虎と狼(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『虎と狼』とは2009年から2012年の3年間神尾葉子が『別冊マーガレット』で連載した青春ストーリーである。「ひまわり食堂」を切り盛りするヒロイン鳥沢美以(とりさわ みい)と、客としてやってきた男2人、大上謙(オオカミ)と千谷虎次(トラ)の3人が織りなす青春ストーリーである。冷酷なオオカミと優しいトラは対照的な二人であるが、美以の人生に様々な影響を及ぼし彼女を成長させてゆく。

『虎と狼』の概要

『虎と狼』とは2009年から2012年の3年間神尾葉子が『別冊マーガレット』で連載した青春ストーリーである。神尾葉子は、1992年からマーガレットで連載した大ヒット漫画『花より男子』の作者である。神尾の作品には、自分の意志をしっかり持つ溌剌としたヒロインがいることが特徴である。前述した『花より男子』のドラマ・映画化、アジア圏への進出を皮切りに神尾の作品は世間に多く知られるようになった。その後、女性がターゲットである『別冊マーガレット』だけでなく、男性をターゲット層とした『ジャンプスクエア』で『まつりスペシャル』を連載。2009年の『まつりスペシャル』の連載終了後、神尾はもう一度少女漫画の舞台に帰ってきた。その再スタートとなった作品がこの『虎と狼』である。
2010年に『虎と狼』第1巻が発売されたことを記念して、東京・神保町でサイン会が行われた。またこの作品は2013年モーションコミック版でも動画配信されており、トラの声優はアニメ『鬼滅の刃』で有名となった花江夏樹が演じている。現在ではモーションコミック版は配信終了されている。しかし、『花より男子アプリ』をダウンロードすると、スマートフォンやタブレットで毎日1話ずつ『虎と狼』を読むことが可能である。

BL小説をこよなく愛する女子高生・鳥沢美以(とりさわ みい)は、祖母と共に「ひまわり食堂」を経営している。家庭の味が売りの「ひまわり食堂」は、いわゆる昔ながらの食堂である。現代社会においても「ひまわり食堂」のような昔ながらの定食を出す店が少なくなってきており、大手フードコートチェーン店が食品市場を独占する。このストーリーは現代と作品がリンクするところでもある。現実問題、商店街での飲食店は立ち退きを迫られシャッターを閉めざるを得ない店も少なくない。
美以の店も細々とやっているが味は一流である。そこに客として上がり込んできたのが大上謙(おおかみ けん)(通称:オオカミ)と千谷虎次(せんごく とらじ)(通称:トラ)であった。冷静沈着で冷たいが優しいところもあるオオカミと、人から好かれやすいが愛する気持ちを知らないトラ。2人ともかなりの美形で、お互いのことを「トラ、オオカミ」と呼び合う美形男子2人組にBL好きの美以はたまらない。料理で2人の胃袋をつかんだ美以。就職が決まり離ればなれになると思っていた矢先トラとオオカミが美以の学校の教師として赴任することになる。3人は多くの時間を一緒に過ごしていく。美以のトラに対する恋愛、今までひとりぼっちだった彼女が本当の友達を見つけるなど、「食堂×学園」という設定で美以、トラとオオカミ3人の青春群像劇が丁寧に描かれている。「ひまわり食堂」の料理のメニューも具体的、繊細に描かれており神尾の写実性の高さが見られる漫画でもある。

『虎と狼』のあらすじ・ストーリー

美以、トラとオオカミとの出会い

第1話にて「オオカミ/大上謙」(真ん中の黒髪の男)と「トラ/千谷虎次」(右の目を瞑っている男)が、ひまわり食堂に突然やってくるシーン。2コマ目で、美以(左下の女の子)は突然やっきた美形男子たちに驚いている場面。

BL作品をこよなく愛する女子高生の鳥沢美以(とりさわ みい)は、おばあちゃんが営む「ひまわり食堂」を手伝っている。ある夜、大上謙(おおかみ けん)が千谷虎次(せんごく とらじ)をおぶって入店してきた。千谷虎次、通称「トラ」は空腹で意識がない。大上謙、通称「オオカミ」は美以が急いで作った料理をトラに食べさせた。トラは、昔ながらの家庭の味を提供するひまわり食堂を気に入り、オオカミにも食べるように勧める。だがオオカミは一口も口にせず、「お前が腹へってなきゃこんなとここねーし」とひまわり食堂を侮辱した。

翌日、同じ商店街にある店が閉店していたことを知る美以。もうすぐ、ひまわり食堂のある商店街が巨大なフードコート施設に建て替えられてしまうのだ。ひまわり食堂の存続が心配になった美以だ。
そんな折、美以のおばあちゃんが過労で倒れた。建築会社が工事計画を着々と進めている最中だった。ひまわり食堂とおばあちゃんを守る為、美以は手料理をおかもちにつめて、建築会社に乗り込む。一口食べてもらえれば、建築会社も考えを変えると思っていた美以だが、社長は食べてくれなかった。そこに、建築会社の社長の息子であるオオカミが現れる。美以は、数日前にトラをおんぶしてきたオオカミがひまわり食堂を偵察にしていたと勘違いしてひまわり食堂へ帰った。

トラから電話があり、美以はトラのいる大学の教室に行った。トラは日本画を描いているのだ。オオカミから、美以が会社にやってきた話を聞いたトラは、美以にオオカミの家族と会社の話をする。オオカミは会社を継ぐ気はなく、ひまわり食堂へ行ったのは日本画制作に夢中になりすぎて食事も摂らないトラを心配したからだった。そして、オオカミは幼い頃に両親が離婚し、母の手料理を食べたことがないのだ。オオカミがひまわり食堂のことを馬鹿にしていたのは彼の生い立ちが関係していることを知り、美以はおかもちに料理をつめて、オオカミの元へ持って行った。
オオカミは料理など注文していないので、美以の料理を食べようとしない。しかし美以は、「ごちゃごちゃ文句を言うのは食べてみてから!」と一喝する。ひまわり食堂を馬鹿にしていたオオカミに、「ひまわり食堂は心を込めて作っている」と伝えた。
翌日、トラとオオカミがひまわり食堂へ来店する。オオカミは空になったおかもちを美以に渡し、「うまかった」と伝えた。トラとオオカミはひまわり食堂の常連となる。それ以降、フードコート建設の話は一旦中止になった。

トラとオオカミが学校の先生に

高校2年になった美以は、始業式で驚きの光景を目にする。それは、トラとオオカミが美以の学年の新任教師になったことだ。
トラは笑顔で生徒に接するので生徒に人気である。対するオオカミは規律に厳しく、生徒からは不評だった。
美以は友達がおらず、お弁当の時間に「食べ物で釣って友達作ろうとしてんじゃねーよ」と言われてしまう。だがオオカミは「飯をうまく作るのは才能で個性だ。それを生かして何が悪い」と生徒に言った。美以の腕前を信用しているのだ。

夕暮れ時に、オオカミは生徒である宇都宮(うつのみや)が万引きをしようとする場面に遭遇した。クラスのリーダーである河田(かわた)の指示で万引きをしようとした宇都宮にオオカミは、「やりたきゃやればいい。ただ誰かの為に何かやろうとも死ぬときゃ一人だ。誰もお前のそばにはいない」と言う。宇都宮は万引きはしなかったが、河田に意見できない。河田は、新任でありながら生徒に厳しく接するオオカミに反感を持った。そして宇都宮を使い、美以とオオカミを資料室へ閉じ込める。
河田は、朝まで女子生徒と過ごせば、オオカミが懲戒免職になると考えたのだ。美以は、暗くて狭い資料室で混乱状態になり、発作を起こす。これは、美以が幼少期に列車の脱線事故に遭い、閉じ込められたことが原因である。オオカミは美以の手を握り、励まして美以を落ち着かせた。宇都宮は罪悪感でいっぱいになり、トラへ事情を白状した。トラが資料室に助けにきてくれたので、オオカミと美以は助かった。

トラへの恋

トラが美術部の顧問になったので、美以も美術部に入部した。そこで八戸弥生(はちのへ やよい)と出会う。弥生はトラの絵に強い憧れを持ち、さらにトラに恋をしている。積極的な弥生は、トラへ告白するつもりであることを美以に話す。美以はオオカミから、「トラへ恋はするな」という忠告を受けていた。なぜならトラは、人間の愛を受け入れる感情が欠如しているからだ。弥生にそのことを伝えられない美以は、自身もトラに恋をする。
弥生はトラに告白をし、あっけなく振られた。振られた後に弥生に、「トラが人の気持ちを受けとれない人で、それを前から知っていたけど伝えられなくてごめん」と美以は話した。2人で涙を流し、美以は弥生と心の通じ合う友達になった。

弥生の真剣な恋心を知っていた美以は、トラが弥生の告白を「10代にありがちな感情」と冷たく言い放ったことに腹を立てた。喧嘩になった美以とトラ。そしてトラはひまわり食堂に行かずに倒れた。そんなトラの元へ美以を無理矢理連れて行くオオカミ。オオカミは味のないお粥を作り、美以は料理が得意なので定食をさっと作る。「俺が作ったもんは味が足りないだろう?個性ってやつだ。人間も同じ。みんなどっか足りないもんなんだよ」と言った。
この言葉で、美以はトラの人の気持ちを受け取ることができない、ひとつの個性を認めた。そして美以とトラは仲直りした。

美以の失恋

トラとオオカミが引率の林間学校で、美以と河田は山登りのペアになった。河田はいつも人をいじめてきた仇でリーダー格から降格し、友達からハブられている。だが、山で足を怪我した河田を手当てした美以のおかげで、河田は今までのようにいじめることを辞めた。美以の優しさが河田を改心させたのである。
しかしこの山登りで、河田をハブるクラスメイトが道順をぐちゃぐちゃにし、美以と河田を迷子にさせる。2人は無事に帰ってきたが、クラスメイトの1人が「作戦成功」と笑ったので、トラはその生徒の胸ぐらを掴む。よってトラは自宅謹慎になった。
ひまわり食堂に顔も出さないトラは久しぶりに美以と商店街で会う。美以は、ぎこちない笑顔のトラに「笑顔のトラじゃなくたっていい。トラはトラだもん!あたしはトラが好きだもん!」と告白する。トラは美以の気持ちには応えられなかったが、礼を言った。

失恋した美以を元気づける為、弥生は美以と渋谷へ行く。カツアゲに遭った2人を助けたのは、同じクラスの関獅子雄(せき ししお)である。獅子雄は美以の溌剌とした性格を気に入った。ずっと不登校だった獅子雄だが、オオカミが獅子雄に「退学するならしてもいい」と教師らしからぬ事を言ったことで、獅子雄はオオカミに興味を抱き登校する。友達も多く、チャラい獅子雄は美以に「俺の女になんない?」と授業中に告白し、美以にキスをした。

デストロイヤー紅子

溢れる涙をこらえきれず、オオカミの白衣で顔を覆う美以(中央)。トラとの会話で美以のことを悪く言った事をオオカミは謝ってくれた。

獅子雄と美以がキスしたことで、オオカミは美以にやきもちを妬き、2人を教室から追い出す。また、謹慎から復活したトラにオオカミが「鳥沢は男なら誰でもいいやつだ」と話していることを聞いた美以は、自棄になって獅子雄と学校をサボった。そこにオオカミが汗をかきながら連れ戻しにやってくる。オオカミの「男なら誰でもいい」と言った言葉が悔しくて、涙を流す美以。「ごめん」とオオカミは美以の頭を撫でて、美以は溢れる涙をオオカミの白衣で拭った。

オオカミと美以が寄り添っているところを、生徒の小谷紅子(こたに べにこ)が隠し撮りしていた。
紅子は、トラやオオカミと仲良くする美以を妬み、「あんたの態度が教師であるトラとオオカミの立場を危険に晒している」と脅す。さらに紅子は「美以がひまわり食堂にトラとオオカミを招待している」とクラスメイトに噓をつく。人気者のトラとオオカミに会いたいがために、大勢のクラスメイトがひまわり食堂にやってきて、椅子を蹴とばしたり、電気の配線を壊す。そしてトラとオオカミが登場したことで店内はさらに盛り上がり、収拾がつかなくなった。
美以は、トラとオオカミがひまわり食堂にやってくるとまた同じことが起こると思ったので「先生たちは、もう来ないで下さい」と、トラとオオカミに冷たく言った。
店内が破壊されたひまわり食堂を見て、おばあちゃんはひまわり食堂を閉店したのだった。

すべての真実が明らかに

ひまわり食堂がなくなり、トラとオオカミと距離を置く美以は、放課後に獅子雄と食事をする。だが思い出すのはオオカミのことばかりだ。資料室で手を握ってくれたこと、料理を褒めてくれたことが美以の心に残っている。獅子雄は美以に再度真剣に告白するが、美以はすぐに返事ができずに帰った。
獅子雄と美以が仲良くしていることも紅子は妬み、獅子雄から離れるように美以に言う。だが美以は屈せず、紅子のおかげでトラとオオカミやひまわり食堂のありがたみを感じることができたと言った。それをオオカミが聞いていたのである。オオカミは事情を話すように美以に言うが「先生には関係ないです」と美以は言い切る。美以はオオカミを巻き込みたくないのだ。だがオオカミは「先生とか呼ぶな。生徒だなんて思ったことは一度もない」とはっきり言った。
オオカミは、ひまわり食堂を閉店にまでおいやったのが紅子で、今まで紅子が美以に嫌がらせをしていたことを知る。だが紅子は「生徒だなんて思ったことは一度もない」というオオカミの発言を受けて、校長に「美以とオオカミは交際中だ」と噓をつく。オオカミは教師を辞めることになった。
だが紅子に対して「オオカミを悪く言うのは許さない」と強気で発言する美以である。

オオカミは教師を辞め、親の跡を継ぐことにした。だが紅子はまだ懲りない。最後のとどめにオオカミを体育館に呼び出す。紅子は自ら制服を脱ぎ、教頭らを呼んでいた。オオカミをわいせつな教師としてでっち上げるつもりだ。だがトラがその様子を携帯で撮影していたので、計画は失敗し、紅子は懲りた。

ひまわり食堂復活

オオカミが目にしたのは、美以の気持ちが書かれたメッセージであった。

オオカミが学校を去ったあと美以は獅子雄からの告白を断った。
その後の文化祭で、美以はクラスメイトとフォーチュンクッキーを作る。美以は「オオカミが大好き」と書いた手紙を入れた。手料理を作り、美以はオオカミが働く建築会社に行った。だがオオカミは美以と会うことができない。
必死に美以を探したオオカミは、美以を見つけて抱きしめた。美以はオオカミに「オオカミのことばかり考えてしまって、それを言葉にしようとしたら大好きだった」とありのままの気持ちを伝える。フォーチュンクッキーの手紙を読んだオオカミは美以への恋心を確信し、「この気持ちはその言葉(大好き)で表すのか」と言った。オオカミと美以は結ばれたのだ。

美以はひまわり食堂の味を採用してくれる食品会社へ就職が決まっていた。トラは日本画で大成し、パリを拠点に活動することなった。
忙しい合間を縫って会うオオカミと美以ははじめてのキスをした。交際を続ける2人だが、美以は突然、「九州の離島で教師になる」とオオカミから告げられる。オオカミは美以の就職を応援したが、美以の夢は大好きな人に料理を作ることだった。だから、ひまわり食堂のレシピノートを食品会社の社員に渡して就職を断わる。美以とおばあちゃんはオオカミのいる離島で、ひまわり食堂を復活させた。
海辺で生徒と課外授業をするオオカミは、ひまわり食堂ののれんを持つ美以を見つけた。2人の間に言葉はいらない。同時に駆け寄り、優しく抱き合う美以とオオカミであった。

『虎と狼』の登場人物・キャラクター

ひまわり食堂

鳥沢美以(とりさわ みい)

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