おおきく振りかぶっての名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『おおきく振りかぶって』とは、部員10人の新設野球部である西浦高校が弱気で卑屈な投手・三橋廉を中軸に一丸となって甲子園優勝を目指す青春野球漫画である。従来のスポーツ漫画にはない繊細な心理描写や日常の細やかな描写がされており、一球ごとの読み合いによる心理戦が展開されているのが特徴である。主人公三橋が、チームと共に成長していく姿も描かれており、白熱の試合展開から、人間模様まで幅広く取り扱っているが故に名言・名場面が多い作品となっている。

いつも短気で怖いイメージの阿部だが、実は表情が豊かであることが分かる場面が「やっぱ笑顔がいいね」である。このセリフには、いつもオドオドしているピッチャー三橋が笑顔でいることで、バックで守る人は落ち着くし、相手の選手はムカつくしと理由をつけながら説明し、和やかな雰囲気を作り出している。いつもチームを鼓舞している頼りがいのあるクールなキャッチャーが、満面の笑顔を見せた場面は印象的である。

「投手としてじゃなくてもオレはお前がスキだよ!だってお前頑張ってんだもん!!」

ピッチャー三橋の球速を上げなくても、自分の指示さえあれば勝てると信じていた阿部だが、監督から「キャッチャーを分かっていない」と言われる。練習試合前に、ピッチャーの三橋が不安そうな顔をして泣いている姿を見る。ぎゅっと手を握って「大丈夫!お前はいい投手だよ!」と伝える。握った手から感じたことは、手が冷たく緊張していること、手にタコがいっぱいあり毎日必死で努力し投げ続けていることが伝わってきた。その時に言ったセリフが「投手としてじゃなくてもオレはお前がスキだよ!だってお前頑張ってんだもん!!」である。今までは、自分の思い通りに動いてくれる投手として三橋を見ていたが、三橋の頑張りと努力を認め、三橋に自信をつけさせ、力になって一緒に勝ち上がっていきたいと思うようになる。阿部が三橋を「いい投手」として認めた印象的な場面である。

「オレは三橋の弱気は変えられないと思っていたし、変わらなくていいと思った。友達になるわけじゃない。 オレのサインに首を振らなきゃ、性格なんてどうでもいいと思っていた。 『オレ』が『オレの野球』をやりゃあいい…なんてつまらないこと、どうして思ってたんだろう!」

三橋の弱気な性格は、変わらないし変える必要もないと考えていた阿部だが、三橋の家に行き、投球練習場で努力している姿が見えてから考えを改める。「オレは三橋の弱気は変えられないと思っていたし、変わらなくていいと思った。友達になるわけじゃない。 オレのサインに首を振らなきゃ、性格なんてどうでもいいと思っていた。 『オレ』が『オレの野球』をやりゃあいい…なんてつまらないこと、どうして思ってたんだろう」の想いから阿部の心境が分かる。「自分のため」の野球から「三橋を勝たせたい」と想いが変化している。投手は、みんな嫌なやつばかりであると投手のことを良く思っていなかった阿部が「三橋の努力を全部活かしたい」と考え、三橋に対する想いが今までの投手に対する想いとは違ってきている。阿部が三橋のためにと気持ちが動いた名場面である。

「ならオレ3年間けがしねぇよ。病気もしねぇ!お前の投げる試合は全部キャッチャーやる!」

西浦高校のエースである三橋は、エースであるにも関わらず自分に自信が無い。今、試合で勝てているのはキャッチャーの阿部が指示を出してくれているからだと言う。「オレが受けたらいい投手になれるのか」と阿部は三橋に聞くと、いつも自分のことは否定的なことしか言わない三橋が「うん」と阿部に伝える。それを聞いた阿部が言ったセリフが、「ならオレ3年間けがしねぇよ。病気もしねぇ!お前の投げる試合は全部キャッチャーやる」である。三橋が自分を頼ってくれている嬉しさと、自分が三橋を「いい投手」に出来るという自信から出た言葉である。キャッチャーとしての役割は、個人の技術だけではなく、投手の力を引き出すことも必要である。今回、このセリフから阿部がキャッチャーとして成長した姿と三橋との信頼関係が構築されているのが印象的な場面である。

「初戦はノーデータ覚悟してたけど、桐青は露出が多いからある程度準備できる。バッテリーのクセとバッターのクセ分析して、あとは守備で変なミスさえしなきゃあ…こいつが完封してくれる!」

夏の大会の初戦で、昨年の優勝校と対戦することとなった西浦高校は、部員のほとんどが1回戦負けを覚悟していた。しかし、その中でも、「勝てる」と思っているのが、4番の田島とキャッチャーの阿部である。阿部は、優勝校に怯むことなく、データをしっかり分析して癖を見抜き、後は田島の1点と三橋の完封で勝てることをみんなに伝える。その言葉が、「初戦はノーデータ覚悟してたけど、桐青は露出が多いからある程度準備できる。バッテリーのクセとバッターのクセ分析して、あとは守備で変なミスさえしなきゃあ…こいつが完封してくれる!」である。阿部の言葉は、みんなを鼓舞するのではなく、冷静に「勝てる」と判断したのである。田島と阿部の野球に対する姿勢や「勝ち」に対してのチームメイトとの意識の違いが出た名セリフである。

花井梓の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「能力とか性格とか境遇とか、んなこと言い出したら何もできない。口実探してんじゃねぇんだよ。」

対埼玉高校との試合で怪我をしながらも守備で活躍しチームに貢献する田島。そして、プレッシャーがあるなかでもいい球を投げ続けるエースの三橋。そんな2人の姿を見て、置いていかれていると感じるキャプテンで4番の花井は、三橋や田島と何が違うのかを探そうとする。しかし、野球をやってきた環境や周りの人間関係が全く違う中で、自分の迷いは、言い訳にしかならないことを感じる。その時のセリフが、「能力とか性格とか境遇とか、んなこと言い出したら何もできない。口実探してんじゃねぇんだよ」であり、花井はこの言葉を自分自身に言い聞かせている。田島の野球センスに今までもコンプレックスがあったが、口実探しをしている場合ではないことに気づく。そこから、花井は自分らしく成長していきこの試合で2打点をあげるようになる。

「三橋!後のことは任せてお前の一番いい球投げろ!お前の投げる球なら誰も文句ねぇから!」

桐青(とうせい)高校との試合で、自分のピッチングを相手に攻略されていると感じた三橋はこのまま投げ続けたら試合に負けてしまうと不安になる。それでも、マウンドを譲りたくない気持ちが強く、投げ続けたいと思った。そんな時、バックで守っている西浦高校キャプテンの花井は、「三橋!あとのことは任せてお前の一番いい球投げろ!お前の投げる球なら誰も文句ねぇから」と大きな声で叫ぶ。マウンドにこだわり続ける自分にみんな苛立ったり、怒ったりしていると思っていた三橋は、花井の言葉で力いっぱい振りかぶって投げる。中学時代は、どんなことがあってもマウンドを譲らずに周りとの関係を上手く築けなかったトラウマがある三橋にとって、花井の一言は、三橋を勇気づけ勝利へと導くセリフとなっている。

「どうにかして越えてやりてぇって毎日の挑戦と結果が苦しくて辛くていいんだ」

三橋はエースで居続けたいという気持ちは強いが、他のピッチャーをする選手とは競っていくと言う。「ヒイキ」ではなく、実力でエースになることを伝えているのである。花井はエースは三橋しかいないと思っているが、三橋には競う相手がいることが大事だと感じる。そして、自分も田島の「競う相手」となれているのかを考える。才能あふれる田島にコンプレックスを抱きながらも競いながら苦しんだり辛い思いをしていくことが必要なのだと思ったセリフが「どうにかして越えてやりてぇって毎日の挑戦と結果が苦しくて辛くていいんだ」である。どんなに努力して練習しても届かない相手かもしれないが、「挑戦」していくことが必要で相手と競うことが「いいこと」だと気づく。ここから花井はキャプテンとして、打者としても成長していくこととなる。

「目標を立てたら実現できるってわけじゃない。目標は自分がそこへ向かっていくって約束なんだ。」

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