ラストゲーム(Last Game)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ラストゲーム』とは、天乃忍による少女漫画。白泉社「LaLa」にて集中連載後、続きが読みたいとの声が多数上がり、続編が連載された。
柳尚人は、顔良し、頭良し、家柄良し、だけど勉強でも運動でもどうしても九条美琴には勝てない。初めての挫折を味わい九条への雪辱を誓った柳は、自分を顧みない九条に勝ってその瞳に自分を映そうと九条を惚れさせる決意をした。2人の10年に渡る勝負が始まった。

天文サークルの後輩・相馬蛍は、田舎出身の純朴な青年。しかし大学では方言も実家の家業も隠して都会に馴染もうとファッション雑誌を参考に努力している。九条に接している時はその都会の仮面が剥がれ落ち、方言も多用するし、おしゃれではないババくさい弁当を貪るように食べてしまう。自然と剥がれ落ちる仮面に動揺し、自分はオシャレボーイで売ってるのに、実は田舎者なんてバレたらモテない、という相馬にいった九条のセリフ。
「そんな風に自分を作って好かれても結局疲れるだけじゃない?」九条も学祭で見た目を変えただけで優しくしてもらえたが、それがとても疲れた経験を持っていたので、「そのままの蛍くんでいいと思うけど」と心から言った。

九条の飾らない素直な言葉が胸に響き、相馬が九条へ気持ちが傾くきっかけになった名セリフ。

引用:ラストゲーム 3巻

「影でコソコソ言うとかちょっとカッコ悪いっスよ」

相馬が勤めるバイト先に柳の友人たちが合コンにやってきた。昼間、合コンがあると柳が誘われている現場を相馬は目撃していた。合コンに行くメンバーの1人が柳には参加して欲しくない素振りを見せていたので、柳は用事があるから、とスマートに断っていた。しかし、どうしても人数が足りないと別の友人に頼まれ、柳は合コンに参加することになった。柳は顔も良く、立ち居振る舞いも品がある。資産家の御曹司でもあるということで、合コンに参加するとどうしても柳に人気が集中してしまう。柳自身それを理解しているので、上手く誘いを断るようにしていたのだが、どうしてもと頼まれ断りきれなかったのだ。
合コンはやはり柳に人気が集中し、柳に参加を頼んだ1人以外は面白くない。陰でコソコソと柳の悪口を言いまくる。バイト先でその悪口を聞いてしまった相馬は、好き勝手言う柳の友人たちに腹を立て、思わず口を出してしまった。
大嫌いだった柳を庇った相馬の名言。

柳とて好きで恵まれて生まれてきたわけではない。恵まれた環境に生まれていながら、人を気遣い、イヤミにならないように振舞っていたり、気取らず驕らず常に自然体でいる。天文サークルで柳と過ごしたことで、相馬は柳の良さを理解していた。
あわやつかみ合いの喧嘩が起こる、というところで、柳が現れその場を上手くとりなした。
恵まれた柳にはチヤホヤする人間もいれば、やっかんで敵意を向けてくる相手もいる。表面的には仲良くしていても、今回のように陰では悪口を言ったりする人間も周りに居たりする。そのような事には慣れている柳だったが、相馬のように自分の気持ちをはっきりと言ってくれる相手の方が心地よいと感じている。
柳は、相馬は自分の事を嫌っていると思っていたので、自分を庇った相馬に驚き好感を持った。
この一件で柳を嫌っていたはずの相馬は、柳の大変さを知り、それを難なくやり過ごす柳を認めることになった。

引用:ラストゲーム 4巻

九条が悲しむ光景を見せないように、相馬が庇うシーン

天文サークルの皆で遊園地に遊びに来た。柳を狙う橘桃香は積極的に柳にアピールしている。九条は柳を「大事な友達」と認識しているのだが、桃香と柳が2人でいると何故か心がモヤモヤしてしまう。
絶叫系の乗物に乗って具合が悪くなってしまった九条と相馬に、柳が飲み物を買いに行くと、すかさず桃香も立ち上がり2人で一緒に行ってしまった。2人の後ろ姿を寂しそうに見ていた九条に気づいた相馬は、九条の顔がこれ以上曇るところを見たくなくて、その光景を見せまいと九条の目を手で覆った。

周りから見れば、九条と柳は一目瞭然で両思いにも関わらず、2人はお互いに片思いをしていると思っていた。相馬は九条への思いが届かないとわかっていても九条に惹かれていた。柳に猛アタックをする桃香に便乗して、九条の気を引けばいいのに、九条を傷つけないことを優先した相馬の行動にキュンとさせられた名シーン。

引用:ラストゲーム 5巻

相馬が九条に素直に気持ちを伝えるシーン

相馬の実家に合宿に行った時、相馬は九条に告白をした。ただ伝えたかっただけといったが、その後、態度が変わらない九条の様子に「オレ、告白しましたよね?」と確認をする。九条は動揺しないように無理して平静を保っていたのだが、相馬のその言葉に赤面してしまった。相馬は九条を夏祭りに誘い出かけることになった。
恋愛方面に疎い九条は、告白されてもどのように対処して良いかわからない。相馬に、自分はどうしたらいいのか、どうして欲しいのか直接尋ねてみた。すると相馬は、「す、好きになってほしい…」と言う。九条の思う好きと相馬の言う好きは違う。何が違うのか理解できない九条は、どんなふうに自分が好きなのか聞いてみた。すると、急に真剣な顔をした相馬から「…オレは、今こうして美琴さんといるだけでドキドキしてるし、もっとずっと一緒にいたいって思うし、オレのことだけ見てほしいって思ってますよ」と言われた。
恋愛に疎い九条には直接分かりやすいように言葉にしなければ伝わらない。柳の気持ちは嫌というほど知っているし、九条の気持ちだって行動や表情を見ていれば何処に向かっているのかよく分かる。報われないと分かっていても言葉に出してしまった相馬の気持ちが痛いほど伝わって来る切ない名シーン。

引用:ラストゲーム 7巻

鈍い九条に柳が本音を出したシーン

相馬に告白され、恋愛について考えるようになった九条。相馬ともぎこちなくなってしまったし、ぎこちない態度を取っているのを柳に見られるのも九条は怖い。今までどおり普通にできない空気感がいたたまれない。楽しかったサークル活動なのに、皆との関係が少しずつ変わってきて居心地のいい空間ではなくなってしまった。どうして皆今までどおりの関係でいられないのだろう、ずっとこのままみんな一緒に楽しく過ごしたいと九条は思ってしまう。柳と桃香が仲良さそうにしているのを見てもモヤモヤしてしまうし、もしかしたら柳は桃香と仲良くなって自分から離れてしまうかもしれない。そんな妄想に恐れを感じ、九条は柳に「柳はずっと友達だよね?変わったりしないよね?」とすがってしまった。
柳はいつまでたったら九条は自分を男と認めてくれるのだろうと、いつまで友達でいなければいけないのだと苛立ちを感じ、「嫌だよ、九条とこのままずっと友達なんて」と九条に強い口調で言い放ってしまった。
自分と友達ですらいたくないのかと勘違いした九条は、怯えた様子で涙を流す。その様子に柳はすぐさま発言を訂正し、「わあウソ!ウソですよー、オレら友達だよなー、仲良しだよなー!!」と九条の機嫌をとった。

余りにも鈍く、自分の気持ちに気づいてくれない九条に苛立ちを覚え爆発してしまったが、九条に嫌われたくない、九条のペースを待ってやりたいとすぐさま訂正する慌てた柳の優しさ、想いが伝わる名シーン。

引用:ラストゲーム 7巻

桃香にその気持ちが何なのか教えてもらったシーン

相馬からの告白や、柳に強い口調で「嫌だよ、九条とこのまま友達なんて」と言われた一件で、相馬とも柳とも普通に話すことができなくなってしまった九条。サークルのメンバーも3人の様子がおかしいことに気づいていた。藤本は九条を心配するが、何でもないと九条は何も話さない。
九条が躓き転びそうになった時、相馬が助けてくれて、手を引いてくれた。「嫌なら言ってください」と相馬は気遣いながらも手を離さない。九条は、嫌ではないのだけどその手が柳の手であってほしいと思ってしまう。もう、感情がいっぱいいっぱいでどうしていいのか全く分からなくなってしまった九条。
そんな時に、桃香が九条に話があるという。桃香と普通に話すふりをしていても、柳と仲が良い桃香と話すことに緊張してしまう。柳がかっこいいから桃香の友達から柳を紹介して欲しいと頼まれたのだが、九条は嫌ではないか、と桃香は聞いてくる。嫌ではないと言いながらも九条は桃香の顔が見られない。桃香はどんどん九条を追い詰め「私、柳さんが好きなんです。九条さん応援してくれますか?」と言う。動揺しながらも「…うん、いいよ」という九条にキレた桃香は、九条を責め立てる。自分が柳にアプローチしていた時にムカついていたくせに、何もわからないふりして柳を遠ざける、ふざけるな、いい加減にしろ、柳は自分のものだと言え、同じ土俵に上がれ、柳が好きなんでしょう、とまくし立てられようやく九条は自分の気持ちを吐き出した。「…柳は友達だもん…。友達ならずっと一緒にいられるもん。橘さんが柳を好きでも、柳が橘さんを好きでも、友達ならずっと一緒にいられるんだもんー…」
泣きながら話す九条に「そういうのを『好き』ってゆーのよ、バカー」と桃香は一緒に泣き出した。

いつまでも自分の気持ちに気づかないふりをしていた九条を煽り、九条が抱えていた気持ちが何だったのか、ライバルだった桃香が教えた名シーン。本気で好きになった柳のために、桃香が一肌脱いだ。

引用:ラストゲーム 7巻

九条が相馬に返事をするシーン

桃香に促され自分の気持ちが「恋」であるとようやく理解できた九条。柳に見せる表情も随分柔らかくなり、恋をする女性の顔になってきた。そんな九条の様子を見ていた相馬は、2人に何かあったのではと察した。水族館のペアチケットを手に入れた相馬は、自分の恋の終わりを予感しながらも「オレに言いたいことあるでしょう?」と九条を誘った。
うまく話せずギクシャクする九条に、この間の告白はひとまず忘れて欲しい、今日は笑ってる美琴さんが見たい、と相馬は言い、2人は水族館での一日を楽しんだ。ひとしきり見て回り、散々楽しんだ後、相馬はもう一度九条に告白した。「…返事、もらえますか」と聞く相馬に九条は「柳のことが好きです。柳と一緒にいたい。…だから…ごめんなさい」と返事をした。

初めから負けるとわかっていたのに、どうしても思いを伝えたくなって告げてしまった気持ち。九条は相馬の気持ちをきちんと受け止め、自分の気持ちに気づいて回答を出した。「最初っから分かってたんですけどね。オレじゃダメだってことは」という相馬に九条は「蛍くんがダメなんじゃなくて、ただ私が柳を好きなの」と返した。
相馬を否定しない、そういう人だから自分は好きになったんだと改めて気づいた相馬だった。

相馬が自分の気持ちにけじめをつけるため、九条が相馬に負い目を持たないようにきちんと返事をさせようと、場を用意した相馬の切なさ、優しさが伝わる名シーン。

引用:ラストゲーム 8巻

「誰にもしない 柳にだけだよ」

相馬の告白を断り、柳に好きになってもらおうと前向きに頑張るようになった九条。ある寒い日の帰宅途中、冷えた手に息を吹きかける九条を見て柳はその手を自分のポケットに突っ込んだ。「あったかい」と柔らかく微笑みながら柳に寄り添う九条に、友達だからと言って、自分以外にこういうことをさせてはいけない、自分以外の他の奴にこういうことを許すと勘違いさせてしまう、と柳は九条に忠告した。すると九条はするりと手を離し、「ーしないよ、誰にもしない。柳にだけだよ」と言って姿を消した。
その言葉を聞いた柳は、九条の気持ちは自分にあるのではと考えるようになった。

恋愛に疎い九条だが、相馬や桃香に後押しされ、頑張って自分の気持ちを言葉にした名セリフ。九条の素直な気持ちが伝わる。

引用:ラストゲーム 10巻

「オレには九条は誰より可愛く見えるし、お前じゃなきゃダメだ、10年前、初めて会った時からずっと」

柳は九条とクリスマスにデートに出かけ、将来について自分の中で結論が出たら、自分の話を聞いて欲しいと九条に話していた。父の仕事を継ぐ為に、アメリカ留学を決めた柳は留学準備に忙しく、九条に報告の時間を取れずにいた。ようやく全てが終わり、九条に連絡を取ろうとしたが、何故か連絡が付かない。留学手続きが終わったのならすぐにアメリカに行こうと父に言われ、翌日アメリカに行くことになった。一方の九条は、しばらく会えなかった柳の姿を見かけたと思ったら綺麗な女性に抱きつかれている姿で、柳からの話というのは新しい彼女ができたという話なのではと思うと、柳からの電話に出ることができない。そうして柳からの連絡を無視しているうちに、柳が留学するという話を聞いたのだ。
柳からの連絡を無視していたことを後悔し、このまま離れてしまうのではと思った九条は柳に会うために空港に向かった。空港で柳を見つけた九条は、開口一番柳に「好き」と告白した。
帰ってきてから自分で言おうと思っていたのに、九条に先を越されてしまった柳は「なんでお前はいっつも…」と泣き出した。泣くほど自分の告白は嫌だったかと心配する九条に「オレは!帰ってきたらオレから好きだって言おうとしてたのに!」と逆ギレした。

今までずっと素直になれず、地味だのダサいだのと言っていた。九条に自分を惚れさせたくて意地でも自分からは言いたくないと思って九条に言わせようと画策してきたのだが、クリスマスデートの時、すべてが片付いたら、もう自分から言おうと決意していた。しかし、思いがけず九条から告白され、しかもまだ自分にはほかに好きな人が誤解している九条に初めて自分の素直な気持ちを伝えた。10年に及ぶ九条への思いをようやく伝えられた柳の名セリフ。
「オレには九条は誰より可愛く見えるし、お前じゃなきゃダメだ、10年前、初めて会った時からずっと」
言いたくて言えずにいた言葉をようやく九条に告げることができた。

引用:ラストゲーム 11巻

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