サウンド・オブ・ミュージック(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『サウンド・オブ・ミュージック』とは、ブロードウェイミュージカルを原作に、1965年にアメリカ合衆国で制作されたミュージカル映画の金字塔。オーストリアからアメリカへ亡命して合唱団を結成したトラップ一家の実話が基になっている。退役海軍トラップ大佐の7人の子供達の家庭教師となったマリアが、持ち前の明るさと優しい歌声で子供達の心を開いていく。雄大なアルプスの風景とナチスドイツの脅威に立ち向かう勇気、そして家族愛が描かれ、アカデミー作品賞、監督賞、録音賞、編集賞、編曲賞の5部門に輝いた。

マリア(画像中央)は子供達(画像左右)に「ドレミの歌」を教えていく。

部屋のカーテンを使って子供達の遊び着を作ったマリアは、子供達と共にピクニックへ出掛けていく。マリアが家庭教師にいたずらをする理由を子供達に尋ねると、「お父様の気を引くためなの」とリーズルが答えた。ウィーンへ出発したトラップ大佐が婚約者であるエルザ・シュレーダー男爵夫人と共に戻ってきた時に、男爵夫人を歓迎する歌を歌おうとマリアは提案する。だが、「どんな歌も知らない」とフリードリッヒが答える。そこでマリアはギターを弾きながら「ドレミの歌」を歌い始めた。
マリアの歌に合わせて子供達も歌い始めていく。厳しい規律に縛られていた子供達が歌によって笑顔を取り戻し、明るく生き生きとしていく姿を見ることができるシーンである。

トラップ大佐がギターを弾きながら「エーデルワイス」を歌うシーン

トラップ大佐(画像中央)は子供達の歌声に心を和ませ、ギターを弾きながら「エーデルワイス」を歌う。

トラップ大佐がウィーンに滞在している間、マリアは7人の子供達に歌と遊びを教えていく。しばらくしてトラップ大佐はウィーンから婚約者のエルザ・シュレーダー男爵夫人と友人マックス・デトワイラーを伴って屋敷に戻ってきた。ボートに乗ったり木登りをしたり、歌ったりしているのが自分の子供達であることに気付いて、トラップ大佐は驚きを隠せない。そして子供達に厳しい規律を課して育てている方針とは正反対のマリアのやり方に怒りを覚える。だが、子供達がシュレーダー男爵夫人とマックスを歓迎する歌声を耳にした。自分の子供達が歌っている姿を見たトラップ大佐は心を和ませ、子供達と打ち解けていく。そしてギターを弾きながら「エーデルワイス」を歌い始めるのだった。規律だけが全てだったトラップ大佐が子供達と心を通わせていく姿が印象的なシーンだ。

マリアがトラップ大佐と一緒にオーストリアの民族舞踏を踊るシーン

マリア(画像左)はトラップ大佐(画像右)とオーストリアの民族舞踏を踊る。

トラップ大佐は婚約者エルザ・シュレーダー男爵夫人を紹介するための舞踏会を自身の屋敷で催した。トラップ大佐の7人の子供達はワルツを踊っている出席者達を見つめていた。リーズルとクルトが踊っていると、マリアにその姿を見られる。やがて、オーストリアの民族舞踏「レンドラー」を舞踏会の出席者達が踊り始める。クルトはマリアに「レンドラー」を教えて欲しいと頼むが、マリアは子供の時に踊っただけだから教えることができないと言う。それでもクルトは教えて欲しいとマリアに頼む。マリアはクルトにレンドラーを教えていくが、「練習が必要ね」とマリアはクルトに伝える。
クルトとマリアが踊る姿を見ていたトラップ大佐はクルトに、「失礼、よろしいでしょうか?」と言う。クルトはリーズル達と一緒になった。トラップ大佐とマリアは踊り始める。マリアは大佐の周りを軽快な足取りで回り、大佐は手を叩いていく。マリアと大佐は見つめ合う。マリアは顔が赤くなっていたことをブリギッタに指摘される。マリアがトラップ大佐に恋をしていることが伝わってくるシーンである。

『サウンド・オブ・ミュージック』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

主演は2人のアカデミー賞受賞者

クリストファー・プラマー(画像中央左)とジュリー・アンドリュース(画像中央右)はアカデミー賞受賞者。

映画『サウンド・オブ・ミュージック』にはアカデミー賞受賞者が2人出演している。1人目はトラップ家の家庭教師マリアを演じたジュリー・アンドリュースである。1964年の映画『メリー・ポピンズ』で魔法が使える乳母の役を演じて、アカデミー主演女優賞を受賞した。2人目はゲオルグ・フォン・トラップ大佐を演じたクリストファー・プラマーである。同性愛者であることを息子に告白する父親役を演じた2011年の映画『人生はビギナーズ』でアカデミー助演男優賞を受賞した。受賞当時は82歳であり、アカデミー史上最年長での助演男優賞受賞者となった。

20世紀フォックスを倒産の危機から救った映画

『サウンド・オブ・ミュージック』は第38回アカデミー賞で作品賞、監督賞、編集賞、編曲賞、録音賞の5部門を受賞した。20世紀フォックスは、エリザベス・テイラー主演の1963年の映画『クレオパトラ』を製作した映画会社である。20世紀フォックスは映画『クレオパトラ』の莫大な制作費が原因で倒産が噂されていた。しかし、映画『サウンド・オブ・ミュージック』のヒットによって20世紀フォックスは倒産を免れ、経営の立て直しに成功した。

ロケ地はオーストリアのザルツブルク

映画のオープニングシーンが撮影されたマルクトシェレンベルク近郊の丘陵。

映画『サウンド・オブ・ミュージック』のロケ地はオーストリアのザルツブルクである。映画のオープニングでマリア役のジュリー・アンドリュースが歌うシーンはドイツ南部の町マルクトシェレンベルク近郊の丘陵で、「ドレミの歌」のピクニックシーンはドイツ国境に近いオーストリアのベルフェンで撮影された。映画のエンディングシーンはドイツ南部のオーバーザルツベルク山地。屋内の撮影はアメリカ・ロサンゼルスにある20世紀フォックスのスタジオで行われている。

ワンシーンだけ出演したマリア・フォン・トラップ

画像左から3番目にいる人物がマリア・フォン・トラップ本人。

映画の原作となった自叙伝の原作者マリア・フォン・トラップがワンシーンだけ出演している。ジュリー・アンドリュース演じるマリアがトラップ大佐の邸宅を訪れる直前に「自信を持って」を歌いながら街を歩いて行くシーンに、マリア・フォン・トラップ本人が通行人役で登場する。アーチをくぐるジュリー・アンドリュースの後ろにいる、民族衣装を身に着けた女性3人が左から右に歩く時に姿が確認できる。

史実では修道女を辞めていたマリア

映画『サウンド・オブ・ミュージック』には歴史的事実とは異なる点がいくつかある。ジュリー・アンドリュース演じるマリアは修道院長にトラップ一家の家庭教師となるように勧められ、修道女のまま家庭教師となっているが、実際は家庭教師となった時点で修道女を辞めていて、修道院を出ている。修道院の暮らしになじめないことで体調が優れなくなり、家庭教師の職を勧められたのである。
映画の中で活動的な人物として描かれていているマリアであるが、実際は活動的であると同時に勝ち気でかんしゃく持ちであった。トラップ大佐がマリアを優しくなだめる役割を担っており、音楽が好きな性格であった。
マリアは自叙伝がミュージカル化される時、事実が脚色されることに寛容であったものの、夫トラップ大佐が厳格で横暴な人物として描かれることには納得しなかったという。
映画では一家で合唱団を結成して音楽コンクールに出場しているが、これも歴史的事実と異なる。実際は大恐慌によってトラップ大佐が資産を預けていた銀行が倒産してしまい、マリアは神学生に下宿を提供して現金収入を得ていたのである。音楽の指導を行ったのはマリアではなく、下宿人である神父であった。

オーストリアとドイツ国内での否定的な意見

映画『サウンド・オブ・ミュージック』はアカデミー賞で作品賞を含む5部門を受賞したミュージカル映画の金字塔と呼ばれているが、オーストリアのザルツブルクを含むドイツ語圏ではヒットしなかった。実際のトラップ大佐は第一次世界大戦当時の敵国イタリアでは商船を襲撃した極悪人であると言われている。その人物がドイツに抵抗する英雄として描かれていることに対して否定的な意見がある。

tsayay12171
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@tsayay12171

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