岩元先輩ノ推薦(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『岩元先輩ノ推薦』とは、椎橋寛による伝奇ロマン漫画。2021年3月号から『ウルトラジャンプ』にて連載され、『ぬらりひょんの孫』を描いた椎橋の作品として注目を集めた。物語の舞台は、明治時代である1910年代の日本。陸軍直属・栖鳳中学に通う岩元胡堂が、軍の訓令により全国各地で起こる超常現象を調査し、軍事利用可能な異能者を学園に推薦し、仲間として共に敵国・英国の異能者たちとの対戦に臨む様子が描かれている。美しい絵柄と悲哀やゾッとする怖さがあるストーリーが魅力である。

『岩元先輩ノ推薦』の概要

『岩元先輩ノ推薦』とは、椎橋寛による伝奇ロマン漫画。『ぬらりひょんの孫』を描いた椎橋の作品として注目を集めた。2020年3月30日に読み切りとして『ジャンプ+』に掲載された後、2021年3月号から『ウルトラジャンプ』にて連載がスタート。単行本は2022年3月までに3巻が発売された。また、3巻発売記念として、2022年3月18日~4月3日まで秋葉原にあるDUG GALLERY AKIHABARAにて限定グッズなどを販売するポップアップショップがオープンした。

TVアニメ化はされていないが、2巻の発売に合わせて、2021年11月19日にYouTubeにてコミックスPVが公開。主人公の岩元胡堂を福山潤、青沼静馬をファイルーズあいがそれぞれ演じている。

物語の舞台は、明治時代である1910年代の日本。陸軍直属・栖鳳中学に通う岩元胡堂(いわもとこどう)は、軍の訓令により全国各地で起こる超常現象を調査し、軍事利用可能な異能者を学園に推薦するという任務を遂行していた。しかし、岩元自身の目的は能力者の軍事利用ではなく、学園の隔離施設にて能力者を保護し、無暗に兵器化されないよう能力者を強化・育成することだった。そんな中、英国の能力者のリーダー的存在であるウォーターガンとの戦闘をきっかけに、英国の能力者が日本の能力者を引き抜こうとしていることが明らかとなる。岩元とその後輩は日本を敵国から守るべく、迫りくる英国の脅威に立ち向かっていくのであった。

美しい絵柄と悲哀やゾッとする怖さがあるストーリーが魅力である。

『岩元先輩ノ推薦』のあらすじ・ストーリー

黒い雪の降る村の調査

学長から「『黒イ雪』ノ降ル村ヲ調査セヨ」との訓令が下された超常現象を調査する岩元胡堂(いわもとこどう)は、噂の村を訪れていた。情報を集めようと、まずは湯ノ亀の女中に尋ねてみた。最初はピンと来ていなかったがすぐに薬堂のお屋敷の近くの花畑でよく見ることができるとの情報を得た。その情報をもとに花畑を訪れたが、そこには黒い雪は降っていなかった。代わりに雪が積もる中にも関わらず、たくさんの花が咲き誇っていた。
しばらくその花畑を歩いていると、急に足元の地面が崩れ岩元はその下の空間に投げ出され意識を失ってしまう。意識を失っていく中で、人影の存在に気付きそれと共に痛みが引いていく感覚を覚えた。
目を覚ますと薬堂の屋敷で横になっていたのだった。目を覚ますと怪我をしていたはずの箇所の痛みはすっかり消えていた。薬堂こと青沼製薬の主人は薬の効果だと言い、そのことを疑問に思っていた岩元に治療を見ていくことを提案する。すると、確かに青沼製薬には痛みを消す薬があり、多くの人々がそれを求めて薬堂を訪れていることが分かった。

その様子を見た岩元は薬堂の屋敷を後にするが、薬のことよりも意識を失う直前に地下で見た人物のことが気になっており、再び花畑を訪れる。地下への入口を探していると、自分が乗ってきた壊れた自転車を発見し、その近くに岩元自身が落ちた時にできた穴が入り口のようになっていた。その穴は地下牢のような石垣になっており、奥に進んでいくと意識を失う直前に見た少年を発見する。
その少年は、薬堂の孫である青沼静馬(あおぬま しずま)だった。岩元が「どうして君はこんなところに住まわされているのだ?」とシズマに尋ねると、「病気なので…」と答え近づこうとする岩元に「それ以上近づくと黒い雪が見える体になります」と忠告する。その騒ぎを聞きつけて薬堂と村の若者たちも集まり、薬堂からも長くここにいると体に毒だと忠告を受ける。
地下牢を後にした岩元は高熱や吐き気、頻脈に襲われ、呼吸困難に陥り倒れてしまう。その時、手の甲についた雪が熱く感じ、手のひらで受けようとするとその雪はまるで墨の黒く手のひらを覆った。そして、空を見上げると黒い雪が降っていた。その時にシズマが黒い雪に深くかかわっていると気付いたのだった。

シズマのもとに戻ろうとすると村の若者たちがそれを阻止するように立ちはだかる。まるで秘密を知ってしまった岩元を消そうとしているようだった。岩元はその若者たちの奥から出てきた薬堂に向かって「お前の薬はあの子の体から出ているものだろう!!」と問いかける。すると、薬堂は「シズマは世に出してはいけない」「シズマ自身が望んで地下牢に入ったのだ」と岩元に告げた。
シズマは自分の周りに痛みの記憶を消す不思議な花が咲く特殊体質で薬童子、神童として崇められていた。しかし、その花には副作用として幻覚と脱抑制症状、強い依存性があり、致死量を超えて摂取したシズマの両親が犠牲になったことがきっかけで地下にこもるようになった。そして、成長するごとに強まる力で村に被害を及ばさないよう、シズマは今もなお地下深くへと穴を掘り下げていた。

その話を聞いた岩元は抵抗するシズマの手を取り「君はわが学園に来るべきだ」とシズマを学園に誘うのだった。そして、シズマに昔の自分との共通点を見た岩元は推薦状代わりに自らの能力でシズマが咲かせた花を全て燃やし、学園には他にも能力者がたくさんいると言い後日迎えに来ることを告げた。

この年、陸軍栖鳳中学校にはシズマを含め44名の生徒が入学した。

縁切リノ鎌の調査

ある日、岩元にとある神社の御利益についての追加調査の訓令が出される。そこには前任者から詳細を聞くようにということに加えて、その前任者とは今後のためにも仲良くしておいた方が良いとの一言が記されていた。岩元は調査のために現地に向かい前任者・原町海(はらまちかい)の元を訪ねた。彼は岩元の1年後輩にあたる生徒だった。原町は岩元と共に書記長選挙に立候補していたが、岩元に負けて落選していた。そのことから、岩元を目の敵にしているような言動が随所に見られた。

2人が会話を交わしながら調査対象の神社へ向かっていると、建物の間の隙間のような場所に建てられていた神社を発見する。そして、岩元がその神社に足を踏み入れた瞬間、空気が変わったと恐怖を覚えるほどの何かを感じるのだった。それもそのはず、その神社の御利益とは縁切りであり、ご神木に人々の縁切りの願いが込められた鎌が無数に突き立てられていた。それだけであれば調査対象にはならないはずだが、どうやらこの神社では異常なほど願いが叶いすぎるということから能力者がらみの案件が疑われたため、岩元が派遣されたのだった。

2人が今までの調査内容についてそのご神木の前で話していると、2人の間に巨大な木の枝が落ちてきたのだ。これは、原町が岩元の名前を書いた鎌を気に突き立てたためであった。その後も枝が落ちてきて倒れた岩元と原町が手を取ろうとした瞬間、木に刺さった鎌が落ちてきたり、岩元が神社を出ようとすると頭上から強風により飛ばされたピアノが落ちてきたりと、岩元の身に次々と危険が迫るのだった。

その様子を見た原町は能力者が関わっていると確信した様子で岩元の身を狙う能力者を探すのだった。岩元も自らの能力を使い、なんとか危険を脱したところで原町が突き立てたばかりの鎌を発見する。その鎌を見た岩元は鎌を抜くと血相を変え原町を殴ったのだった。そして原町に「功績を焦って鎌を突き立てる前に鎌を抜いてみたのか」と尋ねた。それに対し、原町は「そんなことをすると呪いが消え調査対象が無くなるからするわけがない」と答えた。すると岩元は木に刺さっていた鎌を次々と抜き始める。すると、鎌が刺さっていた場所からは次々と血が噴き出したのだった。そして、木の隙間に刀を差し木の根元付近を破壊すると、なんと中から強力な能力者の死体が出てきた。その死体は昔自らの血を用いて”呪”をかけていた術師のもので、忌むべき記録のためどこにもその事実は残っておらず、死後もその血のみが枯れずに人々に利用されてきたというのが、この神社の強すぎる御利益の正体だったのだ。

調査を終えた2人は、お互いのことを認め合い岩元のことを目の敵にしていた原町も自分のことを認めてくれた岩元を慕うようになるのだった。

学園内の虫騒動

ある日、学園内の前線部隊の宿舎に巨大な虫の繭のようなものが出現した。異常な光景からすぐに能力者が関わっていることは分かったが、岩元が把握している限りそのような能力者は学園内にはいなかった。しかし、その騒ぎを聞きつけやってきた隔離施設を疎んでいる前線部隊の教官・鳩柳博(はとやなぎ ひろし)から、犯人捜しを命じられてしまう。
命じられてしまった以上、犯人探しを始める岩元だったが隔離施設の管理を一任されている自分も知らない能力を持った生徒が隔離施設にいるとは考えにくい。また、ちょうど居合わせた前線部隊の権藤(ごんどう)や岩元の後をついて回っていた情報収集能力に長けた原町でさえ、隔離施設以外に能力者がいるという話は聞いたことがないといい、犯人捜しは行き詰ってしまう。
そんな時、雨男の佐々眼流雨(さざめ りゅうう)が気になる話を持ってくるのだった。佐々眼によると能力柄学園内の空気の違う場所を調べる癖があり、隔離施設の宿舎で時々強い雨が降る場所があるのだという。その話をもとに現場へ向かうと、空室のはずだった部屋の鍵が開いており、中に入ると密林に似せた環境が作られていた。
その部屋の通気口が破られていたことから、この部屋から蛹が出現した前線部隊の宿舎へと移動したことが推測された。また、虫が繭を作る場所は危険が少なく安心できる育ての親がいる場所などが挙げられることから、前線部隊に能力者がいるのではないかと考えられた。そして部屋の場所などから前線部隊の2年生で鳩柳のお気に入りでもある岡野三郎(おかのさぶろう)が有力な犯人候補として挙げられた。

岩元・原町・権藤の3人は岡野のもとを訪ねると、岡野自身からついてきてほしい場所があると島をかこった岩を上った先にある洞窟へ案内される。そして、そこで岡野から自分が今回の犯人であり、実は自分の手で育てた虫が独自の色形に進化する能力を持っているということを告白される。岡野は昔から体格が良くある日村に来た軍部の人間から推薦を受け、家族の後押しなどもあり栖鳳中学校へ入学した。その後、たまたま前線部隊の鳩柳から気に入られ、学園内に自分と同じような能力者がいるとした後も、自らの育てた虫が軍事利用されることを恐れて素性を隠して過ごしていたのだった。今回の事件は、息抜きで散歩をしていた際にたまたま見つけた洞窟で出会った虫を岡野が愛しすぎてしまい、隠れて宿舎の奥地に暗室を作って育てていたことが発端だった。責任を感じた岡野は全てを打ち明けた後、処分は受けると言い、岩元も鳩柳に事実を報告するのだった。
しかし、鳩柳もお気に入りの生徒が処分になることは良しとしなかったため、今回の事件は繭は自然発生したもので優秀な学生が処分・対処したということで片付けられることとなった。蛹の処分自体は免れることができず、岡野も仕方がないと納得せざるを得なかった。
蛹の処分は岩元は自ら志願したこともあり、岩元が行うこととなった。岩元は蛹に火をつけた後、岡野に「繭の中の蛹は熱で温めると羽化が早まると聞いたことがある」と告げ、次の瞬間繭の中から羽化した成虫が出てきたのだった。そして岩元は岡野に軍事利用と言っても戦場で使うだけではない、軍事利用されるのが嫌なのであれば少し時間はかかっても自分自身で使い方を考えればいいとアドバイスするのだった。

屍人伝説の真相

岩元はいつものように超常現象を調査するためある街を訪れていた。今回の超常現象はとある地に伝わる屍人伝説だ。しかし、その超常現象は学長から調査するなと警告を受けた内容だった。しかし岩元は、関わるかどうかは自分自身で調べてみてから判断したいとの考えで調査を開始する。
まずはその土地に溶け込もうと喫茶店で食事をとっていると、そこに学園長の机から屍人伝説に関する資料を盗んできた天羽総一郎(あまばそういちろう)がやってくるのだった。その資料にはおびただしい数の人肉が付着した白骨死体が描かれていた。その地には夜な夜な屍人が徘徊する「右足湖の屍人伝説」という怪談があり、彼が持ってきたのはそれに関係する絵であった。
岩元と天羽の2人は伝説のもととなった湖の周りから調査を開始した。すると、湖で成り立つ観光地には似つかわしくない瓦斯工場が湖のほとりに建てられているのが目についた。その瓦斯工場を調査しようと中に侵入するための裏口を探していると、出入り口のところに葬式の参列者のような黒服を着た人たちが出入りしているところを見つけるのだった。様子をうかがっていると、本当に遺体が入った棺が向上の中に運び込まれていった。その棺を運んでいる人たちも葬式の参列者のような黒服を着ており、2人も黒い服を着てその人たちの後ろから潜入することに成功した。その後何とか遺体が運び込まれた工場の中への侵入も成功した2人は、そこで遺体が特殊な液に漬けて凍らせられ砕かれているところを目撃する。静かに潜入していたのだが、その様子を見た岩元は堪えきれず思わず「何をやってるんだ貴様ら!!」と声を掛けてしまう。しかし、工場の関係者は悪びれる様子はなく岩元が軍の関係者だと分かってからは工場の説明を始めた。その話によると、先ほどの液体は液体窒素でそれに遺体を漬けて凍らせていたのだった。どうやらこの村には昔から時折不可思議な子供が生まれてくることがあり、死後蘇ってくることがあるのだという。昔は、その屍人を取り押さえ再火葬することで事なきを得たらしく、時折そのような対処がなされてきたようだ。ただ、火葬しても骨が残ると蘇ってくるらしく、時が流れた今はその工場が誘致され、液体窒素で遺体を凍らせた後粉砕し、近くの湖に撒く完全葬が行われていたのだ。ただ、その粉砕した遺体も蘇りが起こっており、非常に中途半端な状態で湖岸に戻ってきてしまったのだった。
工場の関係者は「どうせ後で処理するだけですから」と答えていたが、それが岩元の逆鱗に触れることになる。「これは能力者の殺害じゃないのか」と工場の関係者に詰め寄り「こいつらはまだ途中なんだよ」と怒りをあらわにしているところを天羽に止められ工場を後にした。軍が能力者の調査をしてる目的は軍事利用のためであるため、天羽は岩元に「いいんじゃないすか…今回はダメな能力でしたで…」と告げるが、岩元は「確かにこのままではダメだな…」と言い、自分の管理下に置き遺体を回収するように上に進言することを決意するのだった。それに対して天羽は驚くものの「俺は能力者に優劣はつけん」という岩元の言葉を聞き、工場から盗んできた再生者の骨を渡してその場を後にするのだった。

人気女優の秘密

ある日岩元は不思議な女優の調査を命じられ、原町・天羽と共に浅草を訪れていた。その女優は天空橋須磨子(てんくうばし すまこ)と言い、熱狂的なファンから顔面を切り付けられたわずか2日後には何事もなかったかのように舞台に立っていたというのだ。また、岩元が調査に訪れたのもその事件から3週間ほどしか経っていなかったにもかかわらず、実際に見ても傷1つ見当たらなかった。原町はすぐに須磨子が何かしらの能力者であると疑っていたが、それに対して天羽は整形という可能性もあるんじゃないかと考えていた。岩元は、天羽の意見も受け入れつつ原町同様2日で傷が治せるかどうかに対しては疑問を抱いていた。そこで、3人は須磨子本人に直接会おうと劇場の楽屋を訪れるものの警備員に止められてしまう。しかし、軍服を着ていたことが功を奏し、中の女優達から招き入れてもらい楽屋の中に入ることに成功する。3人は早速須磨子を探すが見当たらない。そこで、岩元が女優に須磨子について尋ねると女優達も楽屋で須磨子の姿を見たことは1度もないと聞かされた。しかし、楽屋の出入り口には大勢の出待ちがおり、見つからずに楽屋から出ることはほぼ不可能である。そのため、3人は須磨子に接触するため楽屋の出入り口で須磨子が出てくるのを待つことにするが、警備員以外全員の退出を確認し、とうとう須磨子に接触することは出来なかった。
次の日も朝から楽屋を張っていたが須磨子は現れず、開演の時間を迎えてしまった。すると、そこには姿を現さなかったはずの須磨子が何事もなかったかのように舞台に立っていたのだ。その日も深夜の2時まで楽屋を張っていたが須磨子の姿は見られなかった。今日もダメかと思った時、楽屋の警備員が「そこまで須磨子に惚れてんのかい」と岩元に声を掛けてきた。それに対して岩元は「女優としては見ていない、人間として興味がある」と答えるのだった。それを聞いた警備員は「そういう目で須磨子を見る男は初めてだ」と言い、須磨子に合わせてやると岩元を給湯室へ連れて行った。しかし、その警備員は給湯室のことを須磨子専用の洗顔部屋だと岩元に伝えた。そこには煮えたぎった鍋しかなく、岩元も疑問を感じていると警備員の男が自分の顔をいきなりその熱湯につけたのだ。その際のものすごい音で寝ていた原町と天羽も駆けつける。

警備員の男が熱湯から顔を出すと、顔がまるで蝋のように溶けていた。男は蝋のように溶けだしたものを皿で受け止め、それをもって化粧台の前に座ったのだ。すると、手慣れた様子でそれを顔に塗り始めた。塗り終えるとそこには紛れもない、今まで探していた須磨子の顔になったのだった。つまり、須磨子は公演が終わると警備員に顔を変えていたため楽屋で須磨子の姿を見た者はいなかったのだった。須磨子は顔を作り終えると、3人に自己紹介をし始め自分が蝋人間であり、かなり昔から傷を治したり時代の流れに合わせて顔を変えて生きてきたことを告白する。その話を聞いた岩元は「今後も女優の道を歩まれることを推薦します」と須磨子に告げ楽屋を後にするのだった。

飛沫原との戦い

いつもは能力者に関する事象を“調査”せよと訓令を受け動いている岩元だが、この日は”討伐”の緊急任務を受けその現場へ向かっていた。任務によると、死傷者80人超の能力者による事件が起きたとのことだった。また、危険な任務であるため単独行動は禁ずると添えられていたため、今回も原町と天羽とともに行動していた。現場の料亭につくと外まで血の匂いがしており、中は静まり返っていた。中に入ると、床にたくさんの陸軍の軍人が倒れており至る所に黒い薔薇がまるで血しぶきのように咲いていたのだった。奥へ進むと体中に黒い薔薇を咲かせた者が待ち構えており岩元達に襲い掛かってきた。岩元はその者たちを傷付けないように素手や鞘にしまったままの刀で倒し、先へと進む。進んでいくと今までよりもさらに黒い薔薇が咲いており花園のようになっていた。さらに奥へと進むと、そこは料亭ではなく巨大な賭場になっており様子をうかがっていると岩元の背面頭上の方から男がとびかかってきたのだ。間一髪で男の刀を防いだ岩元だったが、不意打ちだったため男の刀が頬をかすめてしまう。すると、傷がついた箇所から先程から至る所に咲いていたのと同じ黒い薔薇が咲いたのだ。男の正体は人斬りの飛沫原建蔵(しぶきばら けんぞう)であり、黒い薔薇は飛沫原の能力であった。
飛沫原はまずは弱い奴からだと言い原町に襲い掛かるのかと思われたが、刀を向けたのは岩元に対してだった。案の定一撃は防いだ岩元だが、飛沫原はすぐに引き岩元に対して踏み込んで致命傷を与えるのではなく浅い傷を何度も負わせるのだった。すると、その傷口から黒い薔薇が咲き岩元の体を捉える。飛沫原の狙いは、岩元を倒すことではなく出血させて自分の能力で動きを抑えることだったのだ。飛沫原の能力である、血から咲く黒い薔薇は対象の体そのものあり無暗に摘むと傷が悪化し、出ようをもがくと薔薇の棘で体が傷つきさらに薔薇が咲く範囲が広がるという厄介なものであった。岩元の動きを抑えた飛沫原は先ほどの宣言通り弱い奴から殺ると言い、原町に刀を向ける。原町は間一髪で刀を躱す。すると、図らずも飛沫原を原町と天羽で挟む構図になった。2対1の有利な状況だと思われたが、飛沫原の能力は黒い薔薇を咲かせ動きを制限するだけではなかったのだ。黒い薔薇が咲いた死体を操作することも可能であり、死体も含めると数的にかなり不利な状況に追い込まれる3人だった。死体に動きを遮られる二人だったが、偶然刀を担いでいた天羽だけは刀を使うことができ、岩元と違い躊躇なく死体を切りその場から抜け出すことに成功する。天羽が時間を稼いでいる間に岩元は自分の能力で自分の傷口を焼き止血することで黒い薔薇から抜け出していた。自分から咲いた黒い薔薇から抜け出した岩元は周りに咲いていた黒い薔薇も利用し辺りを焼き、飛沫原を倒すことに成功する。しかし、飛沫原の言動に違和感を感じた岩元はとどめを刺すことはしなかった。

違和感は残りつつも事件は1件落着かと思われた次の瞬間、飛沫原からゴプゴプという水の音と共にどこかから英語が聞こえたという岩元。すると、倒れていた飛沫原が「わっちはやったぞ」「約束しただろうが連れてけよ」と口にし、その後全身から体液を吹き出した。そして、その花びらが飛び散った先に主犯と思われる異国の男がいたのだ。

男は岩元に自分はスペック厨だと言い、岩元の能力を讃えた。その男は「わっちを利用しやがったな」と文句を言っている飛沫原に近づき君のおかげで岩元に会えたと言いながら頭部に手をかざすと何らかの能力を使い殺してしまった。そして、続けて私はネプチューン・ウォーターガンだと名乗り、自分のもとで働かないかと告げた。ウォーターガンの目的は、岩元を大英帝国側に引き入れることだったのだ。しかし、岩元は飛沫原やその他大勢の人間を手にかけたウォーターガンのやり方に賛同できず、その誘いを断るのだった。その言葉を受けたウォーターガンは、こちらの誘いを素直に受け入れないのであれば無理やり連れていくだけだと言い自分の能力を使い、水で作った龍を出現させ岩元達に襲い掛かった。原町と天羽をかばいながら戦っているうえに、岩元の能力の火とウォーターガンの能力の水の相性が悪く押されてしまう岩元。それを見た原町は能力の相性が悪いこと、訓令にあった事件の実行犯飛沫原は倒したことを挙げ一度撤退し新たな戦力を加えるべきだと進言する。岩元もその言葉を受け入れ、3人は何とか賭場からの撤退に成功する。料亭の出入り口までの間に水はないはずだと安心したのも束の間、あたりに転がっている遺体の血液から龍が出現したのだ。ウォーターガンの能力は水だけではなく液体であれば何でも自由に操ることができるというものだったのだ。再び窮地に陥った岩元にウォーターガンは凡人ではなくもう少し優れた者を仲間にすべきだと告げ、天羽を手にかける。岩元は再び火の能力で攻撃を仕掛けるが、ことごとくウォーターガンの能力で消されてしまう。しかし、岩元の手元の炎だけは消えずに残ったのだった。それを見たウォーターガンは岩元の能力にさらに興味を示し、天羽たちを殺して早く行こうと岩元に告げる。その言葉が岩元の逆鱗に触れ、またウォーターガンの危険性なども鑑みて岩元はここでウォーターガンを狩ると宣言するのだった。

ウォーターガンとの戦い

先の戦いで、炎が少し残ったこともあり少しずつ炎がウォーターガンに近づきつつあったが、元の能力の相性もあり未だウォーターガン優勢の戦況は続いていた。その時、ウォーターガンに掴まれていた天羽がウォーターガンの腕を握り自分のことは自分でやるから大丈夫だと岩元に告げる。そして、「抜くんだよ。刀を。」と言いずっと結ったままだた髪を解いた。すると、天羽の髪が意思を持ったように動き出し、ウォーターガンを襲ったのだ。それまで天羽のことを無能力者だと思いなめていたウォーターガンだったが、これには少し驚いた様子だった。これまでずっと不利な状況だった岩元達だったが、このことでやっとウォーターガンに一矢報い戦況が変わるきっかけとなった。しかし、天羽のこの能力は制御不可能で使えば使うほど天羽の身も危険にさらされるという諸刃の剣だったのだ。自分の身を削って戦う決意をした天羽の姿を見て、岩元も奮い立つ。先程、水で消えてしまっていた炎が今度はウォーターガンの血の龍を焼けるようになっており、この土壇場で岩元が自らの能力を進化させたのだった。そして進化した岩元の炎がついにウォーターガンを捉える。

ついにウォーターガンを倒した3人だったが、能力を使いすぎたためか原町以外の2人はその場で倒れてしまったのだった。
学園に戻った岩元は学園長室を訪れていた。そこで学園長である橘城からウォーターガンが消えたとの報告を受ける。報告によると、岩元達のミスというわけではなく事後処理に向かった隊員たちの目の前で魔法のように消えたのだという。つまり、ウォーターガン単独で行動しているのではなく、英国にも仲間がおりその魔の手が日本に伸びているということだと橘城は岩元に告げる。そして、英国からの刺客たちを退ければ日本の能力者の未来も安泰だと言い、しかし戦力差は歴然だとも告げた。それを聞いた岩元は覚悟を決めた顔で学園長室を後にするのだった。

魔女の侵攻

ロンドンにあるレッドウッド女学校の旧校舎には夜な夜な魔女たちが集まって怪しいお茶会を開いているという噂がある。女学生たちがその噂について話していると、通りがかった男がコインを落とした。女学生の1人がそのコインを拾うと、コインに刻印された蛇が動き出し女学生の手を噛んだのだ。男はそのコインのことを旧校舎に入るのに必要なギミックコインだと言い、今あったことを忘れるよう女学生に言った。すると女学生たちは催眠にかかったような状態になり、男は旧校舎へと向かうのだった。男が校舎内の隠された入り口から中に入ると、そこには魔女たちが集まっておりその中にはウォーターガンもいた。彼らは日本にいる能力者の調査と捕獲を企んでいた。

岩元達は埼玉意見の山中にいた。その山中には仏像が大量にあり、それらはある能力者の力によるものだった。その能力は物体を複製できるというものであり、イギリスの魔女たちも真っ先に狙ってくるだろう能力であった。その仏像の中をしばらく歩いていると、何かによって溶けた仏像を発見した。その周りにはシャボン玉が飛んでおり、どうやらそのシャボン玉に触れたものが溶けているようだった。1つ1つの攻撃力は低いが、数が多く岩元の能力で燃やしても次々と飛んでくるため、キリがなかった。このシャボン玉は、英国の魔女魔法液と呼ばれる特殊な液で作られたものだった。次々と飛んでくるシャボン玉は岩元の能力で燃やすことが可能だが、岩元達が探す日本の能力者も同じ山のどこかにいるため広範囲を燃やしてしまうような炎は使えない。敵もそれが分かっていて、じわじわと岩元達を追い詰めるような能力で攻撃をしていた。すると、シャボン玉が突然狂暴化したのだ。割れたシャボン玉から妖精が出てきて大群で岩元達に襲い掛かってきた。窮地に追いやられたかと思われたが、それを見ると岩元は「群れが来るのを待っていたよ」と言い、能力で小さい炎を作り妖精の1つに投げた。すると、妖精から妖精へ炎が燃え移っていったのだ。それらは、ある1点に向かって伸びていく。その1点とはシャボン玉が飛んでくる元の場所、つまりシャボン玉を作っている能力者のものに繋がる道ができたのだ。そして、その道をたどって岩元達は無事シャボン玉の能力者を捕らえ、敵はいなくなったかと思われたが、そこにイグニィが現れる。

イグニィとの接触

埼玉県の山中にその男はいた。物を複製する能力を持ち、日々納得のいく仏像を彫るべく石像を複製しては彫るという生活を送っていた。そこへ英国魔女の仲間の2人が接触していた頃、岩元達はシャボン玉の能力者のクリスタルを捕らえ、そこにイグニィが現れたところだった。
イグニィは現れるなり、原町に向かって落とした硬貨を拾ってくれないかと声を掛けた。しかし、それが罠だと気付いていた岩元達は拾わなかった。しかし、イグニィはそれも見越して落としたコインとは別ではらまちの首元にもう1枚コインを忍ばせていたのだった。するとそのコインから蛇が飛び出し、原町の首元に噛みついた。岩元は刀でその蛇を倒すと、そのまま落ちていたコインも刀を使ってイグニィのほうへと投げ返したのだった。
イグニィと岩元が交戦していると、イグニィの背後に茨が現れその中からコピー能力者を捕らえた魔女が出てきた。イグニィはそれを見るとそのコピー能力者と少し会話を交わし、一緒に姿を消そうとした。岩元もそれを黙ってみているはずがなく、引き留めようとしたが途中で現れた茨を使う魔女の能力により阻まれてしまう。岩元の能力はウォーターガンとの戦いで敵に知られてしまっていたため、敵は岩元の足止めをすることを目的として複数人でチームを組んで作戦を遂行していたのだった。そのため、苦戦を強いられコピー能力者をこのまま連れ去られてしまうかと思われたが、そこに佐々眼が現れる。英国魔女たちは岩元以外の日本の能力者が戦力になるとは考えていなかったため、イグニィは計画を変更しその場に留まったのだった。

英国魔女との対決

両者の戦闘が始まると、まず茨を操る魔女ローズマリィと佐々眼の戦闘が始まった。ローズマリィの茨は鋼でできているため普通の武器で防ぐことは困難なのだが、佐々眼はその茨での攻撃を傘で防いでいた。佐々眼周りは湿度100%、つまり海からの風や高気圧と同じような効果があるのだという。そのため、鋼の茨もその湿度により錆びてしまっていたのだ。しかし、相手は英国魔女。霧の町ロンドンと言われるだけあり風で霧を吹き飛ばし攻撃してきたのだ。佐々眼にあたったかのように見えた攻撃だったが、その佐々眼の姿も雨の能力によって作り出された蜃気楼に当たっただけだった。

佐々眼の予想以上の手ごわさにしびれを切らしたローズマリィは、最後の手段として地中の茨の球根を使って攻撃をしかけてきた。その時、雨でゆるくなった地盤と佐々眼の周りの高気圧が重なり地面が地崩れを起こし、球根とローズマリィは一緒に地面の下に落ちていってしまった。こうして、佐々眼はロースマリィを倒したのだった。それを見たイグニィは岩元が隠していただけで日本にも戦える能力者がたくさんいると認め、今回は岩元達の勝ちということで「いつかお前らを俺の…家族にしてやる…」と言い残し岩元達に捕らえられていたクリスタル以外の英国魔女を連れて撤退したのだった。

ウォーターガンとの戦いで意識を失っていた天羽がようやく目を覚ますと、煙が漂う見覚えのない部屋にいた。天羽がどこか分からず考えているとカーテンから顔を出した1人の男子生徒に「やぁ起きたかい」と声を掛けられた。すると、ちょうど岩元と原町が様子を見に部屋を訪れて来た。久しぶりに目を覚ました天羽が岩元達と話していると、天羽の体に興味津々な研究棟の生徒たちが天羽に質問をするために行列を作っていた。どうやら天羽が寝ている間に天羽の髪の毛についていろいろと研究されていたようだ。その様子を眺めていた岩元は、天羽を外に連れ出し能力者たちがいる隔離施設に連れて行った。そして、隔離施設につくと棚の裏の隠し階段から地下に向かうのだった。そこには、まだ静馬のように学園に来たばかりで能力の制御が難しい生徒など能力を持ったたくさんの生徒が文字通り隔離されていた。岩元は、上には自分以外の能力者はまだ訓練が必要だと報告しており、実際は隔離施設に隠し生徒たちが無暗に兵器化されないように保護していたのだった。
ところ変わり、学園長室では橘城学園長が先の戦いでとらえた英国魔女クリスタルと話していた。英国魔女たちの情報について尋ねてはみるものの、そう簡単に味方の情報を話してくれるわけもない。すると、橘城は飲んでいた紅茶で紅茶占いを始めた。しかし、うまくいかずもたもたしているとしびれを切らしたクリスタルが正しい見方を示し、これは敵だらけという意味だと教えてくれた。すかさず橘情はそのことを褒めクリスタルをおだてると、クリスタルはまんまとのせられ様子がおかしかったコピー能力者に何をしたのか話しかけたところで我に返り途中で話すのをやめたのだった。その後、橘情が1人で資料を読んでいるところに橘情に呼ばれた岩元と原町が訪れて来た。岩元は橘情に英国魔女からは何か聞き出せたのか尋ね、橘情はそれに対してあまり聞き出せなかったが次に必要な助っ人は用意できたと告げる。すると、その助っ人と思われる人物が学園長室を訪ねて来たが、本の匂いが苦手だから隔離施設で待つとだけ言い部屋には入らずその場を後にしたのだった。その後、岩元と原町が隔離施設に戻るとそこには先程の人物鳳栖中学校4年生徒会副会長の奥秋雄弐隔離施設の後輩たちを従え待っていたのだった。

『岩元先輩ノ推薦』の登場人物・キャラクター

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