウを口にしてしまいペイルマンに襲われる、ハラハラドキドキさせられる名シーンだ。
とにかくペイルマンの風貌が異様過ぎて一度見たら忘れられないって感じだし、妖精達を食い千切ってしまうところも実におぞましい。
オフェリアはペイルマンに気付いて扉まで必死に逃げるが、寸でのところで扉が消え、風前のともしびとなった彼女がいかに逃げ切るか、思わず手に汗握ってしまう。

妖精を喰らうペイルマン。

オフェリアに子守唄のメロディを口ずさむメルセデス

オフェリアの母の容体が急変し、彼女が母から離されて別の部屋で寝起きすることになったとき、ベッドの用意をしていたメルセデスに子守唄を歌ってとせがむ場面。
オフェリアの不安な気持ちを察したメルセデスが彼女を抱き寄せ子守唄のメロディを口ずさむんだが、優しくも物悲しいメロディが心に響く、胸に染み入るシーンだ。メルセデスがオフェリアに母にも似た愛情を抱いているのがすんなりと伝わってくる。

現実世界で死を迎えるオフェリア

ヴィダルに撃たれ虫の息のオフェリアを見つけたメルセデスが、彼女の傍らによって涙を流しながら以前に聞かせた子守唄を口ずさむ、実にもの悲しい印象深いシーン。
この後、オフェリアはモアナ王女として地下の王国に迎え入れられる自分の姿を見るだけに、現実世界での彼女のはかない運命にググッと胸を打たれる。

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