アナグルモール(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『アナグルモール』とは『週刊少年サンデー』にて連載された、福地翼によるバトル漫画作品。間人と呼ばれる特殊能力を持った地底人同士が派手なアクションを繰り広げるファンタジー作品となっている。コメディ要素も多く、ギャグとバトルのバランスが良い人気の少年漫画である。地底人である間人の少年・ルチルは、地上を征服する為、地上人のふりをして弱点を探るスパイであった。日本に住む草薙家にホームステイすることになったルチルは、そこで家族の愛情や地上人の強さを知り、やがて地上人と共闘する道を選んでいく。

『アナグルモール』の概要

『アナグルモール』とは、福地翼による異能力者同士のバトルを中心としたファンタジーバトル漫画作品。
『週刊少年サンデー』にて2011年47号から2014年6号まで連載され、単行本は全5巻発行されている。福地翼が体調不良となった為、2012年9月より1年間休載となる。2013年10月より連載を再開して『週刊少年サンデー』の2014年6号にて完結させた。福地翼の連載作品4作目の漫画である。

本作は、人間に姿形がよく似た地底人・間人(まじん)が、地上世界を征服しようと企み、地上人の弱点を探ろうとするスパイアクションである。間人は長らく地上との繋がりを断っていた為、「地上人は圧倒的な力を持つ残虐な生き物」という根も葉もない噂が地底には広まっており、その勘違いから巻き起こる様々なトラブルがコメディタッチで描かれている。
物語は、主人公のルチルが地上人の弱点を探る地上スパイ編と、地下世界(アナグランド)を舞台に異能力を使って戦う地下世界編の2つで構成される。「マジナグラム」と呼ばれる間人が持つ特殊能力を使ったダイナミックなバトルシーンや頭脳戦が、本作最大の魅力である。また、「友情」や「家族の絆」というワードも作中では大事な要素となっている。

地上人が住む地球のはるか下に、「間人」と呼ばれる地底人が住む世界「地下世界」があった。間人は地上世界に強い憧れを持っていたが、地上世界は間人をはるかに凌ぐ能力を持つ残虐な生き物・地上人が支配する場所だとして恐れられていた。
何万年もの間、地下世界だけで暮らすことに不満を感じた間人の王は地上世界を征服する計画を立て、その第1歩として地上の情報を探るスパイを派遣することを決定する。そしてスパイとして選ばれたのが臆病で落ちこぼれの少年・ルチルであった。ルチルは、地上人のふりをして日本に住む草薙(くさなぎ)家にホームステイという形で潜入し、地上人の弱点を探るスパイ活動を開始する。

『アナグルモール』のあらすじ・ストーリー

プロローグ

主人公の少年・ルチルは、間人(まじん)と呼ばれる地底人である。地上世界征服のスパイとして王に選ばれたルチルは、相棒の間獣(まじゅう)・バハムートと共に地下世界(アナグランド)から地上へとやって来た。地上人の弱点と情報を地底世界に持ち帰ることを目的とし、日本に住む草薙(くさなぎ)という家族の下へホームステイという形で潜入することになっていた。
草薙家は、明るく家族思いの高校生・千羽(ちわ)、強面だが根は優しい中学生・京介(きょうすけ)、やんちゃ盛りの小学生・誠(まこと)、肝っ玉母さんの十羽子(とわこ)、腕っぷしの強い祖父・誠十郎(せいじゅうろう)の5人家族で、ルチルを快く迎え入れる。家族という概念がない間人のルチルは、戸惑いながらも正体がバレないように地上人のふりをしてスパイ活動を開始するのであった。

スパイ活動開始

草薙家の輪に溶け込んだルチルは地上人の情報を集める為、「キオク草(きおくそう)」という地底世界の植物を草薙家の家族全員の首筋に埋め込んで、数日間様子を見守ることにした。キオク草は、対象物に埋め込むことでその遺伝子情報を完璧に記憶するというUSBメモリーのような植物である。その間に京介と共に中学校に通うなどして、ルチルは命がけのスパイ活動をつづける。
そんなある日、ルチルは千羽を付け回す怪しいストーカーと出会う。ストーカーは絵描きの見習いで、1か月程前に千羽と出会い、可愛らしい容姿と優しさに惚れて四六時中付け回していた。千羽はストーカーの存在に脅えながらも家族に心配をかけまいと気丈に振る舞っていたが、弟の京介はそんな心境を見抜く。京介は、普段は乱暴な言動が目立つ不良のような少年だが、誰よりも家族思いで正義感の強い男であった。千羽の身を守る為、自分の危険を顧みずストーカーと直接対決に向かう京介の姿を見たルチルは心を動かされ、密かに京介の助けになろうと決意する。
間人は、物体になんらかの変化を起こさせる「マジナグラム」と呼ばれる特殊能力を持っていた。ルチルのマジナグラムは、物体を一時的にへこませたり突き出させたりすることができる「隆起(デコス)」と「陥没(ボコヘル)」である。素手で戦う京介に対し、ストーカーはスタンガンを持って応戦してきた為、ルチルは咄嗟に地面を隆起させてストーカーの手からスタンガンをはじき飛ばした。丸腰になったストーカーを京介が殴ったことでストーカーの撃退に成功する。

千羽のストーカー事件から数日後、ルチルは学校で京介がクラスメイトの男子数人から暴行を受けている現場を目撃する。京介は、気弱そうな男子生徒を集団でからかおうとしていたクラスメイト達に喧嘩を仕掛け、返り討ちに遭っていたのだった。助けに行くべきかルチルが悩んでいると、クラスメイトの1人が「関係ねー奴のためにそこまでするか?」と京介の行動に疑問を投げかける。友達でもない人が傷ついても自分には関係ないのに、あえてトラブルに入り込み痛い目に遭う京介の言動がクラスメイト達は理解できなかったのだった。
「見て見ぬふりはみんなしていること。周りと同じにしていればいい」と口にするクラスメイトの言葉に、影で聞いていたルチルは自分の置かれていた境遇を思い出す。ルチルは、地下世界にある「ピシャクリフ」と呼ばれる学校のような施設に通っていたが、臆病な性格と役に立たない能力の持ち主という理由で同級生達から落ちこぼれだとみなされていた。仲間に見捨てられないように、無理して周囲と足並みを合わせて生きてきたルチルは、地上世界でも周りと違うものは認められない存在なのだと知って落胆する。しかし、京介はそんなクラスメイトの言葉に「オレは周りと同じになんてなれねーよ。オレは『アナグルモール』なんだよ」と答えるのを聞いて、ルチルは京介の強さの秘密がアナグルモールという言葉にあると気付いた。
ルチルは、アナグルモールがなんなのか知りたくて、学校の帰りに思い切って京介本人にアナグルモールのことを質問する。周囲からはじかれても平気でいられる京介の強さの秘密を、ルチルはどうしても知りたかった。真剣な表情で質問するルチルに、京介はルチルが人間でないことに薄々気付いていたことを打ち明け、「それでも今は一緒に暮らす家族だから」とアナグルモールの意味を話そうとする。しかし、その時背後から黒いコートを着た少年が現れ、2人を呼び止める。
クワトロールと名乗るコートの少年は、スパイ活動をするルチルを監視する為に地下世界からやって来た使者であった。クワトロールは、ルチルがスパイに失敗して地上人に捕まった場合、逆に間人の情報が地上世界に漏れないないようにルチルを処分するという任務を持っていた。
京介がいるにも関わらず、クワトロールは「小型化(コルト)」というマジナグラムを駆使してルチルを翻弄する。クワトロールがルチルに攻撃を仕掛けた時、傍で2人の戦いを見守っていた京介が身を挺してルチルを庇った。京介は、ルチルが何者であっても今は家族の一員であることに変わりはないとして、助けようとしたのだった。
間人の力は地上人の力よりも遥かに強い為、京介はクワトロールの一撃を横腹に受けて倒れてしまう。瀕死の重傷を負ったにもかかわらず、京介はなおもルチルを助けようとクワトロールの足を掴んで妨害する。能力でははるかに劣る地上人を相手に恐怖を感じたクワトロールは、ルチルに最後のチャンスだとして草薙家全員のキオク草の回収を命令する。その任務を終わらせれば、地上人に正体がバレたことやこれまでの失敗を全ても揉み消され、地底世界で偉業を成した英雄にしてやるとクワトロールは持ち掛ける。しかし、赤の他人である自分を家族の一員として接してくれた京介達を裏切るという選択肢は、ルチルの中になかった。
間人は生まれてすぐに両親と引き離され、物心が付く頃には既に独り立ちして生きるという習慣がある為、家族の絆や仲間意識が地上人よりもはるかに薄い。それでもルチルは地上世界で出会った草薙家の人々に家族として迎え入れられたことで、助け合って生きるという強さを学んでいた。
ルチルは京介の首筋に埋め込んだキオク草の種を回収し、それをクワトロールへ渡すふりをして攻撃を仕掛け、地底世界を裏切ることを宣言する。そして、クワトロールの隙を突いて一撃を喰らわせて勝利する。クワトロールは、小型化の能力で自分を小さくしたまま倒された為、数cmの大きさのままルチルに捕らえられてしまった。

一方、千羽は帰りが遅いルチルと京介を心配して2人の通学路の周辺を探していた。すると、道の片隅で大怪我をして倒れている京介と泣いているルチルを発見する。ルチルは、千羽と京介に自分が間人という種族のスパイであることを明かすが、地底に戻っても地上世界を攻撃しないように報告することを約束する。そして、地上人が持つ家族の絆や仲間意識を羨ましく思って涙を流すのだった。
ルチルの本心を知った千羽は、手を差し伸べ、これからも家族として一緒に暮らしていこうと提案する。その時、クワトロールが隙を見て千羽の体を小型化し、パートナーの間獣・ファルコを呼んで地下世界に連れ去ろうした。ルチルは咄嗟に地面を隆起させてクワトロールを捕まえるが、千羽はファルコに掴まれたまま地下世界へ誘拐されてしまうのだった。
京介の治療の為に一先ず病院へ向かったルチルは、病室で十羽子、誠十郎、誠と再会して自分の正体と千羽が誘拐されたことを説明する。そして、京介と千羽を危険な目に遭わせた責任は自分にあるとして、地下世界まで行って千羽を救い出すことを約束した。ルチル達の話を聞いていた京介は、大怪我をしているにもかかわらず、千羽がさらわれた責任は自分にもあるとして同行を申し出る。こうして2人は、千羽を助ける為に地下世界へ向かった。

千羽を追って地下世界へ

ファルコによって地下世界まで連れてこられた千羽は、上空で小型化の効果が切れ、ファルコから落ちてしまう。落ちた先で、千羽は「リポリポ」というファッションブランドを立ち上げている2人組の男達と出会った。見た目は間人も地上人も変わりないが、間人は耳に「ミガルド」という平衡感覚を保つ為の特殊な耳当てを付けている為、ミガルドのない千羽が突然空から降って来たことに男達は大いに驚いた。
千羽は、観光に来たふりをして男達にガイドを頼み、地底世界で束の間の観光を楽しむ。すると、そこへ「イシェターン」という巨大ショッピングセンターの支店長であるルイード・タイタンが現れ、成り行きで戦うことになってしまう。ルイードは、生物以外の物質の分子結合を分解することができる「分解(バラス)」というマジナグラムの使い手であった。それに対して何の能力も持たない千羽だったが、地上から持ってきたスマートフォンを利用してハッタリをかまし、隙をみてルイードのミガルドを外して勝利を収める。その後、千羽は倒れたルイードを看病したことで親睦を深め、地上世界へ戻る手段を探す為にルイードを連れて地底世界を旅することになった。

一方その頃、ルチルと京介は地下世界へと続く入口の前に来ていた。そこには以前千羽を付け回していたストーカーも来ており、千羽がファルコに連れ去られた際も近くで見ていて密かに発信機を取り付けていたことを明かす。発信機の信号を辿って偶然にもルチル達と同じタイミングで入口の前までやって来たストーカーは、2人の許可なしに地下世界まで付いてくる。3人が無事に地下世界に到着すると、ストーカーは単独行動を宣言し、そのまま消えてしまう。ストーカーは、地底世界に上手く溶け込み、得意の似顔絵で千羽を探して回るのだった。
ストーカーと別れた後、ルチルと京介は門番として待っていたルークという間人に遭遇し、戦うことになる。物質を軟らかくしてしまう「軟化(プリマ)」という能力を持つルーク相手に、ルチルは隆起と陥没を上手く使い分けてなんとか勝利する。ルチルは近くにあった車屋で車を調達し、バハムートの嗅覚を頼りに千羽がいると思われるキタの街へ向かった。その道中、京介はクワトロールに刺されて負った傷口が開いてしまい気を失いかける。ルチルは京介の治癒を最優先に考え、生物の生命力を極限まで高める回復スポット「治癒の泉(ルオーナのいずみ)」に立ち寄ることにした。
しかし、そこには泉を守る番人のドルチェとカモミールが待ち構えていた。ルチルが2人の注意を引き付けている間に、バハムートが京介を引っ張って泉の中へ浮かばせ、回復することを祈る。京介が回復するまでの間、ルチルは時間を稼ぐ為に他人の能力を真似する「模倣(マネル)」使いのドルチェ相手に1人で戦うことになった。ルチルは機転を利かせた戦い方でなんとかドルチェを倒すことに成功するが、今度はもう1人の番人・カモミールが手で触れた意志なき物体を自在に操る能力「操作(マリオ)」を駆使してルチルを追い詰める。
京介の回復を信じて戦い続けるルチルだったが、泉に入れられた京介は回復するどころか逆に弱っていってしまう。治癒の泉の水は、間人にとっては回復する薬であるが、地上人にとっては毒であった。薄れゆく意識の中、京介は幼い頃に兄から聞いた自分を貫き通す勇気を持つ言葉「アナグルモール」のことを思い出していた。
そして意識が戻った時、京介は驚異的なスピードで回復し、ルチルを助け出す。地上人の血と泉の水が交わったことで奇妙な化学変化が起き、京介は回復するとともにマジナグラムと同等の特殊な能力を手に入れたのだった。京介は、地中に潜って泳ぐことができるモグラのような能力「潜入(モグル)」を手に入れ、その能力を駆使してカモミールを倒すことに成功する。

新たな仲間・アルル

千羽がいるとされるキタの街へ急ぐルチル達は、その道中でルチルの幼馴染み・アルルという少女と出会う。アルルを信頼しているルチルは、これまでの経緯を全て話して協力を要請し、アルルはそれに応じた。3人はキタの街までやって来たが、指名手配されている身である為、一先ず食料庫に身を潜めた。ルチルはバハムートの嗅覚とストーカーに描いてもらった千羽の似顔絵を頼りに千羽を探しに出かけるが、その直後、残された京介とアルルの前にグーグルスという少年が現れる。
グーグルスはアルルとルチルの同級生で、ルチルのことを落ちこぼれと見下している人物だった。グーグルスは自分の仲間がルチルを捕まえて監禁したことを教え、アルル達を挑発する。アルルは京介にルチルの救出を頼むと、この場に残ってグーグルスの相手をすることにした。間人の中でも打たれ強くて怪力の持ち主であるアルルは、グーグルスの一方的な攻撃に耐え、グーグルスが隙を見せた瞬間を狙って反撃する。アルルがグーグルスを倒している間に、京介はルチルが監禁されている場所を特定し、潜入のマジナグラムで救出することに成功していた。ルチルと京介がアルルと合流すると、千羽の捜索を再開するのだった。

一方その頃、千羽はルイードの勧めでマジナグラム検定試験を受ける為、キタの街にあるピシャクリフを訪れていた。この場所では、間人が持つ「光度(こうど)」と呼ばれるレベルを数値化して評価する検定試験が毎日行われていた。間人にとって、光度は自身の力を示す大事なステータスである。能力をどれだけ使いこなせるかによって実力が判断され、光度が高ければ地底世界では優遇されるのであった。
地上へ行きたいと言う千羽に対して、ルイードはマジナグラム検定で光度30程度の実力者だと証明することを提案する。高い光度を持っていることを地底世界の王に示せば、地上へ派遣される可能性があり、千羽が行きたがっている地上へ行くことができるのだとルイードは説明した。そこで、マジナグラムを持たない千羽は、成り行きで検定試験の中でも難関とされる光度30の試験を受けることになる。能力を使って様々な試練に挑戦することになるが、千羽は持っていたスマートフォンと自身の機転だけで次々と試練を突破していく。一緒に光度30の試験を受けていた受験者達は千羽の快進撃に驚きを隠せなかった。

受験者VS反逆者

千羽がマジナグラム検定試験を受験している間に、ルチル達は千羽がいるピシャクリフの内部に潜入することに成功する。ピシャクリフの責任者であるゴルドフは、ルチルを地上へ派遣した総司令官でもあった為、なんとかルチル達を捕まえようと罠を仕掛ける。しかし、ルチル達は能力を駆使して罠を次々と回避していった。そこで、ルチル達の処刑を光度30の受験者達に任せようと考えつき、マジナグラム検定の最終試験場へと誘導して光度30の受験者を相手に1対1のバトルをすることを強制した。
ルチル達の前に光度30の受験者達が現れると、その中に千羽の姿があり、ルチルと京介は千羽が無事であったことを知り安堵する。京介は、千羽が選手として中央のバトル場に出される瞬間、アルルの足に巻かれた巻き蔓ブーツで千羽を捕まえて自分の潜る能力で全員逃走する作戦を思いつく。千羽がバトル場に出るまで勝ち続けなくてはならない過酷な挑戦となるが、ルチルもアルルもその作戦に同意した。
最初に挑戦者として選ばれたのはルチルで、相手は手で触れた物体を羽毛にすることができる能力「羽毛化(ファーファ)」の使い手・ネルだった。ルチルは床を隆起させて攻撃するが、ネルはそれを羽毛化して回避し、羽毛化させていた鉄球をルチルに投げつけ攻撃する。ルチルはネルの猛攻に手も足も出なくなってしまうが、ネルが京介とアルルのことを「裏切り者に手を貸す出来損ない」と批判したことに激怒し、反撃に出てネルを倒すことに成功するのだった。
ゴルドフの指示でルチルは引き続ぎ選手として選ばれる。2回戦目の相手・イカレルは、手で触れた物体を釘にように尖らせて隆起させることができるマジナグラムの使い手で、ルチルの隆起と攻撃方法は似ていた。しかし、ルチルの隆起は先が面になっているのに対してイカレルの釘化は先が尖った点の攻撃であり、ルチルの隆起を破壊する貫通力を持つ攻撃であった。ルチルは両手足を貫通され、壁にはりつけにされるなどの猛攻を受けるが、壁に足を置いて足裏を隆起させることで自分の体を武器にして体当たりでイカレルを倒す。試合を見守っていたゴルドフは、落ちこぼれと見下していたルチルが光度の高い間人相手に連勝する姿を見て驚愕するのであった。

3回戦目は、ルチルの代わりに京介が選ばれる。京介は地上人だが、治癒の泉で偶然手に入れた潜入の能力のおかげで、周囲には間人と勘違いされていた。
床や壁に潜る能力を持つ京介の対戦相手に選ばれたのは、物体を透かして見ることができる能力「透視化(ミハエル)」の使い手・アルベールであった。アルベールの左目は常に能力を発動していて、本来見えるはずのない床や壁の中を透視することができる。その為、普段は眼帯をして体力を温存しているのだった。
試合が始まると、京介は作戦を考える時間を作ろうと床に潜ってアルベールから距離を取るが、アルベールは透視化の能力を使って京介が顔を出す位置を特定して先回りをする。潜っている間は水の中のように息ができない為、京介は息継ぎの為に嫌でも顔を出す必要があり、アルベールはその瞬間を狙ってバトル場に設置された巨大なハンマーで京介を叩き潰そうと待ち構えていた。打つ手がないと諦めかける京介だったが、その時、千羽から「ケスーキョ レバンガ」という声が聞こえてきた。これは、千羽と京介がまだ小学生だった頃に覚えた暗号であった。
千羽のクラスでは、友達同士で逆さ言葉を使って会話をするのが流行していた時期があり、京介は千羽から習って逆さ言葉を習得していた。千羽が叫んだ言葉「ケスーキョ レバンガ」は「がんばれ 京介」という意味であった。
千羽は、自分と京介にしか理解できないこの暗号で、アルベールが左目で透視していることやミガルドを外せば勝てることを教える。それを隣で聞いていたルイードは、暗号の意味は理解できなかったが、千羽が敵側にアドバイスを送っているということに勘付いていた。ルイードは千羽に「暗号を使い続けるならば敵とみなす」と脅しをかける。ルイードに対する罪悪感から、千羽は一度は暗号を使わないことに同意するが、弟である京介のピンチに再び暗号を使ってしまうのだった。
千羽のアドバイスで京介はアルベールのミガルドを外し、強制的に気絶させて勝利を収める。しかし、ミガルドは本来他人が外せるものではない為、簡単に他人のミガルドを外した京介が地上人であることがその場にいた全員にばれてしまう。ゴルドフは驚きながらも、京介を生け捕りにした者に10億の賞金を出すことを宣言し、ピシャクリフ内にいた全ての間人に発破をかけた。この騒動に紛れて光度30の受験者達がルチル達に襲い掛かろうとするが、それを阻止したのは千羽を地上人だと疑っていたルイードだった。ルイードは千羽に助けられたことに恩を感じていて、千羽が地上人だと知っても受けた恩を返す為、自ら裏切り行為に出る。バトル場の床を真ん中で分解し、千羽をルチル達の方へ放り投げ、逃げる手助けをしたのだった。
千羽はルイードの優しさに感謝し、ルチル達に連れられて逃亡を開始する。しかし、ピシャクリフの中は迷路のように入り組んでいた為、道に迷ってしまう。それを助けたのは、ルチルとアルルの同級生・ジェルという少年だった。ジェルは、ルチル達が立っていた階段の壁からマジナグラムで扉を作り、壁の中に作られた秘密の抜け道へと案内する。こうして、ルチル達はジェルの協力でピシャクリフからの脱出する道を確保するのだった。

一方、ピシャクリフの外では、ゴルドフがルチル達をなんとしても捕まえようと「地底世界の怪物」と恐れられる最強の間人・サイコドールを解き放っていた。サイコドールは、数年前に地底世界のとある巨大都市を3日で壊滅させた大男で、周囲にいる者全てを敵と認識して無差別に襲い掛かる間人であった。
サイコドールがピシャクリフの外で暴れ始めた頃、地底世界に来てからずっと別行動を取っていた千羽のストーカーが騒ぎを聞き付け姿を現した。ストーカーは千羽が逃亡する道を開けるようにサイコドールに声をかけるが、半分理性を失っているサイコドールは聞く耳を持たない状態でなおも暴れ続ける。地上人でありながら間人も驚く程の瞬間移動でサイコドールの攻撃を避け続けるストーカーは、得意の絵で自分がサイコドールの敵でないことをアピールし、落ち着かせることに成功する。千羽の脱出経路を確保して安堵するストーカーだったが、今度はゴルドフがキタの街の出入り口である巨大な扉を封鎖するスイッチを押したことで扉が閉じ始めてしまう。

地上世界への帰還

ストーカーがサイコドールを手名付けていた頃、ルチル達はピシャクリフの出口付近まで到着していた。しかし、そこにはこれまでルチル達を苦しめてきたゴルドフ本人が待ち構えていた。
ゴルドフは、自身の持つ能力「球化(マルクス)」で壁の一部を鉄球に変化させてルチル目掛けて力いっぱい投げつける。ルチルはその攻撃を受け止めながら、ゴルドフの近くまで歩み出る。大したマジナグラムも光度も持たない間人のルチルが、地上世界から帰ってきてからまるで別人のように強くなっていたことにゴルドフは嫉妬していた。ゴルドフはルチルを追放したつもりで地上世界に送ったことを明かすが、ルチルは理由はどうあれ京介達と出会うきっかけを作ってくれたのはゴルドフだとして、感謝の言葉を投げかける。ルチルが自分に恨みを募らせていると思っていたゴルドフは、驚愕しながら負けを認めてルチル達の逃亡を見逃すのだった。
ルチル達がピシャクリフを脱出すると、そこには閉まりかけている巨大な扉と、ルチル達を捕まえようと集まっている間人達の団体が待ち構えていた。襲い掛かる大勢の間人に対して、ルチルは地面を陥没させて道を作ると壁に足を置き、足裏を隆起させて強行突破を試みる。勢いが失速する直前でルチルが合図を送ると、ルチルの相棒・バハムートが車を用意して姿を現した。全員を車に乗せ、扉に向かって猛スピード突っ込んでいくと、閉まりかけていく扉を必死で抑えるストーカーの姿を目撃する。
ストーカーはサイコドールと協力して扉を破壊し、千羽の脱出経路を確保した。千羽はストーカーの姿を見て、以前自分が似顔絵を依頼した絵描きの青年であることを思い出し、声をかける。ストーカーは、一度しか会話を交わしていない千羽が自分のことを覚えていたことに感激しながらも、素っ気ない態度で見送るのだった。

キタの街を出たルチル達は、ようやく地上へ上がる唯一の通路まで到着する。しかし、そこで謎の男の襲撃を受け、ルチルは京介達を庇って重傷を負ってしまう。ルチル達を襲った男は、地底世界の王・ノエルであった。
ノエルはこれまでルチル達が出会った間人達の能力を全て使いこなしながら、捕まったままだったクワトロールを解放して京介達を追い詰めていく。一方、深い傷を負って気絶していたルチルは夢の中で謎の人物に出会い、マジナグラムを使う最後の力を受け取っていた。目を覚ましたルチルは、通路の天井に向けて隆起を発動させ、ノエルを生き埋めにして倒そうとする。ノエルは能力を使ってその場から逃げようとするが、クワトロールがノエルを裏切り、体を拘束して逃亡を阻止した。クワトロールは、ルチル達の言動や戦いを間近で見て、心変わりしかけていたのだった。ノエルはそのまま崩落する瓦礫に巻き込まれ、姿が見えなくなってしまう。
ルチルは、アルルに千羽と京介を連れて車で逃げることを指示し、ノエルと共に瓦礫の中に消えていった。アルルは、ルチルの最後の頼みを聞き入れ、千羽と京介を無事に地上へ連れ帰ることに成功するのだった。

エピローグ

千羽と京介が地底世界から戻って数日。
地底世界での出来事が嘘だったように千羽と京介は平和な時を過ごす。千羽と京介と一緒に地上世界へ出たアルルは、バハムートを連れて世界中を旅して過ごしていた。誰もが少しづつ日常が戻りつつある中、千羽は地底世界から持って帰ってきたミガルドを耳にあてながらルチルに呼びかけ続けるのだった。

一方地底世界では、ルチルに倒されたと思われていたノエルが蘇生されていた。ノエルは、地底世界のキングとして民の為に自らの体を犠牲にして様々な実験を行っていた。しかし、その内容は明かされず、ノエルの目的もルチルとの関係も謎のまま、物語は幕を閉じるのだった。

『アナグルモール』の登場人物・キャラクター

主人公

ルチル

年齢:13歳
光度:4
マジナグラム:隆起(デコス)、陥没(ボコヘル)
能力:物体の一部分を一時的に隆起させたり陥没させたりすることができる
本作の主人公である間人。
地上世界調査の為に送り込まれたスパイとして草薙家にホームステイすることになる。
好奇心旺盛だが臆病でもあり、子供が行う簡単な狩りでも毎回手こずっていた。草薙家の家族と触れ合う内に前向きで優しい性格となり、男らしく成長する。幼馴染みであるアルルには頭が上がらないが、唯一自分のことを認めてくれる友達として大切に思っていて信頼も厚い。
使用するマジナグラムは隆起と陥没の2つがあるが、上手く使いこなせていないとされ、周囲から「落ちこぼれ」と見下されて育ってきた。物語の序盤では、間人の強さを表す光度は4と非常に低かったが、誘拐された千羽を助ける為に頭を使って戦うことを覚えてからは光度30程度の相手に引けを取らない強さを得るようなる。

草薙家

草薙千羽(くさなぎ ちわ)

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