ふしぎ遊戯(玄武開伝)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ふしぎ遊戯 玄武開伝』とは、渡瀬悠宇による漫画、及びそれを原作とするメディアミックス作品で、前作『ふしぎ遊戯』で語られた玄武の巫女と七星士の活躍を紡ぐ物語である。大正時代の女学生・奥田多喜子は、嫌っていた父が訳した書物・四神天地書に吸い込まれる。本の中に広がる異世界で玄武の巫女となった多喜子は、巫女を守る七星士と共に玄武の召喚を目指す。玄武を祀りながら巫女と七星士を不吉と見なす北甲国皇帝一族、北甲国を狙う倶東国の軍勢との戦いの中、多喜子は巫女としての使命に目覚めていく。

『ふしぎ遊戯 玄武開伝』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

虚宿「オレたちそれぞれ大切なものがあるだろ?それを護ってるんじゃだめかな?」

「オレたちそれぞれ大切なものがあるだろ?それを護ってるんじゃだめかな?」は、虚宿のセリフである。
七星士であるが故に迫害を受け、「我々を忌み嫌う民を、何故守らなければならない?」と仲間入りに消極的な斗宿に、虚宿は言った。「国と形見とか、オレもそこまで考えちゃいねーけど、オレたちそれぞれ大切なものがあるだろ?それを護ってるんじゃだめかな?」との言葉で、妹のアイラを守る為に斗宿は七星士の仲間になり、多喜子についていくことを決意した。
この時点まで、虚宿、斗宿共に本名のチャムカ(虚宿)とエムタト(斗宿)を名乗り呼び合っていたが、このシーン以降は七星士名で呼び合うようになる。まずは自分の大事なものを守ることから始まり、彼らは最終的に北甲国の為戦うようになっていく。

ソルエンの死

女宿(左)を多喜子と七星士に託し、ソルエンは自爆した。

物語当初より、女宿と行動を共にしていたソルエンだが、中盤で自ら命を絶った。ソルエンは、12歳の時に父タウルと共に女宿を守る為の逃亡生活を送り、父を失う羽目になった。その運命を憎み、女宿を見殺しにしようとしたこともあったが、そんな自分を見て微笑んだ彼を生涯守ると決め、ずっとその幸福を願ってきた。
「玄武の力は借りない」と自ら父テムダン王と倒す決意をしてきた女宿が、多喜子らとの出会いで少しずつ変わっていくのを見たソルエンは、彼らとなら女宿も幸福になれると感じるのだった。
女宿を呼ぶとの名目で倶東国兵士の戦力を削ぎ、ソルエンは自爆により命を落とした。駆け付けた女宿に掛けた最期の言葉は「来るな」であった。拒絶ではなく、「多喜子や七星士と共に、これからの人生を歩いていけ」との願いを込めた言葉と言える。

ハーガスとテグの再会・「危宿」の誕生

再会を果たした弟・ハーガスの死に伴い、彼の持っていた字の残りを受け継ぎ危宿となったテグ。

玄武七星士の最後の一人・危宿として現れたハーガスだが、証の字は一部分だけだった。ハーガスは、囚われた兄のテグと証の字を分け合った状態にあり、どちらかが死ななくては危宿は存在し得ないと感じていた。テムダンと同じ不治の病に掛かっていたハーガスは、再会したテグを庇って死に、字をテグに託す。最後の玄武七星士・危宿がようやく誕生した。

女宿「オレの妻は生涯お前だけだ」

「妃になってほしい。オレの妻は、生涯お前だけだ」は、女宿のセリフである。
倶東国との決戦前、七星士やアユラ妃の計らいで多喜子と女宿は結婚式を挙げる。心が結ばれている女宿と多喜子を形式だけでも夫婦にしてやりたいという皆の思いやりと、二人の愛が垣間見えるシーンと言える。

玄武召喚と北甲国の救済

玄武召喚の儀式。

多喜子の死期が近いことを知った七星士は、北甲国の民と自分たちだけで倶東国と戦うことに決める。しかし、多喜子は北甲国に氷河期が訪れることを知っており、国を救いたいとの気持ちから玄武を呼び出す旨を女宿たちに伝え、玄武召喚の儀式が始まる。

永久凍土になりかけていた北甲国に天変地異が訪れ、倶東国軍の侵攻もあり、玄武召喚は北甲国を救う最後の砦となった。儀式が行われる玄武廟に倶東国の兵士が侵入し、七星士たちは超人的な能力を(巫女に預けた為に)使えなくなった状態で戦う羽目になる。虚宿が致命傷を負い、多喜子が結核の症状で何度も吐血をするという緊迫した状況の中、玄武が降臨する。
契約の果て、願いを叶える力を得た多喜子は第一の願いで北甲国に春を取り戻す。弱った状態で玄武に食われながら、それでも国やその場にいる人々の為に多喜子は第二の願いで北甲国にいる者すべてを回復させた。
旅の最中、皇族の加護もなく死んでいった子供や虐げられてきた人々を見てきた為に、多喜子は分け隔てなく皆を救うことを願ったのだった。結果、敵味方関係なく傷が癒され倶東国兵士は戦意を失って撤退した。北甲国は天災、人災から同時に救われたのである。

『ふしぎ遊戯 玄武開伝』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

七星士は自分の宿星と関わり深い星座の下に生まれた

七星士の誕生日は、自身の体に浮かぶ字(宿星)と関係がある。二十八宿は地上から見た太陽の通り道である黄道上の星座だが、星座占いで使われる星座も黄道上に存在し、斗宿はいて座、虚宿はみずがめ座と、自身の宿星に対応する日が誕生日として設定されている。
室宿は2月19日生まれで、十二星座においてはうお座の生まれということになる。これは適当に割り振ったのではなく、二十八宿の室宿(しっしゅく、またははついぼし)を構成する星の一部がうお座に掛かっている為と思われる。
玄武七星士に限らず、朱雀、青龍の七星士も自分の宿星と関わりある日に生まれている。

公式ファンブック『星ノ螺旋』のミニコーナー

公式ファンブック『星ノ螺旋』に、壁宿が見聞きした『玄武開伝』のキャラクターの動向を紹介するコーナーがある。ほのぼのとした内容が日記形式で記されており、緊迫した展開の多い『玄武開伝』における箸休めのようなコーナーと言える。

前作・『ふしぎ遊戯』との繋がり

『玄武開伝』には、前作『ふしぎ遊戯』との繋がりを示す描写が多々ある。前作を知るファンへのサービス的なシーンである一方、前作を知らない新規のファンでも置いて行かれることのない作りと言える。

えどまち
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@edono78

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