うみべの女の子(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『うみべの女の子』とは、『マンガ・エロティクス・エフ』(太田出版)にて2009年から2013年にかけて連載された浅野いにおによる成人向け恋愛漫画作品である。本作は、田舎で暮らす中学生たちの性や葛藤を描いている。憧れの先輩にフラれた中学2年生の女の子・小梅は、その腹いせに同級生・磯辺と初体験を済ませてしまう。はじめは自分に好意を抱いている磯辺を利用していた小梅だったが、1枚の写真をきっかけに2人の立場は逆転していく。

『うみべの女の子』の概要

『うみべの女の子』とは、2009年7月7日から2013年1月8日にかけて『マンガ・エロティクス・エフ』(太田出版)で連載された浅野いにおによる成人向け恋愛漫画である。作者の浅野いにおは、本作のほかにも『ソラニン』や『おやすみプンプン』などの作品を執筆している。単行本は2011年3月17日に第1巻、2013年2月21日に第2巻が太田出版から発売されている。また2021年8月20日には実写映画が公開されており、監督・脚本・編集はウエダアツシ、主演は石川瑠華と青木柚のR15+指定作品である。
田舎の町で暮らす中学2年生の女の子・小梅は、あこがれの先輩・三崎にフラれた腹いせに同級生・磯辺と初体験を済ませてしまう。磯辺は小梅に好意を抱いており、その気持ちを利用した小梅が「あたしとセックスしたい?」と持ち掛けたのだ。その後磯辺が改めて告白するも小梅は断り、体だけの関係を続ける2人。しかし、磯辺が「うみべの女の子」と名付けた1枚の写真をきっかけに立場は逆転していくのだった。

『うみべの女の子』のあらすじ・ストーリー

秘密の関係

「キスはやだ」と磯辺の腕をつかむ小梅。

中学2年生の女の子・佐藤小梅(さとうこうめ)は憧れの先輩・三崎(みさき)に告白をするも、口での性行為を求められてしまう。流されるまま行為に及ぶ小梅だったが、その後、同級生・磯辺恵介(いそべけいすけ)とあてつけで初体験を済ませてしまうのだった。磯辺とは小学6年生の時に越してきた内向的で友達の少ない転校生で、中学1年生のころには小梅に告白してフラれている。小梅はそんな磯辺の気持ちを利用し、「あたしとセックスしたい?」と自ら持ちかけたのだ。行為を終え海辺を散歩する磯辺は小梅に2度目の告白をするが、またしてもフラれてしまう。それでもキスを求める磯辺を、小梅は「やっぱキスはやだ…ごめん…やっぱりあたし磯部のこと好きじゃないし…」と突き放した。後日三崎に呼び出された小梅は改めて告白をするが、あっけなくフラれる。学校の帰り道、傷心した小梅を磯辺が自宅に誘い、それから2人は好奇心とスリルに身を任せて“秘密の関係”を続けていく事となるのだった。

「うみべの女の子」

磯辺に問い詰められ涙を流す小梅。

ある日父に買ってもらったカメラのメモリーがなくなった小梅は、磯部の家にあった適当なSDカードを譲り受けた。小梅が家に帰ってSDカードのデータを確認していると、その中に水着姿の見知らぬ女の子の写真を見つける。その写真が気がかりだった小梅は、翌日磯部にそのことを問う。「海辺で拾ったSDカードだから知らない」と答えつつもすっかりその子の虜になった磯部は、小梅が帰宅した後にその写真を「うみべの女の子」と名付けパソコンのデスクトップ画面にしていた。
しかし後日、磯部が寝ている間にそれを見た小梅は、気に入らない様子で写真のデータごと削除してしまう。データが消えていることに気付いた磯部は「俺のパソコン他になんかいじったりした?書きかけのブログなんかも見ちゃったりした?」と怒りをあらわにする。磯部は兄を亡くしており、その兄が生前運営していたブログを引き継いでいたのだ。
それ以来小梅と距離を取る磯辺と、そんな磯辺を求める小梅。交際を断ったはずの小梅が、いつの間にか磯辺に依存していたのだ。一方で磯辺は小梅にパソコンの中身を見られてからというもの、兄の死に囚われるようになっていた。そして、今の関係を断つ気のない小梅の顔を片手でつかんだ磯辺は「自分の腹黒さに無自覚で平然と生きてられる奴が世の中多すぎるから、俺等は生きてるだけで息が苦しいってことをお前は一瞬でも想像したことある?」と冷たく言い放った。

兄の死にとらわれる磯辺

磯辺に煽られカッとなる鹿島と、それを見てしまう桂子。

2人の関係に気付いていた小梅の親友・小林桂子(こばやしけいこ)は小梅を心配していたが、それを直接言葉にすることが出来ずにいた。そんなある日、桂子は小梅と幼馴染の同級生・鹿島翔太(かしましょうた)が教室で磯辺を殴っている現場を目撃してしまう。思いを寄せていた鹿島の恐ろしい姿を見て複雑な気持ちになる桂子。しかしその鹿島は長年小梅に片思いをしており、よそから転校してきた来た“部外者”の磯辺と小梅との関係が気に入らなかったのだ。磯辺はそんな鹿島に、小梅とこれまでした行為を自慢げに話す。磯辺の狙い通りカッとなった鹿島は「お前の兄貴、1回パシっただけで学校来なくなって、自殺したんじゃないの」と言い出す。磯辺は心の深い部分にあった兄のことに触れられ、「テメーの理屈を押しつけてくるバカが多過ぎる。バカの一番悲しい所はそのバカさを説明しても理解できない所だ。誰のこと言っているかわかるか?お前だお前だお前だ、この勃起野郎。俺は俺の理屈でお前の内蔵をひきずり出して、屈辱的な死に様を世界中に晒してやる」と鹿島をあざ笑う。現場に駆けつけた教師たちが鹿島を取り押さえ事情を聞くと、被害者のはずの磯辺が「転んだところを鹿島が介抱してくれたのだ」と鹿島をかばうような嘘をつく。すると続けざまに「野球と仲間を失ったら何も残らない君が、そんな事する訳ないよねぇ?」と鹿島に嫌味な笑みを向けるのだった。磯辺はこの時、兄が自分と同じように“部外者”であることから周囲に排除されてしまったのだと悟ったのだ。

小梅と磯辺の葛藤

小梅に好みを聞かれて「優しい人」と答える磯辺。

磯辺との関係がうまくいっていない小梅は三崎と連絡を取っていた。同い年の少女・白瀬香菜恵と共にカラオケボックスに呼び出された小梅は、そこでまたしても性的な行為を求められる。しかしそれを拒んだ小梅は、傷心したまま磯辺の家に押し掛ける。仕事で親のいない磯辺の家で、2人は普段とは違う様々なプレイを試みた。そのほとんどは磯辺の要望であったが、小梅はそれに応える。浴室でも続いた行為の後、お湯を張った狭い浴槽で膝を立てて向かい合う磯辺と小梅。そこで小梅が「ねぇ磯辺。してもしても足りない気がするのはなんでだと思う?」と顔を近づけて問いかける。磯辺はそれに対し、たった一言「興味ないね」と返した。
二人でベッドに寝ころびながら、小梅は磯辺に女の子の好みを聞き出す。磯辺は「優しい人」とだけ答える。そして翌朝、小梅の帰った部屋で磯辺は「どうせひきとめたってお前は、どうせいつか家に帰るんだろ…無駄に期待させるなよ…鬱陶しい」とひとり呟く。磯辺は昨晩小梅に問われたことの意味も答えもわかっていた。それでも、友達もいて家族仲も良好な、自分とは正反対の小梅に気持ちを打ち明けることがどうしてもできなかったのだ。

小梅の気持ちと磯辺の復讐

復讐を果たし、天にこぶしを突き上げる磯辺。

兄を排除しようとした者たちへの復讐として三崎を襲うことを決意した磯辺がその準備をしている頃、小梅は一通の手紙を書いていた。何日も連絡が取れなかった磯辺にメールを送るか悩んだ末に、手紙で気持ちを伝えることにしたのだ。“優しい人が好きなら優しくなれるように努力したいと思ってるよ。これからもなるべく一緒にいたいし、漫画の話とかゲームとか音楽とかもっと教えてほしい。持ってないって言ってたはっぴいえんどのアルバムあげるから、一緒に部屋で聴かせて欲しい。私は磯辺のことが好きです。ずっとずっとそれを伝えたかったです。”
そんなこととは知らない磯辺は、連れの女・鈴木摩理らと遊んでいた三崎をスタンガンで襲っていた。大麻を所持していた三崎は警察沙汰になることを恐れたが、その願いも虚しく駆け付けた警察に現場を押さえられる。アウターのフードを深くかぶってその場から逃げた磯辺は、「勝った…勝ったよ…ふっふ…勝ったんだ…勝った!」と血の付いた拳をどしゃぶりの空に突き上げた。
学校の文化祭の日。この日は磯辺の誕生日であり、磯辺の兄の命日である。その日、小梅は連絡も取れないまま姿を消した磯崎を探していた。台風で荒れる町の中を「いそべー!」と叫びながら駆け回るも結局その姿を見つけ出すことはできない。家に帰った小梅は、磯辺にあてた手紙をごみ箱に捨てるのだった。

磯辺の決断

最後のキスをせがむ小梅。

後日小梅は磯辺を発見する。目にかかっていた重い前髪をバッサリと切っていた。三崎を襲った日、復讐を終えた磯辺はとあるコーヒーショップで「うみべの女の子」と出会っていたのだ。彼女が2歳年上の高校生だと知った磯崎は、すでに小梅と今の関係を断つことを決意しており、「彼女と同じ高校に行く」と嬉しそうに話した。それを聞いた小梅は「そんな楽しそうな磯辺…見たくなかった…」と涙を流す。そして「あたしはずっとずっと磯辺が好きだった。でも気付いた時にはもうなんか…なんかもうどうしたらいいのかわからなくて。こんな感じになったのも、磯辺に嫌われたのも…全部あたしのせいだって分かってるけど、やっぱり磯辺のことが好きだし、ずっと一緒にいたいって思っちゃうから、あたしがんばるから…優しい人になるから…あたしと…付き合ってください…」と告白した。しかし磯辺は、「ごめん。いまさらそういうのも、ちょっと変かなって思うし…俺は別にお前の事嫌いじゃないよ、きっとこれからは普通の友達ぽくなれるんじゃないかって思ってるし」と断る。もう“普通の友達”になれるはずがないと感じていた小梅は「じゃあ最後に一回だけキスしてもらっていいですか?そしたら全部忘れるから…」と食い下がる。その言葉を聞いて小梅に顔を近づける磯辺だったが、あと少しのところで「…やっぱりやめとく。最後までお前に振り回される訳にはいかない」と近づけた顔を離した。「なんで、やだ…」とつぶやく小梅を背に去っていった磯部は、その後三崎に暴行を働いたことで警察に連行されるのだった。

高校に進学した小梅

大きな海を背に笑顔を見せる小梅。

時は過ぎて高校生になった小梅は、どこか磯辺に似た雰囲気の男の子・大津と付き合っていた。ある日海辺で鹿島と再会した小梅だったが、相変わらず鹿島の想いに気付いていないフリをしていた。「お前はお前の未来を信用しろ、もしそれで上手くいかなかったなら、俺がお前の面倒見てやるよ」という鹿島の言葉をはぐらかした小梅は、「あ…見つけた」と視線をどこかへ向ける。そして海を背中に笑って見せた小梅は「もっともっと大きな、うみ!!」と叫ぶのだった。

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