アイアムアヒーロー(I Am a Hero)のネタバレ解説・考察まとめ

『アイアムアヒーロー』(I Am a Hero)とは、花沢健吾による日本のSFホラー漫画である。謎の感染症が世界中で流行り、ほとんどの人間がゾンビになっていく。そのゾンビと戦い、感染から逃れる数少ない人間は、引きこもりやニートといった社会に劣等感を抱いていた者たちが中心となっている。この漫画に出てくるヒーローたちは、人間臭いリアリティーのあるヒーローだというのも見所のひとつ。漫画雑誌『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて、2009年22・23合併号から2017年13号まで連載。

『アイアムアヒーロー』の概要

『アイアムアヒーロー』とは、花沢健吾による日本のSFホラー漫画である。謎の感染症が世界中で流行り、ほとんどの人間がZQNになっていく。ZQNは、「ZERO QUALIFED NUCLEUS」(核として無なもの)の略で、感染者であるゾンビのことである。そのZQNと戦い、感染から逃れる数少ない人間は、引きこもりやニートといった社会に劣等感を抱いていた者たちが中心となっている。作中に出てくるヒーローたちは、人間臭いリアリティーのあるヒーローだというのも見所のひとつ。主人公の鈴木英雄もさえない35歳のおじさんである。謎の感染症のパンデミックが起き、ZQNとの戦いを通して少しはましなおじさんにはなっていく。しかし最終巻まで、主人公やヒーローという主役っぽさがあまりないのもこの漫画の特徴ではないだろうか。ヒロインも二人登場するが、そのどちらともハッピーエンドにはなっていない。登場人物たちの身に危険が迫った時にとる行動から、それぞれの人間性を読み取ることができる。ただ怖いだけではなく、人間ドラマの要素も含まれているところが同作のおもしろさのひとつである。スピンオフ作品として、『アイアムアヒーロー in OSAKA』『アイアムアヒーロー in IBARAKI』『アイアムアヒーロー in NAGASAKI』。アンソロジー作品として、『8 TALES OF THE ZQN』が、発売されている。マンガ大賞2010で4位、マンガ大賞2011で3位。第58回(平成24年度)小学館漫画賞一般向け部門受賞。2016年に主演大泉洋で実写映画が公開された。漫画雑誌『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて、2009年22・23合併号から2017年13号まで連載。小学館〈ビッグスピリッツコミックススペシャル〉、全22巻。

『アイアムアヒーロー』のあらすじ・ストーリー

アイアムアヒーロー

主人公の鈴木英雄は、さえない35歳の漫画家。デビュー作を早々に打ち切られ、再デビューを目指しながら、アシスタントとして働き、ネームを出版社に持ち込んでいる。しかし出版社には相手にされず、借金も背負い、つまらない日々を過ごしている。夜が怖く妄想に憑りつかれ、朝にならないと眠れない生活を送っている。そんな日常の唯一の救いは、恋人である黒川徹子の存在。だがその彼女も、すでに売れっ子漫画家になった元カレの中田コロリを褒めることが多く、英雄は今だに二人が連絡を取り合っていることがおもしろくないと感じていた。ある日、全国的に「噛み付き事件」が頻発する。英雄は、タクシーに轢かれて両腕と右足が潰れ、首が真後ろに折れても運転手に噛み付き、奇声を発しながら去って行く女性を目撃する。次第に、周りの人々がゾンビのように人を食べる化け物と化す謎の感染症が流行り出し、「ZQN」と呼ばれる感染者たちが街に溢れていく。ZQNに身体のどこかを噛まれると感染してしまうのだ。恋人や仕事仲間も感染して、都内から脱出した英雄は富士の樹海で女子高生の早狩比呂美、御殿場のアウトレットモールで看護師の小田つぐみ(通称:藪)と出会い行動を共にすることになる。比呂美は、途中でZQNに噛まれ感染するがなぜか完全にはゾンビにならず半感染状態となった。その状態を見た小田は、比呂美の免疫力を「人類の希望になるかもしれない」と考えて、三人は東京方面を目指すことにする。しかし小田はZQNに感染し、本人の願いもあり比呂美の手によって殺される。その比呂美ももう少しで東京というところで自ら巨大ZQNに取り込まれていき姿を消した。
引きこもりだった江崎崇はネット上の匿名掲示板を通して来栖(クルス)と呼ばれる人物が中心となるグループに加わり、アジトに招かれる。彼らはZQNの生態を観察しながら暮らしていた。近隣の中学校に生存者がいると知り偵察の準備をすることになる。その最中、ZQNがアジトへ侵入し仲間の一人が感染してしまう。さらに身を挺する形で噛まれた江崎は半感染状態となる。ZQNにアジトを追われた一派は中学校へと移動し、そこで「ZQNの巣」と遭遇する。江崎は同じく半感染のスコップの男・狂巣と出会う。そして来栖も巻き込んだ半感染者たち三人の戦いが始まり、江崎が勝利する。来栖に成り代わった江崎は久喜幕府を名乗り仲間たちを率いて東京へと向かう。
徹子の元カレである漫画家・中田コロリは池袋の高層ビルに籠城し、組織の補給隊隊長として生き延びていた。彼は、補給隊隊長としてガソリンを集めさせられていた。高層ビルの支配者であり「浅田教」の教祖である浅田曰く、脱出用ヘリコプターの燃料として集めているという。浅田は、この組織の中で唯一ヘリコプターを運転できる資格を持っている。そのためトップに立てているのである。しかし浅田のやり方に不満を持つ隊員たちが多く、中田はクーデターを持ち掛けられるが、不安要素が多く実行には移せずにいた。コロリが悩むその最中に久喜幕府がヘリコプターを奪取するため高層ビルのコミュニティを襲撃する。なんと久喜幕府の一員である苫米地もヘリコプターを運転できる資格を有していた。襲撃の際に大量のZQNがビル内へ流れ込み、さらに火災が発生し大混乱に陥る。ビルに籠城していた中田たち、久喜幕府、英雄のそれぞれが屋上のヘリコプターを目指す。しかし戦闘の末に高層ビルから脱出できたのは、苫米地(久喜幕府)、おばちゃん(久喜幕府)、中田(補給隊)、瀬戸(補給隊)、まーくん(高層ビルのコミュニティに祖母と避難していた少年)の五人だけだった。
人間とZQNの戦いは終わり、伊豆七島に向った五人は、島民たちと穏やかな生活を送っている。荒れ果てた都心には草木が生い茂り、鹿や猪などの動物も生息し始めた。選択を誤ってヘリコプターのあったビルの向いのビルにいた英雄は、人間もZQNもいなくなった池袋で一人生き延びるために新しい生活を始めていた。

ベルギー

発症する直前、電話の向こうの妻に愛を伝えるジャン。

久喜幕府のメンバーたちが埼玉から東京へ向かう頃、ベルギーでも謎の感染症によるパンデミックが起きていた。ジャンという一人の男が、街中にいる。彼は記憶喪失のようである。街で起きている状況をテロか何かかと思っている。ZQNたちのことも仮装をしている人たちに見えている。教会にたどり着いた彼の携帯に、妻のセシルから電話がかかってくる。彼女は、グレスバーグ城に隠れていて無事だった。ジャンの記憶は、10年以上前の状態のようで妻との会話がかみあわない。セシルとの会話によると彼は、子どもを探しに街に向かっていたが、その途中で記憶喪失になったようである。セシルに、ケガはないかと問われたジャンは、ケガはないが腕に子どもの歯形のようなかすり傷があるという。ジャンが感染したことを察したセシルは、電話の向こうで泣いている。そしてジャンは、発症間際の状態になり最後にセシルに「愛してる」と伝えた。

イタリア

イタリアのクルス

英雄と比呂美が、箱根から東京へ向かう頃、イタリアでも謎の感染症によるパンデミックが起きていた。非感染者の少女が一人泣きながら街をさまよっていると、通りかかった建物から青年が出てきて招き入れてくれた。建物の屋上には、スーツの男と日本人カップルと長髪の男もいた。青年は、この事態を地球外生命体によるテラフォーミングのようなものではないかと考えている。巨大ZQNが迫ってくる中、口論をする大人たちを見ている少女にだけは、彼らの本当の姿が見えている。彼らはすでに感染していたのだ。そして長髪の男は、イタリアのクルスだった。クルスは彼らを殺し、少女の手を取って建物から去って行った。

スペイン

スペインの街中を観察しながら歩くガスマスクのZQN

英雄と比呂美が、東京に向かう船に飛び乗った頃、スペインでも謎の感染症によるパンデミックが起きていた。感染を拡大させる人間型ZQNも非感染者である人間も姿を消して静まり返ったバルセロナの街をガスマスクを被り頭と脚だけのZQNが歩いている。おかしな見た目をしているが、頭の中は理性的で現状を考察しながら歩いている。彼は世界がどうなるかを見届けることが自分の使命なのではないか考えている。彼は、サグラダファミリアの上に何かあるのを発見して、サグラダファミリアへと向かった。サグラダファミリアに着き入ってみるとそこには巨大な子宮のようなものがあった。それは巨大ZQNで生と死を繰り返している様だ。巨大ZQNの近くには多言語を操るスペインのクルスがいた。彼とクルスは、今の状況や生と死についてなど議論を交わした。その後、彼はグエル公園へと向かった。気付くと彼の脚から葉が生えてきていた。彼はここに根を張りこの世界の人類の行く末について考えてみることに決めた。

アイアムアヒーロー in OSAKA

主人公のこずえと友だちの優子は、友だちの美里の結婚式の帰りで飛行機の中にいた。二人は、新関西国際空港に到着したが、空港内のトラブルで機内に閉じ込められてしまう。空港や大阪の街には、ZQNが大量発生していた。付き合って5年になるこずえの彼氏の辰男も街の異変に気付き、機内に閉じ込められている彼女を助けに行くことにする。こずえたちは、なんとか飛行機から出ることができたが空港内もZQNであふれていた。急いで機内へ戻ってきたが途中で優子がZQNに噛まれて感染してしまう。混乱する機内を落ち着かせてくれた沢村というイケメンがいた。彼は美容師で、独立して大阪に店を持つために飛行機に乗っていた。こずえのスマホがつながり、辰男から空港へ迎えに行くと連絡がきたが、ここは危険だから安全な場所へ逃げてくれと伝えた。辰男は、こずえのヒーローになるために、危険を顧みず助けに向うことを決心する。その頃機内では、ほとんどの乗客が感染しパニックになった沢村が豹変してこずえに襲い掛かった。しかし感染して寝込んでいた優子が突如沢村を殴り助けてくれた。続いて飛行機が爆発し、なんとかこずえだけ脱出することができた。ZQNと化した沢村が、こずえを追いかけてきてもうだめかと思った時、辰男がバイクで現われた。二人と辰男が途中で助けた赤ちゃんの三人は、爆発する飛行場から逃げ出すことに成功した。そしてこずえは、辰男から待ちに待ったプロポーズを受けた。こずえは嬉しかったが照れ隠しで「アホ」と返事をしたのである。

アイアムアヒーロー in IBARAKI

主人公の高校生・霞悠吾と犬のイギーは、茨城県土浦市に住んでいる。両親が亡くなり叔父の家に引き取られ、悠吾とイギーは邪魔者扱いをされていた。彼は、高校でもかつての幼馴染からいじめを受けていた。そんな悠吾とイギーの唯一気持ちが休まる場所は、裏山のベースキャンプだった。ある日、都内で発生した謎の感染症が、茨城にも発生した。悠吾たちを疎ましがっていた叔父たち家族も感染し、通っている高校でも生徒たちがZQNになり暴れていた。逃げる悠吾とイギーの元に、幼馴染の根本くんと飯村くんが現われた。幼馴染といっても今はいじめられっ子といじめっ子の関係だ。主に根本くんが権力を持っていた。悠吾は、物資調達係にされて、まずは彼の家へお金と食料を調達しに行くことになった。そこには、ZQNになっても何も変わらず強欲な叔父と叔母がいた。叔父の家がお金持ちな理由は、悠吾の両親の死亡保険金を勝手に使い込んでいたからである。次は、飯村くんの家へ向うことになった。しかしそこで稲村くんはZQNになった彼の祖父から噛まれ感染してしまう。根本くんは、感染した彼を見て容赦なく殺してしまった。悠吾たちは、ベースキャンプへと向うことにした。今は悪者の根本君も小6くらいまでは優しい少年だった。彼は、母親の恋人からの虐待によって、変わってしまったのだ。叔父の家でいらない人間として扱われたことによって、悠吾は、根本君の気持ちがわかるようになったのかもしれない。だから彼をベースキャンプへ案内する気になれたのだ。しかしそこにたどり着く前に、幼馴染の一人だった小林くんがZQNになって根本くんに復讐をしに追いかけてきて感染してしまう。根本くんは、「悠吾くんに殺られてえよ」と言いながら小林くんの異常な体熱によって燃えていった。ベースキャンプに到着して一息ついたら、ZQNになった根本くんが襲ってきた。悠吾は、彼の気持ちを救うためにも意を決して「さよなら根本っちゃん」と言いながら、殺したのだ。この困難で成長した彼は、今まで守ってもらうばかりだったイギーのことを次は自分が守ってあげることを心に誓うのである。

アイアムアヒーロー in NAGASAKI

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