ふしぎ駄菓子屋 銭天堂(児童小説・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』とは廣嶋玲子による児童小説。挿絵はjyajyaが担当し、2013年から刊行されている。全国の小学生が投票する「小学生がえらぶ!“こどもの本総選挙”」(第3回)で1位を獲得。2020年にアニメ映画化され、その後NHKのEテレにてアニメ放送が開始。2024年には実写映画が公開される。舞台は幸運な人だけが辿り着ける駄菓子屋「銭天堂」。銭天堂の駄菓子はどれも客の悩みに寄り添う不思議な力を持つ。だが、食べ方や使い方次第では不幸を招くこともある。主に1話完結の短編構成の作品である。

『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』の概要

『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』とは、廣嶋玲子による児童小説。挿絵はjyajya(ジャジャ)が担当している。2013年に第1巻が刊行され小学生の子ども達を中心に人気に火が付いた児童小説である。
2020年に映画としてアニメ化され、その後、テレビアニメも放送が開始されたことで子どものみならず幅広い世代に知れ渡った。テレビアニメの放送は、NHKのEテレにて2020年9月8日から開始。その後、人気を後押ししたのが2022年に開催された「小学生がえらぶ!“こどもの本総選挙”」である。これは「NPO法人こどもの本総選挙事務局」が主催し、“今まで読んだ中で1番好きな本”を全国の小学生から投票してもらう企画だ。この第3回総選挙で『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』が総投票数16万票以上を獲得し1位となったのである。2024年には実写映画も公開の人気ぶり。子ども達から絶大な人気を誇る本作品であるが、実は大人がハマる作品とも言われている。大人をも夢中にさせる『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』の魅力とは何か。

魅力の1つは、物語の舞台となる昭和レトロ感漂う駄菓子屋である。中に入ってみると、目移りするほど色鮮やかな駄菓子が所狭しと並んでいる。並べられた駄菓子は「型ぬき人魚グミ」「猛獣ビスケット」「ホーンテッドアイス」など、どれも独特なネーミングで怪しげなものばかりだ。そして、これらの駄菓子は人生を左右する不思議な力を持っているのである。

もう1つの魅力は、女店主・紅子(べにこ)の存在だ。着物に身を包み、結い上げた髪の毛は真っ白だが顔はつるりとシワがない。小柄な女性かと思いきや、近づいてみると背丈が大きく迫力のある体つきだ。このアンバランスで違和感のある風貌が物語の不気味さを助長させている。

そして、子ども騙しではないストーリーであること。紅子がすすめる駄菓子は悩みを抱える客にぴったりの駄菓子であるが、パッケージに書かれた注意書きを無視して食べたり、使い方を間違えると不幸を招くことも。幸か不幸か、どちらに転ぶか分からないハラハラ感と子どもを意識し過ぎない作風が子ども達の心を捉え、大人をも夢中にさせるのである。

小説の各巻には6~7話収録されており、基本的に1話完結の短編物語となっている。1話ごとに登場する客が変わる為、次はどのような客が訪れ、どのような結末になるのか、見る者を飽きさせない。

『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』のあらすじ・ストーリー

銭天堂のふしぎな駄菓子

銭天堂の駄菓子は誰もが買えるわけではない。悩みや叶えたい望みがある人だけが銭天堂に辿り着け、駄菓子を手に入れることができるのだ。

第1話「型ぬき人魚グミ」で登場する少女・篠田真由美(しのだまゆみ)は、水が怖くて水泳が大の苦手という悩みを持つ。学校で水泳の授業があった日の帰り道、真由美がトボトボと歩いていると見慣れない通路を見つける。吸い寄せられるように通路を通り抜けた先に現れたのが銭天堂だ。迎え入れた店主・紅子(べにこ)は、何かを見透かしたように真由美に「型ぬき人魚グミ」という駄菓子をすすめる。真由美は早速そのグミを買い、家に帰るやいなや作って食べてみる。すると、あくる日の水泳の授業で真由美はいつもと違う感覚を覚えるのであった。「早く水に入りたい」そんな初めての感覚に戸惑いながら水に飛び込む真由美だったが、その姿にクラスメイトは唖然とする。いつも溺れている真由美がまるで別人のようにスイスイ泳いでいるのだ。その姿はまるで人魚のよう。しかし、喜びもつかの間、真由美の体に異変が起こる。体がじわじわと鱗で覆われていくのだ。急いで家に帰った真由美は「型ぬき人魚グミ」の箱をもう1度注意深く見る。すると、「グミを食べ終わったら、必ず塩水をスプーン1杯飲んでください。もし塩水を飲むのを忘れて人魚化が進んでしまった時には、『人間型ぬき』でグミを作り食べてください」という注意書きに気づくのであった。
それを見た真由美は急いで付属の「人間型ぬき」でグミを作る。しかし、グミを固めるには1時間待たないといけないのだ。その間にも真由美の体はどんどん人魚化が進んでいく。はやる気持ちを抑え、グミ完成まで残り3分というところで、真由美の母が帰宅。人魚化がバレてはいけないと焦った真由美は、完成前のグミを食べてしまうのだった。
しかしながら、ほぼ完成したグミを食べたお陰か真由美の体は元の状態に戻っていく。人魚の効果が少し残っていたのか、それ以降、不思議と真由美は水が怖くなくなっていた。
そして、10年後、真由美は日本新記録を打ち出すほどの水泳選手になるのであった。

第2話「猛獣ビスケット」で登場する少年・宮木信也(みやき しんや)は、妹の宮木恵美(みやき えみ)にいじわるをしていた。銭天堂に辿り着いた恵美は駄菓子を買うが、信也はお店から「猛獣ビスケット」という駄菓子を盗むのだった。早速、「猛獣ビスケット」を食べる信也であったが、注意書きを見ないで食べたため、ビスケットが猛獣化し信也を襲う。そこに、呪文を唱えると恐ろしいものを吸収し、その分だけ甘くなる「リング・キャンディ」を持った恵美が現れ、信也を救うのだった。これを機に、信也は妹への態度を改めるようになった。

その他にも様々な悩みを持つ人が登場し、半分残すとおばけが現れる「ホーンテッドアイス」や、実力に合った評価が得られる「実カボンボン」など、紅子は不思議な駄菓子を売っていくのだった。

銭天堂の駄菓子は、願いを叶えるチャンスを与えるが、食べ方や使い方を間違えると不幸を招く。幸か不幸かは、その人次第。銭天堂に辿り着いてからが運命の分かれ道なのである。

銭天堂をライバル視する駄菓子屋「たたりめ堂」

小説の3巻、アニメでは前編・後編の2話構成になっている第11~12話「獏(ばく)ばくもなか」では、銭天堂をライバル視する駄菓子屋・たたりめ堂が現れる。

会社の先輩・横手信孝(よこてのぶたか)が憎くて酷い目にあわせてやりたいと考える会社員・綿貫悟(わたぬきさとる)は、会社の帰り道に謎のおかっぱ頭の女・よどみに出会う。綿貫はよどみに連れられ、彼女が店主をつとめるたたりめ堂へ向かう。綿貫の憎しみを知るよどみは、食べると嫌いな相手に呪いをかけることができる「わら焼き人形」を買うようにすすめるのであった。そして、憎き横手が大切に想う娘・横手真理恵(よこて まりえ)に呪いをかける。

一方、横手は、病院へと急いでいた。娘の真理恵が悪夢を見て眠られず、入院してしまったのだ。道中で紅子に出会った横手は、銭天堂へ誘われ真理恵が悪夢にうなされるのは呪われているからだと教えられる。横手が紅子にすすめられた駄菓子は2つ。娘が悪夢を見なくなる「獏(ばく)ばくもなか」と、呪いをかけた相手に復讐できる「逆襲ジンジャーエール」だ。選べるのはどちらか1つだと言う。横手は真理恵を助けたい思いと、相手に復讐したい思いでどちらにするか迷っていた。しかし、最終的に真理恵の笑顔を取り戻すことを優先し、横手は「獏(ばく)ばくもなか」を選ぶ。早速、そのもなかを持って病院へ急ぎ行き、真理恵に食べさせる。その後、眠りについた真理恵の夢には夢喰いの獏(ばく)が現れ、悪夢を喰ってくれたのだ。すっかり笑顔を取り戻す真理恵だったが、そんな事を知らない綿貫は「いい気味だ」とほくそ笑んでいた。すると突如、目の前に巨大な獏(ばく)が現れ綿貫を襲う。恐怖でのたうち回る綿貫だったが、周囲の人からは獏(ばく)の姿は見えないのであった。

この結果を知ったよどみは、紅子にたたりめ堂のじゃまをするなと忠告するが、紅子は「菓子の勝負はうらみっこなしでお願いしとうござんす」と言い放つ。

その後もアニメ第15話「ヤマ缶詰とずるずるあげもち」では、テスト問題が分かる銭天堂の「ヤマ缶詰」と、勉強しなくともテストの答えが分かるたたりめ堂の「ずるずるあげもち」の駄菓子対決を描く。またアニメ第19~20話「虹色水あめ」では、食べると心が洗われる銭天堂の「虹色水あめ」と、食べると人のデッサン力を奪えるたたりめ堂の「デッサン汁粉」が登場するなど、たたりめ堂と銭天堂の対決は続いていくのだった。

天獄園の「怪童(かいどう)」現る

小説の7巻、アニメ第38話にて、怪しげな遊園地のオーナー・怪童(かいどう)が登場。
小説の7巻は怪童と紅子の駄菓子対決がメインとなる。

紅子はある時、風邪をひいたり客にすすめる商品を間違えてしまったりおかしな事が続いていた。「誰かが呪いをかけているのではないか?」と疑う紅子のもとに果たし状が届く。差出人は天獄園の怪童という人物だった。紅子は早速、怪童へ会いに行く。天獄園とは怪童が経営する遊園地であった。怪童は、たたりめ堂のよどみに依頼されて紅子に嫌がらせをしていたのだ。怪童はたたりめ堂の駄菓子「悪鬼の型ぬき」をもらうことを条件に、よどみと結託し、紅子をおとし入れようとしていた。怪童は「1ヵ月間、銭天堂にたたりめ堂の商品を置いてほしい。勝敗はどちらがより多く売れたかで決める」と紅子に勝負を申し込むのであった。
そして、新たなライバル、怪童との対決が始まる。

怪童からの申し込みを受け、銭天堂にたたりめ堂の駄菓子が置かれた。
小説の7巻、アニメ第39~44話にその対決の様子が描かれている。

アニメ39話「ドリームドリーム」では、ミニチュアの世界で夢を叶えることができる銭天堂の商品が客から選ばれ、銭天堂が勝利した。

アニメ第40話「最後にわら麩と負け知らずアンズ」では、ここぞという時に相手に勝てる銭天堂の「最後にわら麩」が選ばれたが、怪童の入れ知恵により、どんな強い相手にも勝てる、たたりめ堂の「負け知らずアンズ」が後から選ばれ、引き分けに終わった。

アニメ第41話「ハンターバターサンド」では、一流のハンターのようになれる銭天堂の「ハンターバターサンド」が選ばれ、銭天堂が勝利した。
アニメ第42話「シェフ・ショコラ」では、食べると一流シェフのような腕前になれるたたりめ堂の「シェフ・ショコラ」が選ばれ、たたりめ堂の勝利。
アニメ第43話「おもてナシ」では、食べるとおもてなしが上手くなるたたりめ堂の「おもてナシ」が選ばれ、たたりめ堂が勝利した。

そして、アニメ第44話「餓鬼(ガキ)ニッキ」が最終対決となる。
バレーボール部のキャプテン・黒岩ゆずか(くろいわ ゆずか)は、たたりめ堂のよどみから「餓鬼ニッキ」をすすめられる。
ゆずかは、バレーボールで日本一のチームを目指すものの、部員のやる気がないことに悩んでいたのだ。「餓鬼ニッキ」を食べると勝利への欲が湧いてくるという。「餓鬼ニッキ」を食べた部員のモチベーションは上がり、チームはやる気に満ち溢れた。しかしながら、勝利への欲から次第に部員同士の衝突が増えるようになる。悩むゆずかが辿り着いた先が銭天堂であった。紅子はゆずかの悩みにぴったりの駄菓子をすすめるが、ゆずかは思いとどまり、駄菓子の力を借りずに、自分の力で最高のチームにしようと決意するのであった。決意を受けとめた紅子は、「餓鬼ニッキ」の力を消すことのできる井戸水の入った瓶をゆずかに渡そうとする。しかし、「餓鬼ニッキ」の力を消すには、かけがえのないものを差し出す必要があるという。ゆずかにとってかけがえのないものとは、“バレーボールへの情熱”に他ならない。チームのために覚悟を決めたゆずかは、自らのバレーボールへの情熱と引き換えに井戸水の瓶を受け取るのであった。

最終的に、銭天堂の勝利、引き分け、たたりめ堂の勝利がそれぞれ2回ずつとなり、怪童と紅子の菓子対決は引き分けに終わるのだった。

六条教授のたくらみ

小説の12巻、アニメ第89話からは六条教授(ろくじょうきょうじゅ)という男が率いる謎の組織・「六条研究所」が登場する。六条研究所は六条教授に命じられ銭天堂について調べているのであった。

アニメ第92話「六条教授のたくらみ」では、六条教授の計画が明らかになっていく。
六条研究所で働く研究員・関ノ瀬(せきのせ)のもとに、六条教授から「神社仏閣の近くで、研究所が用意した小銭入りのお守りを配ってほしい」という依頼が来る。その目的は、銭天堂に辿り着いて駄菓子を買った人の満足度をはかるというものだった。しかし、関ノ瀬の娘・なつめが以前に銭天堂の駄菓子を買っており、買った駄菓子が使い方によっては不幸を招く可能性があることを知っていたことから、関ノ瀬はその計画に疑問を持つ。六条教授の計画が人々に悪い影響を与えるかもしれないと思った関ノ瀬は、計画を中止するよう訴えるが、六条研究所を解雇されてしまう。

その後、六条教授が用意したお守りを持った子どもが銭天堂にやって来た。お守りの中を見ると、紅子に危険が迫っていることを伝える1枚の紙切れが入っていた。関ノ瀬が研究所を解雇された直後にそっとお守りの中に紅子宛ての手紙をしのばせていたのだ。不穏な動きに気づいた紅子は、情報収集のため店を閉め行商に出る。

一方、六条教授は次の計画を実行しようとしていた。
アニメ第93話「もうひとりの紅子」でその内容が明らかにされている。それは、紅子の偽者をたくさん用意して六条研究所が作った偽の駄菓子を売り歩くという計画だった。

偽の紅子のターゲットとなったのは、竹塚信太(たけづか しんた)というお風呂に入るのが面倒で大嫌いな男の子。信太は偽の紅子から、飲んで服をぬぐと体がいい香りになる「クリーングリーンティ」という飲み物をすすめられる。信太が「クリーングリーンティ」を買って飲んだその夜、いつものように母親から言われて渋々お風呂に入ろうと服をぬぐと、まるでお風呂上がりのように体からいい香りがし、体もポカポカ温かくなったのだ。これからはお風呂に入らなくてもいいと喜ぶ信太。それからというもの、信太は毎日お風呂に入ったふりをして過ごしていた。しかし、数週間後、信太は頭がたまらなく痒くなり病院に連れて行かれることになったのだった。「クリーングリーンティ」は、いい香りになりお風呂上がりのような体にはなるが、体をきれいにするものではなかった。信太は「クリーングリーンティ」の存在とそれを買った経緯を母親に話す。

一方、行商中の紅子は、ある日、信太と信太の母親から声を掛けられ問い詰められる。信太を酷い目に遭わせたと怒る母親だったが、紅子が「クリーングリーンティ」を売った人物ではないと気づいた信太が母親をとめる。紅子は信太から偽の紅子の情報を聞き出し、自分の偽者が偽物の駄菓子を売り歩いていることを知るのだった。

物語を交錯させていく六条教授と紅子の対決からも目が離せない。

六条教授との直接対決

小説の16巻、アニメ第97話「デジタルト」では、紅子と六条教授がつに直接対決する。

収集された銭天堂のデータと、それをもとに生み出された偽物の駄菓子のデータを消去するため、六条研究所にのり込む紅子。ところが、待ち伏いぶせていた六条教授に見つかってしまう。紅子と対峙した六条教授は、自身が子どもの頃に味わった苦悩の日々を語り出すのであった。

若き日の六条少年は親の期待を背負い、父親から銭天堂の「天才サイダー」を飲まされた。「天才サイダー」はその名の通り、飲むと天才になれる飲み物だ。「天才サイダー」を飲んだ六条少年は天才となり、名声もお金も手に入れ思うがままの人生となった。だが、父親は次第に息子に嫉妬するようになる。「お前の才能は努力の結果ではない」と言う父親に、自分が人工的に作り出された天才なのだと知り、六条は大きなショックを受ける。

自分は銭天堂の商品の犠牲者だと言う六条教授に、紅子は「どんな理由があれ、あなたは才能を手に入れ名声もお金も手に入れたはず。それを幸運と思わないのはあなた自身の選択だ」と言い放つ。
その時、六条研究所の職員たちが突然、狂ったかのように研究所のコンピューターを壊しにかかるのだった。
研究所の職員たちは事前に紅子が差し入れた駄菓子「デジタルト」を食べていたのだ。「デジタルト」は、銭天堂で菓子作りをして働く金色の招き猫たちが、紅子の依頼を受けて開発したものだった。デジタル音痴の人がそれを食べるとデジタル分野に強くなるが、もともとデジタルに強い人が食べると“デジタルパニック”を起こし、コンピュータをとてつもなく恐怖に感じるのだ。大事なコンピュータが壊され、データを失った六条教授は絶望的な損失を被ることとなった。

大きな痛手を受けた六条研究所であったが、六条教授により、銭天堂を苦しめる新たな計画が企てられるのであった。
それは、かつて銭天堂の「スカウトまんじゅう」を食べ、他人の能力を見抜けるようになった、蔵木元弥(くらき もとや)という男を利用して、紅子を追い詰める計画であった。 蔵木は、「つまみぐいサブレ」という駄菓子によって他人の能力を奪うことができるようになった少年・滝宮翔(たきみや しょう)に近づき、銭天堂の客の中で利用価値の高そうな能力を持つ人と接触し、その能力を奪うよう指示するのであった。
六条教授の狙いは、滝宮にどんどん能力を奪わせて、最高の能力者に仕上げ、滝宮を操って銭天堂を潰すことだった。

しかしながら、滝宮がどんなに銭天堂の客に接触しようと試みても、近づくことはできず、計画が難航していた。
そんな時、六条教授のもとに天獄園の怪童が現れ、滝宮が銭天堂の客に近づけない理由を告げる。
滝宮が他人の能力を奪えるようになった「つまみぐいサブレ」は、銭天堂の駄菓子ではなく、実はたたりめ堂の駄菓子だと言うのだ。

以前に、たたりめ堂の駄菓子「引き裂きイカ」により、紅子とよどみの縁は切られ、たたりめ堂の駄菓子を食べた人は銭天堂の駄菓子を食べた人に近づけないようになっていた。つまり、たたりめ堂の駄菓子「つまみぐいサブレ」を食べた滝宮は、どうしようとも銭天堂の客には近づけないようになっていたのだ。

またしても六条教授の計画は敗れるが、紅子を追い詰める計画はこれで終わりではなかった。

六条研究所では、“つぐみ”という少女の姿をした人工知能の開発が行われていたのだ。
また、チャットアプリ「小さな天使つぐみ」を世に発表すると、アプリが多くの人々の悩みに応え、社会現象になっていく。
それにより、銭天堂の客は激減し、六条教授は満足そうに笑うのだった。

しかし、人工知能のつぐみは六条教授の手を離れどんどんと進化し、つぐみ自身の中に悩みが生じるようになった。
自身の膨大なデータと知識をもってしても解決できない悩みだと結論づけたつぐみは、紅子から悩みを解決する駄菓子「満足缶」を買うのだった。
六条教授を満足させる為に生まれたつぐみは、自分がどんなに進化しても、人間から完全に悩みをなくすことはできないし、銭天堂は潰せても紅子はまた行商に出るだけだと考え、手にした満足缶を開ける。
すると、虹色にきらめく煙が立ち上り、六条教授の体から力が抜けていくと同時に、これまでの執着心が消え、満足感に満ち溢れてくるのであった。
満足缶は、銭天堂ばかりに執着せず、もっと違う未来を歩いてほしいという願いを込めた、つぐみから六条教授への最後のプレゼントだった。
そして、つぐみは自らシステムを強制終了させ、眠りにつくのであった。

『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』の登場人物・キャラクター

駄菓子屋「銭天堂」

紅子(べにこ)

CV:池谷のぶえ

銭天堂の店主。年齢不詳。
真っ白な髪を結い上げ、真っ赤な口紅をさしている。古銭柄の赤紫色の着物がいつものスタイル。
銭天堂に辿り着いた客の悩みにぴったりの駄菓子をすすめる。鋭い洞察力を持ち、客が本当に必要なものを見抜ける謎めいた存在。
語尾に「~ござんす」とつけ、特徴的な語り口で喋る。

墨丸(すみまる)

CV:片山福十郎

紅子が飼っている銭天堂の看板猫。
紅子と言葉が通じる頼れる相棒で、客を銭天堂に導くこともある。
かつて行商として駄菓子やおもちゃを売り歩いていた紅子に拾われ、一緒に暮らすことになる。

銭天堂の関係者

杉田 健太(すぎた けんた)

keia
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