妖しのセレス(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『妖しのセレス』とは、渡瀬悠宇によるファンタジー少女漫画。1996年から2000年まで小学館の『少女コミック』にて連載され、2000年にはアニメ化もされた。天女の羽衣伝説を基にした物語であり、「天空お伽草子」というキャッチコピーで親しまれる。女子高生の御景妖は、双子の兄である御景明と16歳の誕生日に本家へと赴く。妖は御景家を滅ぼそうとする天女の、明は御景家の始祖の生まれ変わりであった。力を覚醒させた2人は引き離され、妖は命を狙われる。過酷な運命に放り出された妖は、元の生活を取り戻すべく奔走する。

『妖しのセレス』の概要

『妖しのセレス』とは、渡瀬悠宇によって描かれたファンタジー少女漫画である。1996年から2000年まで小学館の『少女コミック』にて連載され、第43回『小学館漫画賞』を受賞している。また、2001年に『少女コミック』の付録にて外伝が掲載された。2000年4月から9月まで、『WOWOW』にてアニメも放送される。
女子高生の御景妖(みかげあや)は双子の兄の御景明(みかげあき)と共に、16歳の誕生日に御景本家へと招待される。親族一同が集まる中、2人は箱に入ったミイラの手を見せられたことで、眠っていた力が目を覚ました。妖には御景を滅ぼそうとする天女セレスが、明にはかつてセレスの羽衣を奪って子を産ませたミカギが宿っており、二人は引き離される。御景家にとって災いであるセレスは命を狙われ、始祖であるミカギは重要な存在として守られることになる。御景家に雇われる十夜(とおや)は、唯一セレスの力が効かないという理由で妖を見張るように命じられる。妖は敵対関係でありながらも、命の危機が迫ると助けてくれる十夜に惹かれて苦悩する。
主人公の妖は天女の宿命に抗うため全国の羽衣伝説を調べに行くのだが、作中に登場するものは、全て実際の天女伝説を基にしている。その道中で様々な天女の子孫に出会い友情を育み、時には敵対して戦う。妖が命の危機に晒されながらも、元の生活を取り戻すために奔走するSFサスペンスである。一方で、愛をテーマに家族や友情など深い人間模様も描かれたファンタジー漫画でもある。

『妖しのセレス』のあらすじ・ストーリー

覚醒

高校生の御景妖(みかげあや)は、双子の兄の御景明(みかげあき)や友人たちと行った有名な占いで「あなたはこの先暗黒の星に支配を受けることになります」と言われる。占いの内容に腹を立てる妖だったが、皆との楽しい時間を過ごした。
翌日、2人は16歳の誕生日祝いで祖父の家へと招かれる。そこには親族一同が黒服で集まっており、2人は箱に入ったミイラの手を見せられる。その瞬間、妖の身体は震えて髪の毛は逆立ち、明は全身に切り傷が現れて気絶する。御景家は天女の子孫であり、先祖代々その血を守ってきた家系である。過去に何度も天女の呪力を覚醒させた娘たちがいたが、御景家を滅ぼそうとするために殺されてきた。妖もまた、天女セレスの生まれ変わりであったのだ。一方で明は、そのセレスの夫で始祖と言われるミカギの生まれ変わりであった。
妖は親族に首を絞められ殺されそうになるが、無意識に天女の呪力を発して逃げ出すことが出来た。妖は逃げた先で、十夜(とおや)と出会う。彼は記憶を失くしており、御景財閥が記憶を取り戻す手助けをする代わりに護衛人として雇われていた。御景家の追手が妖を見つけるが、そこに梧雄飛(あおぎりゆうひ)という妖と同じ年頃の少年が助けにやって来る。十夜は妖を見逃し、妖は雄飛と共に車に乗り込んだ。
雄飛は義姉の梧納涼(あおぎりすずみ)の家で暮らしていた。納涼は妖と同じく天女の血を引いており、念動力を少し使うことができる。妖の存在を感じ取り、雄飛を使って助けてくれたのだ。妖はしばらく梧家に身を置くことになるが、明を取り戻すために密かに祖父の家へと戻る。しかしそこには十夜が待っていた。そして祖父と父、従兄の御景各臣(みかげかがみ)と銃を手にした男達がやって来る。男達は妖に向かって発砲するが、妖の父が庇って死んでしまう。父を失ったショックから、妖は自我を失い強力な呪力を発する。しかし、なぜか十夜には呪力が効かない。いなくなった妖を追いかけて来た雄飛は、呪力に圧倒されながらも必死に名を呼び続ける。呼び掛けに反応した妖は気を失い、雄飛に抱きかかえられてその場から逃げた。
梧家の一室で目覚めた妖は泣き叫び、明を取り戻す為に運命と戦うことを誓う。

妖は自ら天女について調べるため、天女の伝説が残る埼玉県川越市の高校に通うことにした。母が気になった妖はこっそりと自宅へと戻るが、母は父が死んだことで精神を崩しており妖を襲う。追い詰められた妖は、天女セレスの姿に変貌する。セレスはこれまでも、御景家を滅ぼし奪われた羽衣を取り返すために何度も蘇っては殺されていたのだ。そして御景である妖の母を殺そうとするが、雄飛が止めに入り妖の姿へと戻る。母は意識を失ったまま救急車で運ばれていった。

御景財閥の次期社長である各臣は、C計画(セレスシャルプロジェクト)を企てていた。C計画とは明を統率者として各地にいる天女の遺伝子を持つ可能性を持つCゲノマーを集め、優秀な遺伝子を残そうとするものであった。入手したセレスの血液からDNAを採取し、覚醒するための薬を作ったのである。こうして全国各地のCゲノマーを見つけるため、極秘裏に薬がばら撒かれ始めた。そして十夜は記憶を取り戻すため、C計画に参入しCゲノマーを捕獲する任務を受ける。
妖と同じ高校の浦川由紀(うらかわゆき)はCゲノマーであった。高校教師として潜入した御景の部下に騙され、実験的に薬を飲まされ続けていた。浦川の呪力は炎で、学校では火災による事故が多発していた。妖も巻き込まれそうになるが、その度に十夜に助けられて敵でありながら心惹かれていく。その後、浦川は完全に天女の呪力を覚醒させる。しかし想いを寄せていた教師が薬を飲ませるために自身を騙していたことを知り、教師もろとも炎に包みこんで自殺してしまう。

妖が浦川を救えなかったことに落ち込んでいる中、納涼もCゲノマーとして御景財閥に目を付けられてしまう。雄飛と共に助けに行くが、御景の圧倒的な力を前に妖の力ではどうすることもできなかった。そして妖は自らの意志でセレスへと変わり、納涼を救う。雄飛によって元の姿へと戻るが、妖はC計画を止めるためにもセレスの力を借りることを決める。
一方その頃、明は少しずつ自身の心の変化を感じていた。

親友達との出会い

ある日、梧家に小学生のような容姿の女子高生来間千鳥(くるまちどり)が訪れる。千鳥は呪力により空に浮かぶセレスを目撃しており、交通事故で車椅子生活となった弟を勇気づけるために会って欲しいと頼み込む。妖達は栃木の天女伝説の調査も含め、千鳥の弟翔太(しょうた)に会いに向かった。栃木では御景財閥の薬が未知の病原菌の予防薬として出回っており、服用した翔太は熱を出して入院していた。そこには医師として十夜が潜入しており、再会した2人は密かに想いを深めていく。後日、院内で次々と不審な症状を出す患者が続出する。そして何名かは覚醒し、呪力をコントロール出来ずに周りに死傷者を出していった。翔太はCゲノマーに接触してしまい、命の危険に晒される。それを見た千鳥は覚醒し、天女の姿に変わる。十夜は千鳥を捕獲するが、千鳥のために自力で立ち上がろうとする翔太の姿を見て千鳥を解放して立ち去った。その他のCゲノマー達は御景に捕獲され、多くの被害を出したものの騒動は収まる。その後、千鳥も御景から身を守るために梧家に居候することになった。

命令に背いた十夜は、妖と明のために御景と決別することを決める。追手を振り切って明を連れ出そうとするが、明は変わり行く自身の心を恐れてとどまることを決めた。十夜は明から託された手紙を手に、妖の元へと辿り着く。妖は明が来なかったことを悲しむが、十夜が自分を選んでくれたことを喜んでいた。そんな時、心の中でセレスと妖は初対面する。妖はセレスに代わって羽衣を取り返すことを条件に、明を殺さないことを約束させる。
明は祖父に呼び出されて、本家へと訪れていた。そこで先祖代々極秘で当主のみが受け継いできた、ミイラ化した天女の御神体を見せられる。その瞬間、明は心を閉ざし完全に始祖へと成り代わってしまう。
再び明を連れて戻ると出て行った十夜を、妖は追いかけていた。そこにセレスの存在を感じ取った始祖が現れる。セレスとの再会を喜ぶ始祖だが、弱っていた明の身体が始祖の呪力に耐えられずに気絶する。そして各臣に保護された。

明がいなくなったことにショックを受ける妖だったが、雄飛達と共に羽衣の情報のあった人気アイドルGeSANGの司珠呂(つかさしゅろ)に会いに向かう。GeSANGの珠呂と司敬(つかさけい)は沖縄出身の幼馴染で、沖縄には羽衣伝説が残っていた。珠呂の実家には家宝で天女の紋章のある羽衣が保管されていたが、セレスは「羽衣ではありません」と肩を落とす。
その頃、全国各地で爆発や火事などの事故が多発していた。それは御景によって薬が全国各地にばら撒かれた影響であった。沖縄ではGeSANGのコンサートが開かれていた。珠呂はいつもとは違う敬の歌声に気が付く。その瞬間、会場の電飾が観客達の上に落下する大事故が起きた。敬はCゲノマーとして覚醒したのだ。しかし、しばらくして吐血して死んでしまう。密かに敬を愛していた珠呂は、悲しみと怒りで呪力を解き放って天女へと変貌する。珠呂の声が発する音色は強大で、セレスでも対抗することが難しかった。そしてセレスは、珠呂と心を通わせていた妖へと託す。妖は珠呂の気持ちを受け止めることで、珠呂は元の姿へと戻った。珠呂は涙を流して「愛してるよ、ずっと」と敬の亡骸を抱きしめた。

東京へと戻った妖は、白犬に化けた女子高生に襲われる夢を見る。その話を聞いた納涼は宮城の天女伝説に白犬が出て来ると話し、妖達を宮城へと転校させる。妖は転校先で、同じクラスの広部真矢(ひろべまや)と親しくなる。学校では立て続けに傷害事件が起きており、目撃談から犬の怨霊の仕業だと噂されていた。事件について調べていた妖は、全ての被害者が真矢と関わりがあったことに気付く。真矢は嫌いな人間に対して、無意識に呪力で白犬を出現させて襲わせていたのだ。セレスによって諫められた真矢は、今後は白犬を出さないことを誓った。
後日、納涼から十夜と連絡がつかなくなったとの報せが入る。妖は急いで東京へと戻り、1人で街中を捜し歩いた。その夜、連絡を受けた妖は負傷した十夜と再会する。御景の追手から逃げ、命からがら妖と会うことが出来たのだった。そのまま2人は一夜を共にする。
翌日、十夜は頭に痛みを覚える。頭痛と共に、なぜか海と顔の見えない少女の記憶が浮かび上がる。記憶を辿るため、静岡の三保へと十夜は旅立った。

十夜の記憶

妖は十夜とは別に、静岡の三保に伝わる羽衣伝説を調べに行く。天女が降り立ったと言われる松原という場所で、妖にそっくりな佐原美緒里(さはらみおり)と出会う。美緒里は1年前に失踪した恋人を今でも探して、思い出のこの地によく来るのだと言った。
翌日、十夜と落ち合った妖は松原近くを歩いていた。そこに美緒里が現れた瞬間、十夜は失った記憶を取り戻す。十夜は美緒里の失踪した恋人で、本名は瑞貴十夜(みずきとおや)であったのだ。そして記憶を取り戻した反動で、妖とのこれまでの記憶を失った。妖はショックを受けるが、十夜のために身を引くことを決める。

十夜は亡くなった祖父の「東京の御景家へ行きなさい」という言葉を思い出し、御景財閥へと赴く。全くの別人となった十夜を、各臣や始祖は迎え入れる。そして美緒里との新しい生活のために、再びC計画に参入することになった。一方、愛する十夜を失った妖は悲しみが消えず、心を閉ざしてしまう。セレスは閉じこもった妖の代わりに、御景家へと真相を確かめに行く。セレスが来たことを知った各臣は十夜に捕獲を命じるが、十夜は攻撃をためらってしまう。そこに美緒里が現れ、セレスと同じ姿の天女へと変貌した。美緒里は妖の従姉妹で、全ては各臣に仕組まれたことだと判明した。美緒里の母は、妖の16歳の誕生日の日にセレスの呪力により死んでしまう。幼くして父も失っていた美緒里は独りになり、妖を恨むようになる。各臣は美緒里の悲しみを利用して、Cゲノマーとして覚醒させる。そして妖が宮城へ行っていた頃、御景は十夜を捕えて偽の記憶を埋め込んでいたのだった。全てを知った十夜は咄嗟に「妖!」と叫ぶ。その叫び声に反応して、セレスは妖へと戻った。美緒里は妖を殺そうと追い詰めるが、十夜が助けに入る。美緒里は妖の大切な十夜を奪えなかったことを妬むが、復讐を遂げるために妖の目の前で自殺した。

妖は梧家に戻った後も、美緒里の死を引きずってずっと部屋に閉じこもっていた。そんなある日、十夜が梧家を訪れる。妖への想いは残っているものの、記憶が戻らない自分は会う資格がないと伝言だけ残しに来たのだ。妖との記憶、そして本当の過去の記憶を取り戻すために再び旅立つ。雄飛たちから十夜のことを聞いた妖は、少しずつ元気を取り戻していった。

京都府丹後に羽衣が残っているとの情報を手に入れ、妖と雄飛は羽衣探しを再開する。しかしそこには、明である始祖の姿もあった。始祖は十夜と離れた妖を大目に見て羽衣探しを手伝ってやるが、雄飛と関われば雄飛を殺すと脅しをかける。妖は雄飛と距離をとり、始祖と羽衣の情報を集めることになる。そして、ある工事現場の地下で化け物のような生物に遭遇する。それは昔、正常に使えなくなった羽衣を身に着けて変異してしまった神社の娘であった。化け物に殴られた妖は気を失い、セレスが現れる。セレスは哀れな娘を浄化するが、始祖に捕えられて御景家へと連れ去られた。
その頃十夜は、御景の追手から逃れて新潟の黒塚医院で治療を受けていた。素性も分からぬ十夜を黒塚医師は親切にしてくれた。ある日、十夜は妖が助けを求めている気配を感じる。黒塚に別れを告げ、しつこく追ってくる御景の手下を撒きながら急ぎ御景財閥へと向かった。
元の姿へ戻った妖は、Cゲノマー達と同様に迎え入れようとする各臣に必死に抵抗する。セレスを引き出したい各臣は妖を薬で眠らせ、十夜に使った記憶を操作する装置を使った。妖は混沌とする意識の中で、必死に装置に抵抗する。妖の強い生命力で装置は壊れるが、抵抗したことによる障害で妖は深い眠りへと落ちる。御景財閥へと辿り着いた十夜は、装置が破壊されたことにより妖との過去の記憶を取り戻す。建物内が装置の故障や十夜の襲撃で混乱する中、十夜は妖を連れ出した。
妖は夢の中で泣き続けていた。するとセレスが現れ、「ずっと呼んでるわよ」と妖に言う。意識の外で十夜の呼ぶ声が聞こえ、妖は目覚めた。2人は熱く抱擁し、これからは絶対に離れないと強く誓ったのであった。

長きに渡る因縁の終局

梧家に戻った妖と十夜は、梧家を出て2人で羽衣と十夜の記憶を探すことを伝える。妖はこれまで助けてくれた雄飛や千鳥たちの元を去るのは寂しかったが、それ以上にもう十夜と離れたくなった。皆に温かく見送られ、2人は新潟へと向かった。十夜はろくにお礼を言えずにいた黒塚の元に会いに行く。十夜を見た黒塚は無事だったことに安堵し、2人を招き入れた。十夜たちがこれから住む所を探すという話を聞くと、落ち着く先が見つかるまで空き部屋を貸してくれることになった。2人は黒塚に感謝し、それぞれ働きながら羽衣と記憶を探し続けた。
その頃、各臣は世界各地から集めた羽衣と思われる遺物を使って実験を行っていた。そしてCゲノマー達の呪力を利用し、遂に羽衣の一部を見つける。羽衣の復元が進み、各臣はいよいよC計画遂行のために動き出す。

妖と十夜は八丈島を訪れていた。少しずつ記憶を取り戻していた十夜は、遠い昔に八丈島で幼い妖に出会っていたことを思い出す。そして海辺で記憶を辿っていた十夜は、遂に過去を思い出した。
ある日、偶然八丈島を訪れていた老人は海辺で泣いている赤ん坊を見つける。赤ん坊は不思議なことに日に日に成長し、十日目には青年の姿となっていた。十の夜で成長した赤ん坊に老人は「十夜」と名付ける。老人は普通とは違う十夜に、島から出ない方が良いと伝えた。特段、十夜も島から出る考えはなかった。しかし、島に遊びにきた8歳の妖と出会う。妖は拾った貝殻を十夜にあげ、「またね」と言って帰ってしまう。そのまま7年間もの間、十夜は妖を待ち続けた。重い病気を患っていた老人は死の間際、「みかげ」という名だけ教えてくれた。独りになった十夜は初めて島を出るが、交通事故に合い「みかげ」という言葉以外すべてを忘れてしまったのだ。
妖は、ずっと探し続けてくれていたことを知り涙する。しかし不意に変身してセレスが現れる。そして「あと半年の間に羽衣を見つけられなかったら、あなたとの約束はなかったものとして私は御景家を滅ぼします」と2人に告げた。

妖と十夜は、羽衣伝説について洗い直すため梧家へと向かう。長旅で疲れた妖を休ませて、十夜は納涼と話をしていた。そこに御景からあるディスクが届き、始祖に腕をつかまれる千鳥が映っていた。翔太を人質に取られた千鳥は御景に捕らえられたのだ。十夜は妖に心配かけまいと、雄飛とともに千鳥の救出に向かう。何も知らず十夜を見送った妖は、急な吐き気に襲われた。十夜との子を妊娠していたのだ。セレスが「半年」と期間を設けた理由がこのためだと妖は気付く。
御景財閥へと乗り込んだ十夜と雄飛は、それぞれ千鳥と翔太の救出に向かう。しかし翔太を逃がした十夜の目の前に始祖が現れ、十夜は撃ち殺される。一方、千鳥は雄飛に救出されるが、追手に気付き雄飛の盾となって死んでしまう。最悪の結果となった救出劇に、妖は嘆き苦しむ。
これ以上の犠牲を出さないと誓った妖は、1人で御景財閥へと向かう。しかし呪力を抑える腕輪を取り付けられ、羽衣探しは難航した。セレスは各臣からC計画について聞かされる。そして、その内容に憐みの表情を浮かべた。セレスは「古代、私達がしたことと同じ。優秀な人間を選んで子を産み…優れた子孫を残したつもりだった。でも今、我々の子孫はほとんどいない」と言った。その言葉に各臣は戸惑いを隠せないでいた。

完璧に見えたC計画だったが、綻びを見せ始める。Cゲノマー達が次々と薬の副反応で死に始めたのだ。珠呂も同様に、日に日に身体が弱ってきているのを感じていた。そして残り僅かな命を、妖を助けるために使うことを決める。ソロコンサート当日、珠呂は天女化して最後の呪力を振り絞って妖に歌を捧げた。その音色は御景財閥の機能を停止させ、制御されていたセレスの呪力が解放される。同時に、ミカギの心の奥底で眠っていた明が目を覚ました。施設は崩壊し、各臣はセレスを連れて船上施設へと逃げ込む。しかしセレスは少しずつ弱っていた。天女は羽衣(マナ)なしでは長く生きられない生命体なのだ。その時、突如として何かが船上を明るく照らした。その正体は羽を生やして天使のような姿で舞い降りた十夜であった。船上に降り立った十夜は、羽を不思議な球体へと変化させる。それはセレスの羽衣(マナ)であった。セレスは思わず駆け出し、妖の姿へと戻る。2人は再会に涙し、熱く抱き合った。十夜は自身が羽衣(マナ)そのものであり、セレスの元へ戻るために作り上げられた存在だったことを語る。死んだと思われていたが、海の中で身体が再生されていたのだ。喜びも束の間、妖は困惑する。セレスでもある妖は羽衣(マナ)なしでは生きられず、十夜との子供すら産めないのだ。
その頃、何も知らない明は妖のために羽衣を探していた。船内を探し歩き、各臣が復元した羽衣を見つける。その瞬間、始祖が反応して羽衣を身に着け、生前のミカギの姿に変貌してしまう。ミカギは十夜との子を作ったセレスを恨み、妖を見つると背後から突き刺した。妖とセレスは薄れゆく意識の中で「生きたい…」と願う。十夜は羽衣(マナ)を外して、妖に差し出した。例え短い命となろうとも、普通の人間として妖と生きていくと決めたのだ。羽衣(マナ)を身に着けて完全体となって復活したセレスは、ミカギを葬ろうとする。抵抗するミカギだったが、羽衣の力で実体化した明によって抑えられる。明は「オレごと殺してくれ」と妖に頼む。妖は、セレスの心の中で反対する。セレスは不完全な羽衣を身に着けた明はいずれにしても助からないと諭し、妖は涙ながらに受け入れる。そしてミカギは明と共に倒されて、長きに渡る戦いは幕を閉じた。戦いの中で破壊された船は沈み行く。雄飛ら梧家の救助により、十夜たちは脱出する。御景財閥の者たちも撤退するが、各臣は船で最期を迎えることを決めて残った。

半年後、御景財閥の隠されていた数々の犯罪がニュースで取りざたされていた。そして雄飛達は、妖達に会いに八丈島を訪れていた。お腹を大きくした妖と十夜は幸せそうに過ごしている。十夜はそっと雄飛に「オレは多分長くない。もし、その時が来たら…」と告げて頷いた。木陰で居眠りしていた妖は夢を見る。セレスや千鳥、珠呂たち天女が笑顔で天へと帰っていく。そこに明が現れ、16歳の誕生日に渡すはずだったプレゼントのピアスを付けて嬉しそうに微笑んでいた。目覚めた妖は十夜に夢で見たことを伝える。2人は、生まれてくる子と共にずっと生きていくことを誓い合った。

『妖しのセレス』の登場人物・キャラクター

主要人物

御景 妖(みかげ あや)

CV:かかずゆみ
茶髪にロングヘアーでカラオケに行くのが好きな女子高生。御景明の双子の妹。16歳の誕生日に御景家本家でミイラの手を見せられたことで、セレスに変身して天女の呪力を覚醒させる。そのせいで御景家から命を狙われ、梧家にお世話になることになる。御景家を滅ぼそうとするセレスを止めるため、雄飛らの協力の下で羽衣を探して各地を回る。御景に仕える十夜に惚れており、敵と知りながらも想いを告げて恋人同士となる。数々の苦しみを経験しながらも、捕らわれた明を助けてかつての生活を取り戻すために懸命に戦う。

セレス

CV:岩男潤子
御景家の先祖にあたる天女。かつての夫ミカギに羽衣を奪われ、見つけることなく死んでしまう。その後、何度も御景家の娘として生まれ変わるがその度に殺されていた。妖の代で強い呪力を持って覚醒し、同時に生まれ変わったミカギ共々御景家を滅ぼそうとする。

十夜(とおや)

CV:小西克幸
赤い髪をした記憶喪失の美青年。記憶を取り戻す協力をしてもらうことを条件に、御景財閥で明の護衛者として働く。しかし敵として妖と相対する内に、惹かれ合い愛し合うようになる。正体は羽衣(マナ)が作り出した人間で、セレスの元に帰るために作られた。ミカギによって海に捨てられたマナが、5千年の時を経て変化した。その後赤ん坊の姿で浜に打ち上げられ、八丈島に住む老人によって見つけられる。たったの10日で青年へと成長したことから、十夜と名付けらえた。妖が8歳の頃に一度会っており、老人の死後に妖を探しに行った際に交通事故に合い記憶喪失となった。

御景 明(みかげ あき)

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