西洋骨董洋菓子店(アンティーク、Antique Bakery)のネタバレ解説まとめ

「西洋骨董洋菓子店」とはよしながふみ作の漫画作品である。深夜まで営業している「アンティーク」というフランス菓子の店を舞台に、オーナーの「橘圭一郎」を軸に緩い日常や人間関係で構成される。
ある事情で一流企業を辞めた圭一郎が洋菓子店を開き、そこで出会ったパティシエの「小野祐介」、元プロボクサーの「神田エイジ」、圭一郎の家の家政夫「小早川千影」という4人でアンティークを盛り上げていく。

概要

月刊誌「Wings」にて1999年から2002年まで連載される。単行本は全4巻。文庫版は全3巻。
2002年度、第26回講談社漫画賞少女部門を受賞。
2001年に「アンティーク〜西洋骨董洋菓子店〜」のタイトルでテレビドラマ化され、2002年にはドラマCD化された。
2008年7月から9月にノイタミナ枠にてテレビアニメ「西洋骨董洋菓子店〜アンティーク〜」が放送。また同年10月に韓国にて映画化もされた。

あらすじ・ストーリー

財閥の御曹司で、ハンサム、頭も良く、器用で要領のいい男、「橘圭一郎」は勤めていた会社の同僚の恋人から振られたのをきっかけに会社を辞め、たまたま二日酔いの頭で見かけたつぶれた骨董屋のあとを借りて、フランス菓子の店を開く。
甘いものは苦手で辛党の彼が、父の世話にて紹介されたパティシエ「小野祐介」をみて唖然とする。祐介は高校の時の同級生で、卒業式の日に告白してきた彼をこっぴどく振ったことがあったのだ。
祐介はフランスにパティシエの修行をしてきたあと、日本にある名店と言われる店を渡り歩き、いずれも男性関係でクビになっていた。ゲイである祐介は、本人が意識しなくても男性が夢中になるような怪しげな魅力があり「魔性のゲイ」と言われていた。
祐介は圭一郎をすっかり忘れていて、圭一郎に迫るがその魔性が効かなかった。圭一郎が高校の時にこっぴどく振ったと説明すると祐介は「橘なら僕の手に落ちないはずだ。僕を振ったたった一人の男だもの。」と納得する。
そして「いい店にしよう。」と握手を求めアンティークに勤める決意をした。

アンティーク開店1週間前、女性が苦手な祐介のために圭一郎は男性従業員を募集する。そこに現れたのは、元プロボクサーの「神田エイジ」だった。エイジは試作した祐介のケーキを一口食べて、「おケーキ様々」と雄々しく感動し、彼の感想がとても適切だったことから彼をパティシエの見習いとして雇うことを、圭一郎に懇願した。

結局ギャルソンは圭一郎一人になったが持ち前の記憶力の良さ、愛想の良さで開店当時から売り上げは順調に伸びていった。
そんな雨の日だった。
一人の男が圭一郎を訪ねてくる。それは「小早川千影」という橘家の家政夫をしていた男だった。高い身長にサングラスと見た目は強面だが性格のいい男である。彼は橘の家からの言い付けで圭一郎を見守りにやってきたのだという。当初は圭一郎は鬱陶しいと思っていたが、千影に店員になる意思があることを聞き、最初は皿洗いなどの雑用を言い渡していた。
千影はアンティークの店員になりたいという思いと同時に祐介に近づきたいという思いもあった。千影もまた祐介の魔性の毒に当たってしまったのだ。
しかし、根っからの遊び人の祐介に失恋をしてしまう。やがて千影は祐介のことを吹っ切ると、改めてギャルソンとして働くようになる。

1年で一番忙しい時期のクリスマス、正月を経たある日、世間では子供の誘拐事件が多発していた。いずれも男の子であり、2件は遺体で発見された。発見された遺体の胃の中からは、まともな食事は出てこなかった。その中にはビスケットや乳製品、果物、チョコレートなどそれを一つにまとめると一つのケーキになると予想を立てた。
その話を聞き、一人の警察官「宇田川」がある一人の人物を思い出す。キャリア上がりの気取った警察官「芥川忠宏」。23年前、男の子が誘拐されたときの宇田川の上司であり担当刑事だった。男の子は無事に見つかったが、犯人は捕まらず責任をとって辞任。そのあとは閑職を転々としていると聞いていた。
彼は甘いものが好きで駄菓子ではなく、洋菓子を好んでいたからもしかしたら知っているかもしれないと宇田川は芥川を訪ねた。
芥川はその菓子の構成から、珍しい材料をこんな使い方をしている店は一件しか知らないと言いきった。その店とは「アンティーク」。

23年前、9歳の時誘拐され生存した男の子であったことを覚えており、宇田川は驚きの顔で圭一郎を見た。
あの時、芥川は宇田川の上司だった。キャリア組として経験もない若い芥川が提案した「不審者を徹底的に洗い出すべき」と言う提案を覆したのは、現場で経験がある宇田川だった。資産家の息子である圭一郎が誘拐されたのであれば、きっと犯人は身代金を要求する連絡があるはずだ。そう思っていたのに、犯人からの連絡は一切ないまま、圭一郎は解放された。犯人の返り血を浴びていたが、圭一郎自体には怪我がなかったことだけが救いだった。しかし圭一郎は犯人のことをすっかり忘れていた。唯一覚えていたのは、犯人はケーキが好きで圭一郎は毎日ケーキを食べさせられていたことだけだった。
それから23年後、圭一郎は甘いケーキが苦手にも関わらずケーキ屋のオーナーになった。
宇田川と芥川の前で圭一郎は微笑み、犯人逮捕に協力すると約束をした。

2人の遺体が発見されていることから少なくとも犯人は2度店に訪れている。そして3人目が居なくなっている。これから、店に犯人が訪れる可能性は高い。
2人の警察官は、店内に監視カメラを置き開店から閉店までじっくりと店の中を張り込んだ。常連の客、新規の客、いろんなお客さんで埋め尽くされ、犯人らしき人は居なかった。最初から来るなんてうまい話はないかもしれないと諦めかけたときだった。
一人の女性がやってきた。体調がすぐれないようで、立ちくらみをして買ったシュークリームを落としてしまう。それを見た圭一郎は、車でその女性を自宅まで送ることにした。
家の前で女性をおろし、圭一郎は何となく女性を見ていた。首に巻かれたショールから見える字。怯える目。圭一郎は考えるよりも先に、家に上がり込んでいた。
そして部屋の中を探す。すると二階の部屋から一人の少年が、泣きながら「助けて」と圭一郎に飛びついてきた。そして続いて部屋から出てきたのは、24歳の青年だった。

23年前自分を誘拐した犯人は24歳の青年ではありえない。圭一郎は犯人が捕まれば、毎日見ていた誘拐されていたときの悪夢を見なくてすむのかもしれないと思っていた。
その夢は、立派な屋敷にて男が圭一郎を「息子」だと言って可愛がり、毎日ケーキを食べさせられていた。
誘拐された圭一郎は家に帰らなければいけないとずっと思っていたが、可愛がるその男を無碍にもできなかった。しかしある日、圭一郎はその男の足を刺してしまった。大量に出血し、男は圭一郎を罵倒した。その返り血を浴びた圭一郎は、男を殺してしまったのかもしれないと、錯乱状態になる。
しかし男はその圭一郎に「どっかに行ってしまえ。そして忘れろ。」と言い放つ。そして男は一瞬微笑んだ。
そして圭一郎は甘いケーキの味だけを覚えて家に帰って行った。

エイジがフランスに旅立ち、圭一郎のお目付役として同居していた千影は「若はもう大丈夫ですから」と言い残し圭一郎の元を去っていった。誘拐事件に一区切りつき、圭一郎には自分が必要ないと思ったからだ。
そんなある日のことだった。一人の初老の老人が店にやってくる。タルト・オ・フリュイ・セゾンというホールのケーキを頼み、圭一郎にプレゼント用に深い茶色のリボンのラッピングをしてもらう。仙台にいる自分から去って行った女性に贈るためだ。代々医者だった男はアンティークとも言える古い屋敷を手放し、自分も仙台に向かう。
男はケーキの入った袋を手にもつと、昔少年に刺された古い足の傷を引きずりながら店を離れていった。

千影が「もう若は大丈夫ですから」と言ったにもかかわらず、圭一郎はまだ悪夢を見ることがあった。しかし彼は笑う。
「千影のいうことなんかを間に受けた俺が馬鹿だった。やっぱり思い出せねえし、忘れられねぇし、怖いんだよ」
そう言って圭一郎は今日も、ケーキを売りにアンティークへ向かう。

登場人物・キャラクター

橘圭一郎(たちばなけいいちろう)

32歳。身長182cm体重66kg。長髪でアンティークを開店したときから、髭を伸ばしている。
フランス洋菓子店「アンティーク」のオーナーでギャルソン。
ハンサムで、語学も堪能。寝っ転がっても東大にいけるくらい頭が良くピアノも小学校でソナタまでいくくらい、昔から出来が良かった。
その後、9歳の時に誘拐される。
無事に帰ってきたが犯人は捕まらなかった。それ以降、家族や一族はそれから圭一郎を「可愛そうな子」として扱い、腫れ物のように扱う。どんな我が侭でも聞くのに、32になっても一人にさせておくのは可愛そうだからとお目付役として千影をよこしてくる。
本人も誘拐事件がトラウマになり、甘いものが食べられず人間関係も表面的なつきあいしかできなくなった。女性が好きで、付き合った女性に一生懸命尽くしていたがそれが逆に女性の重荷になり、女性から別れを告げられることが多い。
甘いものは全て「砂糖の味がする」としか評価できないが、それ以外のものは大好きで、料理も出来る。

小野祐介(おのゆうすけ)

32歳。短髪で眼鏡をかけている。
フランス洋菓子店「アンティーク」にてシェフ・パティシエ。
圭一郎の高校の時の同級生であり、卒業式の日に告白してこっぴどく振られている。その足で死のうと思ったが、死ぬ前にやりたいことをやりたいと新宿2丁目にやってきて初めて入った店で、その場にいた客をみんな夢中にさせてしまう。それ以来、ストレートだろうがゲイだろうが関係なく、祐介にその気にさせられてしまう「魔性のゲイ」になる。
大学を出たあと好きな男を追いかけてフランスへ渡り、後にフランスで一番有名なパティシエになる「ジャン=バティスト・エヴァン」の元で修行をする。ジャンとは恋人同士でもあったが、行き違いにより破局し日本に帰る。後に、ジャンはアンティークから祐介を引き抜こうとしたが、叶うことなくフランスへ帰国。
日本では天才パティシエとしていろんな店に勤め、店の雰囲気に合わせた菓子を発案したりして店の貢献をしていたが、「魔性」のせいで店をことごとくクビになってしまっていた。
中学生の時、実の母親と祐介の担任の男性教師との浮気現場を見てしまう。その時、母を取られた男性教師に対する憎しみではなく、母に対する嫉妬の気持ちを抱いたことで自分がゲイであることを自覚する。また、高校になって仕草が妙に綺麗なところから「ゲイなのではないか」と女子生徒にからかわれ、すっかり女性恐怖症になってしまった。
家族は父と母、永子と寧子という年の離れた妹が2人いる。

神田エイジ(かんだえいじ)

22歳。整った顔立ちで、格好いいよりも可愛く幼い顔立ちをしている。
フランス洋菓子店「アンティーク」にて見習いパティシエ。
元プロボクサーでありミドル・ストロー級の世界チャンピオンだった。しかし網膜剥離により引退を余儀なくされた。
甘いものには大食いであり、味覚も優れているが普通の食事では偏食が目立ち小食。(春菊や椎茸が苦手な描写がある)プロボクサーの時代は、試合に勝ったらケーキを1つだけ食べさせてもらえていた。
物語の後半になると、自作のケーキをみんなに披露しているが、フランス菓子特有の派手なデコレーションをしていないので、全体的に茶色い菓子を作っていた。
祐介は尊敬しているので敬語で話すが、圭一郎には粗野な言葉遣いをしているし口げんかもする。
孤児であり施設を転々としていたことから、愛情のある家庭に疎い。女性関係は派手だが、22になってもう枯れてしまったと言うほど今は女性に興味はない。なおかつ暴力的であり、プロボクサーの前は喧嘩ばかりしていた。
最後にはエイジがフランス語を習っていた、コンスタンスと言うフランス人女性の実家のフランス菓子店に遊びに行く。

小早川千影(こばやかわちかげ)

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