ニセモノの錬金術師(異世界でがんばる話)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ニセモノの錬金術師』とはKADOKAWAのMFCレーベルや「カドコミ」で掲載・連載されている、杉浦次郎原作でうめ丸作画の異世界転生ファンタジー漫画である。異世界転生した錬金術を生業とする人間のパラケルススと、奴隷の少女ノラやエルフのココを中心として物語が描かれており、一見するとスローライフな世界観が特徴。身体欠損や、直接ではないが性的な描写など、一般的な漫画では敬遠される踏み込んだ表現もこの漫画ならではである。錬金術や呪術、奴隷、エルフなど魅力的なファンタジー要素が詰め込まれている。

『ニセモノの錬金術師』の概要

『ニセモノの錬金術師』とは、杉浦次郎原作、うめ丸作画によるKADOKAWAのMFCレーベルで展開され、「カドコミ」でも連載されているファンタジー漫画である。
この作品は杉浦次郎が自身のPixivアカウントで発表している、当初は『異世界でがんばる話』という、大体がネーム状態のらくがき漫画がもととなっていた。2022年の「次にくるマンガ大賞」Webマンガ部門で12位にノミネートされ、KADOKAWAが目をつけ、作画をうめ丸が担当しリメイクで商業展開と相なった。
内容は、異世界転生というテーマを軸に、錬金術を駆使する主人公の日常と成長を描いている。スローライフという視点で語られる物語は、読者に穏やかな時間を提供しつつも、錬金術や呪術、奴隷・エルフといったファンタジーの要素が織り交ぜられ、独特の世界観を構築している。身体欠損や、直接ではないが性的な描写など、一般的な漫画では敬遠される踏み込んだ表現もこの漫画ならではの特徴だ。
この作品は、異世界転生ものの定番的な設定を踏襲しつつ、穏やかな日常生活の描写を取り入れることで、新鮮な物語性を生み出している。幅広い年齢層の読者から高い評価を得ており、異世界転生ファンタジーの新たな地平を拓いた。
『ニセモノの錬金術師』は、その魅力的なストーリーテリングと丁寧な世界構築により、異世界ファンタジーのジャンルに新たな風を吹き込んでいる。読者を引き込む物語性と、細部にわたる世界観の描写を支える「異世界転生」「錬金術」「スローライフ」「奴隷」「エルフ」といった要素はこの作品が語る上で重要なキーワードであり、今後の展開が期待されている。

『ニセモノの錬金術師』のあらすじ・ストーリー

パラケルススとノラとエルフ

主人公のパラケルススは異世界にチートスキルを持って転生したのはいいが、選んだのは非戦闘系のスキル。異世界では冒険らしいことはひとつもせず「錬金術師」として金を稼いで生活していた。高額な商品の材料は危険な場所にあるか高い金を払わなければならないため売れないし、かといって安い商品は巷に出回りすぎていて売れるとは言い難いのだ。新参者は手間がかかって誰も作らないようなものに手をつけるしかないのだが、1人では手に余るので人手が必要だった。人を雇うのも金がかかる。スキルのことも秘密にしておきたいからおいそれと雇えない。街を歩いていて、奴隷を売っている店の前を通りかかり、奴隷ならば魔術的な契約をすれば秘密を厳守してくれるはずと背に腹は変えられず入店し買おうとする。けっこう細かい作業ができる労働用でという注文に、1人の少女奴隷、ノラ・ペタンを紹介される。ノラは「ここにいると悪い男たちばっかり来て、買われたらきっと酷いことされます」と情に訴えかけてきた。パラケルススは、側にいた手足がなく瀕死状態のエルフの女も気になり、交渉下手なので決して安くはない値を言ってしまい、2人とも買い取った。

ココの治療と呪い

パラケルススはエルフを自宅に運び、チートスキルの「天地万能のレシピ」で治療薬のレシピを表示させ、治療を開始する。なぜかノラには力仕事をさせないパラケルスス。パラケルススが「君はとてもきれいなので怪我とか苦しい思いをしてほしくないと思ったから」というと、ノラは力仕事である水を汲んで来て「だんなさまは女にあまいです。奴隷になめられます。ノラはなめますよ」と意地悪な笑いを浮かべる。
作った治療薬をエルフの胃に流し込んでも吐くだけなので、風呂に入れて肌から直接染み入らせていくことになった。どんどんマナを吸っていき髪まで光り始めるエルフに、引きつつも不思議がるパラケルスス。身体を掴んでも手に実感がない。これは第一資料(プリマ・マテリア)だとパラケルススは思い当たる。第一資料は「この世界」に存在するあらゆるものの素材となるものだ。さらにパラケルススは気づく。肉体や霊体は個体差がありパラケルススが精巧に作っても少しでも違えば異物になり腐ってしまうが、第一資料はすべての物質の基礎でこれ以上壊れることはなく異物にはなり得ない。だから第一資料で身体のパーツを作ればかなり高い確率でくっつくはず。だが、第一資料は物質になりたがる。そして変成してしまった後の第一資料を取り出せた者はいない。パラケルススもガラス瓶に僅かほどしか収集できていないのだ。残念ながら先行き不安だが、きっかけは掴めたのでとりあえず魔力回復風呂には入れていくことになった。
商品となる幸運魚を作るための水槽を庭に置いていたが、大事なものを外に放置していることに我慢できなくなったノラが、精霊を呼び寄せて岩に偽装させてくれていた。ところがパラケルススが「なんだこれ?」と不審がり、仕方なくノラは自分が呪術師であることを明かす。ノラは呪術師の一番大事な技能である、身体に触れた相手の霊体に直接声を響かせる技能を修得していた。それを使い、ノラが自国の言葉で「かわいい赤ちゃん」という意味であるココ(ココモチ)と名付けたエルフの魂を覗いてみることになった。すると、ものすごい量の呪いがココの魂を縛り付けていることが分かる。ノラが言うには、奴隷になった時につける印である「奴隷の部屋」に呪いの術式があるという。ノラは危険を犯して奴隷の部屋の奥へと入り込む。そこではあらゆることを禁ずる呪いがかけられており、呪いを解くためには愛情の気持ちが必要だった。呪いをかけた相手に激怒している今のノラには、呪いを解くことが難しかった。呪いの影響を受けたノラだったが、パラケルススと肌を密着させることでコントロールすることに成功する。
ほどなくアグノシア・デアという女性の錬金術師が訪ねてきた。幹部クラスの達人(アデプト)である彼女はココの様子を見に来たらしい。不自由なのをとても気にかけていたという。彼女のために第一資料の反応を見ることができる「真理の目」を片目だけ渡してきた。アグノシアは「もうひとつはもっと良いものをあなたが作るのです」と言って去る。パラケルススは盗聴や千里眼を防ぐ魔力避けの部屋で「彼女が呪いをかけた張本人かもしれない」とノラに打ち明ける。最初に持ってきた真理の目はふたつ。出来は完璧で最初から片方を持っていくつもりだったのだ。ふたつは同期しているに違いなく、ココを助けたい割にはパラケルススが買う時まで、お金を持っているはずなのに放置していた。さらに、気にかけていると言ってはいるが、ココを救う気が全く感じられず、ノラが呪いに触れた直後にタイミングよく現れたことも疑う理由だ。パラケルススは、目はココにつけてアグノシアのご機嫌を伺いながら、回復させつつ身を守る術を考えて、危なくなったらココを連れて逃げることにする。

アーレンビック魔法店とノルン・アーレンビック

ビジネスパートナーであるアーレンビック魔法店から、獣人のトトリ・メアピッツが、商品を納品するためにパラケルススの家を訪ねて来た。仕事の合間、奴隷のための勉強会が魔法店で開かれていることをノラに教えた。ノラは気になって奴隷のための勉強会の詳細を知るためアーレンビック魔法店を訪れる。ノルン・アーレンビックは納品してもらったパラケルススの商品である魔法爆弾の出来が完璧すぎると見て、異世界から来た授けられし者(ギフテッド)かもと当たりをつける。ちょうどノラが来たことで、ノルンは魔法の道具を使って内緒話を持ちかける。「この世界とは別の世界からやってきた者たちがいて、特別な力を持っています」と話し始める。「力は我々の常識の外にあり、この国の法律ではどうすることもできないこともあると。私にはそれが許せず、場合によってはその者を殺します」。これに対して、ノラが「善悪は誰が決める?あなたが人を裁くのか」と問うと、ノルンは「いいえ、市民法が決めます」と言う。不満があるけれど、長い歴史の中たくさんの失敗の上でやっと生まれた市民法を尊重する。少しでも社会から苦しみを減らしたいという祈りそのものだから。その祈りの中でノルンはあがくという。「勉強会に来て市民法を学んで、パラケルススととも遵守してほしいと思う」とささやかな頼みをする。2人の話を中断し、ノラをバカにするような発言をした客に対して、ノルンは決闘を申し込み圧倒的な力を見せた。それを見たノラは、ノルンに敵わないと悟る。
ノルンはスパイ用の店員たちを使ってパラケルススの家の監視を始めた。
パラケルススのまわりの日常が何やらきな臭くなってきた。

『ニセモノの錬金術師』の登場人物・キャラクター

パラケルススの家の住人

パラケルスス

現実世界から異世界転生してきた一般男性。短髪の黒髪と顔に少し傷があるほかは特にこれといって特徴がない。2つのチートスキルを神様のアレウスからもらっている。ひとつめは「天地万能のレシピ」。制限があるがどんなもののレシピでも出すことができる。ふたつめは「セーブメーカー」。念じるといつでも「セーブポイント」と呼ばれる宝石を作れる。ひとつめのスキルを使って駆け出しの錬金術師として生計を立てて生活している。臆病者ながら優しい性格で女性には甘い。自分の名前を名乗るのも呼ばれるのも極端に恥ずかしがっている。

ノラ・ペタン

奴隷店にいた奴隷の少女。褐色の肌に長い黒髪を持つ遠い国のまじない(呪術)師。弱みにつけ込む意地の悪さがあり、主張をしてくるが、優しさも見せる。お金が好きで、儲けることに執着しているが、執拗ではない。プライドを持ち、自分の稼いだお金で自由を勝ち取ろうとしている。髪に死んだ父が呪いで魂を縛り付けて取り憑き、力を貸す。

ココ/ココモチ

「名無し」で奴隷の店に置かれていたエルフの女。ノラが自分の国の言葉で、かわいい赤ちゃんを指す言葉で読んだことから、名前は「ココモチ」という。のちに「ココ」で定着した。
耳の中は古い傷でズタズタにされており、鼓膜が再生しないように何度も念入りに傷つけられた様子。さらに左右の手足はなく、腕は上腕の中ほどから切り取られており、脚は膝上あたりからなくなっていた。両乳房はなく、右左の眼球もない。瞼の損傷は大きいが、かろうじて残っている状態。歯はすべてなく、舌も切り取られている。挙げ句の果ては、顔半分と全身に火傷らしき痕があり、ゆっくりと呼吸をするのもままならない。肩を叩いても反応がなく、長時間衛生状態の悪い環境に置かれたためか皮膚の状態もよくなかったが、なぜか下半身は大事に使われているという状態なのであった。
治していくうちに、彼女が第一資料(プリマ・マテリア)でできていることが判明する。

パラケルススの家の精霊

ノラの召喚に応じ現れたパラケルススの家の精霊。ひとつ目で手に持った髑髏をカタカタ言わし喋っている感じを出している。ノラいわく「そんなに力は強くなく、まじめで扱いやすそう」。物を隠すのが得意。

アーレンビック魔法店の住人

taeka yamamoto
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