完全なるチェックメイト(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『完全なるチェックメイト』とは、2015年にアメリカで公開された天才チェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの半生を描く伝記ドラマ映画。冷戦下の1972年、15歳でチェスのグランドマスターとなったボビー・フィッシャーは、その奇抜な言動から周囲から変わり者と扱われてきた。そんなボビーは世界が見守るチェス最強国のソ連が誇るボリス・スパスキーとの対局で苦戦しながらも驚くべき戦略でスパスキーに立ち向かう。チェスの世界で精神の極限状態に追い込まれるボビーを緊張感のある表現で描かれている。

『完全なるチェックメイト』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ビル「チェスの対局では、4手進めば3000億もの可能性を考える。だから精神状態は極限を超えかねない。王者になるまで彼はきっともたないだろう」

出典: m.media-amazon.com

ボビーがスパスキーに敗北した日、ポールはビルに「ボビーはスパスキーに勝てるのか」と問う。ビルはそんな質問をよそに、ポールが誰かに電話をしていたことを問いただし、アメリカ合衆国の偉い人物となにやらやり取りしていることを感じ取っていた。ポールがボビーをなんとしても勝たせようと必死で話すため、ビルはポールにかつてのチェスのチャンピオンの話をする。その時、ビルは「チェスの対局では、4手進めば3000億もの可能性を考える。だから精神状態は極限を超えかねない。王者になるまで彼はきっともたないだろう」とポールに話したのだ。チェスの世界は極限の世界であり、その中で戦い続けるものの辛さがどれだけかを理解できる一言であった。

スパスキー「ブラボー」

ボビーとスパスキーの一局で、スパスキーはボビーの一手に対して、立ち上がって「ブラボー」と言い、拍手をした。その拍手は会場を包み込むほどのものとなった。チェスでは通常相手のプレイに対して、拍手を行ったりはしない。そんな中、世界王者のスパスキーが立ち上がって拍手をするほどの一手をボビーは打ったのだ。

ボビー「全ては論理と記憶なんだ。たくさん選択しがあるように思えるけど、正しい手はいつも一つしかないんだ」

ボビーが歴史的な対局と言われるスパスキーとの対局で勝利し、スパスキーからは「ブラボー」、会場からは大きな拍手をもらった。その夜自室へと戻り、ビルに「見事な対局だった」と褒められたときに発した言葉。「全ては論理と記憶なんだ。たくさん選択しがあるように思えるけど、正しい手はいつも一つしかないんだ」ボビーは盛大に喜ぶわけではなく、冷静にその言葉を発したのだ。

誰にも予想できない一手

世界王者決定戦の第3局において、ボビーは誰もが自殺行為だと思うような一手を打つ。しかしそれはボビーの仕掛けた罠であり、スパスキーはまんまとその罠に嵌ってしまった。その一手は以後「神の一手」と呼ばれるほどになったのだ。第6局においてもボビーは誰もが展開を予想できない一手を繰り出し、スパスキーに「ブラボー」とまで言わしめている。

『完全なるチェックメイト』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

原題『Pawn Sacrifice』の意味

「Pawn Sacrifice」は直訳すると「犠牲のポーン」という意味。この原題には、ボビーはチェスにおけるポーンのような存在という意味が込められている。ライバルのスパスキーも立場はボビーと同様であった。つまり「ソ連とアメリカの2つの大国にとって、チェスプレイヤーは相手に取られも構わないポーンのような存在でしかなかった」という意味が込められている。そういった様子は、この映画の中でも描かれている。

主演決定から始まった、映画化

本作のプロデューサーのゲイル・カッツは1972年に開催されたボビーとスパスキーの歴史的試合を鮮明に覚えていたという。カッツは、この2人の対局をなぜ映画化しないのかと企画立案し、すぐにトビー・マグワイアに声をかけた。マグワイアは主演を引き受け、プロデューサーも兼任することになった。
監督を引き受けることになったエドワード・ズヴィックはこれをボビー・フィッシャーだけの映画ではないとし、「スパスキーを始め、フィッシャーを取り囲む人物たちの心の旅路を描いているんだ」と述べている。

『完全なるチェックメイト』の主題歌・挿入歌

挿入歌:Spencer Davis Group 『I'm a Man』

ボビーの青年期にチェスにどんどんはまっていくシーンで流れた曲

挿入歌:The Ventures 『Walk Don't Run』

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