ラストゲーム(Last Game)のネタバレ解説まとめ

『ラストゲーム』とは、天野忍による少女漫画。白泉社「LaLa」にて集中連載後、続きが読みたいとの声が多数上がり、続編が連載された。
柳尚人は、顔良し、頭良し、家柄良し、だけど勉強でも運動でもどうしても九条美琴には勝てない。初めての挫折を味わい九条への雪辱を誓った柳は、自分を顧みない九条に勝ってその瞳に自分を映そうと九条を惚れさせる決意をした。2人の10年に渡る勝負が始まった。

『ラストゲーム』概要

『ラストゲーム』とは、天野忍による日本の少女漫画作品。白泉社「LaLa」において、2011年9月号から11月号に集中連載した後、続きが読みたいとの声が数多くあがり、続編の連載が開始された。2012年2月号から2016年8月号まで連載し、最終回を迎えた。単行本全11巻。片思いがじれったく楽しい、王道少女漫画。
「このマンガがすごい!2014」内の特集「大学漫研が選ぶこのマンガがすごい!」にて、東京大学漫研が選ぶオンナ編第1位に選ばれた。東京大学の文芸サークル・新月お茶の会とコラボしたムービーがYouTubeにて公開された。

顔良し、頭良し、家柄良しの超完璧少年・柳尚人の前に現れた転校生・九条美琴。地味な外見と暗そうな雰囲気、全体的に貧乏くさいという印象だったのに、勉強も運動も九条に惨敗の柳は、人生初の挫折を経験した。激しいライバル心に燃え立つ柳は「惚れた方が負け」という言葉を聞き、九条を惚れさせようと決意した。
10年に渡る2人のラストゲームが始まった。

『ラストゲーム』あらすじ・ストーリー

出会い

顔良し、頭良し、家柄良しの超完璧少年・柳尚人は小学5年の時に現れた転校生・九条美琴に勉強も運動も勝つことができない。一見、地味で根暗で全体的に貧乏そうでレベルが低いという第一印象だったのに、九条は無表情で淡々と柳を打ち負かす。悔し紛れに九条に暴言を吐くが無視され、柳グループの跡取りである自分にそんな態度を取っていいのかというと、「すごいのはあなたのお父さんであってあなたじゃない」と返され、ショックを受けた。九条を見返すために、家庭教師や塾の量を増やしたが、無理をしすぎて道端で柳は倒れてしまった。そんな柳を助けたのは家が近所の九条だった。九条は柳を家に運んで休ませ、目覚めると食事を作ってくれた。そこで柳は、九条の父が早くに亡くなり母と2人暮らしであることや、母を支えるため九条が家事を引き受けていること、将来母を楽させるため独学で勉強を頑張っていることなどを知った。柳は、恵まれた環境に甘えている自分を恥じ、それから塾や家庭教師一切を辞め、自力で九条に勝とうと決意した。
小学6年になり、柳は最難関中学を受験しようと考えていたが、担任から九条が公立中学に行く予定と聞き出し、自分も公立中学に進学を決めた。

公立中学に入学し、柳と九条は3年間同じクラスになることはなかったが、柳はいつも九条を意識していた。成績で九条は常にトップを保ち、柳は常に2位。そんな立場を悔しく思っていたのだが、容姿や成績、運動でも何でもできる柳は周囲から羨まれチヤホヤされ、どう考えても自分は勝ち組なのだと考え直す。女子に囲まれ華々しい自分を見せつけようと九条に話しかけてみたが、どうやら九条は柳のことを忘れていたようで、咄嗟に名前が出てこなかった。そのことに柳は大ショックを受けた。クラスの男子から好みの女子のタイプを聞かれ、柳は九条の特徴を並べ立て、そうじゃない子、と言った。周囲の男子も誰の事を言っているのか直ぐに分かり、柳に同調するように九条の悪口を言い始めた。暗いだの地味だの人を見下しているだのと言って笑う男子に段々とムカついてきた柳は九条を庇うように男子を睨みつけた。
自分は九条にムカついているのに他の男子が九条を悪く言うと許せない。自分の中にある感情がわからず柳は悩む。教室へ行ってみると、一人でうたた寝をしている九条がいた。寝ている九条を見つめながら、柳は考えた。今まで柳が出会ってきた人間は好悪であれ、柳に感情をぶつけてきた。しかし、九条は前しか見ておらず柳を振り返ることはない。九条の目に自分が映らないことが悔しいのだと柳は気づいた。「惚れた方が負け」という言葉を小耳に挟んだ柳は、九条を自身に惚れさせて、振てやろうと決意した。

高校に入学するが、相変わらず主席は九条、柳は2位だった。悔しくてたまらないが中学の時に思いついた作戦を決行しようと九条に「付き合ってやってもいい」と柳は話しかけた。しかし、九条には柳と付き合うという恋愛的な発想が無かったらしく、「どこに」と返してきた。苦し紛れに学食に誘い、柳は九条に食事をおごることにした。九条が放課後バイトをしようとしていることを聞いた柳は、九条が接客業で見知らぬ男の手を取っている姿を妄想し、「却下だ」と発言し、だったらその時間を自分が買うと言い出した。「九条をオトすにあたっての接触時間確保+九条の勉強時間を削れる=オレが1位を取れる」と考えた柳は、毎日食事を奢るから、と九条を丸め込み、放課後九条に勉強を見てもらうことになった。連絡先を交換しようとするが、九条が携帯を持っていないと聞き、母一人子一人で連絡先が自宅だけでは危ないと諭し、週末一緒に携帯を買う約束を交わした。

九条とのデートだと柳は浮かれていた。自分が携帯を持つように行ったのだから自分が買ってやるというが、九条から断られてしまった。大抵の女子は奢ったり物を買ってやったりすれば喜ぶと思っていた柳は驚いた。柳は、母に楽をさせてやりたいのならば玉の輿などは狙わないのかと聞いてみるが、九条は自分の力で母に恩返しがしたい、自分の力で手に入れたものでなければ意味がないと言う。九条が好きになる人は家柄も容姿も関係なく純粋にその人のことが好きなのなだろうと考えた柳は、その人物がとても羨ましいと感じた。

放課後、勉強を見てもらうようになって、九条との時間が増えた柳だったが、九条の完璧さに驚いてしまう。勉強の教え方もわかりやすく、男らしさをアピールしようと重い荷物を持ってやろうとしても九条の方が力がある。不良に絡まれた九条を助けようとしたが、それよりも早く九条自身が撃退してしまった。自分よりも逞しい九条を女として見られないと柳は友人に話した。
ある日の帰宅途中、九条の携帯に九条の母が事故にあったと連絡があった。呆然として動けない九条を促し病院に連れて行った柳は、母が骨折をしたものの、命には別状がないとわかり安心して顔をクシャクシャにして涙を流し、柳にはじめて「ありがとう」と笑顔を見せた九条が女の子だったのだと意識してしまった。

高校を卒業し、2人は同じ大学の2年生になっていた。柳は九条への気持ちを自覚していたのだが、その気持ちを否定しようと他の女子と付き合ってみた。しかし結局長く続かず、九条のもとへ戻ってきてしまっていた。一方の九条は、何だかんだと柳に呼び出されて食事や映画に行く事を不思議に思っていた。大学でできた友人の藤本しおりに柳を紹介して欲しいと九条は言われ、その話を柳にしてみると、柳の表情が変わり、それ以来何の連絡もなくなってしまった。今まで自分から連絡したことはほとんど無く、柳から連絡が来なければ、簡単に終わってしまうような関係だったと分かり、九条は愕然とした。さらに、柳と藤本が寄り添って話しながら街を歩く姿を見てしまい、九条の心は乱れた。母の前では普通にしているつもりでも、九条の母は娘の様子がいつもと違うと感じており、柳と何かあったのかと聞いてきた。母は、これまで甘えてしまっていたけど、これからは母のことは気にせず、自分の幸せを追いかけて欲しいと話す。柳のことで心が乱れていたところに、今まで母のためと思って頑張ってきたことをしなくていいと言われ、混乱した九条は、母に何も言わずフラフラと家を出てしまった。そして九条は「母のため」と言いながら他人と関係を築こうともせず、柳が話しかけてくれることを当たり前と考えていた自分に気づいた。これから先、柳の隣に自分がいないことが耐えらないと思った九条は、自分から柳に会いに行こうと決心した。
すると、息を切らした柳が九条を見つけ走り込んできた。柳は九条の母から連絡を受け、九条をずっと探していたのだ。なぜいなくなったと問いかける柳に九条は藤本はどうしたのかと逆に問う。実は藤本は、リゾート開発関係のレポートを書く必要があり、柳リゾートの息子である柳に会いたかったのだが、柳は九条が友人に恋の橋渡しを頼まれたのかと思い、そんな九条を腹立たしく思い、連絡をしなくなったのだという。九条も、藤本は柳が好きなのだと思っており、2人でいたのはデートだと勘違いして心が乱れていたのだ。九条は柳に、2人が一緒にいるところがすごく嫌だった、と語り、柳は九条が自分に想いを寄せているのではと嬉しくなった。しかしすぐに九条から「すごく大事な友人だと認識していたみたい」と話され、柳はがっくりとした。九条のその気持ちは友人としての気持ちではなく、恋なのではないかと言いたい柳なのだが、小学生の頃から九条に対して地味だの女らしくないだのと暴言を吐き続けてきた自分を振り返り、九条をここまで恋愛に鈍くさせた原因は自分にあると思い当たり、柳は「勝負しよーぜ、九条。正真正銘最後の勝負。オレが九条に気持ちを自覚させられたらオレの勝ち。オレが勝ったら、左手の薬指に指輪はめてよ、九条。」と九条に勝負を持ちかけた。
2人の勝負が始まった。

学祭

ライバル心がいつしか恋に変わっていた柳は、九条にプロポーズまがいのことを言ってしまい、九条からの反応を伺っていた。はにかむようすを見せる九条にこれはもしや自分への気持ちに気付いたのかと期待したが、「これからもよろしくね、友達として」と言われてしまい、愕然とした。大学でできた友人・藤本しおりから、先日レポートのために柳と出かけた際、柳が九条のことを心配し、仲良くしてやって欲しいと言っていたと九条は聞かされた。柳が自分のことをそんなに思いやってくれていると知った九条は、今まで「いちいち構ってくるうっとおしい奴」と思っていたことを反省し、友達思いの柳の友人として釣り合える人物になろうと、周囲に目を向け世界を広げようと決意した。藤本はそれならば世界を広げる第一歩として天文サークルに入って欲しいと誘い、柳も一緒にどうかと九条に言った。九条は藤本に言われたように、柳を天文サークルに誘おうと声をかけた。柳は九条に一年前に一緒にサークルに入ろうと誘ったのだが、すげなく断られており、自分が誘っても断るくせに、他の人に頼まれるとほいほい引き受けるのかと腹を立て話の途中で立ち去ってしまった。
天文サークルで九条の歓迎会をすることになった日、柳も自身が所属するテニスサークルの飲み会に出席していた。ちやほやしてくれるサークルメンバーに囲まれ、九条の存在など忘れて楽しもうと思っていたところに藤本から九条の歓迎会に参加しないかと連絡が入った。自分も飲み会だからと断ろうとする柳に藤本は、九条が先輩に飲まされているけど、と匂わせ、電話を切ってしまった。心配になった柳はすぐさま九条のもとへと駆けつけた。酔っ払った九条を抱え帰ろうとする柳に藤本は、九条は柳と釣り合う人間になるために、世界を広げようと思って天文サークルに入会することにしたのだと、事情を説明した。結局どうしても柳は九条が気になるので、こうなったらとことん付き合おうと覚悟を決め、柳も天文サークルに入会することになった。

天文サークルに、九条と柳の他に1年生の男子学生・相馬蛍が入会してきた。天文に興味があるというより、柳に敵対心を持っているような、九条に興味を持っているような素振りを見せている。柳が知らないうちに「美琴さん」「蛍くん」と2人は名前で呼び合う中になっていて、柳は面白くない。九条に警戒心を持つように話してみるが、逆によく知らない人物の悪口を言うなと怒られてしまった。柳と九条がギクシャクしているのを見た相馬は、柳が手に入れられない九条を自分のものにしようと九条を襲おうとするが、九条に取り押さえられてしまった。相馬が柳のことを、何の苦労もしてない全てに恵まれ人を見下していると評するのを聞いた九条は、柳はそんな人間ではない、適当な事を言うな、と相馬の腕をねじり上げた。九条を助けようと駆けつけた柳は、九条のその言葉を聞き、喜びを感じていた。九条は、柳の忠告を聞かず悪かったと柳に謝り、お詫びに何でもすると約束した。柳は名前で呼んで欲しいと九条に頼むが、「尚人」と呼ばれ心臓が破裂しそうになり、やっぱりいいと断った。

大学の学祭が始まった。天文サークルは喫茶店をしており、容姿の整っている柳と相馬は客引きをしていた。九条も藤本にメイクを施され別人のように可愛いメイドさんになって喫茶店は大繁盛。休むまもなく大忙しになってしまった。学祭が終わり、メイクをして髪型を変えるだけで、同じことをしていても周りの反応が好意的に変わることに、九条は理不尽さと疲れを感じていた。柳は、大勢の男子に囲まれモテモテになっている九条を眺めるだけで何もできずにいたことを落ち込んでいた。柳が落ち込んでいるところに九条が現れ、何もできなかった悔しさから柳は「九条はいつもの方がいい」と憎まれ口を叩いてしまった。しかし九条は、見た目で判断せず、いつもの自分でいいと言われたようで、柳の言葉を嬉しく感じた。「柳といる時が一番ほっとする」と口にし、真意を確かめようと柳が九条に迫ったところでサークルメンバーの邪魔が入り、真意を確かめることはできなかった。

学祭が終わり、天文サークルには柳と相馬目当ての入会希望者で溢れていた。九条は、手作り和菓子をふるまい周りの人とコミュニケーションを取ろうとするが、上手くいかない。社交的な柳との差を埋めようと頑張ってみるが、空回りで疲労が溜まっていく。柳は、自分目当ての女子から九条が嫌がらせされることを恐れ、九条から遠ざかり、しばらく天文サークルを休むことにした。すると、サークルからごっそりと人が減り、結局最初のメンバーに戻ってしまった。せっかくいろいろな人と交流しようと頑張っていた九条に、「残念だったな」と柳が励ますと、「残念だけど、また柳の近くにいられる」と九条が嬉しそうに笑い、その言葉に柳は喜びを感じた。

初合宿

天文サークルのメンバーは新歓合宿をしに柳の別荘に行くことになった。柳と九条は先日大学でぶつかり、唇が柳の頬に当たるといういわゆる事故チューなるものをしていたのだが、九条は全くいつもどおりで、意識しているのは柳だけだった。柳が周りのメンバーにそれとなく事情を話すと、メンバーからは男として意識されていない、恋愛という感覚がない、などと言われてしまった。九条が相馬と仲良さそうに料理を作っているのを見て、嫉妬心から柳は九条と目を合わせなくなってしまった。それを不審に思った九条は、天体観測に出かけた際、柳の手を握りどうしたのかと聞こうとするが、逆に柳に手を取られお前こそどういうつもりかと聞かれてしまう。相馬に頭を撫でられていたり、口をつけたジュースを柳に渡そうとしたり、今も柳の手を簡単に握る無防備な態度の九条に、自分のことをどう思っているのか、九条の気持ちを確かめようとするが、突然の雨で中断され、さらに森の中で迷子になってしまった。2人っきりで夜を明かさなければいけなくなり、柳は意識しまくるが、九条は全く気にすることもなく柳にもたれ眠ってしまった。九条は今まで柳の他に友人の一人も作らず、この頃ようやく周りに目を向け始めたばかりであり、人との関わりは赤ちゃんレベルで恋愛方面にまで全く気が回らない。柳はそこに思い至り、九条に早く恋に目覚めて欲しいと思いながら眠った。柳より早く起きだした九条は、自分の手をしっかりと握る柳の手が大きくて、男の手なのだと認識した。最近、柳といるとほっとするのだけれど心細いような心もとないような気持ちになることを九条は不思議に感じた。柳にとっては、九条が自分を「男と認識していない」と思った合宿だったが、九条にとっては、柳から触れられると不思議な気持ちになるという進展だか後退だか分からないという合宿になった。

合宿から帰り、九条は柳に対する不安定な気持ちを自分に厳しいことを言ってくれる相馬に相談することにした。かつて、九条に対して容赦のないダメ出しをした相馬のことを、人間心理に長けている人物として九条は認識しており、そんな相馬だったら忌憚のない意見を言ってくれると思ったからだ。九条と柳の恋を邪魔したい相馬はそんな気持ちは「消えろー」と思っていれば消える、と適当に言う。学内にいる人たちから柳が風邪をひいて寝込んでいるという話が聞こえてきた。合宿で雨に降られた時、自分に上着を貸したせいで風邪をひいたのではと思った九条は、柳の看病に向かった。柳に対して気まずい気持ちを持っていたのだが、弱った柳の面倒を見ることでいつものように振舞うことができるようになった。

相馬は、九条から頻繁に柳のことを相談され、分かりやすい柳の態度と九条の様子から2人は両思いだと確信していた。しかし、九条の認識が思った以上に幼く恋愛方面に向かない上に、相馬が柳のことを敵視しているため、九条に間違った情報を与え、柳から離れるように仕向けていた。そして、九条からの相談に乗っているうちに九条の良さが分かってきた相馬は、段々と気持ちが九条に傾き始めていた。

新メンバー

相馬のバイト先に柳の友人たちが合コンをしにやってきていた。自分が参加すると周りの雰囲気を壊してしまうと理解している柳は、予定があるからと断っていたのだが、人数が足りないということで無理やり連れてこられてきていた。柳が参加すると女子たちは柳に群がり、参加した男子学生は見向きもされなくなり、悔しい思いをしてしまう。溢れた学生たちが陰で柳の悪口を言いまくり、それを聞いていた相馬は、柳を庇おうと反論し、喧嘩が始まりかけてしまった。ちょうどその時に柳が現れ、その場を上手く収めた。何の苦労もしていないと思っていた柳にも恵まれているからこその苦労があることや、柳が常に人を気遣っていることを相馬は知った。
2人で帰宅途中、九条が見知らぬ女子と一緒のところに出くわした。彼女は、電車で痴漢に遭っているところを九条に助けられた他大学の1年生・橘桃香という美少女だった。桃香は以前パーティーで見かけた柳のことを気に入っていて、偶然出会えたことを喜び、他大学でもサークルに参加できるインカレという制度を使い、天文サークルに参加し始めた。柳は今までの経験から橘桃香の好意を見抜き、警戒した。サークル代表の藤本は、常に可愛らしい笑顔を見せ、質問への回答を曖昧にぼかし、精神論にすり替え好感度を上げる切り返しをみせる桃香には裏の顔があると女の勘で見抜いていた。桃香の本来の姿は、持ち前の女子力を駆使して、より良い条件の男をゲットしようする貪欲さを持つ女子なのだが、九条はか弱いカワイイ守ってあげたい女の子として桃香を認識していた。仲の良い九条と柳の関係を見て、柳を狙う桃香は九条に「柳さんを好きなわけではないんですよね…?」と牽制する。好きな人は独占したいと話す桃香の言葉が、今友達として楽しいからずっとこのままでいたいと思う九条には理解できない。しかし、桃香が柳と2人っきりでいるところを目撃し、九条は一瞬動けなくなってしまい、自分のその行動に驚く。
桃香は柳の態度から柳が九条を好きだと勘付き、さらに、相馬が九条を見る様子から相馬も九条を思っていることに気づいた。

家庭教師先の教え子から遊園地のチケットをもらった九条は、勇気を出して柳を誘おうとしたのだが、桃香に邪魔をされサークルメンバー全員で遊園地に行くことになった。皆で行くことは嬉しいことなのだが、柳と2人でないことに心がモヤモヤすることに九条は気づいた。桃香は女子力をアピールしようと弁当を持ってきたり、うさ耳を付けたりして柳にアピールしたり、相馬と九条をわざと2人きりにして、相馬にチャンスを作ったりする。相馬は、桃香の思惑に気づいたのだが、桃香にけしかけられてうまく利用されるのはたまらない、関わりたくないと桃香の挑発に乗るまいとしていた。しかし、九条が相馬に対して自然な褒め言葉を発したり、柳を想い落ち込む様子に思わず手を出しそうになってしまった。
遊園地で皆とはぐれてしまった九条を気遣い、迎えに行こうとした柳に桃香は「九条と柳じゃ釣り合わない」というが、柳は「10年前からオレの方があいつに追いつきたくて必死」と答え桃香を拒絶した。

「友達」の距離感

遊園地で偶然、昔太っていた時の写真を九条に見られた桃香は、それを気に病みサークルを休み続けていた。柳は、告白される前に振ってしまったことで来なくなってしまったのではと気に病んでいた。実際は、九条に昔太っていたことをサークルメンバーに言いふらされたのではと疑心暗鬼になった桃香が気まずくて行けないだけだった。家でモヤモヤと考えていたのが嫌になりヤケになった桃香は、ファミレスでカロリーを気にせずドカ食いをすることにした。フガフガと貪るように食べているところを偶然相馬に見られ、九条から太っていたことを聞いて笑いに来たのかと桃香は相馬に八つ当たりをした。相馬に、九条からは何も聞いていないし、言いふらすような人ではないと桃香は諭された。実際に九条は誰にも何も言っておらず、その写真が桃香であることにすら気づいていなかった。昔太っていたからといって、頑張ってそんなに可愛くなったのならそっちの方がすごいと言われ、九条の考え方、人柄を見直した桃香だった。

柳は、親がかりの生活を改め九条や相馬のように自活したいと考え、バイトを始めることにした。九条と藤本が一緒に行ったカフェが偶然、柳のバイト先で、柳の接客がとても素晴らしいと評判になり、女性客が増えているようだった。10年も一緒に過ごしていたため、柳は九条の好みを熟知して、注文する前にオーダーを理解しているのだが、九条は柳のことをほとんど知らないことに改めて気付かされた。いつも柳に気遣ってもらっていたと気づいた九条は、自分が柳のために何かできないか、これからも一緒にいられたらいい、と思うようになっていた。

九条への誤解も解け、サークルに復帰した桃香はまだ柳を諦められず、「九条は柳のことを友達だと言っていた」と柳に話し、自分にもまだ望みがあるはずだから諦めない、と言ってくる。その言葉を聞いた柳は、九条の言う「友達」との距離感というものはどういう物なのか考えた。九条は柳が手をつないでも嫌がらず、肩に頭を預けても嫌がらない。柳だから許すのか、友達なら誰でも許すのか分からなくなった柳は、試してみることにした。まず、手を握る、頭を撫でる、頬を触る、顔を近づけておでこをぶつけても拒まない。柳だから別に嫌じゃないと九条は言う。こんなこと言う「友達」とは一体何なのか、九条の認識がわからず、柳の苦悩は尽きなかった。

同窓会

10歳の時に埋めたタイムカプセルを掘り起こそうと、同窓会が企画された。当時、主席を争っていて険悪だった柳と九条が参加すると聞き、同級生たちはどのように変わっているのかと興味津々だった。現れた2人が夫婦のように寄り添い、柳が甲斐甲斐しく九条の世話を焼いている姿を見た同級生たちは驚いた。
タイムカプセルに入っていたものは、10年後の自分への手紙。九条は手紙に書いた人生設計通りになっていた。柳の方は、ひねくれた書き方ではあったが九条への気持ちが書き連ねてあった。自覚もなかった10年前から九条を思っていたと分かり、さらに10年前から全く進展していないことに柳は不甲斐なさを感じた。次回、10年後にまた開けようと10年後の自分へと手紙を書く事になった。柳はうっかり10年後はオレの嫁などと書いて、実現できなかったら立ち直れないと白紙で入れることにした。九条は、人付き合いをしなかった自分が同窓会に参加しているのは柳のおかげだと書き、10年後柳が隣にいたらいい、と書き記した。柳からはわからなくても、確実に九条の気持ちは変化してきていた。

夏合宿を相馬の田舎ですることになった。しかし田舎の父と喧嘩をして東京に飛び出してきた相馬は渋っていた。桃香は相変わらず柳に近づこうとし、九条と相馬をくっつけようと画策するのだが、当の相馬からいい加減もう諦めろと怒られてしまう。桃香は、何もせずに諦めたりしない、アンタとは違う、と相馬にタンカを切った。

九条と柳は、本人たちには自覚がなくても周りからはいちゃついているように見えている。お互いに想い合っているように見えるのに、お互いが相手の気持ちを理解していない。相馬はそんな二人の様子を間近に見せられて、もはや柳に対抗しようとする気持ちは薄れてきていた。さらに、初めは敵対心でいっぱいで嫌いだった柳のことも最近では嫌な人とは思えなくなってきていた。だから、自分の気持ちに蓋をして、もういい加減九条と柳がくっつけるように、状況を整えるようになった。

告白

夏合宿、相馬の両親が営む民宿にやってきた。実家の農業を継がせたかった父は、それに反抗して家を出た相馬に対して非常に厳しく当たり、人前でも構わず喧嘩が始まる。母は反抗期だと思って温かく相馬を見守っている。実は、相馬が田舎から東京に出たきっかけは、過去、一生懸命やっていても運が悪くいろいろ上手くいかなかったのが原因だった。遠足や誕生日の前には熱を出し、リレーや徒競走ではいつも2位、好きな子からは恋愛相談をされ、極めつけが頑張っていた野球の試合の前日に食中毒で入院。いろいろ嫌になって東京に行ったのだと母は理解していた。相馬自身は野菜作りに精通しており、農家が嫌な訳ではなかった。

少し前に柳の家でした飲み会の時、酔いつぶれた柳を介抱した九条は、酔っ払った柳におでこにキスをされ、柳のことを意識し始めていた。酔っ払った柳は九条にした事を夢だと思っていた。合宿中、柳を見て照れて赤面する九条に柳は、どうして自分をまっすぐ見ないのか、見られなくなったのか考えて欲しいと話した。九条が恋愛と気づくまでもう一歩のとこまで来ていると柳は感じていた。
合宿中、川に釣りに来ていたメンバーは各々好きな場所で釣りを楽しんでいた。釣った魚の数が九条に負けていた柳は、九条に勝つと言って上流の方までやってきた。そこには陽に当たり過ぎて頭が痛くなった桃香が休憩していた。具合の悪そうな桃香を気遣う優しい柳に、どうしても納得がいかないと桃香は自分の気持ちをぶつけた。地味で美人でもない九条をどうして柳が追いかけるのかと桃香は問いかける。柳は、九条は外見とか立場とか気にするような人間ではないから、九条が好きになってくれたら純粋に自分を好きになってくれたということだ、と話した。かっこいいとか、お金持ちだとか、打算で人を好きになる自分と九条は全くの正反対で、柳は容姿も過去も関係なく人を好きになれる人なのだと桃香はわかった。そんな風に好きになってもらいたいと羨ましく思う桃香だった。

その時、相馬は九条と過ごしていた。九条は、相馬と相馬の父が険悪であることを良くないと諭し、以前相馬からもらった野菜はどれもしっかりしていてとても美味しかったと伝え、きっと相馬に食べさせたくて選んだ物なのだと思ったと話した。九条の言葉で、自分が本当に嫌いなのは田舎でも農家でも、ましてや父でもなく中途半端な自分自身だったのだと相馬は気づき、それを教えてくれた九条のことを改めて好きだと感じた。
夜、相馬と父が口論して相馬が家を出たと勘違いした九条は相馬を追いかけ外に出た。ケンカじゃなくて和解していたと相馬は話し、東京に出ない方が良かったのかも、とつぶやいた。そのつぶやきを聞いた九条はどんな理由であれ、東京に出てきてくれたおかげで相馬に会えたと無邪気に話した。相馬はその言葉に想いが溢れ九条に好きだと告白した。

自覚

「恋愛的な意味で好きです」と言われた九条は、動揺し熱を出してしまった。熱を出した九条には悪いが、自分の言ったことを熱を出すまで考えてくれたことが相馬は嬉しかった。九条は相馬が「伝えたかっただけ」という言葉を受け取り、自分は何の返答もしないでいつも通りにしていた方がいいと結論づけた。石のように動じない心で相馬と接しようとするが、相馬から「告白しましたよね」と確認を取られ、再び動揺してしまう。そんな九条を相馬は夏祭りに誘い、2人は出掛けることになった。
告白して以来、九条への気持ちをはっきり言葉にして相馬は伝えていく。恋愛というものがよくわからないという九条に、待っているから考えて返事をしてくれと相馬は伝えた。バイト帰りに偶然2人を見かけた柳は、今までと違う空気感の2人に気づいた。九条と別れた相馬に話しかけた柳は、相馬から九条への気持ちを聞き、激しく動揺する。

相馬にきちんと返事をしなければいけないと九条は悩み始める。相馬に対して緊張して態度がおかしくなってしまうのだが、そのおかしな態度を柳に見られるのが怖いと九条は思ってしまう。相馬の気持ちを知った柳はいつも以上に嫉妬心を剥き出しにし、相馬と九条を取り合うようになった。そのような空気が耐え切れず、九条は2人を避けるようになってしまった。

天文サークルで九条は皆にこれから自分は会計士を目指して予備校に通うので、あまりサークルに来られないと話す。大切なことを事前に話してもらえなかった柳は不機嫌になる。このまま自分から離れていってしまうような錯覚を覚えた九条は柳に「柳はずっと友達だよね?変わったりしないよね?」とすがりついた。
今まで対人スキルが低い九条を見守っていた柳だったが、いつまでも自分を恋愛対象として認めない九条に苛立ちを隠せなくなり「嫌だよ。九条とこのままずっと友達なんて」と言い放つ。しかし、友達でいたくないのかと誤解した九条が泣き出し、柳は慌てて嘘だと否定した。

泣きはらして帰宅した娘を心配した九条の母は、柳に連絡を取った。柳と会い事情を聞いた九条の母は、父親が死んでから、九条の世界は中心が母になり九条自身には目が向かなくなったことや、傷つくことを恐れ何かが変わることに臆病になっているのだと話した。

九条は柳を避けるようになり、勉強に打ち込むようになった。様子が変わった九条を藤本は心配し、桃香は九条の煮え切らない態度にしびれを切らし「柳さんのこと好きなんでしょ!?」と九条に自覚を促した。「柳は友達、友達ならずっと一緒にいられる」と言う九条に「そういうのは『好き』ってゆーのよ」と桃香に教えられ、ようやく自分の気持ちを自覚することができた。

返事

桃香に自覚を促され、自分は柳に恋をしているのだとわかった九条は、避けていたことを謝罪しようと柳に会いにいくのだが、上手く話せず逃げ帰ってしまう。
母の誕生日、母と2人で祝うためにご馳走を作り待っていたのだが母に仕事が入り、1人で過ごすことになってしまった。今まで1人でも全然平気だったのになぜか今は1人が寂しく感じてしまう。九条が1人の時は柳がいつも一緒にいてくれたことを思い出し、もう1人ではいられなくなってしまったと心細くなったところに、母から連絡を受けた柳が駆けつけた。
柳を避けていて嫌われてしまったのではと九条は恐れていたのだが、「オレが九条を嫌いになるとかありえねーから」と言われ、繋いだ手のぬくもりで安心し、「柳のことが好きなんだ」とはっきり自覚した。

九条の雰囲気が変わり、柳に対して柔らかい表情を見せるようになってきた。そんな九条の様子に相馬は、柳と九条に何かあったと察した。相馬は恋の終わりを予感して九条に「オレに言いたいことがあるでしょう」と言い、水族館に誘った。
ぎくしゃくとする九条に、「ひとまず告白のことは忘れてください、今日は笑ってる美琴さんが見たい」と相馬は言い、2人は水族館を楽しんだ。ひとしきり水族館を楽しんだ後、相馬はもう一度九条に告白し、九条は「柳のことが好きです…だから…ごめんなさい」と返事をした。
ずっと自分は一番になれないと思っていた相馬だったが、九条に告白したのは相馬が一番だったと知り、認められたような、肩の荷が降りたような気持ちになった。

すれ違う想い

相馬と九条が水族館に行ったと知った柳は、自分とも出かけようと九条を誘った。柳を好きだと自覚してから初めて一緒に出かける九条は、藤本や桃香に協力してもらいデートのような装いをしてみた。九条は、柳には好きな人がいると思い込んでいて、自分を好きになってもらうにはどうしたらよいかと思い、「男心がわかる!つかめる!デートの心得」という本の通りに行動しようとしするが、柳には通じない。むしろどうしたのかと心配されてしまう。九条は柳に柔らかい良い表情を見せるのだが、今までいい雰囲気になりながら友達宣伝などされていた柳は、卑屈になっていて、九条の表情を見ても自分に恋をしている表情だとは気づかない。
帰り際、九条が家の鍵を忘れて家に入れなくなり、大学に泊まるというので、九条を柳は自宅に連れ帰った。

九条は柳を好きで、柳もずっと九条に恋をしている。しかし、お互いに両思いにも関わらず、相手からは「友達」と認識されている、と思っていた。お互いに同じ部屋で過ごすことにドキドキしているのだが、結局何も起きずに朝になった。
翌朝、「週末は実家に帰る」という約束を破った柳を迎えに柳の母が来た。2人が一緒にいることに驚くが、九条の窮状を助けただけだと説明し、誤解は解けた。実家に戻る柳の母に誘われて、そのまま2人は柳の実家に行くことになった。
柳の母や姉に柳の幼い頃の話などを聞き、楽しいひと時を過ごした九条は、もっともっと柳のことを知りたいと思いようになった。九条の人となりを知った柳の母や姉も九条を気に入った様子を見せる。

柳の祖父母が営む旅館に、天文サークルで訪れることになった。柳の母から事前に「九条が柳の彼女」という情報がいっていた祖母から九条は彼女としてチェックされる。誤解だと柳が否定するので、やはり柳には好きな人がいるのだと九条は誤解を深める。どんな人が好きなのかと疑問に思い、九条は柳に「好きな人はいるの?」と聞いた。そんなのお前に決まっている、と言いたい柳だったが、今そんな事を言っても受け入れてもらえない、でもこれをきっかけに自分の存在の大切さをわかってもらおうと九条に揺さぶりをかけることにした。「い…いるよ」と柳が答え、九条ということはぼかしながら、どんな風に好きで大切なのかを語った。実際に柳の好きな人のことを聞いた九条はショックを受け、九条に頑張ってと言われた柳もまたショックを受けた。

将来

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