雷火(Raika)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『雷火』とは、原作寺島優、作画藤原カムイによる日本の漫画作品。スコラの漫画雑誌『コミックバーガー』および『コミックバーズ』にて1987年から1997年まで連載された。舞台は紀元3世紀ごろの邪馬台国。日本を乗っ取ろうと企む魏からの外交官・張政を相手に戦うライカたちの活躍を描く。邪馬台国卑弥呼の後継者、壱与を守ろうとするライカたちと壱与を利用して日本を乗っ取ろうとする張政たちの戦いは、周りの国をも巻き込む戦となっていく。

術は完全に破られ、壱与は正気を取り戻す。そこへ張政が現れるが、駆け付けたライカが張政の前に立ちはだかり、ライカと壱与は久しぶりの再会を果たす。その頃、深い谷に入っていったまま行方不明になっていたウツキは、地下で労働力として使われていた生口たちと接触し、張政が「神に等しい皇帝」となる儀式のために建設中の「大霊殿」と壱与の力を必要としていることを知る。一方、地上で張政が残していったものがないかとナシメとニキメは張政の館を捜索する。そして、魏の国の帝から賜った「親魏倭王の金印」がなくなっていることに気づく。

11巻 羂索(けんじゃく)編

一度張政から逃れたライカと壱与。しかし、部下のイキナメが二人を追ってくる。幻術を使って二人を惑わすが、そこへ目が見えないため幻術が通用しないウツキが現れ、コウモリたちを操ってイキナメを襲う。イキナメは生き血を吸わないと力がなくなってゆく体質で、戦いのさなかに血が足りなくなってくる。オタジも現れ、イキナメは形勢不利と悟り退却する。そしてウツキがライカたちに生口に聞いた話をすると、壱与が「それは封禅という儀式で、皇帝となるためには巫女の神と交信する力が必要です。私がここにいる限り儀式はできないはず。」と言う。

その頃、地上ではいつまでも帰ってこないライカたちを心配し、クコチヒコと砦の仲間、タキ、ダナン、キジノヒコと夜美、最後にリンまでもが谷底へ飛び下りる。彼らは背中にムササビのように布を背に充てていたため、全員無事に谷底へ到着し、ライカたちを追う。
その頃、熊鬼山の老師は朝鮮半島の帯方郡(中国と倭の国を結ぶ要所)で張政のことを調べていた。保管してあった張政の父・張鞘(ちょうしょう)が邪馬台国への行程を書いた書類は、まったく違う場所に着くように書いてあった。張鞘は帯方軍で亡くなったが、最初から魏の滅亡を予想し、息子の張政に邪馬台国を支配させるつもりだったことを知る。そしてその支配のためには「親魏倭王の金印」が必要であることも書かれていた。そして老師は皇帝になるための秘儀を記した巻物を見つけ、急いで邪馬台国へ帰る。
一方、ライカ、オタジ、ウツキ、壱与の4人は追ってきた張政の部下、ワタハタとイキナメに襲われていた。キジノヒコや夜実も加勢に駆け付けるが、壱与を奪われてしまう。ライカは壱与を連れ去ったイキナメに追いつき、死闘を繰り広げるが、その戦いは落盤を呼び、壱与を取り返したもののライカたちは地下に閉じ込められてしまう。その頃、張政はいつまでも思い通りにならない女王奪還に業を煮やしていた。その時、張政は邪馬台国にはもう一人の巫女がいることを思い出す。

了 神祇(じんぎ)編

張政が思い出したもう一人の巫女とは亡くなった卑弥呼であった。卑弥呼の亡骸に蘇生の術を使い、思い通りに操れるようにしたのだ。ライカたちは地下で発生したガスを利用して洞穴を爆破し、無事「大霊殿」へと入るが、そこで待っていたのは女王卑弥呼を従えた張政であった。ライカたちは術をかけられた生口たち、イキナメ、ワタハタ、ムジンに行く手を阻まれ、張政は卑弥呼と「親魏倭王の金印」を使って「封神の儀」を始めてしまう。蘇生させた卑弥呼では最後まで執り行うことができなかったが、張政は「地の龍」としての力を手に入れる。しかし完全に神に等しい者となるためには「天の龍」の力が必要であり、ライカはそれを阻止しようと張政に向かってゆく。
ワタハタ、ムジンを倒したものの、張政の力は強く、邪馬台国をなんなく破壊してしまう。地上で待っていた狗奴国のエンギシ、ナシメ、ニキメたちは浮かび上がった岩に摑まりながら宙を漂い、眼下に巨大な穴を見る。そこは「大霊殿」のあるところだった。中では張政に吹き飛ばされたライカが仲間のところまでたどり着いていた。それを見ていたイキナメは後ろからライカに切りかかる。しかし、その刃を体で受けたのは、熊鬼山の老師であった。老師に反撃されたイキナメは重傷を負い、張政に助けを求める。しかし張政は、「地の龍となった今、お前のような虫けらには用はない。」と言い、イキナメを吹き飛ばす。イキナメはライカたちのところまで飛ばされてきて、ライカは張政の無慈悲さに怒りを覚えるが、イキナメは「いずれこうなる運命だった。ライカ…お前こそが天界を治めるにふさわしい男だ。…人殺しの末路などこのようなものなのかもな。」といった後に自爆する。
そうしているうちに老師の衰弱が激しくなり、老師は帯方郡で手に入れた巻物を壱与に渡し、ライカに壱与の力を与えるようにと告げると息を引き取ってしまう。その巻物には、地の龍を倒すには、天の龍になるよりほかにないと書いてあり、「選ばれし大王と選ばれた女王が心を一つにして交わるとき大王は大気の力を得て天の龍になれり」と記してあった。ライカが張政のそばにあった「親魏倭王の金印」を持ってきていたため、それを壱余の胸に置き、二人は結ばれる。その間、張政と戦っていたキジノヒコはオタジ、ウツキの盾になって腹に重傷を負い、張政とともに自爆するが、張政には全く効いていなかった。
張政が反撃しようとしたその時、天の龍となったライカが現れ、地の龍対天の龍の戦いが始まる。

張政が起こした火山の上で戦っていた二人だったが、その舞台はやがて宇宙となり、張政はライカの攻撃を受けるたびに巨大になっていく。地の龍は、天の龍のエネルギーを蓄え、巨大になることができたのだ。ライカがあきらめかけたその時、壱与の声が聞こえる。「心身を一点に据え一切の邪念を捨てて空(くう)になるのです。宇宙の一番深い気を感じたらすべてを受け入れなさい。すべてを与えなさい…」それを聞いたライカは気や力を体にため込むのをやめ、からっぽになる。するとライカから発せられた気が一度に張政の中に入っていき、その膨大なエネルギーは張政の体を一時に膨らませ、やがて爆発させた。地上では血の雨が降り、張政は自らおこした火山の中に落ちてゆく。それでもあきらめない張政は、大激震を起こし皆を道連れにしようとするが、天の龍であるライカの「厳つ霊(いかつち)の怒り」を受け、火山の中に沈んでゆき、塵となって息絶える。
その後、邪馬台国、狗奴国、クコチヒコの砦の皆もライカについて新しい国を作ると誓い、熊鬼山の老師の墓の前で別れを告げ、夜実もキジノヒコの墓前に花を手向ける。その後、狗奴国王・ヒメキコソの鳥葬が行われる。式のさなかに金色のカラスがやってきて狗奴国の者たちは撃ち落とそうとするが、壱与は金色のカラスは邪馬台国ではよいことの兆しで、撃ち落とさないよう告げる。金色のカラスは東に向けて飛び去り、それを見ていたライカはつぶやく。「あのカラスに導かれて東に国を作るのもいいかもな。」
ライカたちがこの後どうなったかは不明である。大和朝廷が出現するまでの約150年間は暗黒の四世紀といわれ、今でもベールに包まれたままになっている。

『雷火』の登場人物・キャラクター

熊鬼山

邪馬台国近辺の山の名前。現在の八女市熊渡山。老師とライカを始めとする孤児達が密かに暮らしている。

ライカ

主人公。壱与に一目惚れし、助けようとするうちに、邪馬台国という国そのものに興味を持ち始め、幼馴染のオタジ、ウツキと国を興す決意をする。リーダー格で自己主張が強い行動派。雷の鳴る雨の夜、産着に包まれ捨てられているところを、老師に拾われ育てられる。老師に教えられた神仙術の腕は仲間の中で群を抜いており、あらゆる術を使いこなす。中盤で邪馬台国の敵国、狗奴国の皇子ということが判明し、王になるための儀式、「五房の行」を通過したことでそれまでの能力を凌駕する力と精神を獲得する。怒ると髪の毛が逆立ち、雷を呼ぶ。

老師

大陸から渡ってきて熊鬼山に住む神仙術の達人。孤児を集めて神仙術を教えながら育てている。大陸の様々な事柄にも精通しており、張政のたくらみを暴き、最後はライカを守って息絶える。

オタジ

ライカの幼馴染の孤児。ライカに次ぐ神仙術の使い手。明朗快活な性格でムードメーカーだが、一時の感情に流されやすく、危機を招くこともある。物語序盤でキジノヒコにより左腕を失い、彼を敵視するが、最後は味方としてともに戦う。

ウツキ

ライカの幼馴染の孤児で神仙術の使い手。冷静沈着な性格。ライカの中に、自分にはない激しさがあるのを見抜き、それに惹かれてライカに付いていくことを決意する。狗奴国でキジノヒコによって受けた拷問により視力を失い、死線を彷徨うが、回復後重ねた修練により聴覚や嗅覚が研ぎ澄まされ、仲間の力となる。

邪馬台国

二十以上の国からなる倭国連合の都であり、女王卑弥呼による政治が行われた国。魏の皇帝により親魏倭王として認められ、金印紫綬を授けられている。魏国の人間・知識・技術をとりいれ更なる発展を目指している国。邪馬台国の所在にについては現在も議論が続けられているが、本作品中では現在の福岡県朝倉市付近としている。

卑弥呼

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