鉄鍋のジャン!(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『鉄鍋のジャン!』とは西条真二原作、おやまけいこ監修の料理漫画で、『週刊少年チャンピオン』にて1995年から2000年まで連載されていた。本作は「料理は勝負」をポリシーに掲げる少年、秋山醤が様々な料理人と対決し、打ち破っていく様子を描いた料理漫画の王道ストーリーを描いている。一方で、主人公が文字通り手段を択ばず勝利を追求するというヒールのようなキャラクターであることや、外連味の強い料理の数々が登場することから、ある種のピカレスクロマン的な雰囲気を持った作品でもある。

『鉄鍋のジャン!』の概要

『鉄鍋のジャン!』とは西条真二原作、おやまけいこ監修の料理漫画で、『週刊少年チャンピオン』にて1995年から2000年まで連載されていた。秋田書店から出版された全27巻の少年チャンピオンコミックス版と、メディアファクトリーから出版された全10巻のMF文庫版がある。本作は「料理は勝負」をポリシーに掲げる少年、秋山醤(あきやま じゃん)が様々な料理人と対決し、打ち破っていく様子を描いた料理漫画の王道ストーリーである。しかし主人公のジャンは仲間との友情を重んじたり、強い正義感を持っているようないわゆる王道の少年漫画の主人公像とは大きく外れたキャラクターをしており、時には相手の料理を妨害してでも勝利しようとする手段を選ばない性格である。彼を筆頭として作中で登場する外連味の強いキャラクターたちや料理などが他の料理漫画、少年漫画と一線を画した独自の雰囲気を演出しており、「アンチ王道」的な作品として根強い支持を得ている。派生作品には本編の続編である『鉄鍋のジャン!R頂上作戦』、ジャンの息子が主人公の『鉄鍋のジャン!2nd!!』、近代麻雀で連載されたパラレルワールド的な作品である『鉄牌のジャン!』などがある。

『鉄鍋のジャン!』のあらすじ・ストーリー

五番町飯店編

東京に数多くある中華料理店の頂点に立つ五番町飯店では、料理人たちが日々しのぎを削っていた。料理の師匠であり唯一の肉親だった祖父の秋山階一郎(あきやま かいいちろう)を亡くして天涯孤独となった秋山醬(あきやま じゃん)は、祖父の遺言に従い五番町飯店に入店して見習いとなるが、「中華の「最高」は五番町じゃない!秋山こそ「最高」!秋山こそ「中華の王」だ!」と言い放つ。ジャンは五番町飯店の跡取り娘、五番町霧子(ごばんちょう きりこ)をはじめとした店の面々と度々対立し、時に協力しながら交流を深めていく。
ある時店に「神の舌」と呼ばれる料理評論家、大谷日堂(おおたに にちどう)が来店し、ジャンと霧子は彼にふるまう料理を担当することになる。何の料理でも食材や調理法を言い当てる最高の舌と、金さえ積まれればどんな店でも貶したり持てはやす腐った心を持つ大谷は、必ず料理のアラを見つけて罵ってくるという料理人にとっては非常に厄介な相手だが、ジャンは「そいつに何も言わせない料理を作ればいいだけだ」と言い放つ。ジャンと霧子の2人はどちらも「茶碗蒸し」で大谷にひと泡吹かせようと調理を始める。まず霧子の茶碗蒸しが最初に提供され、大谷はそれに使われている皮蛋と塩蛋という2つの食材を言い当てるが、あと1つがどうしても当てられない。最後の1つは「烏骨鶏の卵」だと霧子が種明かしをしたところで、ジャンが自分の茶碗蒸しを持ってきて「しっかり食ってオレの料理を読んでみな!」と言い放つ。大谷はジャンの失礼な態度に怒りを覚えながら茶碗蒸しに手を付けるが、その濃厚な香りとコクに思わず勢いのままに完食してしまう。しかしそれでも大谷は茶碗蒸しの食材を当てられず、ジャンは自分の茶碗蒸しの食材が「羊の脳みそ」であると種明かしをしたのち、高笑いするのだった。
大谷はこの一件から五番町飯店と秋山醤に対して恨みを持つようになり、ジャンと大谷の因縁が始まることになる。

第1回全日本中華料理人選手権

ジャンと霧子の2人は、若手中華料理人のナンバーワンを決める大会、全日本中華料理選手権に五番町飯店代表として出場することになる。全国から様々な料理人たちが集結し大会が始まるが、実はこの大会は大谷日堂がジャンを潰すために企画したものだった。
まず料理人たちはいくつかのブロックに分けられ、予選が開始される。予選の課題は「スープ」。ジャンのいるブロックでは、薬膳料理人の藤田貫一(ふじた かんいち)が得意の薬膳スープで高得点を獲得したが、ジャンは特殊なキノコの組み合わせを使って幻覚作用のあるスープを作り、満点を獲得して予選を突破する。
この一件によってジャンは大会におけるヒールとして認識されるようになり、料理人にも観客にも罵倒されるアウェーの状況で戦うことになる。
ジャンの1回戦の対戦相手は、派手なパフォーマンスが売りの、六本木「崑崙」の沢田圭(さわだ けい)。沢田の大きな身振りや炎といった派手なパフォーマンスと高級な食材を生かした鉄板焼きに対して、ジャンは牛すね肉や干し飯といった安い食材を手間をかけて調理した「太極鍋巴(タイヂィクオパー)」で勝利する。
続く2回戦の対戦相手は河原クッキングスクールの河原裕司(かわはら ゆうじ)。河原は「21世紀の料理」を標榜し、真空調理機を用いた最先端技術による料理を披露するが、下準備の段階でミスをしており料理自体も大失敗、半ば自滅のような形でジャンの勝利となる。
準決勝となった3回戦の第1試合では霧子が順当に勝ち上がり決勝へ。第2試合では下馬評で有力候補だった「東洋楼」の筍智秀(じゅん ともひで)を神戸「シードラゴン」のセレーヌ楊(せれーぬ やん)が破り決勝進出を決めた。ジャンは残り1つの枠を浜松「麒麟飯店」の大前孝太(おおまえ こうた)と競うことになる。ジャンたちの試合のテーマは「蓮根料理」。孝太は香港の最高級ホテル「リージェント」で提供されている「鶏肉と蓮根のココナッツミルク炒め」に自らのルーツである浜松の特産品のウナギを合わせた、「鰻と蓮根のココナッツミルク炒め」を作る。それに対してジャンの料理は蓮根の甘いスープ。それまで二試合分の料理を食べて満腹に近い審査員たちはジャンのスープを飲むと満足してしまい、孝太の料理を食べようとしない。時間が経つにつれ孝太の料理は冷めてしまい、脂が分離してまともに食べられる状態ではなくなってしまった。ジャンは孝太の料理を台無しにするためにあえて甘いスープを先に出したことを明かし、高笑いするのだった。
ついに始まった決勝戦は「麵料理」と「デザート」の2つのテーマの合計点で競う。まずはじめの「麺料理」対決ではジャンは祖父の階一郎に教え込まれた技術を生かした刀削麺を作るが、霧子や楊の革新的な料理と比べてオリジナリティが無いとして最低得点をつけられてしまう。祖父と自分の執念に泥を塗ってしまったと自戒するジャンはシャワールームで自らの頭を壁に打ち据え、慟哭する。
「デザート」対決の調理が始まり、現れたジャンは「秋山の魔力を見せてやる」と豪語し、鳩の血を使った今までに誰も食べたことのないデザート、「鴿子型酥皮包戯蛋(ゴォズリェンスウピィパウヘイタン)」を作る。ジャンのデザートは審査員たちからも圧倒的な高評価を得るが、ジャンを優勝させたくない大谷が霧子に点を投じたことで優勝を逃してしまう。
失意のまま去ろうとしたジャンだが、観客として会場にいた料理人たちが鳩を追い回してジャンのデザートを真似しようとしている様子を目にして気を取り直し、高笑いしながら会場を後にする。

ホテル「ミラージュ」編

ある日、閉店間際の五番町飯店に1人の男がやってくる。男はかつてのジャンと同じように炒飯を注文し、鍋担当の望月貢(もちづき みつぐ)が作った炒飯を「これで料理のつもりかよ!」と言い放った。その男は五番町飯店の元鍋担当、蟇目壇(ひきめ だん)だった。2年半の中国での修業を終えて帰国したばかりだという壇は店の面々と談笑していたが、見習の小此木タカオ(おこのぎ たかお)が作った賄の青椒肉絲を食べると豹変し、彼のような才能のない素人は料理人になるべきではないと激怒して小此木を殴りつける。ジャンは2人の間に割って入り、「こいつに文句があるなら料理を教えたオレに言え」と指を突き付けたが、蟇目に右手の指をすべて折られてしまい、料理人として致命的なダメージを負ってしまう。さらにジャンはその状態で蟇目と料理勝負を行うことになる。勝負の内容は「酢豚対決」で、蟇目はフルーツをふんだんに使った酢豚を作り、それに対してジャンは柚子とシメジの相性の良さを生かした酢豚を作る。勝負の結果は引き分けだったが、「片腕のオレと引き分けじゃ中国帰りも大したことない」と蟇目を挑発したジャンは左腕も折られ、そのうえで再び料理勝負をすることになってしまう。両腕を完全に封じられ、自分で料理することが不可能なジャンは、ことの発端である小此木に手足となってもらうことにし、2人は特訓を始める。蟇目との再戦は魚料理。ジャンと小此木は特訓の成果で勝利するが、蟇目の狙いは別にあった。実は蟇目は高級ホテル「ミラージュ」内の中華料理店「蜃気楼」の総料理長として引き抜かれており、自分の手足になる料理人としてジャンをスカウトしようとしていたのだった。ジャンはオープン前の「蜃気楼」に招かれ、蟇目から真意を告げられるが誘いを蹴り、再び五番町飯店へと戻ったのだった。
ホテル「ミラージュ」のオープンが近づき、「蜃気楼」の料理人たちもテレビCMに出演するが、その中に蟇目の姿はない。実は「蜃気楼」の料理顧問はあの大谷日堂であり、独断でジャンを店に入れようとして、しかも勝負に敗れた蟇目は大谷によって開店前にクビにされていたのだった。蟇目に代わって総料理長に就任した男は「邪道士五行」と呼ばれる大谷直々にスカウトした料理人、伍行壊(ご ぎょうかい)。
大谷は今度こそ公衆の面前でジャンを敗北させ、辱めるという目標のためテレビ局を抱き込み、ジャンは行壊とテレビ番組の企画で料理の五番勝負を行うことになる。
行壊は驚異的な効果を持つ薬膳料理、通称「五行膳」でいきなり2連勝を飾り、ジャンを追い詰めるが、ジャンは従来のセオリーを破って塩を入れたすっぽんのスープで3戦目に勝利。さらに4戦目も睦十のコレクションから無断で持ち出した幻の高級食材、「龍の涙」を使った料理で勝利する。決着は最終戦にもつれ込むが、行壊の工作によってジャンの料理を食べた審査員の1人が倒れ、病院送りになってしまう。代わりに入った審査員はホテル「ミラージュ」のオーナーである荒俣雷蝶(あらまたらいちょう)。圧倒的不利な状況に追い込まれたジャンだったが、行壊が雷蝶の愛犬を殺し、その肉を料理に使っていたことを暴き、番組そのものをぶち壊してしまう。
行壊は敗北を認めて去り、ジャンは五番町飯店の面々に「誰もオレにはかなわないってことだ!」と勝ち誇るのだった。

湯水スグル編

ジャンたちのもとに出張料理の依頼が舞い込んだ。依頼人は大企業、湯水グループの若き総帥である湯水スグル(ゆみず すぐる)。しかし彼の目的は料理を食べることではなく、彼自身が行っている「料理人狩り」の100人目の標的としてジャンを打ち負かし、その写真を飾ることであった。
ジャンはスグルの挑戦を受け、卵料理対決を制するがスグルはあきらめず、後日五番町飯店に押しかけて再戦を申し込む。2戦目のテーマは「子豚の丸焼き」。スグルは子豚の皮と詰め物の両方を食べさせる料理を作り、子豚の皮だけを食べさせるジャンの料理を上回ったと確信するが、ジャンは中国三大食感の1つで、「口に入れた時パリッサクッと砕けてもろくはかなく溶けていく食感」を現す「脆」を極めた最高の子豚の丸焼きを作ることで圧勝する。
スグルはそれでも食い下がり、3戦目のテーマを「肝料理」とし、自分は最高級のフォアグラを使うと宣言する。ジャンは料理人としてのプライドからフォアグラを使わずに、より安い食材でフォアグラを超えようと試行錯誤を重ねたすえに、カワハギの肝と鶏の白レバーを合わせることでフォアグラよりも濃厚な肝を作りだす調理法を編み出し、また勝利する。それでも諦めきれないスグルに対して、ジャンはスグル本人ではなく執事の刈衣花梨(かりい かりん)であれば勝負してやってもいい、という提案をする。刈衣は実はスグルのブレーン的存在で、これまでの料理でも細かい工夫などについて指示を出していたのは彼女だったことをジャンは見抜いていたのだ。
2人の対決のテーマは「羊料理」。ジャンは羊とイチジクを煮込んだ伝統的な中国北方の郷土料理を作るが、刈衣が学術的なアプローチから作った子羊のローストに敗北してしまう。羊肉のクセを無くして食べさせるために、ガラにもなく下らない料理を作ってしまった、と反省するジャンに対して刈衣は温度を自在に設定して調理できる最新の「定温調理機」を披露し、「経験や勘といった曖昧なものに頼る料理人よりも機械の調理のほうが優れている」と言い放つ。
対決のテーマは「魚の蒸し料理」となり、刈衣は定温調理機を駆使してムラなく完璧に蒸しあがった蒸し魚を作る。それに対してジャンは、祖父からの厳しい修行で身に着けた感覚を頼りに、中心部にわずかに生の部分を残した蒸し魚を作る。一見して失敗しているように見えたジャンの料理だが、実はこの状態こそが最高の美味しさを味わえる状態であり、ジャンはリベンジを果たす。
対決の後日、スグルから届いた手紙にはまだ再戦の意思が綴られており、店の面々はジャンと同じタイプだと苦笑いするが、ジャンは「どんなヤツが相手でもオレは必ず勝ってみせるぜ、これからもずっとな!!」と言い高笑いするのだった。

第2回全日本中華料理人選手権編

かつてジャンや霧子たちが戦った全日本中華料理人選手権の第2回が開催されることになる。ジャンはかつての階一郎のライバルである五番町睦十(ごばんちょう むつじゅう)の「大会で優勝すれば勝負してやる」という言葉に奮起する一方で、第1回大会でジャンに敗れたライバルたちもリベンジを誓う。
予選の最初の課題は3択問題。ジャンや霧子たちは難なく正解していくが、最終問題の「画面を見てシュウマイの蒸し時間を当てる」という問題でジャンは用意されたどの選択肢も正解ではないと主張し、「シュウマイを1度冷凍して再び蒸しなおす」のが最適だと証明する。
続いての課題は料理課題で、テーマは「炒飯」。ジャンはほかの料理人のコンロへガスを供給しているガス管を潰し、自分のコンロに大量のガスを引き入れて大火力を用いた炒飯を作って予選を突破する。ジャンの妨害で彼と同じブロックの選手は全員脱落したかに思われたが、一部の料理人は彼の妨害を無効化して料理を提出し、予選を突破する。
本戦に出場したジャンたちの前に現れたのは大谷と彼が集めた新たな審査員たち。特に料理とは異なる分野の専門家である3人の審査員がジャンの前に立ちふさがった。彼らは栄養学、香り、コーディネートという料理とは異なる分野のスペシャリストであり、従来の料理の審査とは全く異なる観点から料理を審査するため、従来の料理審査のセオリーが通用しない。
ジャンの料理は彼らから一目見ただけで失格の烙印を押され、味を見る前に敗退しかけるが、事前に料理に施していた時間が経つほど香りと味が上がる仕掛けによって再審査のチャンスを得て、何とか初戦を突破する。
2回戦に向けて準備を進めるジャンたちだが、睦十から大会に「百蘭王(ぱいらんわん)」が参加しているという話を聞かされる。百蘭王はアジアの料理界を牛耳る帝王的な存在で、かつて睦十と階一郎は先代の百蘭王に勝負を挑み、2人がかりでかろうじて引き分けたという過去があった。ジャンたちは大会に「陸」という姓の料理人が3人も参加していることから、彼らのうちの誰かが百蘭王なのではと予想する。
2回戦のテーマは「餃子料理」。ただ味を追求するだけでなく、短い時間内にいかに多くの餃子を作れるかというスピード勝負でもあるこの課題は、奇しくもかつて睦十たちが百蘭王と行った勝負に似たものだった。
ジャンの対戦相手は陸延雀(りく えんじゃく)。延雀はかつての先代百蘭王と同じテクニックを使い、餃子を高速で仕上げていく。しかしジャンは、階一郎が百蘭王の技を盗み、さらに改良を加えた技を披露し延雀よりもはるかに速い速度で餃子を作り、勝利する。
百蘭王と同じ技術を披露したことで、陸延雀が百蘭王なのではないかと思われたが、今の百蘭王は先代百蘭王の孫であり、大会出場者でもある黄蘭青(こう らんせい)だった。陸家の3人は大会に優勝すれば自分が百蘭王の座を奪えるという条件で参加しているのだった。
ジャンは陸家の1人、陸顔王(りく がんおう)との勝負を制して勝ち上がり、霧子も同じく陸家の陸麗華(りく れいか)を降すが、一方で楊は黄蘭青に大差で敗れてしまう。「料理は半歩先」を信条にしている蘭青は対戦相手の料理を完璧に予想したうえで、それを上回る革新的な料理をぶつけることができる超人的な能力の持ち主であり、ジャンたちも苦戦を予感する。
準決勝に進出したのはジャン、霧子、蘭青に加えて、スグルを破って勝ち上がったザザビー本郷(ざざびー ほんごう)。「鮫料理」という難題のテーマで接戦を繰り広げた四人だが、霧子が100点、ジャンと蘭青が95点を獲得して決勝戦はこの3名で行われることになる。
決勝戦のテーマとなったのは「ダチョウ肉を使った未来の料理」で、ジャンは食糧危機に対する回答として昆虫食、霧子は人が使う最も基本的な調味料である塩の進化系、蘭青は人類の顎が退化した後でも食べられるような柔らかい料理、という三者三様のアプローチの料理を作る。勝負は縺れるかに思われたが、ジャンが料理のために使ったハエが会場に放たれてしまい、さらに会場で用意されていたダチョウたちも暴走、採点の結果が出る前に会場はパニック状態となり、大会も中止になってしまった。
結果として優勝はしなかったものの、実力を示したということで睦十に勝負を受けてもらえたジャンだったが、睦十は勝負の前日に病でこの世を去ってしまう。
失意のジャンの前にこれまで音信不通だった祖母の明輝が現れる。彼女は中国で料理店を経営しており、ジャンも中国を渡り自分の店で修行するように言う。
新しい戦いの場を見つけたジャンは気持ちを新たにし、同じく修行をすることになった霧子とともに中国へと渡る決意をしたのだった。
それから3年後、2人は料理人として大きく成長して帰って来るのだった。

『鉄鍋のジャン!』の登場人物・キャラクター

秋山一族

秋山 醤(あきやま じゃん)

本作の主人公。幼少の頃から、祖父であり「中華の覇王」と呼ばれた料理人、秋山階一郎から虐待のような徹底的な料理修行を強いられており、体には多くの古傷が刻まれている。祖父が自ら命を絶った後は町へと降り、五番町飯店に身を寄せることになる。
「料理は勝負」を信念としており、客であろうと料理人であろうと自らの料理で打ち負かすことを至上としている。彼が勝負に拘るのは自分が受け継いだ階一郎の料理こそが至高であると証明するためであり、第1回全日本中華料理人選手権の決勝で霧子、楊に負けて最低評価を獲得した際には大荒れした。
料理人としての能力は非常に高いが料理対決の際には文字通りに手段を選ばず、対戦相手への妨害や料理に薬物を入れるなど、非道な手段も平然と行う。ただしそれは、良くも悪くも料理と勝負に妥協しないという姿勢の表れであり、非常に手間のかかる工程や高度な技術を用いた調理法など、正当な手段も併せて実行する。
また、横暴で毒舌な性格で周囲の人間に対して好戦的な振る舞いをするため反感を買いやすく、五番町霧子や大谷日堂など、作中でも多くの人物と敵対している。
しかし一方で、料理素人の小此木に中華料理の基本を教えたり、脱サラしてステーキ屋を営む店主に正しいステーキの焼き方を教えるなど、料理勝負が絡まない相手であれば面倒見の良い一面がある。

秋山 階一郎(あきやま かいいちろう)

ジャンの祖父で、料理の師匠的な存在でもある。ジャンが度々口にする「秋山の魔法」とは、彼が階一郎から伝授された型破りな料理技術のことである。
かつては「中華の覇王」と呼ばれ、「中華大帝」の別名を持つ五番町睦十と並んで日本の中華料理界の頂点に君臨していた。
群馬県の山中でジャンと2人きりで暮らし、彼に虐待にも近いやり方で料理技術を叩き込んでいたが、ある日ジャンの言葉から自分が癌による味覚障害を患っていたことに気が付き、ジャンに遺書を残して自宅とともに焼身自殺する。
ジャンはこの時の階一郎からの遺言に従って山を下り、五番町飯店に身を寄せることになる。
若いころには五番町睦十とともに様々な場所で料理勝負の武者修行を行っており、日本軍に占領されていた中国のとある村を料理で救ったこともある。この時駐留していた日本軍の司令の息子が大谷日堂であり、彼がジャンに執着する原因のひとつでもある。

桃 明輝(とう みんき)

階一郎の妻で、ジャンの祖母にあたる。蟇目檀と伍行壊の2人が中国で修行していた頃の店のオーナーでもある。少女時代は馬賊の頭領を務めており、その際に階一郎、睦十の2人と交流を持つ。勝負の前に睦十が死に失意のジャンの前に現れ、中華の本場である中国で修行をする道を示す。

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