NOPE／ノープ（映画）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『NOPE／ノープ』の概要

『NOPE／ノープ』とは、2022年7月にアメリカで公開されたホラー映画である。日本では2022年8月に公開された。配給は、ユニバーサル・ピクチャーズ、東宝東和株式会社。本作の一部のシーンはIMAXカメラで撮影された。
本作は『ゲット・アウト』（2017年）や『アス』（2019年）で知られるジョーダン・ピール監督が、とびきり怖いUFO映画を撮ろうと製作した。主演で牧場主オーティスの息子OJ（オーティス・ジュニア）を演じるのは、『ゲット・アウト』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたダニエル・カルーヤ。その妹のエメラルドを、シンガーとしても活躍するキキ・パーマーが演じている。

ロサンゼルス郊外で牧場を経営し、ハリウッドへ撮影用の馬を貸し出し生計を立てているヘイウッド一家。ある日突然、空から金属片が降ってくる。OJの父はその金属片が頭部に直撃し亡くなってしまう。亡き父から牧場を受け継いだOJは、父の事故死を受け入れられずにいた。父の死は表向きは飛行機から落下した部品に当たったとされていたが、OJはその時、謎の飛行体を目撃していた。妹のエメラルドは、この飛行体を撮影し一儲けすることを思いつく。そして、次々と怪現象が起き、最悪の奇跡が彼らを襲う。

本作は単なる「ホラー映画」ではなく、黒人差別の歴史を踏まえた社会構造を作品に盛り込んでいる。
他にも、日本のアニメ作品や、名作SF作品へのオマージュが散りばめられている。牧場にUFOが飛来するというストーリーはM・ナイト・シャマラン監督の『サイン』（2002年）に似ており、宇宙からの飛行体によって停電するという現象は、UFO映画の草分け的作品『未知との遭遇』（1977年）と同じである。また謎の飛行体のデザインは、『新世紀エヴァンゲリオン』の使徒を参考にしたとジョーダン・ピール監督自身が語っている。そして、OJの妹エメラルドがバイクでジュピターズ・クレイムに逃げ込むシーンは、大友克洋監督の『AKIRA』（1988年）のワンシーンに似ている。
SF映画ファンにはこのような類似点を見つける楽しみもある作品となっている。

『NOPE／ノープ』のあらすじ・ストーリー

父の死

ヘイウッド一家はロサンゼルス郊外で牧場を経営し、ハリウッドへ撮影用の馬を貸し出し生計を立てている。オーティス・ヘイウッド・シニアはこの牧場を代々引き継いでいた。そして息子のオーティス・ヘイウッド・ジュニア（OJ）も父と一緒に馬の世話をしていた。
ある日、野外で馬の世話をしていると、OJの携帯電話が繋がらなくなる。そして、空に何かの気配を感じた瞬間、突然金属のようなものが無数に降ってきた。ふと父の方を見ると、馬に乗っていた父は落馬していた。急いでオーティスを病院に運ぶが、彼は死亡していた。父の死因は頭に直撃したコインだった。牧場に帰って馬の体を見ると、何か小さいものが刺さっており、なぜそんなものが降ってきたのか全くわからなかった。

OJは亡き父から受け継いだ牧場を必死で経営していたが、父の死から立ち直れずにいた。

謎の飛行体

亡き父の後を継いだOJは、CM撮影のために撮影所に牧場の馬を連れてきていた。そこへ妹のエメラルド・ヘイウッドが現れる。エメラルドは話が上手く、ビジネスには長けていた。しかし、OJが撮影現場で手間取っているとスタッフが誤って馬に鏡を見せてしまい、驚いた馬は後ろにいた製作者のひとりを勢いよく蹴り上げてしまう。CM撮影の仕事はなくなり、OJとエメラルドは馬を連れて帰ることになる。この馬はもう撮影には使えないので、買い取ってもらおうと、OJの牧場近くで「ジュピターズ・クレイム」という小さなテーマパークを経営しているリッキー・パクのもとに向かう。馬を買ってもらう交渉をしようとした時、エメラルドはリッキーの部屋の壁に貼ってあるポスターに目をとめる。そのポスターはかつてリッキーが子役だったときに出演していた『ゴーディーズ・ホーム』というドラマのもので、そこに出演していたチンパンジーが収録中に出演者を襲うという事件が起こっていた。リッキーはたまたま助かったが、その記憶は鮮明に心に残っていた。

その夜、牧場から馬が逃げ出していることに気付いたOJは連れ戻そうと馬の後を追う。馬に近付いたOJは雲の上を円形の何かが飛行していることに気付く。馬はさらに遠くに走り去ってしまい、OJが追いかけると遠くの暗闇に怪しい光が点滅しているのが見えた。やがて馬の鳴き声が聞こえてきた後に猛スピードで光が空を横切っていくのを目撃した。OJはエメラルドにそのことを話し、父を殺した何かがいるのではないかと推測する。OJとエメラルドは未知の飛行体の映像をカメラに収めればお金になると考える。早速、電気店へ向かい、店員のエンジェル・トレスに監視カメラを設置してもらう。エンジェルは2人の思惑に気付き、自分も参加したいと言うが、断られてしまう。カメラはパソコンで遠隔操作が可能で、屋根の上と柵に設置した。カメラは片方が停止するともう片方が停止した方角の空を撮影するように設定されていた。

ある夜、エンジェルからカメラの1台が停止した、とエメラルドに連絡が来る。エンジェルはカメラの映像を盗み見ていたのだった。その時もう1台のカメラのレンズにはカマキリが張り付いておりピントが合わず、決定的な証拠が撮影できなかった。
その頃、牧場の外に出ていた馬を連れ戻しに外に出ていたOJは雲の上にいる飛行体に追われる。エメラルドが声を掛けOJが建物に逃げ込むと飛行体は馬に狙いを変え、馬を捕獲して去っていった。命の危険を感じたエメラルドは逃げようと提案するが、OJが牧場から離れる気がないことを知ると、自身も牧場に残ることを決める。しかし自分たちの手には負えないと思ったエメラルドは、動物の番組などで知られる撮影監督のアントレス・ホルストに電話をかけ、撮影の協力を打診する。ホルストは現場で会ったエメラルドのことを覚えていたが、信憑性のない話に乗ってはくれなかった。そこへ、慌てた様子でエンジェルがやって来る。彼はカメラ設置以降の全映像を早回しでチェックした結果、牧場の上に動かない雲があることを伝える。飛行体発見の糸口を得たエメラルドとエンジェルは盛り上がるが、OJは別の可能性を考えていた。

リッキーのテーマパーク

数日後の金曜日、リッキーのテーマパークでは観客を集めてショーが行われていた。リッキーはこの半年間、毎週金曜日の夜に飛行体を目撃してきたことを観客に明かし、OJから買い取った馬をおとりにして飛行体を見世物にしようとしていた。しかし飛行体は予定より早くに姿を現し、その場にいた観客たち全員を吸い上げて飲み込んでしまう。観客たちがいなくなったテーマパークを訪れたOJは唯一生き残っていた馬を連れ帰ろうとするが、飛行体に襲われる。しかし、OJは観客席の下に隠れて飛行体をやり過ごした。馬を運搬車に乗せたOJは、飛行体だと思っていたものが縄張り意識の強い、肉食性の生物であることを自宅にいるエメラルドに電話で伝える。しかし、その生物は今まさに自宅の真上におり、電話が通じなくなってしまう。OJの家に来ていたエンジェルはちょうど帰ろうとしていたが、車が動かなくなり急いでエメラルドのもとに引き返す。生物は食べた人間の所持品などの無機物や血液をOJの自宅に吐き出すと、そのまま日が昇るまで周辺に留まり続けた。OJは生物が頭上にいることを確認すると、ドアをロックして車の中で過ごすことを決める。翌朝、OJが電気の復旧を確認し自宅に近付くと、生物はまだ上空に待機していた。しかし、OJは馬の習性を思い出して「見ない」ことに意識してみたところ、生物はOJを襲わずに去っていった。その際、生物が木馬の模型を吐き出し、それがOJの乗っていた車のフロントガラスを直撃し車が動かくなってしまう。仕方なくエンジェルの車に乗り換え自宅に戻り、玄関にいたエメラルドとエンジェルを乗せて自宅を後にする。
テレビではリッキーのテーマパーク、ジュピターズ・クレイムで人々が姿を消したニュースが報じられ、マスコミの注目を集めていた。

生物との戦い

エンジェルの家に世話になっているOJは、生物の目を見なければ襲われないと話す。そして、馬の世話があるから家に戻ると言い出す。エメラルドは自宅に戻ることに反対だったが、テーマパークの事件をニュースで知ったホルストから撮影に協力したいと連絡があり、結局3人は自宅に戻る。
ホルストは手回し式のIMAXフィルムカメラを持ってやってきた。そして、4人は作戦会議を始める。OJは生物を自分たちの子供時代にいた馬にちなんでジージャンと名付けた。OJは自らおとり役を申し出てホルストに離れた斜面から持参した手回し式のIMAXフィルムカメラで撮影してもらい、エメラルドは自宅で監視カメラのチェックを、エンジェルはホルストのサポートを担当することに決まった。ジージャンの位置は牧場内の至る所に設置した、電気で空気を注入するバルーンかかしの停止で推測することになった。
作戦当日、リッキーのテーマパークでの事件からジージャンの存在に気付いた記者がバイクで牧場に現れた。ジージャンの撮影をしようとした彼は、停電地帯に入ったことでバイクが急停止し、地面に投げ出されてしまう。OJはなんとか助けようとするが記者はジージャンに捕食されてしまう。ホルストたちは記者が捕食される一部始終を撮影していたが、フィルム交換と重なり、うまく撮れたかはわからなかった。OJはおとりとなってジージャンをギリギリまで引き付けたところで、先端に小型パラシュートを付けた旗をジージャンに放ち、ジージャンが旗を吸い込む様子の撮影に成功する。しかしホルストはもっとすごい映像を撮ろうと飛び出し、自らジージャンに吸い込まれながらもカメラを持ったまま撮影を続けた。そんなホルストの行動に動揺してジージャンを見てしまったエンジェルとエメラルドにジージャンが襲いかかった。エンジェルは突風で斜面を転がり落ち、防水シートや有刺鉄線が身体に巻きついてしまうが、そのおかげで一度はジージャンに吸い上げられたが吐き出されて助かっていた。エメラルドも風に煽られ宙に浮いてしまうがなんとか捕食されることは逃れた。エンジェルを捕食できなかったジージャンは、円形からクラゲのような姿へと形を変えてエメラルドに襲いかかろうとしていた。小屋に潜んでいたOJが記者のバイクで逃げるようにエメラルドを促すが、ジージャンの接近によりバイクは動かなかった。OJは馬に乗るとジージャンの注意を自分に引きつける。ジージャンはOJに襲いかかり、OJの姿は見えなくなってしまう。ようやくエンジンのかかったバイクにまたがると、エメラルドはジージャンを誘うように走り始める。

エメラルドはリッキーのテーマパークに逃げ込み、繋がれていた大きな水素風船のマスコット人形を解き放った。ジージャンは人の形をしたそれに興味を示した。エメラルドはテーマパーク内の、井戸の中から頭上を撮影することができるスポットを使って捕食の瞬間を撮影するつもりだった。地面に散らばっていたコインを拾って撮影を始め、ようやく何枚目かでそのシーンを写真に納めることに成功した。大きな水素風船の人形を飲み込んだジージャンは消化しようと圧力をかけた瞬間、ガス爆発を引き起こし自爆した。
勝利を手にしたエメラルドは歓喜の声を上げる。そして、集まっていたマスコミを一瞥すると、エメラルドはOJを失ったことを思い出し涙を流す。
しかし、エメラルドが顔を上げたその先に馬に乗ったOJの姿があった。

『NOPE／ノープ』の登場人物・キャラクター

主人公とその家族

オーティス・ヘイウッド・ジュニア（演：ダニエル・カルーヤ）

CV : 三宅健太
本作の主人公。真面目だが内向的な性格。オーティス・ヘイウッド・シニアの息子。愛称はOJ。
父親のオーティスが亡くなった後、妹のエメラルドと共に牧場を継ぐ。父を死に追いやった生物を撮影し、一儲けしようと考える。

エメラルド・ヘイウッド（演：キキ・パーマー）

CV : 根本圭子
OJの妹。オーティスの娘。兄とは反対に社交的な性格。
父を死に追いやった生物を撮影して一儲けを提案をする。

オーティス・ヘイウッド・シニア（演：キース・デイヴィッド）

CV : 菅原正志
OJとエメラルドの父。ヘイウッド・ハリウッド牧場の所有者だったが、空から落ちてきたとされるコインに頭を貫かれて死亡する。

飛行体撮影の協力者

エンジェル・トレス（演：ブランドン・ペレア）