美有奇@miukichi

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美有奇

美有奇のレビュー・評価・感想

かくしごと / Kakushigoto: My Dad's Secret Ambition
9

ちょっとそこで見て、ほっこり、休めるアニメ

本作は、『さようなら絶望先生』で有名な久米田康治先生の作品です。久米田康治先生の特徴は下ネタ、ブラックジョークなど万人ウケするというより、好みが分れる話が多いのが特徴でした。それこそ、『かってに改蔵』の下ネタや『さよなら絶望先生』のメタ発言やネガティブ発言に引き、敬遠する読者、苦手意識を持つ読者もいたのではないでしょうか。本作は、いい意味で期待を裏切られた作品です。
笑える話やギャグ漫画家としての苦悩。『さよなら絶望先生』は基本、一話完結のギャグ応酬という印象が強い中、この作品は泣ける話と笑える話のバランスも良く、ほっこりとする物語です。下ネタなども控え目なため、「え、本当にあの先生の作品なの」と驚かされます。
でも、やはり久米田先生の作品のため、暴走するお父さんの親バカぷりとそれを必死に止めるツッコみ達(主にアシスタント)。時々、ジーンとくるほっこり話もあり、最後にはギャグ漫画家としての信念やら娘への愛情やらが溢れる楽しいアニメです。
12話完結のため、ちょっとした休みにも一気に見れる非常に安定した作品ですので、今日の休日でも見てください。
今なら、『u-next』、『Hulu』、『dアニメストア』『AbemaTv』など、各動画配信サイトで閲覧できます。

ソードアート・オンラインシリーズ / Sword Art Online series / SAOシリーズ
9

この作品とでの出会い

私が「ソードアートオンライン」シリーズの存在を知ったのは2020年前後に大流行した「鬼滅の刃」の主題歌・エンディング曲及び映画「無限列車編」を担当された歌手の方で今まで聞いたことが無かった(私が無知なだけですが)「RISA」さんが「鬼滅の刃」を手掛ける前に担当し、相当御尽力された作品ということを知ったからです。
最初は「RISA」さんの歌だけを聞いていたつもりが、そのうち物語の中に引き込まれ、どっぷりとはまってしまいました。もともと「転生」、「無双」、「RPG」が大好きだった私はこの作品にのめりこんでしまい、約1週間ほどで「ソードアートオンライン」シリーズのすべての作品を動画で制覇してしまいました。
「フルダイブRPG」という2021年では実現されていない技術が当たり前とされている世界で主人公があらゆる事件にまき鋳込まれ、困難に立ち向かいながら仲間とともにクリアへと向かっていくというスカッと展開もこの作品の魅力の一つです。RPG物の「王道」とされている展開が続いていく作品ですが、そこの分かりやすいストーリーが読者・視聴者の引き込まれポイントではないでしょうか。出てくるキャラクターもみんな魅力的な作品なので本当にお勧めですよ!

ファースト・マン
8

人類初の月面着陸

宇宙飛行士『アームストロング』が、人類初の月面着陸に成功するまでの話。
アームストロングには娘がいたが、脳腫瘍で幼くして亡くなってしまった。
エンジニアとして地方で仕事をしていた彼は、ある日宇宙飛行士の選抜試験に合格する。
家族とともに引っ越しをし、子供二人妻一人と同居するが、宇宙飛行士としての生活は決して、楽しいだけのものではなかった。
家族と会う時間が限られる上に、体力的にもきつい。
宇宙開発に多額の費用が掛かる為、国民の反対にあったり、ロケット事故や火災により同僚を亡くすなど、ストレスに満ちた辛い時期を過ごす。
何度もロケット打ち上げに失敗し、夢見た月面着陸を果たせないまま、アメリカはソ連に遅れを取ってしまう。
けれども、それからも試行錯誤し、技術者を信じて、アームストロングら宇宙飛行士は最大限の努力をした。
そして、宇宙飛行士である夫に死の危険が付きまとっていることを理解しながらも、彼らを支える妻に感動した。
心に残ったシーンは、アームストロングがいよいよ月へ向かう準備をするシーン。
子どもに正面切って話すことができず、妻に怒られるのだ。
月に行くためには子どもの大切な学校行事へ行くこともできない。
下手したら死ぬかもしれないということを子どもに理解させるのは、とても大変なことだと思った。
最後のシーンは、実際にアームストロングが月へ上陸できた事実を知っていたので、安心して観ることができた。

SEKAI NO OWARI / セカオワ / End of the World
8

SEKAI NO OWARI に惹かれるポイント

SEKAI NO OWARIは2007年に深瀬慧・中島真一・藤崎彩織・DJLOVEの4人により結成されたロックバンドです。メンバーは作詞作曲そして主にボーカルを担当している深瀬と小中高で仲の良かった3人で構成されています。メジャーデビューは2011年、INORIというファーストシングルをリリースしました。
SEKAI NO OWARIはロック・バンドとしては少し変わっており、深瀬はボーカル、中島はベース、彩織はピアノ、DJLOVEはDJをしていて構成が独特です。もちろんレコードの時はいろいろな楽器を扱いますが、メインの構成はこのようになっています。曲としては、命や環境に対して深瀬の思いを乗せたものが多く感じられます。深瀬はADHDを持っていて、そのせいで目指していた夢をあきらめることになったり人生に絶望することがあったことが要因となっています。
また、SEKAI NO OWARIはブレーメンという動物殺処分ゼロプロジェクトを行っています。ライブやグッズなどの収益をそのプロジェクトにあて、音楽活動を通して命の大切さを世界に発信しています。このような活動や強い意志のこもった曲が多くの人を引きつけ、海外でも注目され始めています。すこし方向性の違うバンドの曲を聞いてみたいと思っている人には、とてもお勧めできるバンドです!

秒速5センチメートル / 5 Centimeters per Second
7

人を選ぶ作品であることは確か

言わずと知れた新海誠作品の代表作である今作。
新海誠作品に共通する超美麗な作画に酔い痴れながら楽しむことが出来ます。
今作は彼の三作目の作品であり、いわゆる恋愛モノなわけですが、その特徴は「盛り上がりがない」ことです。
一見すると悪い点に感じるかもしれませんが実際は違います。
この作品の軸にあるのは「主人公の感情の動き」であり、流れていく時間の中で”変化しない心”が魅力になっているのです。
人は子供から大人になるまでの過程で様々な感情が変化していきます。
その過程で誰かを好きになったり、嫌いになったりと人間関係も変化していくことでしょう。
しかし今作の主人公は、言ってしまうと「昔の彼女への想いをずっと持ち続けて生きている」わけです。
悪く言えば未練がましいと言ったところでしょうか…。
ここを「人間臭い」と捉えるか「気持ち悪い」と捉えるかがこの作品の評価を決めるポイントになると思います。
この作品を高く評価している方は、主人公の感情を、この作品の盛り上がりの無さを「リアル」と捉えるのです。
恋愛モノではなく叙情小説と言ったほうがイメージがつきやすいと思います。
ほろ苦い恋愛を経験したことのある方、甘い恋愛だけが恋愛ではないと考えている方にとってはこの作品は他の追従を許さないほどの名作になることでしょう。

コスモス
8

日々はこういうものである

光用千春著「コスモス」

小学校3年生の花ちゃんは今日からお父さんとの2人暮らし。だけど、お父さんのことをよく知らない。
今までと違う暮らしの中で感じる、今まで感じることのなかった感情のひとつひとつに花ちゃんは向き合い、こころの中の引き出しにおさめていく。

お父さんとの間にドラマチックな衝突が起きるわけでもないし、<父子家庭の子>ということでクラスメイトにいじめられて泣くわけでもない。日々はこれまでと同じ速度でやってくるし過ぎ去っていくんだけども少しだけ密度が違う。そのことに24時間振り回されるわけではないんだけど、ふとした時に心が揺れる。そんな、ふつうの日常を描いた漫画作品。
街にはたくさんの人が歩いている。そこにはいない人も、アパートの部屋で、長年住み慣れた生まれ育った中途半端に古びた家で生きている。すこぶる派手な暮らしをしている人もいる。一日息しかしてなかったというのが相応しいくらい何もしていない人もいる。そのひとりひとりにドラマがある。

少し遠くから俯瞰して見ているような距離感でありながら、多様性を受け入れてくれるような安心感を同時に感じる、光用千春のデビュー単行本となる本作。
次回作が楽しみです。