まつりスペシャル(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『まつりスペシャル』とは2007年から2009年まで、集英社『ジャンプスクエア』で連載された青春漫画である。作者は神尾葉子。主人公の羽生まつり(はにゅう まつり)は女子高校生でありながら、覆面レスラーとして日々実家の「まごころプロレス」のリングにあがる。プロレスラーとしての顔は秘密にしているが、ある日クラスメイトの重松荒太(しげまつ あらた)に正体がバレてしまう。少女漫画要素の「恋愛」と、少年漫画要素の「格闘技」を織り交ぜた作品である。かつ神尾が初めて少年漫画として連載した漫画だ。

重松荒太(しげまつ あらた)

CV:伊藤健太郎(VOMIC)

まつりのクラスの転校生。制服が届かないため、学ランを着て浮いていた。クラスメイトたちは重松が不良だと思い込み、避けている。したがって、重松に本当の友達はいなかった。
重松がある日の夕方、近所の河原を歩いていると、大の男たちが次から次へと投げ飛ばされるところを目撃する。どんな大男が喧嘩をしているのかと興味本位で見ると、そこに立っていたのはまつりだった。その時まつりが仕掛けていた技がプロレスの技であったことと、まつりの苗字の「羽生」からまつりがまごころプロレスの「ハニープリンセス」であることを突き止める。まつりが「正体を黙っていて欲しい」というお願いに対して「強いハニープリンセスを見てみたい。そうしたら黙っておく」と約束した。重松は、コアなプロレスオタクであり、幼い頃からプロレスばかり見ていた。元・帝国プロレスの覆面レスラー「ハニーギャング」であるまつりの父のことをよく知っており、まつりの父に会ったときは大興奮していた。特にハニープリンセスの大ファンでありブロマイドまで持っている。また、重松の部屋にはハニープリンセスのポスターやグッズが所狭しと置かれている。「俺ほどのファンはそうそういない」とまつりに公言していた。その純粋なところをまごころプロレスの居候レスラーや、まつりの父に気に入られて、重松はまごころプロレスの門下生となる。練習に参加し、まつりとは秘密を共有しながら多くの時間を一緒に過ごしていく。
千葉に興行に行った際に、プロレス団体の「ジョンソンズ」の美々丸から一目惚れされる。美々は重松を追いかけてまつりたちの学園に転入までしてきた。しかし、重松は「羽生がハニープリンセスであることを秘密にしてくれ」と美々に頼む。美々は重松のことが好きであり、かつまつりは永遠のライバルだと思っているので「私と付き合えば羽生のこと秘密にしてあげる」と条件を出される。重松は、まつりをかばって美々と付き合うことにした。
重松はある日熱を出し、寝込んでしまった。両親とは別々に暮らしており、重松は一人暮らしである。そんな重松を看病をしにきたまつりに、熱で朦朧とした意識の中で重松はまつりにキスをした。重松が本当に好きなのはまつりであったが、まつりが諸角のことを好きなのを知っているので、フラれることを承知の上でまつりに告白している。しかし、告白からすぐに諸角がまつりが「諸角を救ったレスキュー仮面のマスクの女」であると知り、まつりと諸角の距離が縮まる。そのタイミングで、重松は親と一緒に北海道で暮らすことになり、転校が決まる。重松は大嫌いな諸角に「まつりのことを頼む」と頭を下げ、1人北海道へ旅立つ準備をする。
このまままつりと離れ離れになると思っていたが、まつりが「本当に大切なのは重松だ」と気づき、まつりからキスされる。2人は結ばれた。重松は北海道へ引っ越してからも月に一度はまつりに会いに来ている。

まつりの父

CV:松岡大介(VOMIC)

まつりの父親で、まごころプロレスの社長である。帝国プロレスに所属し、覆面レスラー「ハニーギャング」として活躍していた時期もあった。しかし、帝国プロレスが潰れた時、まつりの父は帝国プロレスが抱える借金を肩代わりして、まごころプロレスを設立した。そして、自分は引退したが若者たちの指導にあたっている。
口が悪く、風体もガラの悪いオヤジといった感じだ。毎日朝練があるが、「足が太くなるからやらない」と練習をサボるまつりにいつも怒っている。まだまつりにプロとしての自覚がなかった頃、わざとリングで負けるまつりに「なんだあのふざけた試合は!」と怒り心頭であった。しかし、本当は誰よりもまつりの身体能力の高さを認めている。「まつりはスポーツで必要なバランス感覚が優れている」と、プロレス団体「ジョンソンズ」のジョンソンに語っている。
根はやさしく、情に熱い男である。大学生レスラーであるまさおを、体が小さいにもかかわらず、まごころプロレスに入門させている。また、まつりの母に「同じ苦労をかけさせたくない」と言い、まつりの母を出て行かせた。その事実を父はまつりに言わなかった。だからまつりはずっと借金を抱える父に嫌気がさし、母の方から出ていったと思っていた。父が本当のことを言わなかった理由は、まつりに借金のためだけに闘うのではなく、純粋にプロレスの楽しさを知ってほしかったからである。
まつりが反抗し、まごころプロレスの試合を初めて放棄した時はまつりの頬を引っ叩いて叱った。そしてまつりと大喧嘩する。だが、出ていったまつりを雨の中迎えに行き、帰り道に「プロレスを辞めたければ辞めればいい」とまつりに言った。借金があるにもかかわらず、父はまつりに普通の女子高生として生きる選択肢を与えたのだ。
結局ハニープリンセスがいないまごころプロレスは客が暴動を起こし、無茶苦茶になる。まつりにプロ意識が芽生えて、ヤクザ主催の試合に出場した時も、父は重松から予め事情を聞き、迎えにきた。
まつりが自主的に本気で闘った試合では、まつりが仮面を外して闘う姿を見て涙を流している。まつりが高校3年生になってからも、まごころプロレスの立て直しに注力し、小さいながらもまごころプロレスを経営している。

斉藤(さいとう)

まごころプロレスに所属する居候レスラー。脱サラしてまごころプロレスに入門した。3人いるうちの中では、一番落ち着いていて、カッとなりやすいまつりの父をなだめることが多い。まつりが「お母さんは借金作った親父が嫌になってこの家を出て行った」と思っていた事実に、本当のことを話したのは斉藤である。「社長が一緒に苦労させたくないって言って奥さんを出ていかせたんです」と、まつりに伝えた。まつりがハニープリンセスとして、まごころプロレスの稼ぎ頭であることをよく理解しており、まつりには感謝している。

まさお

まごころプロレスに所属する大学生のレスラー。3人の居候レスラーの中では一番若い。いつも「まさお」と書かれたTシャツを着ている。まごころプロレスの事務所では、経理の仕事もこなしている。「姫が普通の女子高生になれるなら応援してあげたい」と、まつりがまごころプロレスを脱退した時にまごころプロレスの改革を唱えた人物である。結果、まさおが考えたリング上でのトリオ漫才は失敗に終わり、客から大ブーイングの嵐だった。だが、まさおは体の小さい自分を拾ってくれたまつりの父に恩返しをしたい気持ちと、まつりが抜けた穴を埋めたい気持ちを涙ながらにまつりに語っている。このまさおの本音を聞き、まつりはプロ意識が芽生えた。

吉本(よしもと)

まごころプロレスに所属するレスラー。長髪であり、髪を束ねたスタイルで見た目はごついがレスラーとしてはまだまだ修行中である。まつりが初めて重松を家に連れて来たとき、重松のプロレス好きを買い、重松を門下生にしてはどうかと提案したのは吉本である。結果この吉本の言葉がきっかけで、重松はまごころプロレスに入門することになった。
まごころプロレスが客の暴動で無茶苦茶になったが、まつりの父や他のみんなと共に再建に協力している。

学園のキャラクター

諸角渉(もろかど わたる)

CV:近藤孝行(VOMIC)

まつりと同じクラスで、まつりの想い人。見た目は良いが口が悪い。サーフィンをしており、よく千葉の海に行って波乗りをしている。
黙っていても女が寄ってくるので、自分から本気で誰かを好きになったことはない。寄ってくる女は皆、諸角の顔が好みで付き合い、思い通りにならないと泣きわめくからどの女も同じだと思い込んでいる。常に女子に囲まれており、人気者ではある。しかし、サディストでまつりに対しては「キモイ」や「ごつい女好みじゃない」と暴言を吐くこともあった。
諸角は、学年一可愛い女の子と関係をこじらせる。しかし、諸角は反省の態度を示すことなく彼女を振ったので、復讐を受ける。それは夜の学校で男の集団にボコボコにされるというものだった。集団のなかにはボクサーもいて、諸角は鼻の骨を折られるところだった。しかし、それを助けたのがまつりだった。まつりは、深夜アニメの「レスキュー仮面」のマスクをつけて男たちと闘った。さらに現場に駆け付けた重松と、まつりは息を合わせてハニープリンセスの仮面に付け替えてボクサーの男も倒す。怪我を負っていた諸角は、意識が朦朧とする中で重松が「ハニー!」と叫んでいたことを聞いていた。以後、自分を助けてくれたハニープリンセスに興味を持ち始める。
ジョンソンズとまごころの対戦試合を観て、完全にハニープリンセスが学校に来たことを確信する。だが素顔を見ることはできずに、一人でレスキュー仮面のマスクの女を街中のカラオケボックスを回って探す。ずっと探しているうちに、今まで付き合ってきた女とは違うハニープリンセスに好意を寄せるようになる。
まつりがアクロバティックな動きをしたり、高いところから空中回転した様を見て、まつりが普通の女子高生でないことに気づく。そしてまごころプロレスに帰宅するまつりの後をつけて、まつりがハニープリンセスであることを突き止めた。まつりに感謝の気持ちを述べ、まつりとは距離が縮まる。だが、まつりが本当に大切に思っているのは重松であることに気づいた。北海道へ行ってしまう重松に会いにいくようにまつりを促し、最後はまつりの背中を押した。

井田知子(いだ ともこ)

CV:酒井香奈子(VOMIC)

まつりのクラスメイト。噂好きで、常にニュースがないかアンテナを張っている。特にまつりの家業が何なのかや、すぐに放課後直帰するまつりに対してはしつこく聞いてくる。重松が転校して来てからも、「前の学校で農家の牛を半殺しにした」という噂話をしていた。多くがガセネタであるが、知子は本気でニュースにしてクラス中に言いふらす。
自分で「トモコ★ニュース」という新聞を作り、学校の掲示板に貼っている。何か大きなヤマがないかと探していたところ、深夜の体育倉庫から出てくる重松を目撃した知子。真実は、まつりが諸角を助けて男たちを倒したのだが、その場に一人でいたのが重松だったので、知子は重松が外部の人間をボコボコにしたと報じる。それを信じたクラスメイトは、重松が本物の不良だとレッテルを貼った。まつりは自分がしたことなのに、重松のせいになったので反論する。重松は停学処分になりそうだったが、諸角の告発で事なきを得る。
その後も知子は抜け目なくニュースを探し、偶然街角の電柱に貼ってあるまごころプロレスのポスターを見つける。そこに重松が映っていたので、知子は重松がまごころプロレスのレスラーであるとクラスメイトに言いふらす。知子をはじめ、クラスメイトたちがまごころプロレスの試合を観戦することになった。結果、出てきたのはまつりであり、知子はまつりの闘う姿に感動する。
まつりが女子高校生レスラーとバレてからは、まつり専属ライターになることを目指し日々執筆活動をしている。

前野美々(まえの みみ)

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