天穂のサクナヒメ(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『天穂のサクナヒメ』とは、同人ゲームサークル「えーでるわいす」が制作し、マーベラスから発売されたアクションRPG。PS4、Nintendo Switch、PC版が発売されている。戦神であり豊穣神でもある主人公・サクナヒメが鬼の蔓延る島「ヒノエ島」で稲作に従事しながら鬼を退治し、島の秘密を解き明かしていく物語。ゲームは稲作とアクションの2つのパートに分かれて進行する。稲作パートの本格的な作りこみから「農林水産省のHPが攻略wikiになる」と話題になった。

母トヨハナが峠の納屋に残していた農書を参照しながら稲作に励むサクナヒメだったが、なかなか安定した収量は得られず、獲ってきた肉や野草を中心とした食事が続く。
ある日、日々峠の中心となって働くサクナヒメのため、田右衛門とミルテが麦飯を用意した。まとまった穀類が食べられる機会は貴重であるため喜ぶサクナヒメだったが、家に入ると麦飯が茶碗ごと消えている。幼いかいまるが茶碗ごと持ち去るとは考えにくいし、ゆいは麦は生のままかじる方が好きだと言う。犯人はきんただった。鍛冶小屋の中に転がる茶碗を見て激怒するサクナヒメだが、きんたは平然と知らんぷりをし、言い訳ができないかいまるに罪を擦り付けようとする始末だ。問い詰められて逆上するきんたを見て、田右衛門がその場を引き受けると申し出る。
翌日、サクナヒメが家を出るときんたが待ち構えており、どこかから採ってきた麦を差し出し、謝罪してくる。サクナヒメはきんたのへそ曲がりを宥めてみせた田右衛門の手腕に感服するのだった。

鬼退治の計画

大蝦蟇退治の様子。

ヒノエ島の東側に広がる森に陣取っていた大蝦蟇を退治したサクナヒメ。その頃には田右衛門たちが採集に行ける範囲も増え、食うに困ることがほとんどなくなっていた。
しかし、「ヒノエ島で鬼が無尽蔵に生まれてくる原因を突き止める」という勅命については全く進んでいない。予測のしようもない以上、探索の範囲を広げていく他にないので、サクナヒメとタマ爺は今後の鬼退治計画について話し合う。
残った未踏の地は南に火山、西に砦、北に谷だ。砦はかつてタケリビが先代のカムヒツキと争った際に造られたもので、今は鬼たちが占拠しており、その数も多い。反対に、火山は火口付近に充満する有毒の煙のためか、鬼がほとんどいない。
北側の谷を探索しながら力をつけ、いずれは西側の砦を攻める、という方針が決まった。

問題児きんた

悪戯を反省するきんた。危うく家が燃えるところだった。

ある日、サクナヒメはミルテと田右衛門が困り顔で何事か相談しているところに出くわす。聞いてみると、きんたがまだ盗み食いを続けているらしい。しかも手口がどんどん巧妙になっており、今では断定もできない有様だと言う。大人たちが話していると、家の外からかいまるのけたたましい泣き声が響いてくる。慌てて探すと、かいまるは納屋の瓶の中に放り込まれて出られなくなっていた。これもきんたの悪戯だった。そこに、ゆいがおずおずと入ってくる。その髪からは、いつも挿している髪飾りが消えている。事情を聞くと、きんたに取り上げられたという。
サクナヒメが今度こそ成敗してやると息巻いていると、当のきんたが「火事だ!」と叫びながら駆け込んできた。当然サクナヒメが取り合うはずもなく、そこへ直れと詰め寄るが、きんたは「竈の脇の薪が燃えている」と必死に叫ぶ。すると、ミルテが青い顔で納屋を飛び出していった。
家の中では本当に薪が燃えていた。ミルテが竈からかき出した灰に火が残っており、薪に燃え移っていたのだ。それ見ろとばかりに威張るきんたに「図に乗るな」と釘をさすサクナヒメ。日頃から悪さばかりしているから肝心な時に信用されないのだというサクナヒメの意見にタマ爺も同意し、自分が日頃何と引き換えに悪さをしているのか頭を冷やして考えろと説教する。いつもきんたの味方をするゆいにまで「誰にも信じてもらえないときんたが困る」と言われ、さすがのきんたも心から反省する。
そんなきんたにミルテは笑顔で礼を言い、きんたはますますばつが悪くなる。そして二度と悪さはしないと誓うのだった。

二つの世界を超える方法

羽衣の真の力を発揮することは相応の対価を伴う、と説明するタマ爺。

ある日の夕食の席で、ミルテの夢が話題に上った。
ミルテの夢は、世界を旅して見聞きしたことを本にして、故郷ベンタニアだけではなく世界中の人々に伝えることだ。夢を語るミルテはこの上なく楽しそうだった。
しかし、そのためには麓の世に帰らなくてはならない。かいまるに至っては自分の生まれた場所のことさえろくに知らずに頂の世に来てしまったのだ。
田右衛門たちが麓の世に帰るためには天浮橋が再びかからなくてはならないが、これは初代カムヒツキにだけ扱えた代物で、初代亡き後は気まぐれに現れたり消えたりするばかりだとタマ爺は語った。
その話を聞いていたサクナヒメは、母の出自を思い出す。母トヨハナはもとは麓の世の住人だったという。タマ爺いわく、トヨハナは天浮橋ではなく、今はサクナヒメが受け継いでいる羽衣を使って二つ世の境を超えて頂の世にやってきた。今のカムヒツキですら意のままに二つ世を行き来することはできないというのに、そんな途方もない代物をどうやって手に入れたのか、それはタマ爺はおろかトヨハナの夫であるタケリビさえ聞かされなかった。
それでは面倒な勅命などに取り組まなくとも、羽衣を使えば人間たちを元の世界に帰すことができるのではないかとサクナヒメは考えるが、タマ爺はその提案を却下する。力とは相応の報いを求めるもの、世の境を超えるほどの力に見合うものを失う覚悟がサクナヒメにあるかと問われればあるはずもなく、勅命を果たしてカムヒツキに許しを得るしかないのだった。

河童とかいまる

かいまるが峠に連れてきた河童。言葉は話せないが、知性はある。

ある日、サクナヒメが峠に帰ると、ミルテとゆいが血相を変えて飛んできた。朝まで峠にいたはずのかいまるが、ほんの少し目を離した隙にいなくなってしまったという。田右衛門も、かいまるを探しに出ていったきり戻らない。ミルテ達では探せる範囲に限りがあるため、サクナヒメがかいまると田右衛門を探しに行くことになる。
その頃、田右衛門とかいまるは、ヒノエ島の北側の谷で身動きが取れなくなっていた。怪我もなく無事だったが、危険を承知で自力で峠まで戻るか、サクナヒメが迎えに来てくれるのを待つか、判断しかねて留まっている状況だった。田右衛門は眠るかいまるを見て、麓の世で山賊をしていた頃を思い起こす。かいまるの父は山賊の頭領だった。山賊ではあるが心の優しい男で、貧しい者からは決して奪わなかった。しかしある晩、部下だった石丸が反乱を起こし、頭領を討ってしまう。かいまるはそれを見ていたのだ。かいまるはそれから、言葉を話せなくなってしまった。それ以来、田右衛門は頭領に代わり、かいまるを守り通すと誓っている。
やがて、サクナヒメが谷の底へ田右衛門たちを迎えに来た。そこには田右衛門とかいまるの他に、見たこともない神がいる。どうやら河童であるらしい。かいまるは河童について谷まで来てしまった様子だった。
河童と共に峠に戻り、ゆいの通訳でかいまるの話を聞くと、河童の仲間たちが谷の奥の湖で鬼に捕まり、助けを求めているという。かいまるは河童の話を聞いて谷までついていってしまったのだ。河童は助けてくれたら恩返しをすると言っている、とゆいがサクナヒメに伝える。ゆいがかいまるのみならず河童の言葉まで理解することをサクナヒメは訝しむが、ゆいは「そんな気がするだけ」と誤魔化した。
釈然としないものを抱えつつも、サクナヒメは河童を救うため北の谷の鬼退治に向かうのだった。

谷の湖に巣くっていた鬼、大鯰。

サクナヒメは北の谷の最奥、湖へ辿りつき、現れた大鯰を討ち取った。すると隠れていた河童たちが現れ、言葉はわからないものの大いに感謝される。生まれて初めて神らしい仕事をしたサクナヒメは、面倒がりつつも悪い気はしないのだった。
助けられた河童たちは、約束通り恩返しをすると言う。何をさせるか相談した結果、河童の手を借りてさらに田んぼを広げることになる。
サクナヒメが世話している家の前の田んぼを神田とし、峠の外の田んぼは神田のやり方に倣って河童たちが世話することになる。こうして米の収量をぐんと上げることができたのだった。

アシグモ族

アシグモの協力で、梃子の原理を利用した踏み臼ができた。いつでもサクナヒメたちを助けてくれる、頼もしい隣人だ。

アシグモは峠には住み着かないが、いつもサクナヒメたちの生活を助けてくれる心強い隣人だ。峠の外の田んぼで作業する河童たちや、採集に出かける人間たちを護衛してくれるが、普段どこに帰るのかは誰も知らなかった。
アシグモ族はもともと、心を許した相手でも必要以上には付き合わず、仲間同士でも群れは作らないのだとタマ爺は語った。我が薄く、ひとりずつが多芸、身内では解決できない大きな危機にのみ、一族全体が集まるという。物を作る力に長けているが、家は持たず、川に近い洞で寝起きすることが多い。
島には彼以外のアシグモ族はひとりもいない。増え続ける鬼に狩られて数を減らし、そのうち島を捨てて出ていってしまったのだ。ひとり残された彼がその心情を語ることはなく、今日も黙々と自分の役目を果たしている。

南の火山

田右衛門ときんたの報告を受け、南の火山を調査することになる。

ヒノエ島の北側の谷を攻略したサクナヒメは、南にある火山の様子を見に赴く。その麓付近には、多くの鬼の死骸が転がっていた。驚く間もなく、骨だけの姿の神が複数現れ、サクナヒメに襲い掛かってくる。一様に長い尻尾を持ち、獣のような頭骨をしたその神は、サクナヒメの隣人であるアシグモと同じ身のこなしをした。
それらは黄泉神(よもつがみ)と言い、タマ爺でさえ初めて見る神だという。おそらく、かつてこの島で死んだアシグモ族が黄泉還りしたものだとタマ爺は推測した。
邪な性を持ち、悪に堕ちた神が鬼であるならば、死そのものであり死をもたらす神が黄泉神だ。それは生者であれば等しく恐れるもので、鬼も例外ではない。かつてタケリビと大龍(オオミズチ)が戦った際、アシグモ族の多くは鬼に殺された。自らの仇を自らで討ったのだろう、とタマ爺は語った。
その日、サクナヒメが峠に帰ると、田右衛門が怪訝な顔で報告してきた。南の火山から流れている川で魚が何匹も浮いており、水から悪臭がしていた。サクナヒメの田んぼは火山の川とは別の水源を使っているので影響はないが、どうにも気にかかる、と言う。そこに、きんたが血相を変えて駆け込んできた。島の西から鬼が現れ、大挙して南の火山へ向かっているのを見たという。
火山で何かが起こっている。サクナヒメは火山を調べに行くことに決めた。

天穂(あまほほ)

米のブランド名会議の様子。もとはサクナヒメが考えた「天穂の誉れ(あまほのほまれ)」だったが、かいまるが「あまほほ」と略したのが支持され、「天穂」となった。

サクナヒメの稲作に河童たちが参加してから、初めての収穫を迎えた。サクナヒメの神田と田右衛門の開いた田んぼだけではとても1年を通して米を食べる生活など出来なかったが、森や谷の中に開いた田んぼを河童たちが世話してくれたことで、一気に何倍もの収量を得られることになった。
サクナヒメが河童たちを助けた以上の働きをしてくれたということで、何かお礼を送ることになる。河童といえば無論きゅうりが好物だが、ヒノエ島には食べられるきゅうりは自生していない。そこで、食べきれない米を売り、都から買い付けることになった。取引の段取りはタマ爺が引き受けることになったが、売るとなると銘、つまり商品名が必要だ。喧々諤々の議論の結果、頂の世で最高の米という意味を込めて「天穂(あまほほ)」に決まった。こうして、米を売ることでヒノエ島にはない品も手に入れられるようになり、サクナヒメの米は都中に流通するようになったのだった。

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