ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷(GUILTY GEAR X)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷』とは、格闘ゲーム『GUILTY GEAR X』をノベライズ化した、海法紀光によるライトノベル作品。挿絵は『GUILTY GEAR』シリーズの生みの親である石渡太輔が担当している。原作の世界観を見事に小説化しており、海法が『GUILTY GEAR』シリーズのシナリオに携わるきっかけともなった。
国際警察機構長官カイ=キスクは、生体兵器ギアを追ってロンドン近郊に赴く。そこには万能の薬を完成させたと豪語するブラッカード社と、行き場の無い不法移民たちの姿があった。

『ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷』の概要

『ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷』(ギルティギア ゼクス ハクギンノジンライ)とは、人気格闘ゲーム『GUILTY GEAR X』(ギルティギア ゼクス)をノベライズ化した、海法紀光によるライトノベル作品。
初代『GUILTY GEAR』の後、2作目となる『GUILTY GEAR X』の物語が始まるまでの時間軸を舞台としている。原作の2大主人公の1人であるカイ=キスクを中心に、『GUILTY GEAR』の雰囲気と世界観が巧みかつ流麗な筆致で描かれ、ノベライズ作品としては非常に高い評価を受けている。その反面、「『GUILTY GEAR』を知らない人にとっては敷居が高い」と指摘する声も存在する。

挿絵は『GUILTY GEAR』シリーズの生みの親である石渡太輔が担当している。石渡も本作のクオリティを絶賛しており、「作品の世界観を広げ、また前進させている」との帯コメントを贈っている。そういった各方面からの高い評価が、海法紀光が後に『GUILTY GEAR』シリーズのシナリオ制作に携わるきっかけともなっていった。
格闘ゲームとしての『GUILTY GEAR X』には登場していない、この時点では設定しかなかったキャラクターがわずかながら作中で顔を見せている。多少ながら設定が変わったのか、あるいはファンサービス的な顔見せに留めたいという思惑があったのか、後にゲーム本編に登場した時と比べるとかなり言動が異なっている。

法術と呼ばれる魔法じみた技術の確立と、生体兵器ギアとの熾烈極まる大戦争「聖戦」を経た22世紀の地球。世界は表向き平穏を取り戻すも、戦争の傷跡や未だ暗躍を続ける聖戦の黒幕たちの存在により、各地に火種が燻る状態にあった。
国際警察機構の長官でもある青年剣士カイ=キスクは、「微弱ながら戦略級のギアが稼働している信号を捉えた」との情報を得て、その痕跡を追ってロンドン近郊へと赴く。そこにはあらゆる病気や怪我はもちろん、四肢の欠損すら癒す万能の薬“ヴィタエ”を完成させたと豪語するブラッカード社と、行き場の無い不法移民たちの姿があった。

『ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷』のあらすじ・ストーリー

ギアの蠢動

法術と呼ばれる魔法じみた技術の確立と、100年にも及ぶ生体兵器ギアとの熾烈極まる大戦争「聖戦」を経た22世紀の地球。世界は表向き平穏を取り戻すも、戦争の傷跡や未だ暗躍を続ける聖戦の黒幕たちの存在により、各地に火種が燻る状態にあった。
対ギアを目的に結成された聖騎士団に身を投じ、青春時代を聖戦末期の戦場で過ごした剣士カイ=キスクには、「どうしてもあの男に勝ちたい」と強く願う相手がいた。ソル=バッドガイというその男は、実力こそ聖騎士団屈指のものを持ちながら規律を無視した行動を繰り返し、ついには聖騎士団の秘宝を奪って逃走。真面目なカイは、団長のクリフ=アンダーソンに「ソルは聖騎士団に馴染めなかっただけで、ギアとの戦いを放棄したわけではない」と諭されながらも、「いつかソルを倒し、正義の鉄槌を下してみせる」との想いを日に日に強くしていった。

聖戦が終わる直前にクリフから団長の座を譲り受けたカイは、聖戦で壊滅したはずのギアたちの中に未だ稼働している個体があることを知り、国際警察機構と名を変えたかつての聖騎士団を率いて各国に睨みを利かせていた。クリフが命を落とすこととなったとある大きな事件の後、カイは「微弱ながらロンドン近郊で戦略級のギアが稼働している信号を捉えた」との報告を受ける。
そこはかつて、クリフが戦闘不能状態まで追い詰めたヒュドラという超大型のギアが封印された場所でもあった。万が一の可能性に備え、カイ自らが調査に赴く。そこで彼を待っていたのは、「あらゆる病気や怪我はもちろん、四肢の欠損すら癒す万能の薬“ヴィタエ”を完成させた」と豪語するブラッカード社と、行き場の無い不法移民たちの姿だった。

ブラッカード社の陰謀

ブラッカード社の社長シーバスは、有名人であるカイがロンドンにやってきたことを知り、彼をヴィタエの宣伝に利用しようと考える。この地域で大きな勢力を持つブラッカード社になら何か情報があるのではないかと考えたカイも彼らに接近するが、ヴィタエの完成を喧伝するパーティーに参加した際、そこにソルが乱入してきたことで大きな混乱が発生する。
パーティー会場で暴れ回るソルに、カイは激昂して斬りかかるも軽々とあしらわれ、「ここに目当てのものはない」とばかりに逃げられてしまう。ソルがソルなりにギアとの戦いを継続していることを知るカイは、「ブラッカード社はギアとなんらかの関係があるのではないか」と判断し、その動きを注視していく。シーバスはそんなカイの思惑を知ってか知らずか、彼の関心を買うかのように、完成したばかりのヴィタエを1つ「もしもの時は使ってほしい」と進呈する。

聖戦によって故郷を失った人々は数限りなく存在しており、ロンドン近郊の不法移民たちもそんな者たちの集まりだった。調査する中でここを訪れたカイは、孤児たちと共に暮らすマリーナという若い女性と出会い、その人柄を信頼して協力を要請。マリーナは足に障害を抱えていたが語学が堪能で、移民街で代筆や翻訳をして糊口を凌いでいた。それだけに移民街で起きる様々な出来事に詳しいマリーナは、「不法移民の私を逮捕しないでくださいね」と冗談めかした言葉を口にしつつ、カイに協力するようになる。
移民街には、紙袋で顔を隠した「ファウスト」を名乗る闇医者が滞在しており、名医である上に無料で診てくれるということもあって移民たちから頼りにされていた。マリーナの紹介で彼と面会したカイは、「最近移民たちの間で謎の奇病が流行っている」という話を聞き、ブラッカード社が移民を相手に人体実験をしているのではないかと推測する。

ヴィタエの正体

調査を進めていく中、カイは「仕事が終われば自分は国際警察機構に戻る。日々の生活も苦しい中で協力してくれたマリーナに、彼女のこの先の人生に役立つ何かをしてあげたい」と考え、シーバスから受け取ったヴィタエを譲る。マリーナは「私は今の自分に満足している」と怒るも、カイの気持ちと今後の人生を考えてヴィタエを服用。するとブラッカード社の謳い文句のごとくに彼女は自分の足で歩けるようになり、周囲を驚かせる。
しかし、再びロンドンで超大型ギアの活動が一瞬ながら観測された時、マリーナの足は突如異形と化して彼女を襲う。カイはこれに驚き、異形化したマリーナの足を切り落としてファウストの下へと運ぶ。ここに至ってカイは「ヴィタエは尋常の薬ではない、あれは薬の形にしたギアそのものだ」という事実に気付き、自分の迂闊な行為がマリーナの人生に大きな傷を残したことに絶望する。

ソルの狙いもまた、ブラッカード社がヒュドラを加工して作り出したヴィタエそのものを消滅させることにあった。彼が動き出したことを悟ったカイは、全てに決着をつけるべく自らもブラッカード社に乗り込む。ヴィタエの研究のために刺激され続けたヒュドラが封印から目覚め、ファウストが死に物狂いで移民街の人々を守る中、カイはヴィタエを服用してギアとしての力を得たシーバスと対峙。「ギアとの肉体的共存こそが人類の進むべき道だ」と語る彼を打ち倒す。
ソルによってヴィタエは滅び、総力を結集した攻撃によってヒュドラが再び沈黙する中、カイは傷だらけの体を支えて立ち上がる。ソルとの決着は持ち越しとなり、ヒュドラにより街には大きな被害が出た。それでもカイやファウストの奮戦によって人的被害は軽微で、マリーナや人体実験の素材にされていた人々も無事だった。途方もない問題が山積みであることを理解しながら、そんな彼らが生きていてくれたこと、彼らの力になれることが何よりも嬉しく誇らしいと、カイは涙を流すのだった。

『ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷』の登場人物・キャラクター

カイ=キスク

元聖騎士団団長にして、国際警察機構の長官を務める青年剣士。文武両道かつ天才肌の人物で、真面目で正義感溢れる清廉潔白な人物。
原作となる『GUILTY GEAR X』では、ソルと並んで2大主人公の1人である。本作では主人公として時に悩み、時に過ちを犯し、時に雄々しく戦い、世のため人のため尽くさんとする。

マリーナ

本作のヒロインにしてオリジナルキャラクター。移民街で暮らす若い女性で、語学が堪能なことを活かして翻訳や代筆を仕事にしている。足に障害を抱えており、車椅子無しでは動くことができない。普段は移民街の子供たちに勉強を教えている。

ソル=バットガイ

元聖騎士団所属の戦士。カイやクリフと並んで聖騎士団でも屈指の猛者だったが、周囲と足並みをそろえて動くことに馴染めず、ついには聖騎士団の秘宝を奪って逃走。独自にギアとの戦いを続けていく。
実は彼自身がプロトタイプのギアであり、実年齢は150歳ほど。望まぬ生体実験によって得た力を振るって戦いながら、かつての友人にしてギアの創造主たる男を追い続けている。

クリフ=アンダーソン

カイの前に聖騎士団団長を務めた戦士。青年期から老年期までを聖戦の中で戦い抜き、老いてなおカイやソルに勝るとも劣らぬ力を持っていた。物語本編開始前に、とある大きな事件の中で死亡している。
実力的に絶頂だった若い頃にヒュドラと戦い、これをほぼ戦闘不能に追い込む。しかしその状態でもヒュドラの生命活動を止めるまでには至らなかったこと、助けを求める他の戦場に急いで向かわなければならなかったことからトドメは刺さず、封印した上で立ち去った。

ファウスト

逆さにした紙袋を頭に被った、顔も正体も分からぬ謎の闇医者。非常に高いレベルの医療技術と法術を修得しており、現在は移民街で活動している。見た目は不審極まりないが善良な人物で、ギアについて調べるカイに真摯に協力する。
その正体は、患者を死なせてしまった罪の意識によって狂気に陥り、殺人鬼と成り果てた名医ボルトヘッド。クリフが死亡した事件の中で正気を取り戻し、罪の重さを自覚して自ら命を絶つことも考えるが、「1人でも多くの人を救ってからでないと死んでも死にきれない」との思いから正体を隠して闇医者となった。

シーバス

ブラッカード社の社長。本作オリジナルのキャラクター。鷲鼻の痩せぎす男で、作中ではハイエナに例えられている。
ヒュドラから採取したギア細胞を加工した丸薬を万能薬ヴィタエとして売り出そうと画策。最終的に自らヴィタエを摂取してギアとしての力を獲得し、「ギアとの肉体的共存こそ人の進む道だ」と語ってカイに襲い掛かるも、彼に返り討ちにされる。この野望が本心からのものか、ヴィタエの研究の中でギアに影響されて抱くようになったものかは不明。

『ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷』の用語

ギア

YAMAKUZIRA
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@YAMAKUZIRA

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