ふしぎ遊戯(玄武開伝)のネタバレ解説・考察まとめ

『ふしぎ遊戯 玄武開伝』とは、渡瀬悠宇による漫画、及びそれを原作とするメディアミックス作品で、前作『ふしぎ遊戯』で語られた玄武の巫女と七星士の活躍を紡ぐ物語である。大正時代の女学生・奥田多喜子は、嫌っていた父が訳した書物・四神天地書に吸い込まれる。本の中に広がる異世界で玄武の巫女となった多喜子は、巫女を守る七星士と共に玄武の召喚を目指す。玄武を祀りながら巫女と七星士を不吉と見なす北甲国皇帝一族、北甲国を狙う倶東国の軍勢との戦いの中、多喜子は巫女としての使命に目覚めていく。

『ふしぎ遊戯 玄武開伝』の概要

玄武の巫女・多喜子(下)と七星士の女宿(上)。

『ふしぎ遊戯 玄武開伝』とは、渡瀬悠宇による少女漫画、及びそれを原作とするメディアミックス作品であり、前作『ふしぎ遊戯』で存在が語られた玄武の巫女や玄武七星士の物語を紡ぐ、言わば前日譚である。朱雀と青龍を巡る前作(『朱雀・青龍編』と呼ばれることもある)に対し、『玄武編』との異名を持つ。
玄武、朱雀、青龍と白虎は四神思想と呼ばれる実際の伝承において、東西南北を守護する霊獣とされる。作中では北の玄武、東の青龍、西の白虎、南の朱雀が四つの大国で祀られており、異界から現れる娘・巫女により呼び出され願いを叶える力を与える。四神思想の他、黄道(地上から見た太陽の通り道)付近にある28の星座から吉凶などを占う二十八宿思想も取り入れられている。巫女を守る七星士は二十八宿と同じ字を体のどこかに持ち、巫女と共に神獣を召喚するのが役目である。

大正時代の女学生・奥田多喜子(おくだ たきこ)は、嫌っていた父の訳した経典・四神天地書に吸い込まれる。本の中で、玄武を呼び出す巫女となった多喜子だが、玄武を祀りながら巫女とそれを守る七星士を不吉の前兆と見なす北甲国(ほっかんこく)の皇帝一族、並びに北甲国を狙う倶東国(くとうこく)の巫女と七星士討伐隊に狙われることとなる。
初めは「誰かに必要とされたい」との気持ちで巫女になった多喜子だが、次第に虐げられる人々の為、北甲国の平和の為に玄武を呼び出す気持ちが芽生えていく。女宿(うるき)を始めとする七星士もまた、自身の過去や宿命と向き合い、多喜子を守り戦う。氷河期到来の予兆、倶東国軍の侵攻など、北甲国にはかつてない危機が迫っていた。
女宿との報われない恋や、母から伝染した結核など、多喜子自身の運命との戦いも描かれる。

前作において、多喜子は「現実世界に帰還した後、父・永之介(えいのすけ)に殺され、父はその後を追って自害した」と記録が残されていた。多喜子の死が決まっていたことから、全編を通してギャグは少なめにされている。また、前作では巫女や七星士は救世主のような扱いであったが、『玄武開伝』ではそれまで神獣の巫女、七星士が現れたことはなく、「国の滅亡の危機に現れる」との予言内容により不吉の象徴と見なされ迫害を受ける描写も存在する。尚、本の内部は現実世界と時間の流れが違っており、四神天地書で数か月を過ごしても現実世界では数時間しか経過していない場合もある。『ふしぎ遊戯』の時代は、四神天地書の中では『玄武開伝』よりも200年後ということになっている。

2003年から2013年まで発表されたが、掲載誌は『少女コミック増刊』(2003年4月15日号ー2004年)、『渡瀬悠宇パーフェクトワールドふしぎ遊戯』(2004年ー2008年)、『凛花』(2010年10号ー2012年16号)、『増刊flowers』(2012年冬号ー2013年春号)と変遷している。全40話、フラワーコミックス全12巻。
2009年公式ファンブックである『ふしぎ遊戯 玄武開伝9.5 公式ファンブック~星ノ螺旋~』が発売された。

ゲーム、ドラマCDとしてメディアミックス展開がされている。

『ふしぎ遊戯 玄武開伝』のあらすじ・ストーリー

奥田多喜子と四神天地書

母を失い、初恋の相手に拒まれても耐える多喜子。

時は大正時代。17歳の女学生・奥田多喜子(おくだ たきこ)は母・美江(よしえ)の結核療養の為に東京から母の実家がある岩手県盛岡市に越してきた。周囲の好奇の目や、東京から来た作家の娘という出自への妬みから来るイヤミにも負けない快活さを持つ一方頑固な性格で、仕事に没頭するあまり家庭を顧みない小説家の父・永之介(えいのすけ)を嫌っていた。その気持ちの裏には、息子を望んでいた父に対する「自分は必要とされていない」との思いがあった。妻が病で伏せている間、永之介は中国におり、帰国してからも妻の看病よりも中国の古書・四神天地之書の翻訳に没頭していた。やがて、永之介は日本語訳版の四神天地書を完成させる。
母が結核で亡くなった際、多喜子は看病の一つもしなかった父に怒りをぶつけ、家を飛び出す。多喜子は、父の旧友で、自身の初恋の相手である大杉高雄(おおすぎ たかお)に思わず長年の想いを告げる。しかし大杉には妻子がおり、多喜子の気持には答えられなかった。冷静さを取り戻した多喜子は、大杉に別れを告げて帰宅する。
妻の死後も本に執着するような父の言動に怒った多喜子は、四神天地書を取り上げ破こうとしたが、本の中へと吸い込まれる。
本のページには、永之介が書いたものとは違った記述が現れ始める。永之介は、多喜子が本の中で「玄武の巫女」と記されているのを目撃した。

玄武の巫女と七星士

玄武の巫女と七星士の伝説を知る多喜子。

多喜子は、本の中に広がる異世界にある四つの大国・四正国(しせいこく)の一つである北甲国(ほっかんこく)に降り立っていた。化け物に襲われた多喜子だが、雪山に磔にされていた少女・女宿(うるき)と助け合い街に下りる。女宿は元々男性であり、胸に「女」の字が出ている時のみ体が女性化し、風の能力が使うことができる特殊な体質を持っていた。
女宿から「国が乱れる時、異世界から玄武の巫女が現れ、七星士と共に玄武を呼び出し、あらゆる願いを叶える力を与えられて国を救う」という伝説を聞いた多喜子は、「風斬鬼(ふうざんき)・リムド」の異名(女宿の本名はリムド=ロウンである)を持つ女宿の逃走により、リムドを追っていた少年・虚宿(とみて)に捕らえられる。
虚宿は巫女を守る七星士の一人だったが、巫女と七星士は国に危機が訪れた時に現れる不吉の象徴とされており、虚宿は自分の宿命を良しとは思っていなかった。女宿もまた七星士で、北甲国の皇子として生まれながら実の父に命を狙われ従者のソルエンと共に幼い頃から逃亡生活を強いられてきた。

北甲国は異常な冷害と、皇帝の琅輝(ロウン)一族による圧政、東方に位置する軍事大国・倶東国(くとうこく)の脅威に晒されていた。
多喜子は玄武の巫女となることを決め、虚宿と共に七星士を探す旅に出る。七星士の目印は、体のどこかに現れる字であった。

女宿は、身分を隠してソルエンと共に倶東国に入る。通りすがりに山賊を倒すところを倶東国皇太子にして将軍の玻慧(はけい)に見初められた女宿は「タキ」と名乗り玻慧の部下となる。倶東国は北甲国を狙っており、国を救うとされている玄武の巫女と七星士は厄介な存在であった。その為、玻慧は自分が選び抜いた精鋭から成る討伐隊を結成し、玄武の巫女と七星士の命を狙っていた。隊長の紫義(しぎ)、副隊長の緋鉛(ひえん)を中心とした討伐隊は、何度も多喜子らの前に立ちふさがることとなる。

多喜子は、討伐隊に身を置いた女宿と会うたびに仲間になってほしいと言うが、女宿は「父王を殺す」との予言故に実の父から狙われていると言い、七星士としての運命や予言に翻弄された人生と父との決着を自らつけると言って聞かなかった。それでも、女宿の中に多喜子を守りたいとの気持ちが芽生えていく。紫義らの前で正体を明かしてソルエン共々多喜子たちの仲間に加わった女宿は、戦いと仲間集めの中で多喜子と惹かれ合う。

多喜子は、それぞれ心の傷や事情を持った七星士たちの心に寄り添い、虚宿の他、薬草作りに長けた室宿(はつい)、星命石と呼ばれる特殊な石の精霊・壁宿(なまめ)、水を操る斗宿(ひきつ)、元北甲国の宮女の牛宿(いなみ)を仲間にしていく。
巫尊師(みこそんし)と呼ばれる偉大な巫師(みこし)・アンルウから壁宿と共に今わの際に託された首飾りで七星士の現在地を知り、天帝の化身とされる太一君(たいいつくん)から北甲国のある村で守り神とされる地の竜や助言をもらうといった助けを得ながら多喜子たちは旅を続ける。

最後の七星士・危宿(うるみや)は双子で、兄と弟で字を分け合っている状態だった。兄のテグは北甲国宮殿の地下迷宮に閉じ込められており、歌を風穴から響かせることで七星士の力を封じる力を持っていた。弟のハーガスは、七星士の能力を奪う力があり、危宿は共に七星士封じとも言える存在であった。ハーガスは女宿の父・テムダン王の命令で女宿を始めとする七星士の討伐を使命としており、度重なる多喜子の説得にも耳を貸さなかった。

一度現実世界に戻ったものの、四神天地書で神獣を呼べば何でも願いが叶うと知った多喜子は、母を蘇らせる為、また女宿たちに会いたいとの気持ちから父の制止を振り切って再び本に入る。しかし、ソルエンの死とそこから立ち上がるまでの女宿の姿を通し、生命の重みを思い知る。

戦いと仲間集めの中、多喜子らは巫女と七星士の出現を待ちわびる星護(オド)族だけではなく、遊郭に売られた娘たちや、皇族の安全の為虐げられ見捨てられた民たちを結果的に救い、彼らからの信頼も得ることとなる。星護族は色々な部族の寄せ集めであり、テグとハーガスは中心であるウルタイ族の出身であった。皇族に捕まり、「逆らえば弟を殺す」と言われ連れ去られたテグ、兄を追って姿を消したハーガスを救うのが星護族の当初の目的だったが、いつしか己の保身しか考えない皇帝テギルを許せぬ者が集まったという。星護族に身を置く少女・フィルカは皇帝はいざとなれば自分だけを守らせるつもりだと言った。

そんな矢先、多喜子は「巫女は神獣に食われる生け贄」だと太一君に聞かされた女宿から「玄武は呼ばなくていい」と言われ、自分が必要とされていないと感じて現実世界へと帰った。母の弔問の為に東京から来ていたかつての主治医・及川医師の求婚を受け、多喜子は現実世界で生きていく決意を固める。それでも女宿や皆を忘れられなかった。また、多喜子の体は母の看病の際に伝染した結核に蝕まれつつあった。
父から北甲国がこの先氷河期に入ることを聞いた多喜子はありったけの薬を持ち、及川医師に謝罪をして四神天地書の中へと入って行った。

再会・多喜子の決意

天地書の内部で牛宿と再会した多喜子は、自分が玄武を呼び出せば食われてしまうことを知った上で戻ったと言い、自分を案じてくれたことに礼を言う。多喜子が現実世界に戻ってから、本の中では一カ月が経過していた。
多喜子は、北甲国の都・特烏蘭(トウラン)で氷河期の予兆による冷害に苦しむ人々を目にする。皇帝テギルは国の惨状を見て見ぬふりしていると牛宿は言う。体調を崩した多喜子は、牛宿の知人の家で休ませてもらう。多喜子は、テムダン王が不治の病にかかり実の弟・テギルに帝位を奪われたこと、かつては優しく気さくで、民と共にあろうとした立派な皇太子であり、今もテムダン王が帝位に就くことを望む者は多いこと、北甲国内では、テムダン王の息子(女宿)は死産扱いになっていることをは知る。

多喜子は女宿との再会を果たし、共に牛宿の知人の家へと身を隠すこととなった。宮廷こそ見えるが、今いる裏町は訳あり者の巣窟であり、多喜子は女宿を探す途中で飢えた子供を目にしていた。
女宿は、多喜子に妻になってほしいと言う。巫女でいたら、いずれ玄武を呼び出し食われてしまう。巫女でなくなるには女宿の妻になって巫女の資格(純潔)を失うしかなかった。ソルエンのように犠牲になってほしくないとの気持ちから、国のことは自分が何とかすると女宿は言うが、多喜子は「食われることも承知の上であり、外で飢え凍える北甲国民の為にも玄武を呼ぶのが自分の義務」だと言った。多喜子の堅い決意を聞いた女宿は、その意思を尊重した。

翌朝、女宿が宮廷の方へ向かうのを見た多喜子は慌てて彼を止める。そこに、テムダン王を擁立する暴徒が現れ兵士と衝突になった。暴徒の中には圧政のせいで子供が凍死したと訴える母親もおり、生き残った子供が見せしめに処刑されそうになった。
多喜子、女宿共に兵士を止め、皇族のやり方に怒りを示した。残りの七星士も駆けつけ、兵士を返り討ちにして暴徒たちと逃走する。
虚宿たちは、神獣を呼んだ後の巫女の運命を知りながら戻ってきた多喜子を怒鳴りはしたが、本音では多喜子が帰ってきたことを喜んでもいた。暴徒となった民たちは、多喜子らの正体を悟り頭を垂れて礼を述べ、国の未来を守ってほしいと言う。

北甲国民と別れた多喜子は、七星士封じとなっているテグを仲間にすることを提案する。兄が戻ればもう一人の危宿であるハーガスも仲間になる。倶東国と通じ合っているテムダン王とも話し合うべきだと多喜子は述べた。女宿は反対したが、テムダン王が昔から民に慕われていたことを知る多喜子は、昔と同じく民を想う気持ちを取り戻せる可能性を口にした。自分が交渉をすると言った多喜子の案に、女宿は同意する。

まずは、テグの居場所を知るテギル皇帝に近づくこととなった。元宮女の牛宿を案内人とし、斗宿と壁宿が多喜子に同行することを申し出る。斗宿、虚宿、室宿の3人は外からテグの居場所を探すことに決まる。多喜子の覚悟を感じ取った女宿は、一時父への私怨を忘れて巫女をサポートする旨を虚宿らに伝えた。

テムダン王と女宿

若き日のテムダン王(上)は、弟の策と知らずに、我が子リムド(右)を殺すよう命令を出した。

テムダン王派の者の手引きで宮殿に入った多喜子らは、捕らえられそうになるが実はテギルの娘であったフィルカ(本名はエフィンルカ=ロウン)に救われる。家出をし、星護族と行動を共にしていたフィルカだが、ハーガスとテグを会わせると約束をしており、テグの居場所を知る為に宮殿にもどったと言う。テギルは誰にも帝位を譲る気がなく、民が飢え凍え、倶東国軍が進撃する中でも救済措置を取らず、自分だけを守らせていた。そんな父をフィルカは暗殺する覚悟であった。とはいえ、暗殺は飽くまで最後の手段であり、本意ではなかった。「テグは女宿たちが見つけ出すから、テギルを殺す必要はない」との言葉でフィルカは涙を流し、皇帝の娘として巫女と七星士を守ると誓い多喜子らをテムダン王の下へ案内する。
テムダン王の下へ向かう途中、多喜子らは皇族の先祖を祀る廟で、女宿の母・アユラ妃を見つけた。予言や息子を手放す羽目になった心労から眠り続けるアユラ妃は、テムダン王から譲られたお守りを持っており、多喜子は斗宿の能力でお守りが見てきたテムダン王の過去、予言の真相を知る。「王子が王を殺す」という予言は、テギルが祈禱師にさせた嘘の予言であった。

テムダン王派による内乱が始まり、テギルはテグに切り捨てられ内乱軍にとらえられた。兄の前に引き据えられたテギルはいたぶられた後、ハーガスにより殺される。テムダン王は弟から皇帝の証である地下迷宮の鍵を奪い帝位に就いた。
一部始終を影から見ていたフィルカはハーガスを殺そうとしたが、ハーガスは彼女がかつての命の恩人だと知り、殺せないと言う。内乱で殺された皇帝の娘として自決を選ぼうとしたフィルカをハーガスは止め、多喜子をテムダン王の下へと連れて行く。多喜子は、ハーガスとフィルカの間に単なる恩人という以上の想いを感じ取る。フィルカは、かつて傷を負ったハーガスを正体も知らずに介抱したことがあり、その頃から彼に恋心を抱いていた。
吐血をした多喜子の命が長くないことを知ったテムダン王は、兵士を全て下がらせ多喜子と話をする。テムダン王は、玻慧と密約を交わしており、倶東国とは戦をせず都を明け渡すと言った。
病にかかる前から北甲国の民だけではなく、地質や気候等あらゆることを調べていたテムダン王は、近いうちに北甲国中が凍り付くことを知った。玻慧と密命を結んだのは、北甲国の宝である星命石と引き換えに国中の民を倶東国に預ける為であった。
多喜子は自分が玄武を呼び出し、国を救うと誓う。死を前にしてもなお強いまなざしの多喜子に、テムダン王は心を動かされる。

女宿たちは、七星士の力に反応したテグの気を探り、彼の居場所を探り当てた。地下へと向かう最中にハーガスと出会い、女宿たちは多喜子がもう長くないことを聞かされる。ショックを受ける女宿だが、ハーガスに斬りつけられ落下する中で正気を取り戻し、テグと対面する。ハーガスは女宿を仕留める任務に失敗したと言い、兄のテグと再会を果たすが、落ちてきた岩からテグを庇い死亡する。死の間際、ハーガスは自分の命が長くないこと、危宿の字を分け合った以上、どちらかが消えなくてはならないと言い残し、自分の字、想いを全てテグに託した。
その光景を見ていた女宿は、父テムダン王の下に向かい刃を向けるが手は下さなかった。ここで父王を殺したところで失った人は戻らない。「もう誰も犠牲にしたくない、下らぬ予言は俺が終わりにする」と宣言し、女宿は多喜子を迎える。
テムダン王は、テギルの忠臣による小剣に刺された。自分を殺す者が病でも息子でもなかったことを認め、テムダン王は女宿に皇帝の証を渡して息絶えた。

倶東国軍との戦い

女宿(手前)は、壁宿(後ろ)を伴い、倶東国将軍・玻慧に撤退を勧める。

テムダン王により下がらされていた兵士たちは、テムダン王の胸にテギルの紋章のついた小剣が刺さっていること、女宿が皇帝の印を持っていることから彼を新皇帝と認めた。
女宿はハーガスの死と、テグが危宿として覚醒したことを話す。多喜子は、フィルカが女宿のいとこであることを伝え、保護するよう頼んだ。多喜子の持っていた布に血がついているのを確認した女宿だが、何も言わず「会わなくてはならない人がいる」との多喜子の言葉に皇族の廟へと案内され、母アユラ妃と再会した。目を覚ましたアユラ妃は無事に成長した息子との再会を喜ぶ。

多喜子、フィルカは虚宿らと共にハーガスの遺体と対面し、危宿とも会った。フィルカはハーガスへの想いは自分の片想いだと思っていたが、弟から字だけではなく記憶を受け継いだ危宿が片想いではなかったこと、フィルカの幸福を願っていたことを告げる。
危宿は多喜子が弟を信じて語りかけていたことを感謝し、その上で心を鬼にして敵対してきたことを謝罪すると星命石と共に守らされていたものを多喜子に渡した。それは、玄武召喚に必要な経典・四神天地之書(四正国の皇帝一族に、四神の伝説と共に伝わる経典)だった。多喜子は、別れ際父に言われた長生きしてほしいとの言葉を思い返しながら、四神天地之書を取った。

逃走を果たした紫義、緋鉛は女宿が帝位に就いたこと、玄武七星士が全員揃ったことから玄武の召喚だけでも阻止しようと玻慧の下へと向かっていた。七星士討伐に躍起となった紫義は、「七星士が揃ったら勝ち目はない」と言った緋鉛を、追手の兵士諸共刺す。

皇帝となった女宿は、父を弔い国庫を民に分け与え、軍に民を守るよう命じた。北甲国軍の3倍だという倶東国軍は自分たち七星士が食い止めると宣言する。巫女には玄武を呼ばせない。それが七星士たちの意思だった。民には十分な食糧が行き渡り、新たな皇帝が立ったこと、巫女と七星士が揃ったことを喜ぶ声が上がる。
室宿は多喜子の為に薬を作り、「巫女様は玄武を呼ばなくていい」「女宿さんのお嫁さんになればいい」と言った。その言葉を聞き、虚宿たちは女宿と多喜子に形だけだが結婚式を挙げさせた。アユラ妃の後押しもあり、女宿と多喜子は心で結ばれた夫婦として愛を誓った。
甘い時間は長くは続かず、倶東国軍の進撃が始まる。

北甲国の兵士には敢えて戦わせず民を守らせ、七星士が揃ったことを知らない倶東国軍を一網打尽にする作戦が取られる。女宿は多喜子に何も心配するなと言ったが、倶東国軍の狙いが星命石だと知る多喜子は、テムダン王が玻慧に星命石を渡す代わりに北甲国民を倶東国に移住させる密約を交わしたことを伝えた。
星命石とは今は鉱石だが、太古の昔玄武が作った生命の水で、生命を与える力を持つという。危宿は、地下迷宮でテギルに星命石のいわれを聞かされ、守らされてきたと語る。そこに倶東国軍侵攻の知らせが入る。玻慧の父である倶東国皇帝は死の床にあり、星命石を欲していた。玻慧自身は巫女や七星士が気にはなっていたが、動きがないことから進撃を命じたのだった。

女宿は、多喜子が北甲国皇帝の妃になったのだから城を守るように言い、七星士たちと共に倶東国軍を迎え撃つ。超常的な七星士の力は、たったの七人ながら充分に軍隊と戦えるものであった。
女宿は壁宿を伴い、玻慧のいる陣営へと向かう。皇帝として、玻慧に撤退を提案する女宿だが、突如雹が降り出した。空を渦巻く天変地異は、北甲国が天災で滅ぶ時がやってきたことを意味していた。

玄武召喚

玄武召喚の儀式に入る多喜子(左)と女宿(右)以下七星士。

多喜子は女宿たちにこのままでは北甲国が永遠に氷に閉ざされることを話す。七星士たちも躊躇いはあったが多喜子の希望通りに玄武召喚の準備に入る。市街への侵攻を始めた倶東国軍は、フィルカが率いる星護族が食い止めることとなった。
結核の症状、儀式を行う玄武廟への落雷、討伐隊の侵攻により儀式は手間取った。遂には虚宿が紫義により致命傷を負ってしまうが、多喜子は七星士が欠ける前に召喚に必要な詔(みことのり)を唱え、玄武の召喚に成功した。玄武は、命を賭して召喚を成し遂げた多喜子を気高い娘と評し、彼女に願いを叶える力を与える。

第一の願い「北甲国に春を取り戻す」で太陽が現れた。同時に、多喜子の体が玄武に食われ始める。痛みと戦いながら、多喜子は第二の願い「この国にいる命ある者全ての回復」を発動させる。同時に、星命石がすべて石から生命の水へと還元する。星命石から生まれた精霊である壁宿も多喜子に礼を言い、七星士としての形と自我を失って生命の水へと還った。生命の水は国中に雨となって降り注ぎ、敵味方関係なく負傷者の傷を癒した。

ずっと現実世界から多喜子の物語を負っていた永之介の声が、苦しむ多喜子に届いた。互いに流れる血の繋がりが多喜子と永之介を繋いでおり、絆を一時的に強めるべく血を流す為に自らの手を刺した永之介の姿が女宿らにも見えた。こんなことに巻き込んでしまったことを詫び、永之介は娘を玄武に食わせまいと自らの心臓を刺す。その傷が多喜子にも共鳴し、多喜子もまた心臓を貫かれる痛みを感じた。それでも多喜子は、こんな素晴らしい人生を与えてくれた父に感謝し、女宿に北甲国の未来を託して女宿の腕の中で息を引き取った。

北甲国中の民が多喜子にひれ伏し、倶東国兵士でさえ頭を垂れた。兵士たちが戦意を失い、倶東国皇帝が崩御したとの知らせが入る。玻慧は撤退を命じて帰還したが、紫義は納得しきれず北甲国民全てを殺す勢いで向かっていき、刺したはずの緋鉛により殺された。緋鉛は相打ちで死亡した。

現実世界では、奥田親子が原因不明の死を遂げた。大杉は永之介の遺書を受け取り、四神天地書を管理していくことを決める。

ひと月の後、星命帝(せいめいてい)として即位した女宿、暤巴帝(こうはてい)として即位した玻慧は和平調停を結んだ。生き残った七星士の室宿、牛宿、危宿は皇帝となった女宿の補佐をしていくこととなる。
かつて自分が縛られていた、多喜子と出会った黒黎神山に夢で呼ばれた女宿は、太一君、並びに虚宿、斗宿の霊と再会する。戦も終わらぬうちに世を去った二人は最後まで巫女を見届けられなかったことを悔い、玄武召喚の際多喜子が身に着けていた首飾りを守ると言ってきた。
多喜子の強い意志が宿った首飾りは神座宝と呼ばれる依り代となり、いずれ現れる白虎、青龍、朱雀の巫女の為に奉納してほしいと太一君に言われた。多喜子の形見として持っていた女宿だが、多喜子もそれを望むだろうと自ら首飾りを二人に託した。虚宿の母や斗宿の妹・アイラ、二人の出身である一族の安泰を引き受け、一日でも長生きして良き皇帝となることを誓う。「そうでなければ、多喜子に合わせる顔がない」女宿はそう言って、春を取り戻した北甲国を治めていく。

時が経ち、玄武の巫女の話は伝説となっていった。玄武七星士・女宿と恋仲となり、自分の為の願いは一つも言わずに北甲国に春と平和をもたらした。三つ目の願いは叶えられず力尽きて亡くなった巫女の代わりに、多くの民が玄武へ祈りを捧げた。
北甲国が春を取り戻して100年目、生涯妻を娶らず、フィルカの曽孫を後継ぎに据え、女宿は惜しまれて世を去った。
北甲国の民が玄武に祈った最後の願いとは、玄武の巫女と女宿が再び出会い、離れないことだった。冥府と思しき場所で、多喜子は女宿と再会し、玄武の巫女の物語は幕を閉じる。

『ふしぎ遊戯 玄武開伝』の登場人物・キャラクター

玄武の巫女・玄武七星士

奥田多喜子(おくだ たきこ)

えどのゆうき
えどのゆうき
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