動物のお医者さん(Doubutsu no Oishasan)のネタバレ解説まとめ

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『動物のお医者さん』とは佐々木倫子による日本の少女漫画。白泉社「花とゆめ」に連載された。獣医師を目指す西根公輝が北海道札幌市にあるH大学獣医学部で個性豊かな友人や教授、動物と関わりながら成長していくコメディ作品。主人公・ハムテルの飼い犬・チョビが話題を呼び、シベリアンハスキーブームを起こし、H大のモデル、北大獣医学部に志望者が殺到するなどの社会現象を起こした。2003年にテレビドラマ化された。

『動物のお医者さん』概要

「動物のお医者さん」とは、佐々木倫子による日本の少女漫画作品。白泉社「花とゆめ」にて1987年から1993年にかけて連載された。単行本は全12巻。白泉社文庫で全8巻。愛蔵版は全6巻。2000万部以上の売り上げを記録した。
主人公・西根公輝の飼い犬、シベリアンハスキーのチョビが話題となり、シベリアンハスキーブームが起こった。
舞台となったH大学獣医学部のモデルとなった北海道大学獣医学部の志望者数が跳ね上がるなどの社会現象も巻き起こした。
基本的には一話完結。登場する動物が写実的に描かれていることも話題となった。
2003年にテレビ朝日系列の「木曜ドラマ」枠において、吉沢悠主演でドラマ化された。

怪しげな教授から一匹の子犬を貰ったことから獣医師を目指すことになった西根公輝(愛称・ハムテル)が、友人・二階堂とともに、強烈な個性をもつ先輩や教授など、様々な人々と関わり、動物と触れ合いながら過ごす日常をコメディタッチで描いている主人公の成長物語。

『動物のお医者さん』のあらすじ・ストーリー

出会い~獣医師を目指すまで~

高校3年の冬、西根公輝(愛称・ハムテル)が帰宅途中、地下鉄への近道としてH大学獣医学部解剖学教室の横を通り過ぎた時、足元にいた般若のような顔をした子犬に気づいた。子犬はアフリカの原住民のような奇妙な扮装をした教授が捕獲し、連れ去ろうとしていた。ハムテルは思わず教授に「その仔犬、実験に使うのでは」と声をかけた。教授は、ハムテルに矢継ぎ早に質問を投げかけながら、ハムテルが仔犬ににふさわしい飼い主なのかどうか見極めていた。ハムテルがH大を受ける受験生で、一戸建てに住んでいるとわかり、質問の受け答え方から仔犬をいいかげんに扱ったりはしないとと教授は直感した。教授はハムテルに仔犬を押し付け、「粗末にしたらバチがあたるんだからね」と言って去っていった。
妙に押しの強い教授から仔犬をもらったハムテルは、その般若のような仔犬がシベリアンハスキーという高額な値が付く犬であったと知った。早速名前を付けようとハムテルは悩むが、遊びに来ていた友人・二階堂昭夫が仔犬をチョビと呼び始めてしまう。二階堂は小さな生き物は全て「チョビ」と呼ぶ癖があった。ある日、西根家の先住動物、西根家最強の生物と言われるニワトリのヒヨちゃんの迫力に驚いた仔犬は逃げ出してしまった。ハムテルと二階堂は慌てて探そうとするが、正式な名前がまだ決まっていない。ハムテルはとりあえず「チョビ」と呼びかけると、電柱の影から仔犬が飛び出してきた。仔犬の名前が決まった瞬間だった。

ある日、血便をしてしまったチョビを連れてH大獣医学部にある病院に連れていくと、そこで診察をしていたのはハムテルに仔犬を押し付けた奇妙な教授だった。「獣医になる」と予言されたものの、今のところ獣医になるつもりはないハムテルは、もしやこの診察で獣医に憧れを抱けるのかと期待するが、実際には要領が悪い教授の診察のアラばかりが見え、あまつさえ他の患畜の診察の手伝いまでやらされて、獣医になど全く憧れることはできなかった。しかし、請求された高額な治療費に驚き、それなら自分で診察したほうが安上がりと考え、ハムテルは獣医を目指すことを決めた。

H大入学~獣医学部3年生

志望通りH大理Ⅲに合格し、教養部を経て、2年の秋には獣医学部に進んだハムテル。ネズミ嫌いな二階堂も何故か同じ学部に進学した。
獣医学部に進学してみると、個性豊かな人物が多く、また、動物も皆一様に癖が強い。アフリカが大好きでアフリカ原住民の扮装をよくしている漆原教授。飼育実習で出会った非常にスローモーな大学院生・菱沼聖子。自分の血液検査に愛犬の血を提出してしまう同級生・清原。鼻が垂れると人の背中で鼻を拭きたくなってしまう馬のセリカ。他にもたくさんの個性豊かな人々や動物と関わりながら、ハムテルは忙しく大学生活を過ごすこととなった。
ハムテルの家の姐御肌の三毛猫・ミケが、ハムテルの祖母が不在時に大学に連れてこられ、避妊手術をする予定の猫と間違われてお腹の毛を剃られたところで救出されたり、野生のモズのヒナを拾って育てたりと、ハムテルの私生活は様々な事が起こる。
運動会や、夏休みの実習、大学祭や試験も経験し、3年生の1年間は目まぐるしく過ぎていく。4年生になる前には所属講座を決めなければならず、3年生たちは様々な思惑を持ちながら所属講座を検討する。迎える講座側は少しでも有能な人材を多く欲しいとして、病院講座の漆原教授は「天国にいちばん近い島ツアー」という宣伝を流し、学生獲得を狙う。「天国にいちばん近い島ツアー」とは常夏のアフリカの島で漆原教授の標本採集の手伝いをすれば1週間の滞在の間の食費・住居費がタダというものだ。その他の講座には大変だの休みがないなど良くない噂も流れ、病院講座には希望者が殺到し、中々希望が纏まらない。希望者殺到を受け、病院講座の漆原教授は笑いが止まらないが、病院に興味がなく、大根早食い競争やカエル取り競争で勝ち残った学生が講座に入るのではと危惧した講座の学生から「天国にいちばん近い島ツアー」の実態が語られ、実は過酷な採取の旅だとわかった学生たちは逃げ出した。結局、将来自分の病院を開業することを目標に、初めから病院講座を希望していたハムテルと二階堂が病院講座に入り、他の学生たちもそれぞれ別の講座に決まった。

病院講座~4年生

年度が変わり新入社員獲得のための企業が優秀な人材を確保しようとスカウトにきて、上級生たちの就職活動も活発化している。大学院生の菱沼も就職活動をしてるが、条件が合わず中々決まらない。
ハムテルと二階堂は4年生になり、病院講座に所属することになった。初めは地味な仕事ばかりだが少しずつ病院の仕事にも携わっていく。
ある日、遅くまで病院に残っているハムテルを不思議に思った二階堂がその理由を尋ねてみると、ハムテルの祖母・タカが難関H大獣医学部に入学した孫を近所で自慢し、具合の悪いペットがいたら相談に乗ると言っているから帰りたくないということだった。実際、元気のない金魚やらお腹を壊した犬などを連れた飼い主が相談に訪れるようになった。とりあえず金魚には塩水浴を、犬には下痢止めなど、アドバイスはしているのだが、ご近所の人たちの「それだけ?」という視線や言葉を聞くと、不甲斐ない自分に落ち込んでしまうという。実際、病院講座にいるといっても経験は1年にも満たないただの学生で、できることなどほとんどない。しかし、「獣医学生」という肩書きに勝手に期待され勝手にガッカリされる日々がハムテルには苦痛でならない。だから、人を訪ねるには遅すぎるような時間帯まで家に帰りたくないのだという。
ある日も病院で遅くまで過ごしていると、白目をむいた仔犬を抱えた高校生がやってきた。自分が自転車で轢いてしまったこの犬を見てやって欲しいと訴える。しかし、時間も遅く教授はいない、その場にいるのはハムテルと二階堂、そして先輩のみ。先輩に治療を頼むが、先輩は理由をつけて逃げてしまった。残されたハムテルと二階堂は持てる知識を振り絞り、子犬の治療を試みる。子犬の怪我は前足の骨折で、意識はチョビが子犬を舐めたことで取り戻した。怪我は足の骨折だったので、割り箸で添え木をして応急処置をし入院させ、連れてきた高校生を安心させた。初めての患畜の処置をし、自分たちは中々やれると自信をつけたハムテルと二階堂だった。
一方、西根家にも同じ頃、意識のない小鳥が持ち込まれていた。ハムテルは帰っていないと祖母は小鳥の飼い主に帰ってもらおうとするのだが、獣医学部の孫が居るおばあさんなら何とかできるはず、と無茶苦茶なことを言われ、タカは断りきれずに弱りきっていた。とりあえず、かつて自分も小鳥を飼っていたことがあったのでその記憶を手繰り寄せ、小鳥を観察してみると、小鳥の不調の原因が卵詰まりであることにタカは気づいた。小鳥の飼育の本を参考にオリーブオイルの代わりにサラダ油で代用し、見よう見まねで慎重に卵を取り出すと、小鳥は息を吹き返した。その直後、ハムテルと二階堂は西根家に帰り付き、一部始終を知った。
タカは、自分が適当な事を言ってご近所の人に患畜を持ち込ませたことを少し反省し、犬の足に添え木をしただけで頑張った気になったハムテルと二階堂は、素人でありながら小鳥を救ったタカの処置能力の高さに、自分たちの不甲斐なさを思い知った。

他にも実習やアルバイト、研修を兼ねて牧場実習があったり、秋になると新しく獣医学部に入ってきた2年生の世話などでハムテルたち4年生は忙しく過ごす。
獣医師を目指すハムテルたちには牛や馬など大型動物の出産に関する授業などもある。普通の出産の場合、獣医師が呼ばれることはないが、普通分娩ができない難産の場合、獣医師が呼ばれ、胎児の異常を治療しなくてはならない。実習はダンボールとぬいぐるみを使って行われるが、ハムテルと二階堂は揃ってぬいぐるみを破壊し、出産させることができなかった。ある日、同級生の阿波野に呼ばれたハムテルと二階堂は、牛の出産に立ち会わなければならなくなった。何度も仔牛を生んでいるベテラン牛だが年を取っているため、体力がない。実習を受けたばかり、しかも失敗しているハムテルと二階堂はできれば関わりたくなかったのだが、生まれてくる仔牛のため、繁殖学講座の4年生と力を合わせ、牛の羊膜を突き破り、後ろ足を力いっぱい引っ張って何とか仔牛の出産を成功させた。
少しずつではあるが、着実に経験を積むハムテルたちだった。

犬ぞりとの出会い~5年

就職に失敗した菱沼はオーバードクター(研究費を払って大学で研究をさせてもらう)として大学で研究を続けることになり、ハムテルたちは5年生になった。同級生である中川の猫・ガブリエルが西根家に行儀見習いに来たり、ミケがご近所のネズミ捕りに引っかかったり、ハムテルの周りはいつも騒がしい。大学でも漆原教授の巻き起こすハプニングの対応にも慣れてきた。
ある寒い雨の日の午前中のこと、病院には患畜が全く訪れず暇を持て余していた。辛気臭いことが大嫌いな漆原教授は、お昼にもつれこむような長い診察・治療を必要とする患畜が病院に来なかったら、病院講座の学生に昼食を奢ると太っ腹なことを言いだした。静かだった病院内は盛り上がり漆原教授の人気が高まった。学生たちは難しそうな患畜が来ないことを願い、漆原教授の機嫌を損ねないようにと教授の大好物・缶のしるこドリンクをストーブの上で温め始めた。ところが受付10分前、立ち上がる気力もない呼吸困難の犬が運び込まれてきた。漆原教授と獣医師のタマゴたちは食事もしるこも忘れ、治療に取り組んだ。犬はマヨネーズの蓋を飲んでしまいそれが喉に引っかかり呼吸困難になっていた。教授は医療器具を使い見事喉の奥からマヨネーズの蓋を取り出した。犬はたちまち元気になり、病院内は大盛り上がり。菅原教授や菱沼も誘って昼食に向かう前に、疲れた教授は甘いものを摂取しようとストーブで温めたしるこドリンクを開けた。その途端、しるこドリンクは爆発し、中身が部屋中に飛び散ってしまった。昼食に行くどころかそのしるこの掃除は夜中までかかり、ハムテルや二階堂に雨の日の苦い記憶として残った。

もう5年生になったのだからとハムテルは学会に論文を発表することになり、3日後に迫った学会のため慌ただしく準備をしていた。しかし、その最中に祖母・タカが入院したとの連絡が入った。ハムテルの両親は音楽家で世界中を飛び回っており、現在ハムテルは祖母と二人暮らし。近くにいる身内はハムテルだけなので、祖母を放って学会に行くことはできない。発表を諦めようとしたハムテルだったか講座の高屋敷先生から連名である漆原教授が発表すればいいのだと提案された。ハムテルや二階堂は漆原教授に発表内容を覚えてもらうために奮闘するのだが、当の漆原はいい加減に聞いている。それでもなんとかハムテルは発表内容を伝え終え、漆原教授は学会に向けて旅立っていった。しかし、学会終了後、漆原が学会で適当に話したことで、論文のメイン執筆者であるハムテルは、各方面からの大量の問い合わせに対応しなくてはならなくなってしまった。

冬になり、大学構内でそりに乗りたいという菱沼のために、チョビに縄付けそりを引かせ走っていたところ、ブッチャーさんという人に1月にある犬ぞりレースに出てみないかと誘われた。チョビが誘われたのは多頭引きという4頭以上の犬がそりを引いてコースを走るレースだ。ブッチャーさんは2、3頭しか犬を飼っていない飼い主さんたちから犬を集めてチームを作ろうとしている。マッシャー(そりに乗り犬に指示を出す人間)は飼い主の中で一番若いハムテルがブッチャーさんの一存により強引に決められた。
集まったどの犬も個性が強く、気が荒いため、中々ハムテルの言うことを聞いてくれない。犬ぞりは、マッシャーが個性の強い犬たちをまとめ、マッシャーと犬がお互いに信頼し、一体にならなければそりは上手く進めない。
大人しいメス犬のチョビはたくさんの大きな犬に怯えながらも頑張って練習についていく。ある日、犬ぞりチームに新しいメンバーが入った。気性が荒そうな大きな黒い犬だ。リーダーのシーザーは新入りを威嚇し、早速喧嘩を始めてしまう。注意してもどの犬も言うことを聞かず、犬同士の喧嘩を止められないハムテルはマッシャーをやめようと考えていた。その時、新入りがハムテルの手に噛み付いてしまった。自分のチームの犬に噛まれるとうことに不甲斐なさを感じ落ち込んでいると、犬ぞりチーム全員が一斉にジャックに噛み付いた。喧嘩をしていたのはシーザーと新入りのジャックだけだったのだが、練習を重ねるうちにいつの間にかハムテルを自分たちの仲間と認めた犬たちが一斉にジャックに噛み付いたのだ。初めて犬ぞりチームがまとまった瞬間だった。
練習を重ね、ハムテルは犬ぞりレースに参加、初出場のチョビは転んでしまい5位になってしまった。しかし、犬ぞりの魅力にはまり来年はきっと表彰台に登るのだと決意を固めたハムテルだった。
2月になり5年生の就職が決まり始めた。ハムテルはドクターコースに進むと宣言した。今年の就職委員は漆原教授が務めている。本来の就職活動は、就職委員のもとに学生が訪れ、自分の希望を述べた後、就職委員が会社を紹介する、というのが普通なのだが、強引で待つことが嫌いな漆原は、学生の希望など聞かず、求人票が来ると、学生の意志など関係なく各企業に学生が振り分けコーディネートしていく。二階堂はドクターに進むか就職するかで悩んでいた。かつて、就職難の時に学生を採用してくれた恩ある会社に漆原教授は、学生を一人面接に出さなければいけない。就職希望の学生はほぼ内定が決まり、残るはまだ迷っている二階堂のみ。企業側は人手不足のため今すぐに、大学を辞めてでもすぐに来て欲しい、と言っている。漆原教授に無理やり面接に連れてこられた二階堂は、企業側からの熱いラブコールを受け止めきれず、思わずドクターに行く、と言ってしまった。約束が違うと怒る企業側の前に自分を雇って欲しいとオーバードクターの菱沼が現れた。その企業は菱沼が2年前試験を受けた企業で、試験会場は東京、就労場所も東京だった。人よりテンポがだいぶ遅い菱沼は電車の混雑に巻き込まれ、かなり早く面接会場に向かったのに、目的の場所で降りられず、面接に遅刻してしまったのだ。このラッシュに懲りた菱沼は東京での勤めはできないとし、面接に遅刻したあげく断りを入れるという大変失礼なことをしてしまったのだ。しかし、今回の求人では就労場所は札幌。それならばぜひ雇ってもらいたいとこの面接に現れたのだ。東京のテンポについていけない菱沼で研究はできるのだろかと企業担当者は不安に思ったが、人手不足のため、仕方がなく菱沼を雇うことになった。こうして菱沼の就職は叶い、二階堂はハムテルとともにドクターコースに進むことになった。

獣医師国家試験~6年

ハムテルと二階堂は6年生になり、病院講座でも重要な役割を担うようになってきた。超音波検査など苦戦しつつ難しい検査も頑張っている。病院で様々な患畜と出会いながら経験を積んでいく。
私生活では代役ではあるがチョビが「動物をさわったら手を洗おう」というポスターのモデルに抜擢されたり祖母がインコを預かったり、西根家最強動物のヒヨちゃんがインフルエンザにかかったりと大変なことばかり。冬になると犬ぞりレースの季節の始まりだ。今年は犬ぞりに興味を持った漆原教授も参戦する。ウェイトプル(重量引き)に出たいから力持ちのチョビを貸せと漆原に言われたのだが、ハムテルはそれを拒否。今回は優勝を狙うから、体力温存のためにチョビは多頭引きにしか出さないとハムテルは漆原に話した。
練習のため、またシーザーを始めとするシベリアンハスキーたちと練習を重ねるハムテル。途中、リーダー犬のシーザー同じチームのジャックが逃走し、行方不明になるというアクシデントも発生したが、無事発見され、チーム一丸となって優勝を目指して練習を重ねた。そして迎えたレース当日。漆原教授は病院の患畜を集めて多頭引きに参加した。漆原チームは練習不足のためタイムは遅く、途中コースから外れて正規コースを分かり難くしてしまったり、レース中ハムテルチームに追い越され、犬同士の乱闘が起こりそうにもなった。しかし、ハムテルの機転とチョビの頑張りでハムテルチームも漆原チームも完走することができた。結果、ハムテルチームは3位。来年は、教授チームと関わらないでやりたいと深く思うハムテルだった。

獣医師国家試験が近づくと、大学内では語呂合わせがひっきりなしに呟かれる。試験の予想問題や内容が変わるなどの怪情報が飛び交う中、ハムテルたちも試験に向けて必死に勉強する。様々な情報に惑わされながらも試験を受け、ハムテルと二階堂は国家試験に合格することができた。

卒業を迎えた学生たちは、それぞれ身辺整理を始めている。北海道から本州に移る者も多く、住宅環境の悪い大都会にペットを連れて行くことができず、ペットの処遇に迷う学生も多い。H大獣医の多くの学生たちは在学中気楽にペットを飼っていて、大学に連れてきたりしていた。大学の中で放し飼いにしていても文句も言われず、旅行などで飼い主が不在の時でも黒板に一言メッセージを残しておけば、学生同士がお互いにペットの面倒を見合っていた。
4月から会社の社員寮に行く事が決まっている清原は、私物整理で大学を訪れ、後輩たちに私物を売りつけていた。しかし、ハムテルにだけは豪華テレビをプレゼントして帰っていった。守銭奴の清原が人にプレゼントを渡すなどこれまでになく、何か裏があると思っていたら、黒板に「平九郎にもエサをやってください、期間無期限 清原」というメッセージが残っていた。豪華プレゼントは平九郎のことをハムテルに託すための布石だったと理解したハムテルは、残された清原の飼い犬・平九郎をチョビと一緒に飼うことにし、西根家に連れ帰った。それからしばらく時が経ち、平九郎も新しい環境に慣れ始めた時、東京に行ったはずの清原が現れた。
清原は寮ではなく職場の近くに平九郎と住める家を探しており、老夫婦の家に間借りすることが決まったのだ。交渉の結果、平九郎を番犬として置いてもいいといいと言われ、迎えに来たのだという。平九郎は清原とともに去り、ハムテルの同級生30数名が皆旅立ち、残されたハムテルと二階堂は晴れ晴れとした寂しさを味わっていた。

博士課程(ドクターコース)

ドクターコースに進学したハムテルと二階堂は、病院講座の先輩として、後輩指導に取り組んでいた。病院の患畜は犬がとても多いのだが、今年病院講座に入ってきた後輩の中に、犬に触れることができない犬恐怖症の小泉が入ってきた。小泉が犬に慣れるように協力したり、漆原が預かってきた合鴨の孵化を手伝ったり、モモンガの世話をしたり、ドクターコースでもたくさんの動物に触れ合う生活をしていた。
犬ぞりレースも3年目を向かえ、犬たちのチームワーク良くなり、マッシャー(そりの操縦士)であるハムテルの信頼感も増し、優勝目指して練習に励む。今年の一番のライバルは、漆原教授率いる本場の犬ぞりチームだ。疾走順の一番手はハムテルチーム。昨年の優勝タイムに匹敵する好タイムが出た。後続のレースを見守るが、ハムテルチームのタイムにはなかなか追いつけない。最終滑走の漆原教授は本場の犬ぞりチームのマッシャーとして参加、ものすごいスピードでスタートをきった。ハムテルの記録を軽々と抜いて漆原チームゴールし、優勝、と思いきや、そりに漆原が乗っておらず、漆原チームは失格になってしまった。かなり早い段階で振り落とされたと思われる漆原教授はコースを徒歩で戻ってきた。結局、ハムテルチームが3年目にして見事優勝を果たした。

就職したにも関わらず、しょっちゅう大学に入り浸る菱沼に、開業を考えているならばどこかに修行に行ったほうがいいとアドバイスをもらったハムテルは、漆原教授に相談し、倉嶋動物病院というところに研修に行くことになった。指定された午後の時間にハムテルが病院に行ってみると、きちんと整理された診察室、きちんとした身なり、患畜に優しく、診療時間を過ぎても急患なら受け入れるという倉嶋医師がいた。患畜にも優しく、分かりやすい説明で飼い主にも親切で丁寧、高額な治療費を出し渋る飼い主には月賦でいいと言う柔軟な対応を見せる優しい倉嶋医師の様子を見て、自分も倉嶋のようになりたいと憧れを抱くハムテルだった。
二階堂も研修に出かけるのだが、漆原教授の紹介だと、無駄に苦労しそうという理由で漆原教授の紹介ではなく、自分で決めると言って、街を回り始めた。獣医師のバイトを募集している病院を見つけ中に入ってみると、今にも倒れそうなやつれた医師と身重な妻がいて、二階堂が獣医師免許を持っていると知ると安心してそのまま倒れてしまった。突然のできごとに二階堂も戸惑うが、後を任されたからには待合室で待っている患畜を診療しなければいけない。二階堂はH大にいる漆原に連絡を取りながら、慣れない場所、慣れない器具で診療を開始する。右往左往しながら飼い主たちにも協力してもらい、時には漆原教授が乗り移ったかのような大胆な治療をし、その場を乗り切った二階堂。漆原教授のような獣医師にはなりたくないと思っていたのに、咄嗟の時には漆原教授のようになってしまう自分に愕然とした二階堂だった。

卒業していった清原や阿波野など、同級生何人かで動物病院を開業するという電話をハムテルの祖母・タカが受けた。タカはその話を聞いて、ハムテルにもすぐに開業しろと迫るのだが、ハムテルは冷静にテリトリーの問題があるから難しいと分析する。開業するとしたら、今住んでいるところに土地があるので、できればそこで開業したいハムテル。しかし、ご近所に西町家畜診療所という動物病院があるのだ。至近距離に動物病院が2軒あったらつぶしあいになってしまう。ハムテルは時期を見ようと冷静な判断を下した。
ハムテルの開業を応援しているタカは、西町家畜診療所を偵察し、そこには高齢の獣医師が一人で後継はいないらしい。すると、テリトリーの問題は時間が解決してくれるとタカは言う。
二階堂は、いつまでもハムテルのあとをくっついていていいのか迷っていた。ハムテルの後ばかりついてまわったために、清原たちのように外科や内科といった別講座の知識もないし、ハムテルのような冷静さもとりえもない。漆原教授に相談すると、後継のいない動物病院を継がないかという話があるという。即答できずに二階堂は悩んでしまった。
しかし、その後継のいない病院とは、西町家畜診療所のことだった。いつまでもくっついて、ハムテルの足を引っ張ってはいけないと思い、自分の新しい進路を決めようとしていたのに、自分が西町家畜診療所を継いでしまったら、ハムテルはいつまでたっても予定地に開業することはできない。すぐさま断ろうと二階堂は漆原のもとへ話に行くのだが、略式に受けてしまった後なので、断るのならば自分で断れと二階堂は漆原に言われてしまった。知らずに受けてしまった話ではあるが、二階堂はハムテルに合わせる顔がない。ハムテルは冷静に、いい話だからきちんと考えろと二階堂を諭した。

年末、H大付属動物病院は大忙しだった。ハムテルは海外を飛び回っていた両親が帰省しているため実家におり、二階堂は西町家畜診療所の手伝いで不在だった。思いつきで二階堂を西町家畜診療所に行かせた漆原だったが、忙しい時に二階堂がH大にいないのは不便だと思い、西町家畜診療所に二階堂はネズミが大嫌いだということをバラし、西町家畜診療所の方から二階堂を断るように仕向けようと画策し始めた。
一方、西町家畜診療所の方も多忙を極めていた。持ち込まれる患畜がネズミ系が増えてきて、二階堂の精神も限界に近づいてきていた。二階堂は近所のハムテルを呼び西町家畜診療所の診療を手伝ってもらうことにした。大勢いた患畜もハムテルやタカの手伝いにより、なんとか治療し終え一息ついた時、排水口からでてきたネズミを見て二階堂は絶叫してしまった。西町家畜診療所の院長に二階堂の弱点がバレ、教授の思惑通り、二階堂が跡継ぎになるという話は流れてしまった。しかし、手伝いに来たハムテルが西根の家で開業したがっていることを聞いた院長は自分が引退した後に機材一式をハムテルに譲るという約束を交わした。

大忙しだった診療を終え、西根家でクリスマスパーティーをしながら、漆原をはじめとするH大付属動物病院一行や菱沼は、2、3年後、ハムテル開業の折には、漆原教授が顧問になり、犬嫌いの小泉が犬以外の担当、菱沼は血液検査担当になるなど、開業に向けての夢を語りながら、忙しかった夜は更けていった。

『動物のお医者さん』の登場人物・キャラクター

西根 公輝(にしね まさき) / ハムテル / キミテル

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H大学獣医学部に通う大学生。愛称・ハムテル・キミテル。友人からは「公輝」を分解した呼び方「ハムテル」と呼ばれ、祖母からは「キミテル」と呼ばれている。皆好きなように呼んでいる。
高校3年の冬、帰宅途中、近道をするためにH大獣医学部の解剖学教室の横を通り過ぎようとした時、般若のような顔をしたシベリアンハスキーの仔犬・チョビに出会い、保護者である漆原教授にチョビを譲り受けたことから獣医師への道を歩むことになる。
ハムテル自身は理Ⅲを受験予定ではあったが、獣医師になる意志はなかった。しかし、チョビを貰い育てる中で、「やり方さえ知っていたら自分で治療した方が早いし実費ですむから安上がり」と思うようになり獣医師を目指すことになった。
漆原教授からは「高校生にしてはじいさんぽい落ち着き」と評価されるほど冷静沈着な性格だが、昼寝中の祖母の寝室に追いかけっこをするチョビとミケを入れてみたり、人の背中で鼻水を拭くのが大好きな馬に、馬好きな菅原教授の背中で鼻水を拭かせるなどのいたずらをしたりする一面も持つ。
古くて大きな屋敷(幽霊屋敷や廃屋と言われることもある)に祖母のタカと祖母の飼い猫・ミケ、ハムテルが小学生の時に買ってきた鶏のヒヨちゃんと暮らしていたが、シベリアンハスキーのチョビが加わり、さらにスナネズミも加わることになった。
犬ぞりレース愛好家のブッチャーさんに誘われ犬ぞりレースを始めることになり、若さを見込まれてマッシャー(操縦者)としてレースに参加している。初大会から徐々に順位を上げ、3回目のレースでは見事優勝を飾った。
将来は獣医師として友人・二階堂とともに自宅の祖母の土地に開業したいと考えている。

西根 タカ(にしね たか)

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ハムテルの祖母。ハムテルからは「おばあさん」と呼ばれている。気性が荒くて押しが強い、根に持つタイプだが都合の悪いことはすぐに忘れてしまう。
自分で預かった動物の世話などもハムテルに押し付けることもある。
ハムテルが難関H大学獣医学部に入学したことを喜び、近所に吹聴したために、家に病院に行くほどではない具合の悪い動物が持ち込まれることになり、ハムテルは一時期自宅に帰ることを嫌がっていた。ハムテル不在時に卵詰まりの小鳥が持ち込まれ、それをなんとか自力で解決したものの、非常に困ったことからハムテルの気持ちが理解でき、「少しは悪かった」と反省した。
ハムテルが開業するためにはご近所の西町家畜診療所がライバルと考え、チョビにわざとみかんを食べさせ便に異物(みかん)を混ぜさせて、偵察に行くなどとてもアクティブ。西根家に入り浸る二階堂はもはや客とは思わず家族のように接し、ハムテルの友人が電話してきた時などはハムテルと代わらず長話をするなど気さくな面もある。

チョビ

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