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touko_hitagiのレビュー・評価・感想

チョコレートドーナツ / Any Day Now
9

人の心の光と闇と葛藤とが入り混じっている。そして最高。

世界中で絶えず行われている、性差別、人種差別、障害者差別、同性愛差別、宗教差別などの闇の部分を包み隠さず、率直に生生しく表現されている作品。
その差別の中でもこの映画では、同性愛差別と障害者差別について描かれています。
このどちらにも対象として当てはまらない人の方がもちろん多いと思います。
そしてだからこそ彼らの置かれている状況が理解、把握できていない人が沢山いる。
この映画では自分はそのことに対して知ろうともしていなかったんだと気付かされました。自分が同性愛者だということをカミングアウトすることがどれほど辛くて、怖いことか。
自分が障害者で自分の頭の中では理解できているのに、うまく人とコミュニケーションが取れないことがどれほど辛いことか。
ハッピーエンドでないからこそ、この作品の中の世界が「夢の話」ではなく、現実で起こっている、全ての人間が誰にでも平等に接しているわけでもなく、それどころか世の中は差別で溢れているんだということを改めて気付かされる作品です。
たとえ自分自身が差別される対象に当てはまらなくても、どちらの立場から観てもどこかで必ず共感・感動し何か心に残してくれる作品です。
ちなみに、主演のアラン・カミングの歌唱力は言うまでもなく、最高です。

モンスターハンターワールド:アイスボーン / MHWI
8

あの伝説の狩りゲーはここまで進化した!

プレイステーション時代に登場したモンスターハンターシリーズの最新作です。
発売当時は超高難易度、動作が遅い、敵の攻撃で即死するなど、知る人ぞ知るゲームでした。そこから携帯機のPSPにうつり、ゲームシステムはほぼ変化がないにも関わらず、バランスの調整やマルチプレイの強化等で爆発的なヒットとなりました。
本作はそのシリーズの最新作となっています。
まず驚かされるのは美麗なグラフィックで、自分が本当にその樹林や渓谷にいるような気分にさせられます。狩猟するモンスターそれぞれに行動範囲や特性があり、実際にその場で生きている感じが伝わってきます。
今作は動作が非常にスピーディーになっており、前作までは時間のかかっていた採取や採掘なども走りながら行えるのでストレスフルなつくりとなっております。
また、マップがシームレスとなっているため、モンスターから追われ、追い詰めなどが実際にタイムラグなく行えるのが魅力の一つでしょう。
もともとマップにある自然の罠や植物、昆虫等を利用することで狩りを有利に進めることができましたが、アイスボーンとなってから追加されたクラッチクローにより、モンスターの頭につかまり、スリンガーの弾を全弾撃つことでモンスターを吹き飛ばし、大ダメージを与えたうえ転倒させる等、さらにできることが増え、自分のスタイルに応じた戦い方ができるようになっています。

ファイアーエムブレム 風花雪月 / Fire Emblem: Three Houses
10

シリアスで最高のストーリー

今までのファイアーエムブレムは、SRPGのゲーム部分は楽しかったのですが、ストーリーはイマイチというものが多かったのです。キャラクターの見た目も中身もいいのにストーリーだけはイマイチでした。それでもシリーズは続いてきたから最新作である風花雪月もストーリーには期待していなかったのですが、蓋を開けてみると超シリアスで、深みのあるストーリーでした。まずキャラクターが最高です。どのキャラクターもシリアスな過去を抱えていて、現実的な解決策を考えているところに好感が持てます。貴族で人より上の立場であるから問題を抱えたままでも構わないのに、より良い貴族、よりよい世界を目指して成長していくところに好感が持てます。そして、一番の魅力は序盤の選択によって大幅に変わるストーリー。その選択によっては決して救うことのできないキャラクターが存在します。普通のゲームなら、ふざけるなと言いたくなる要素ですが、ストーリーを進めてみればわかります。救えなかったキャラクターにも、譲れないもの、守るべきものがあって死ぬまで戦う道しか選べなかったことがわかります。普段私はゲームをプレイしていると、全キャラ使ってラスボスを倒したいという衝動に駆られるのですが、ストーリーがあまりにも良すぎてそんな気分にはなりませんでした。それくらいストーリーがいいゲームなのです。ぜひプレイしてみることをおすすめします。

レ・ミゼラブル / レミゼ / Les Misérables
8

自分の中の悲しい気持ちを肯定したいときに見る映画

ヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画です。9割以上が音楽にのせてのセリフなので、2時間みっちり音楽に接していることになります。
歌声を聞くことが耳に心地良いです。少年少女から、10代のティーン、青年期、壮年期、晩年とさまざまな世代の心情を歌に乗せて聞くことができます。

舞台はフランス革命後のパリなので、世相に人生を翻弄されます。その中でも愛する人のために自ら動く様子に心打たれます。いちばんスケールの大きさを実感するシーンは、『STARS』から『囚人の歌』への流れです。主人公ジャンバルジャンを捕らえることを決意するジャベール刑事の歌で黒黒とした夜空から、困窮したパリの民衆のシーンへと変わっていく様子は、この映画ならではだと思っています。
貴族たちは貧困に苦しむ民衆を馬車から見ながらも、手を差し伸べることはありません。日本に暮らしている以上、自分は民主側の人間です。毎日仕事をしながら、少しでも良い暮らしができればと思っています。でも、世界に目を向けるとどうでしょう。その日暮らしをしている人たちに囲まれたとき、自分はあの貴族のような態度を取ってしまうのではないだろうかと怖くなります。

愛する人のためにどれだけのことが出来るのか、を問いかける映画です。何度も見返しますが、その様子に毎回泣いてしまいます。

ココ・アヴァン・シャネル / Coco avant Chanel
9

人生に勇気が欲しい時にみる映画「ココ・アヴァン・シャネル」

世界的有名ブランドのシャネルの創設者ココ・シャネルを描いた「ココ・アヴァン・シャネル」。孤児院で育てられた幼少期からナイトクラブ時代、そしてファッションデザイナーとして活躍するまでを描く伝記映画です。その背景にある恋模様や姉との関係など人生のドラマがロマンチックに描かれています。
ココが生きた時代は、女性はコルセットとドレスを身に纏って、華美な帽子を被って、まだ働くこともしない時代。女性に対する既成概念の中でココは自らのセンスやこだわりを大切に貫いていました。映画の中で着用されているリトルブラックドレスやパンツスタイルは今の時代には当たり前ながらも、その時代には斬新なものでした。
ココと出会い、彼女を受け入れたバルサンやボーイとの関係はデザイナーとしても成功には欠かせないものだと思います。その自分を貫く強さやココの独特のスタイルを支えたココの周囲の人との関係も「シャネル」が生まれて一流ブランドになるまでに必要だったと垣間見れます。
女性に限らずどんな人でも自分スタイルを貫く強さの大切さを感じる映画であり、新しくこれから何かに挑戦をしようとする人は必ずココから挑戦をする勇気をもらうことのできる、自分自身を信じ続ける力をもらえる映画だと思います。

サウンド・オブ・サイレンス / Don't Say A Word
5

Don't Say A Wordを観た感想

主人公のネイサンと妻、娘の3人家族は、裕福で仲も良く、理想的な生活を送っている。しかしある日、娘の姿が見当たらなくなる。最初はいつものかくれんぼかと思うが、ドアのチェーンが切られており、これが誘拐であると確信する。犯人は強盗集団で、みるからに強そうな、体格のいい悪党たち。家の中の様子は彼らに見張られており、筒抜けである。犯人集団からネイサンへの要求は、精神病患者であるエリザベスから番号を聞き出すこと。有能な精神科医であるネイサンは、犯人のこの目的のために、計画的に利用されたのだ。家族を人質にとられているネイサンは、この番号というのが何の番号であるのかも分からないまま、何とか聞き出そうと四苦八苦する。ストーリー的には暗いのだが、あまり暗い印象を持たずに観ていられるのは、誘拐されている娘ジェシーが、8歳とは思えないほど冷静で頭がよく、ときおり強盗集団のメンバーを尻に敷いているかのような描写さえ見られるからだろう。全体的に暴力シーンは少なく、あってもサラッとしたもので、グロテスクな描写はない。目の前で父親が地下鉄に轢かれるというトラウマを抱えたエリザベスが、ネイサンとのやり取りを通じて、少しずつ自分の記憶を開放していく様子に心打たれる。

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 / The Curious Case of Benjamin Button
9

美しい人生について

スコット・フィッツジェラルドの短編を「フォレスト・ガンプ/一期一会」や「インサイダー」、「ミュンヘン」、「グッド・シェパード」など重厚なドラマを描くことで知られるエリック・ロスらが脚色し、デヴィッド・フィンチャーがブラッド・ピットを主演に迎えて制作したドラマです。そこには、ある男の数奇な運命が刻まれています。
主人公ベンジャミン・バトンは誕生して間もなく、その異様な有り様から長くは生きられないとされ、育ての両親からとある老人ホームに密かに置いていかれます。しかし、そこの主人とその家族によって、ベンジャミンは深く愛されながらすくすくと成長していきます。見た目は他の誰よりも変わっていましたが、その内面の成長は皆と同様にありふれて素朴であり、やがて独り立ちのときを迎えます。そして様々な世界の人たちとの交流、出会いと別れを積み重ねて人生を歩んでいきます。
時代は第二次世界大戦を経て1960年代に至り、ベンジャミンは青春を謳歌します。しかし、自身の運命に思いを馳せたときに家族を持つことに躊躇し、一人姿を消すのでした。その間に彼は世界中を旅して回り、全身でその素晴らしさを受け止め人生をさらに駆け抜けます。その最期は悲しくも美しいものでした。
作中に登場する「人生は先が読めない」との台詞が示す通り、人生はときに数奇で不思議に満ち、恐いことも多いですが、素晴らしいことも同様に待ち受けていることを教えてくれます。また、無限を示す数字の8の字をなぞるように羽ばたくハチドリが象徴的に登場し、人生は終わっても生き続けることを示唆しているように感じることができるかも知れません。そして冒頭と最後にひとつの大時計が登場するのですが、その誕生の経緯と運命もまた見どころのひとつとなっています。映像技術の素晴らしさにも目がいきがちですが、美しい物語が繊細な演出と演技によって紡がれている作品です。

ピアノの森 -The perfect world of KAI- / Forest of Piano / Piano no Mori: The Perfect World of Kai
10

アニメを見た方はぜひ!

映画でアニメ化されましたが、海が小学生の頃までのお話でした。ウラディミール・アシュケナージさんがピアノを担当していたので、実はすごい映画だったのです。なぜテレビでもアニメ化したのかわかりませんが、また話題になったのはファンとしては嬉しいことです。

アニメではどうしても全てを取り上げるわけにはいかないので、アニメを見た方には全26巻と少し長くなりますが、ぜひぜひ原作を読んでほしいです。

アニメでは省略されていた登場人物や、ショパンコンクールでのコンテスタント達1人1人の過去が丁寧に描かれていて、読み始めると止まりません。それぞれの演奏も、絵から音が聴こえてきそうなくらいの迫力があります。

アニメでは最後がかなり駆け足になってしまっていたのですが、原作ではショパンコンクール後を、最終巻まるまる1冊使って描いています。途中、ラストスパートに向かったところで原作が何年か中断してしまった時はどうなるだろうと思いましたが、素晴らしい結末でした。これぞハッピーエンドです。このための中断だったんだなと今なら思えます。

音楽好きな方、ピアノ好きな方、アニメを見て興味を持った方には強くお勧めします。特に、ショパンコンクールの結果発表の場面と最終巻のラストは号泣間違いなしです。