あの夏で待ってる(なつまち)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『あの夏で待ってる』とは2012年に黒田洋介が脚本を手掛け、J.C.STAFFにて制作されたオリジナルテレビアニメ作品。高校生の映画制作をテーマにした夏の恋愛ラブコメアニメ。何もないけど、何かしたい。そんな思いを抱えた主人公・霧島海人は仲間とともに映画を撮ろうと相談していた。そんな夏休み前のある日、記憶に残る見知らぬ風景の所在を探し求めて宇宙からやってきた「特別」な少女・貴月イチカ。これはそんな2人と、彼らを取り巻く周囲との関係を描いた、かけがえのないひと夏の物語。

貴月イチカ「大好きだよ、海人くん」

過ごした日々を忘れないと心に誓いながら去っていくイチカ。

故郷の捜索隊に捕まり、連れ去られそうになるイチカ。そんなイチカを行かせまいと傷つきながらももがく海人に、海人だけでなくみんなを巻き込んで傷つけてしまい、後悔の念を吐露するシーンで、海人はむしろこれは自分のわがままなんだと訴える。行かせたくないから、傷ついても立ち向かうんだと真っ直ぐな想いを聞き、イチカも自分の想いも真っ直ぐ伝えるのだった。
彼女は涙を流しながらも、精一杯笑って「私、この星に来たこと後悔しかけてた。私の勝手な想いが、みんなを巻き込んで。結局、何も成し遂げられなくて。でも、やっと分かった。私たち、何かを始めたいと思って、お互いを見つけた。ちゃんと見つけることができた。私の中に生まれたこの想いは、ずっと続くわ。絶対に消えないって信じられる。大好きだよ、海人くん」と自分の想いを伝えて去っていった。

彼女は一度、海人とも一緒にはいられず皆に迷惑がかかるのなら帰ったほうがいいのでは、と吐露しているところを柑菜に叱責されている。本気で好きになっていながらも諦めの早い態度に、一度は立ち直って何かできないか模索するも、彼女の中でこのままわがままを突き通して本当にいいのだろうかと不安もあったのだろう。このシーンでは海人のことを本当に大切に思っているからこそ傷つけてしまったことを後悔するも、海人は精一杯自分のわがままな思いを伝えたことで、イチカも自信を持ってまた会える日を願い去った。消えない思い出をカメラに収める彼に、どれだけ離れようと、どれだけ待とうと、自分の中の大切な想いや思い出は絶対に消えないのだと信じることができると伝えたシーンはとても感動できる。

谷川柑菜/石垣哲朗/北原美桜「あの夏を、忘れない」

去ってしまったイチカ、一人佇む海人の背中を見つめる柑菜、哲朗、美桜。

先祖の念が宿っていた場所で、イチカを見届ける海人。涙ながらに去って行ってしまった空を寂しく見つめる。そこへ駆けつけた哲朗、柑菜、美桜は、それぞれイチカがやってきてからの数ヶ月を振り返りながら「それは、ほんの数ヶ月のできごと。ひと夏のできごと。あの時の私達は、まだ何もしてなくて。でも、何かしたいと思っていて。そんな時、イチカ先輩が現れて。私たちの夏を、『特別』にしてくれたんです。喜びや悲しみ、すべてが詰まってる、あの夏を。俺たちは、あの夏を、忘れない」と心の中で語るのだった。

彼らは確かに、この夏「特別」を経験したのだ。それぞれが想いを抱えながら生きていて、それでも隠しながら過ごしてきて、そんな時にイチカが現れたことで歯車は大きく動き出した。彼らは酸いも甘いも、その「特別」な夏を経験し、決して忘れないだろうと心に誓うのだった。彼らはこの出会いがあったからこそ、良くも悪くも変われたし、強くなれたのだと感じられる名場面である。

『あの夏で待ってる』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

舞台となる長野県小諸市をアニメ聖地にする「なつまちおもてなしプロジェクト」

スタッフとして参加した黒田洋介と羽音たらくの代表作である『おねがい☆ティーチャー』や『おねがい☆ツインズ』は長野県大町市を舞台としており、今作の舞台は同じく長野県の小諸市となっている。小諸市をPRするため、小諸フィルムコミッションが協力としてクレジットされている他、小諸市も制作に協力しており、作中には小諸城址懐古園や相生町商店街、乙女駅周辺、布引観音釈尊寺、小諸市文化センター、北国街道ほんまち町屋館・みはらし庭、西浦ダム、浅間山を望む田園風景、佐久市の佐久平駅、軽井沢町内など、小諸市および小諸市周辺の風景が度々登場する。最終話には『おねがい☆ティーチャー』や『おねがい☆ツインズ』にも登場した大町市の海ノ口駅と木崎湖が登場する。ただし、第6話・第7話に関しては旅行先として沖縄が舞台となっている。

2012年3月には舞台となった小諸市で、本作を通じた地域活性化を目指す「なつまちおもてなしプロジェクト」が発足した。本作の舞台となった小諸市と舞台探訪に訪れた方々との交流の場所、機会、そして『あの夏を待ってる』を一緒に盛り上げて楽しい想い出を創っていく小諸市のプロジェクトで、小諸市観光協会や小諸商工会議所などの十数人のメンバーで構成されており、舞台を案内する地図の制作・配布やグッズの制作・販売を通じて、訪れたファンとの交流を図り、地域の活性化を目指していた。

実際に、本作だけでなく三宅大志による漫画・アニメ『ろんぐらいだぁす!』でも舞台となるこの小諸市では聖地巡礼として賑わう町となった。夏祭りではアニメに登場するキャラクターの神輿を担いだり、踊りを踊ったりとアニメ聖地となった。

作中で上映された『HOTD』

本作の制作に携わった黒田洋介とキャラクターデザインを担当した田中将賀は、2010年に放送された『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』(以下『HOTD』)でも制作を共に携わっており、本作第4話では海人と真奈美が映画を見ているのだが、劇中上映中の映画として『HOTD』のアニメの一部シーンが登場している。エンディングにはその製作委員会である「H.O.T.D.製作委員会」が協力としてクレジットされている。

ダイナマイトドリンクが現実で飲める

アニメの作中に登場する謎のドリンクがまさかの現実世界で飲めるようだ。
作中、檸檬がメンバーに振る舞う謎の持参ドリンク。第2話で、映画の完成を願って乾杯をしようと初めて振る舞われ、変わった味だがほんのり甘くおかわりする者まで居たほど美味しいようだが、何が入っているのかは最後まで明かされない。作中でも柑菜が飲み物について尋ねるシーンがあるが、その飲み物が「ダイナマイトドリンク」という名前であること以外は何も明かされない。
その「ダイナマイトドリンク」が、現実世界で飲めるようで、舞台となった長野県小諸市にある「自家焙煎珈琲 こもろ」は、小諸市が舞台のアニメグッズまで売られている喫茶店で、アニメ好きな夫婦で営んでいるお店。そのお店で飲めるのだが、作中同様そのレシピについては秘密のようで、当然ながらアルコールは含まれていないが、20種類以上の何かをブレンドした元気の出るドリンクであるとのこと。

『あの夏で待ってる』の主題歌・挿入歌

アニメ版

OP(オープニング):Ray『sign』

作詞:KOTOKO/作曲:折戸伸治/編曲:高瀬一矢/歌:Ray。

ED(エンディング):やなぎなぎ『ビードロ模様』

作詞・歌:やなぎなぎ/作曲:中沢伴行/編曲:中沢伴行、尾崎武士。

イメージソング:Ray『告白』

作詞:KOTOKO/作曲:折戸伸治/編曲:高瀬一矢/歌:Ray。

特別編

OP(オープニング):Ray『季節のシャッター』

作詞:KOTOKO/作曲:折戸伸治/編曲:高瀬一矢/歌:Ray。

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