ラストゲーム(Last Game)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ラストゲーム』とは、天乃忍による少女漫画。白泉社「LaLa」にて集中連載後、続きが読みたいとの声が多数上がり、続編が連載された。
柳尚人は、顔良し、頭良し、家柄良し、だけど勉強でも運動でもどうしても九条美琴には勝てない。初めての挫折を味わい九条への雪辱を誓った柳は、自分を顧みない九条に勝ってその瞳に自分を映そうと九条を惚れさせる決意をした。2人の10年に渡る勝負が始まった。

九条は相馬といつも通り接しようとするが、「告白しましたよね」と確認を取られ再び動揺してしまう。待っているから考えて返事をしてくれと相馬は伝えた。
偶然2人を見かけた柳は、今までと違う空気感に気づいた。九条と別れた相馬に話しかけ、九条への気持ちを聞き激しく動揺する。

相馬にきちんと返事をしなければいけないと九条は悩み始める。相馬に対して態度がおかしくなってしまうのだが、その態度を柳に見られるのが怖いと思ってしまう。相馬の気持ちを知った柳はいつも以上に嫉妬心を剥き出しにし、九条を取り合うようになった。そのような空気に耐え切れず、九条は2人を避けるようになってしまった。

九条は「これから自分は会計士を目指して予備校に通うので、あまりサークルに来れない」と皆に話す。大切なことを事前に話してもらえなかった柳は不機嫌になる。このまま自分から離れていってしまうような錯覚を覚えた九条は、柳に「柳はずっと友達だよね?変わったりしないよね?」とすがりついた。
いつまでも自分を恋愛対象として認めない九条に苛立ちを隠せなくなり、「嫌だよ。九条とこのままずっと友達なんて」と言い放つ。しかし、友達でいたくないのかと誤解した九条が泣き出し、柳は慌てて嘘だと否定した。

九条は柳を避けるようになり、勉強に打ち込むようになった。様子が変わった九条を藤本は心配し、桃香は九条の煮え切らない態度にしびれを切らして「柳さんのこと好きなんでしょ!?」と九条に自覚を促した。「柳は友達、友達ならずっと一緒にいられる」と言う九条に、「そういうのは『好き』ってゆーのよ」と桃香に教えられ、ようやく自分の気持ちを自覚することができた。

返事

自分は柳に恋をしているのだとわかった九条は、避けていたことを謝罪しようと柳に会いにいく。しかし上手く話せず逃げ帰ってしまう。

母の誕生日、2人で祝うためにご馳走を作って待っていたのだが、母に仕事が入り1人で過ごすことになってしまった。今まで1人でも全然平気だったのに、なぜか今は1人が寂しく感じてしまう。心細くなったところに、母から連絡を受けた柳が駆けつけた。

柳に嫌われてしまったのではと恐れていたのだが、「オレが九条を嫌いになるとかありえねーから」と言われ、柳への恋心をはっきり自覚した。

九条の雰囲気が変わり、柳に対して柔らかい表情を見せるようになってきた。そんな九条の様子に、相馬は2人に何かあったと察した。相馬は九条に「オレに言いたいことがあるでしょう」と言い、水族館に誘った。
ぎくしゃくとする九条に、「ひとまず告白のことは忘れてください」と言い、2人は水族館を楽しんだ。ひとしきり水族館を楽しんだ後、相馬はもう一度九条に告白し、九条は「柳のことが好きです…だから…ごめんなさい」と返事をした。

すれ違う想い

相馬と九条が水族館に行ったと知った柳は、自分とも出かけようと九条を誘った。柳を好きだと自覚してから初めて一緒に出かける九条は、藤本や桃香に協力してもらいデートのような装いをしてみた。
九条は柳に柔らかい表情を見せるのだが、今までいい雰囲気になりながらも友達宣言されていた柳は卑屈になっていて、九条の表情を見ても自分に恋をしているとは気づかない。

帰り際、九条が家の鍵を忘れたため大学に泊まるというので、柳は彼女を自宅に連れ帰った。お互いに同じ部屋で過ごすことにドキドキしているのだが、結局何も起きずに朝になった。

翌朝、「週末は実家に帰る」という約束を破った柳を迎えに、柳の母が来た。2人が一緒にいることに驚くが、事情を説明し誤解は解けた。柳の母に誘われて、2人は柳の実家に行くことになった。
柳の幼い頃の話などを聞き、楽しいひと時を過ごした九条は、もっともっと柳のことを知りたいと思うようになった。九条の人となりを知った柳の母や姉も、彼女を気に入った様子を見せた。

柳の祖父母が営む旅館に、天文サークルで訪れることになった。柳の母から事前に「九条が彼女」という情報が入っていた祖母から、九条は彼女としてチェックされる。
柳が否定するので、九条は「好きな人はいるの?」と聞いた。そんなのお前に決まってる、と言いたい柳だったが、今そんな事を言っても受け入れてもらえない。

揺さぶりをかけるため、九条ということをぼかしながらどんな風に好きで大切なのかを語った。それを聞いた九条はショックを受け、彼女に頑張ってと言われた柳もまたショックを受けた。

将来

旅行先の神社に観光に行き、おみくじを引いたサークルメンバー。九条のおみくじは大凶なのだが「告白が吉」と書かれていた。夜、柳と二人でいる時にそれを思い出した九条は、柳に告白しようとする。「す…」まで言えるのにどうしてもその先が言えない。結局告白は失敗に終わった。

「先日お世話になったからお土産を渡したい」と九条が言ったため、柳と一緒に柳の実家へ向かう。すると柳の父親が出迎えた。父は、柳が家庭教師や塾を辞めたきっかけが九条だったと知り興味を持ち、次の土曜日に九条を食事に誘った。

ちょうどバイトだった柳は、九条と父の食事に同行することができなかった。
レストランで、父は九条に「尚人を好いてくれているんだね」と言った。頷いた彼女に柳の家は地位も家柄もあるから、釣り合いが取れない、息子には相応の家柄の娘のほうがふさわしいと伝えた。九条は、「柳が好きになってくれる人間になれるように、出来る限りの努力をするだけだ」と言う。九条の人となりを見極めた父は、今のは反応を確かめただけだと言い、彼女を認めた。
柳は父から跡を継ぐ気があるのならアメリカに来いと言われ、将来について真剣に考えるようになった。

九条と柳で帰宅途中、手が冷たいという九条の手を柳は自分のポケットに突っ込んだ。「あったかい」と可愛く微笑む彼女に、こういうことをオレ以外のやつにやらせるな、と柳は苦言をこぼす。「誰にもしない、柳にだけだよ」と九条は言った。

九条の気持ちが自分にあるのではと思い始めた柳だった。しかし将来のことや留学のことなど、きちんと結論を出してからでなければ九条と向き合うことはできないと考え、九条からの誘いを断るようになった。それでもクリスマスイブには2人で出かける約束を交わした。

自分でアルバイトしたお金だけでデートをしようと柳は決意していた。親の金でぬくぬくしている自分が恥ずかしいと語る柳に、それは家族の愛情なのだから恥じる必要はない、ご両親に失礼と九条は答えた。恵まれていることに後ろめたさを感じていた柳は、父の跡を継いで欲しいという願いにも足踏みをしてしまっていた。本当は尊敬する父の仕事を受け継ぎたいとずっと思っていた。

覚悟が決まった柳は、すべてを片付けたら聞いて欲しいことがあると九条に話した。

ゲームセット

クリスマスデートの後、アメリカ行きを決意した柳は忙しくなり、九条とゆっくり話す時間が取れなくなってしまった。九条から柳に話しかけようとするのだが、タイミングが合わない。
ようやく留学申請が終わり、時間が取れるようになった柳は九条に連絡を取ろうとするが、電話に出ない。九条と連絡が取れないまま柳はアメリカに行くことになってしまった。

たまたま柳と連絡を取った相馬から、柳が今からアメリカに行くと聞いた九条は、そのまま柳に会いに飛び出していった。

空港で柳を見つけた九条は柳に好きだと告白し、柳は嬉しさのあまり泣き出し「自分も10年も前からずっと好きだった」と告白した。
実は柳のアメリカ行きは、留学手続きのための下見で2週間で帰ってくる予定だった。帰国後2人は付き合うことになり、周囲からはようやくくっついたと呆れられた。

時が経ち、天文サークルメンバーや家族に祝福され、柳と九条は結婚式を挙げることになった。柳は九条のウエディングドレス姿に涙を流して喜び、周囲を呆れさせた。
柳は小学5年の時に出会った九条を10年間ずっと追いかけて、20歳の時プロポーズまがいのセリフを言って勝負をしかけた。その後も長いすれ違いの末、ようやくゲームセットを迎えた。

『ラストゲーム』登場人物・キャラクター

柳 尚人(やなぎ なおと)

文武両道、容姿端麗、家柄も良い完璧少年だった。その為、少々傲慢な面も持っていた。しかし、小学5年の時に現れた転校生・九条美琴に勉強でも運動でも敵わず、資産家の家のことを自慢するが、それは柳自身の力ではないと九条にバッサリ切られてしまった。九条に負けまいと家庭教師や塾を増やし無理をした柳は倒れ、宿敵九条に介抱された。九条の家で休ませてもらっている時に、九条の家庭の事情や母を楽させてやりたいという決意を知り、恵まれた環境に甘えていた自分を恥じた。自力で九条に勝てるように塾や家庭教師を辞め、親にべったり甘えてばかりだった柳が変わり始めた。最難関有名中学を受験しようと考えていたが、九条が公立中学に進学すると知り、柳もそれを追いかけ公立中学に進学した。

中学3年間は同じクラスにならなかったため、九条との接点はなかったのだが、柳は常に九条を意識していた。3年間常に試験順位で首位を取られ続け、万年2位に甘んじていたのだが、勉強や運動で負けていても、1人の友人もいない九条よりも、友人も多く家が資産家の自分の方が勝ち組であると考え、それを見せつけようと女生徒を侍らせたまま九条に話しかけるが、九条は柳のことを忘れている様子だった。ショックを受けた柳は、九条を自分に惚れさせ、メロメロにさせた上でこっぴどくフリ、大勝利を得るということを考えついた。

同じ高校に入学し、相変わらず1人でいる九条に、自分と付き合えというが、恋愛方面には取られない。放課後はバイトをしたいという九条を言いくるめ、放課後一緒に勉強することになった柳は、一緒に過ごす中で良いところをアピールしようと買い物に付き合ったり一緒に帰ったりと涙ぐましい努力をする。しかし、重い物を持ってやろうとしても九条の方が力があり、暴漢から守ろうとしても自分で撃退する九条に付け入る隙がない。流石に「鉄の女」とあだ名をつけられる程の完璧ぶり。
しかし、九条の母が事故に遭ったという連絡が来た時、混乱して何もできずにいる姿や、母の無事を確認して涙する姿、世話になった柳にはにかみながらお礼を言う姿などに、九条も普通の女の子なのだと認識を新たにした。

九条を追いかけ同じ大学に入学。九条以外の女の子と付き合ってみたりしたが、長続きできず、どうしても九条の方が良いと思ってしまう。何かと口実を作り食事や映画に誘い九条と繋がりを持とうとするが、九条の方はなぜ呼び出されるのか理解できていない。
九条に頼まれ九条の友人・藤本に父の会社を案内したが、その姿を見た九条が「嫌だった」と言ったことにより、もしかして九条は自分を好きなのではと思い始める。しかし全く自覚がない様子に、柳は九条に恋を自覚させようと勝負を挑んだ。

九条 美琴(くじょう みこと)

小学5年の時に、柳のいる学校に転校してきた。自分は普通にしているだけなのだが、柳尚人から一方的にいちゃもんをつけられて迷惑している。
早くに父が亡くなったため、看護師をする母を支えるため家事を引き受け、節約をして家計を助けている。
中学では常に成績はトップ。運動も勉強もできるが、無表情・無愛想なため付いたあだ名が「鉄の女」。
柳からは地味でダサい女といつも言われている。
高校になり、家計を助けるため放課後バイトをしようと考えていたのだが、柳からダメだと言われ、要するに家計が助かればいいのだから、自分が食事を九条に奢るから自分に勉強を教えろと言われ承知した。それ以降、柳と一緒に過ごす時間が増える。
大学も柳と一緒になった。何かと人を呼び出す柳をうっとおしい奴と思っていたのだが、柳が自分の知らないところで自分を気遣っていてくれたのだと友人・藤本から教えられ、柳の友人として釣り合いが取れるような自分になろうと、今までしてこなかった人とのコミュニケーションを取ろうと努力するようになった。
人と全く関わってこなかったため、コミュケーション能力が低く、人の気持ちを察することが苦手。特に恋愛方面にはものすごく鈍い。

藤本 しおり(ふじもと しおり)

九条と同じ大学に通う同級生。天文サークル代表。
友人になった九条が柳リゾートの御曹司と知り合いだったと聞き、リゾート開発のレポートを書かなくてはならなかった藤本は話を聞きたいと柳に繋ぎを取ってもらうことにした。
柳も九条も、藤本が柳に気があると思っていたのだが全くの誤解だった。柳に父の会社を案内してもらったことで、柳の気持ちが九条にあると気づいた藤本は、それ以来2人を見守るようになった。人とのかかわり合いが苦手だった九条だが、藤本と関わることにより、友達の大切さや楽しさを理解するようになった。
同じ天文サークルの宮部と付き合っている。

相馬 蛍(そうま けい)

九条や柳と同じ大学に通う1年生。2年の柳、1年の相馬と言われる女子の間で有名な人気者。
容姿も整っているし頭脳も明晰、家も資産家である柳を快く思わず、柳が必死に手に入れようとしている九条美琴を手に入れて、柳を見返してやりたいと思い、天文サークルに入った。九条の天然ぶりにつけこんで下の名前で呼び合うようにしたり、柳の前で仲良さそうに振舞うなどして柳の嫉妬心を煽る。柳の目を盗み、九条に手を出そうとしたところ、当の本人・九条に取り押さえられてしまった。
実は、田舎が嫌で東京に飛び出してきたため、東京に馴染もうとファッション雑誌を参考にイケてる人間になろうと努力している。

天文サークルで柳や九条と触れ合ううちに、柳が恵まれているけれど、恵まれているからこそいろいろ苦労していることや、九条以外にはスマートな態度を取れるのに、九条が絡むと急に余裕がなくなり、カッコ悪くなるところなども見ることになり、柳に対する敵愾心が薄れてきた。
素直で飾りのない九条の言葉が胸に響き、徐々に九条に惹かれるようになっていった。

橘 桃香(たちばな ももか)

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