屍鬼(小説・漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『屍鬼』とは、小野不由美作のホラー小説およびそれを原作とした漫画、アニメ作品。藤崎竜によるコミック版が『ジャンプスクエア』にて連載された。アニメは2010年7月より12月まで全22話が放送された。人口1300人の小さな集落である「外場村」は、周囲から隔絶されたような地であり、いまだに土葬の習慣が残っている。ある日、山入地区で3人の死体が発見されたが、村人達の判断で事件性は無いとされ、通常の死として扱われた。しかし、その後も村人が次々と死んでいき、異変は加速していく。

村外にある国立病院に勤務している。

津原(つはら)

出版社勤務しており、静信の大学の先輩。

『屍鬼』の用語

屍鬼

死亡後に土葬された死体が蘇生し、生き返って特別な力を得た者の事。屍鬼と言う名前の由来は静信が執筆している小説から取られている。外見は人間と変わらないが常時瞳が黒色で、老化しない上に下顎が発達していて驚異的な治癒能力を持つ。
村には土葬した死者が蘇り人を襲う「起き上がり」という村の古い伝承があり、村人達にはこちらの名前で呼ばれている。
特徴は心臓等の臓器が動いておらず血液循環のみで動き、吸血鬼と同じく日光に弱く人の血液が無ければ生きていけない。特別な力として吸血した人間への暗示をかける事で命令に従わせる事が出来る。弱点は十字架や神社等の霊的な物、他人に招かねられなければその建物に侵入できないことである。高い治癒能力を持つが首や脳の破壊、心臓に杭を打ち込むといった大量出血で死亡する。
屍鬼に吸血され亡くなった者も屍鬼となる可能性があり、屍鬼になれるかは体質による。家族が屍鬼となり蘇った場合、他の家族も屍鬼となりやすい。

人狼(じんろう)

屍鬼と同じ性質を持っているが、弱点を克服した上位互換の存在。身体能力も屍鬼以上で太陽の出ている日中でも出歩くことができ、吸血以外の食事も出来る。
屍鬼よりも希少な存在で人狼である辰巳は「人狼が本来の状態で、屍鬼はそのなり損ない」であると考えている。人狼本来の力を発揮するには血液の摂取が必要であり、人間の食事のみで生活している場合力を発揮することができない。両親ともに甦生した場合、子は人狼になる可能性がある。

全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)とは、全身のさまざまな臓器に炎症や障害を起こす自己免疫疾患。特に関節、皮膚、腎臓、神経などを中心に症状が現れる。病気の原因は不明だが、女性に発症しやすいことが知られている。症状は多彩であり、発熱、全身倦怠感などの全身症状、関節痛、皮疹、光線過敏症、脱毛、口内炎がみられる。もっとも有名なのは両側の頬部と鼻に広がる皮疹で、蝶形紅斑と呼ばれている。強い紫外線に当たることが病気の悪化の原因になるため、普段から紫外線対策を行わなくてはならない。沙子と千鶴はこの疾患を利用し、屍鬼であることを隠していた。

外場村 (そとばむら)

およそ1300人の人が住み、渓流沿いの谷間に400戸ほどの家が集まっている。山間部に点在する集落の中で最大。上外場、中外場、門前、下外場、外場、水口の六集落。
山の中に少し離れた山入という集落があるが、10数戸あまりある家の殆どは廃屋で、人が住んでいるのは2軒だけ。
今でも死者を土葬し火葬に対する抵抗が強い。村人はそれぞれが山の一郭に墓所を持ち、そこに亡骸を埋葬する。墓石はなく、そこが死者の住居であることを示す角卒塔婆が立つ。

兼正(かねまさ)

寺のある北山と西山の合するあたりに「兼正」と屋号で呼び慣わされる屋敷。兼正と通称される竹村家はかつては代々町長を務め、その地所にある旧家然とした屋敷から住人を見下ろしていた。外場が近隣の溝辺町に併合されたのを機に溝辺町市街部へ移り住み、町政へと乗り出していったが兼正は未だに外場の利益の代弁者であり、村の重鎮であり続けている。寺の檀家総代で静信とも付き合いが深いが、昨年先代が急死する前全くの独断で、屋敷をひそかに売却した。屋敷は取り壊され、後に洋館を建ち桐敷家が住むこととなる。

『屍鬼』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

尾崎敏夫「俺は屍鬼を狩ろうと思う」

千鶴を殺害し、「俺は屍鬼を狩ろうと思う」と公言する敏夫。

次々と起こる村人たちの死が病によるものではなく、屍鬼によるものだといち早く気づいた敏夫だったが、屍鬼を証明することができずにいた。そんな時、千鶴が自分を支配しようとしていることに気づき、それを逆手に取り支配下になったと思わせ千鶴を神社に連れて行く。 そこで敏夫は千鶴には脈拍も心臓の鼓動も体温も何もなく、これが屍鬼という存在であることを村人たちに証明し、千鶴を公開処刑した。敏夫は村人たちの前に立ち、「俺は屍鬼を狩ろうと思う」と公言し、今までの死は起き上がった屍鬼たちによるものだと知った村人たちは、この言葉をきっかけに屍鬼狩りを始める。

桐敷沙子「死は誰にでも平等なの。特別に酷い死はない」

沙子の難病を知り気に病む静信(右)に「死は誰にでも平等なの。特別に酷い死はない」と言う沙子。

全身性エリテマトーデスの罹患を理由に、夜にしか静信の前に現れない沙子。沙子の難病を知り、子供が死ぬのことは酷いことだと辛い顔をする静信に「死は誰にでも平等なの。特別に酷い死はない」と言う。幼い外見とは裏腹に大人びた沙子を感じさせたセリフである。

桐敷沙子「これが神様に見放される、ということよ…」

屍鬼でありながら「これが神様に見放される、ということよ…」と静信にすがる沙子。

屍鬼である沙子は、人を襲わずに生きていければどんなにいいだろうと考えていた。だが、敵対を恐れれば生きてはいられず、生きていようと思えば敵対するしかない。沙子はこのどうしようもない気持ちを静信の膝に爪を立てながら「これが神様に見放される、ということよ…」と沙子は泣きながら、どうしようもない気持ちを伝える。屍鬼として甦った者にも人として生きていた頃と同じく意識や感情があるが、人と殺し合わなければ生きていけない。無理矢理起き上がりにされ、人の心を持ったまま殺人を強いられる屍鬼がとても哀れだが、沙子が人間らしい心を持っていたということの表れた描写となっている。

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