宝石商リチャード氏の謎鑑定(ラノベ・漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『宝石商リチャード氏の謎鑑定』は、辻村七子による日本のライト文芸作品。2015年12月から集英社オレンジ文庫より刊行されており、2021年6月時点でシリーズ累計発行部数は80万部を突破している。2020年1月から3月までTVアニメが放送された。
イギリスから来た宝石商のリチャードと、彼が営む店にアルバイトとして雇われた正義感のある大学生・中田正義のコンビが、宝石に潜んでいる持ち主の隠れた心理面を紐解く。宝石商と宝石を題材としたジュエルミステリー。

晶子がお見合い相手の穂村と一緒にデートへ行っている中、彼女の結婚への背中を押してしまって諦めようとしている正義。そんな正義にリチャードは、「見栄も恥も捨ててしまいなさい。感情の赴くままに走って生来のお節介を発揮し、いつの間にかあなたの隣人に明るい道を歩かせているのが、あなたの姿ではありませんか」と問う。晶子に渡すアクアマリンをリチャードから受け取って、正義は「俺、お前のことが本当に好きだ」とリチャードに伝える。正義のお節介で無鉄砲な強さと優しさに、リチャード自身も救われていたからこそ正義を鼓舞する言葉が生まれた。正義の真っ直ぐなリチャードへの好意の伝え方が、彼らしさを表している一言。

リチャードが従兄弟たちと食べるプリン

クレアモント家の相続問題が落ち着いた日の晩、リチャードを追い詰めていた従兄弟とリチャードが、正義の作ったプリンを一緒に食べることになる。かつては屋敷で一緒に育ち、教育を受けていた彼らは日本語の授業の後、よく家庭教師の先生からご褒美としてプリンをもらっていた。10年以上の月日を経て、再び一緒にプリンを食べることができた彼らはお互いを子供の時の愛称である、ジェフ、ハリー、リッキーと呼び合った。

リチャード・ラナシンハ・ドヴルピアン「あなたの愛する人たちは皆、あなたに幸せになってほしいのですよ。正義」

リチャードの言葉を聞いて涙が出る正義。

リチャードの家の相続問題に、終止符を打とうと元凶でもあったダイヤモンドを割ろうとした正義。直前にリチャードにお手製のプリンのレシピを渡しており、自分がいなくてもリチャードの気に入ったプリンを誰かに作って貰えばいいと考えていた。そんな正義に「あなたの愛する人たちは皆、あなたに幸せになってほしいのですよ。正義」と話した。正義の行動の源である「誰かの役に立ちたい」という気持ちも大切だが、時々自分を犠牲にしすぎる正義にリチャードが伝えた言葉である。

リチャード・ラナシンハ・ドヴルピアン「ジャベール。僕は君を責めない。君は、君の勤めを果たしただけだ」

ちえこと再会し、言葉が見つからない困った表情のリチャード。

リチャードがちえこに日本語を習っていた幼少期、ちえこがクリスマスプレゼントにリチャードへ贈った『レミゼラブル』の一節。主人公のジャンバルジャンが宿敵であるジャベールに言ったのが、「ジャベール。僕は君を責めない。君は、君の勤めを果たしただけだ」という言葉である。ジャンバルジャンを「かわいそう」と言った幼いリチャードに、ちえこは「ジャンバルジャンをかわいそうという人に、悪い人はいません」と言ったことがある。母親が近くにいなかったリチャードにとって当時、ちえこはとても大きな心の支えだった。そんな彼女の立場や状況から、嘘をついてまで目の前から消えてしまうことは想像がついていたリチャード。再会を心から喜び、この言葉を言った後に「すべて水に流しましょう」とちえこを抱きしめている。

『宝石商リチャード氏の謎鑑定』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

必ずハッピーエンドではないのが魅力

リチャードを演じる櫻井は作品の出演が決まって台本を読み、「迷路に迷い込んでいる人たちを出口まで送り届ける、みたいな宝石を通した人と人との心の交流のお話」とこの作品を語っている。人生や生き方に行き詰まっている人たちがエトランジェを訪れては、宝石を介してリチャードと正義が彼らの進む方向を少し照らしてあげる。リチャードや正義も過去や現在に行き詰まっている人間の1人であり、そういった面からもエピソードにほろ苦さや人の哀愁も感じられる物語になっている。「結末は両手を上げてハッピーエンドとは言えないかもしれないけれど、その先につながる道、扉を開けるような解決を見せてくれる、そんな作品なんだな」と櫻井は話している。

アニメのOP曲は宝石好きのアーティスト

アニメのOPを彩るのは、やなぎなぎの『宝石の生まれるとき』である。普段からプライベートでも、宝石や石が好きで展示会や採集にくり出すことも多いというやなぎ。原作も、石好きの友人に勧められて読もうとしていたらしく、OP曲の話が来た際に一気に読んだという。歌詞についてやなぎは、「誰かを大切にしたいと思ったり、自分がそういう感情を受けたときの、綺麗なものが生み出されている瞬間が、宝石のようにきらめいていたらいいなと。そんな想いから書きはじめました」と気持ちを語っている。

デリケートなテーマも扱う作品

宝石の知識や美しい宝石言葉も度々登場する煌びやかな題材の作品だが、一方で人種差別や家庭内暴力、セクシャルマイノリティの問題などにも焦点を当てている。「エトランジェ」の約款にもあるように、リチャード自身の身の上も大きく影響している。内に何かしら晴れない感情を持った人たちが訪れ、リチャードが宝石を通して見つめる客の心の機微をたっぷり味わうことができる。全ての人に平等にあろうとするリチャードに対して、純粋な正義の眼差しがデリケートな問題に物語を見る人が注目するためのきっかけにもなっている。

『宝石商リチャード氏の謎鑑定』の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):やなぎなぎ「宝石の生まれるとき」

アーティスト自身も石や鉱物が好きで、楽曲にも宝石の煌びやかなイメージをふんだんに盛り込んでいる。サウンドへのこだわりや、歌い方の強弱にも注意しながら完成させた華やかで透明感のある一曲。

ED(エンディング):Da-iCE「Only for you」

ボーカルの大野雄大が作詞を担当し、アニメ化に伴って物語を読み込んだ上で書き上げた一曲。リチャードに対する正義の憧れや友情、絆など複雑な感情をあえてストレートな表現にならないように言葉を選んでいる。

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