はたらく魔王さま!(はたまお)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『はたらく魔王さま!』とは、勇者に敗れて異世界エンテ・イスラから地球へと逃走した魔王サタンが、追手と戦いながらもフリーターとして奮闘する姿を描いたライトノベル。勇者や魔王といった使い古された設定に新しい魅力を与えた作品として好評を博し、様々なメディアミックスを果たしていった。
勇者エミリアに敗れ、異世界の東京・笹塚へ辿り着いた魔王サタンは、超有能・超善良なフリーターとして生活しつつ再起を図る。しかし追手の登場や部下の謀反により、彼の平穏なパート生活は波乱万丈を極めていくのだった。

『はたらく魔王さま!』の概要

『はたらく魔王さま!』とは、勇者に敗れて異世界エンテ・イスラから地球へと逃走した魔王サタンが、追手と戦いながらもフリーターとして奮闘する姿を描いたライトノベル。
勇者や魔王といった使い古されたキャラクターに新たな魅力を与えた作品として好評を博し、様々なメディアミックスを果たしていった。原作は2020年に完結し、2022年7月にはアニメ第2期が放送される。

魔法文明花開き、魔族や天使など様々な種族が息づく異世界エンテ・イスラ。人間たちの勢力圏へと大規模な侵攻を開始した魔王サタン・ジャコブは、勇者エミリアとその仲間たちによってその軍勢を壊滅させられ、自身は腹心のアルシエルと共に逃走する。しかし咄嗟に開いたゲートの先に広がっていたのは、現代日本は東京の笹塚の街の中だった。
現代の日本では魔力を回復することができず、魔王はやむなく真奥貞夫(まおう さだお)という名の普通の人間のふりをしながら生活し、エンテ・イスラへ帰還する方法を探っていくこととなる。超有能・超善良なフリーターとして働く中、エンテ・イスラからの追手やかつての部下の謀反により、魔王の平穏なパート生活は波乱万丈を極めていくのだった。

『はたらく魔王さま!』のあらすじ・ストーリー

魔王サタンVS勇者エミリア

大海イグノラに浮かび、神々に見守られる十字大陸エンテ・イスラ。今そこは、魔界より侵攻した魔王サタンによって蹂躙され、人間たちは見るも無残に切り捨てられていた。
悪魔たちの王道楽土を建設すべく、エンテ・イスラを支配していく魔王サタンには、彼に勝るとも劣らない腹心の部下、アルシエル、マラコーダ、アドラメレク、ルシフェルが居る。彼らは悪魔大元帥と呼ばれ、圧倒的な戦力を持ってエンテ・イスラの4大陸を治めていた。

しかしある日、勇者エミリアの登場によって魔王軍は唐突な崩壊を迎える。
追い詰められた魔王サタンは唯一生き残った腹心の部下・アルシエルを伴い、異世界ゲートへと撤退。東京・笹塚と呼ばれる地へ流れ着く事となる。

異世界と戸籍と住民票

異世界・東京に来てから魔力が剥がれ落ち、人間の姿へと落ちぶれた魔王達。彼らは紆余曲折を経て自分たちの置かれている状況を理解するに至る。

この世界は人間が支配し、それ以外の種族は存在していないこと。
東京・笹塚には魔力が存在しないこと。
アルシエルの魔力が空になっていること。

魔力の供給方法も不明な今、エンテ・イスラへ帰還する術を絶たれた魔王が優先すべきなのは、魔力の温存である。
しかし魔王サタンは残り少ない魔力を使って住民票と戸籍を手にし、アルバイト生活をしながら笹塚で生き延びる、という魔王にあるまじき手段を取り、人間社会へと溶け込んでいくのだった。

魔王サタンのフリーター事情

六畳一間のボロアパートを住居兼新魔王城とした魔王たちは、完璧な人間と化し、しがないパート生活に身を費やしていた。

店長の木崎真弓(きさき まゆみ)からは重宝され、後輩の女子高生・佐々木千穂(ささき ちほ)には好意と尊敬の眼差しを向けられる魔王サタン。
魔王サタンを支えるため、魔力の供給方法を探し求めながらも主夫業に専念する悪魔大元帥アルシエル。

その無害さと善良さは、かつてエンテ・イスラを恐怖のどん底に突き落とした悪魔達の姿と、遠くかけ離れていた。

勇者エミリアとの再会

時給200円アップを喜々として報告するのに始まり、「魔王の威厳」と「職場での地位向上」を履き違える様になった主に、アルシエルが不安を感じていたある日の事。
魔王サタンの息の根を止めるべく、異世界ゲートを渡って笹塚へとやって来た遊佐恵美(ゆさ えみ)こと勇者エミリアが現れる。

だがこれを期に魔王たちの周りで不可解な事件が多発するようになり、魔王と恵美の抹殺を目論む新たな刺客がエンテ・イスラからやって来た可能性が浮上するのだった。

ルシフェルの謀反

魔王と恵美の抹殺を目論み、笹塚で事件を引き起こしていた犯人の正体、それは恵美が所属していた大法神協会の重鎮オルバ・メイヤーと、魔王軍壊滅に伴い討伐されたはずの悪魔大元帥・ルシフェルであった。
あらかじめその可能性を予見していたという魔王は、なし崩し的に恵美と共闘し、反逆者たちを制裁する。

結果、オルバは身元不明人として警察に連行されるのだが、行き場のないルシフェルは魔王サタンの寛大な采配により、魔王城(ボロアパート)で暮らす様になるのだった。

新たな隣人

魔王たちの暮らすヴィラ・ローザ笹塚に、新たな住人がやってくる。鎌月鈴乃(かまづき すずの)という名のその女性は、妙に古式ゆかしいところがあるものの、非常に親切かつ礼儀正しい性格で、引っ越しの挨拶として大量にうどんをプレゼントしたことで魔王たちに好印象を与える。
一方、恵美と千穂は魔王に関することでたびたび顔を合わせ、徐々に同年代の友人として交流するようになっていく。恵美からすれば千穂は「相手の正体もよく知らないのに魔王に近づく危なっかしい妹分」であり、千穂からすると恵美は「魔王さんと過去に何かあったらしい、もしかしたら恋敵」である。

魔王は魔王で、新たに開店するライバル店の存在に気が気でない。しかしそのライバル店の店長猿江三月(さるえ みつき)こそは、エンテ・イスラからやってきた新たな刺客なのだった。
猿江は大法神教会訂教審議会に所属する天使で、行方を絶ったオルバの捜索のために派遣されていた。同時にサリエルは魔王の始末と恵美に貸し与えた聖剣の回収任務も帯びており、そのために部下の鈴乃と共に様々な工作を続けていく。

魔王と勇者の選択

教会の関係者という正体を明かした鈴乃から、「魔王を倒す意志はあるのか」と問われた恵美は、彼が以前の侵略者だった頃とは違う存在になろうとしていることから「もう少し見守りたい」との言葉を返す。これを“教会への裏切り”だと判断したサリエルは、たまたま一緒にいた千穂ともども恵美を拉致する。千穂を守らなければならないというハンデに加えて、恵美の技や魔法が基本的に対魔族用で天使に効きにくいことが彼女が不覚を取る要因となった。
2人が連れ去られたことを知った魔王は、アルシエルやルシフェルに手伝わせて監禁場所を特定し、彼女たちの救出に向かう。これを予測していたサリエルは、周到な罠を張り巡らせて魔王を追い詰めるが、「オルバの仲間だったのだから自分に従うだろう」と考えていたルシフェルが現代日本での自堕落なニート生活をすっかり気に入って土壇場で裏切ったこと、「いくら教会上層部の意向とはいえ、こんな悪辣なやり方はついていけない」と耐えられなくなった鈴乃が魔王たちに手を貸したことで形勢逆転。魔王と勇者とその仲間たちの活躍で、彼らをまとめて亡き者にしようとした教会の計画は失敗に終わるのだった。

その後鈴乃は教会に見切りをつけ、これまでのことを魔王たちに詫びた上でエンテ・イスラには戻らずに日本に留まることとなる。その正体やエンテ・イスラの存在を知ってなお千穂は魔王を慕い続け、恵美や鈴乃といった彼の周囲の女性に負けじとアプローチを繰り返す。アルシエルは変わらず魔王を補佐し、ルシフェルがニート生活を満喫する一方、任務に失敗して今さら帰ることもできないサリエルは木崎に一目惚れして店に連日押し掛けるようになる。
恵美は恵美で、かつてエンテ・イスラの人類を脅かした魔王が自分を助けてくれたことに戸惑いつつ、彼が日本で生活していく中で変わりつつあることを少しずつ認めていく。人として生きることで変わりゆく魔王と、許せないと思いながらも彼の変化を見届けようと努める勇者の物語は、これからも続いていく。

魔王の隠し子騒動

サリエルの謀略を魔王たちが阻止してからしばらくの月日が経過した。魔王たちは相変わらずアルバイトに追われる日々を送り、恵美は地球での暮らしに不慣れな鈴乃を心配して頻繁にヴィラ・ローザ笹塚を訪れるようになる。魔王に恋する千穂も彼女たちに負けじとこれに続き、魔王に健気なアプローチを繰り返す。木崎に惚れたサリエルはマグロナルドに連日花束を抱えて現れるようになり、その都度大量のファーストフードを購入しては食べていたためにすっかり太ってしまっていた。
そんなある日、ヴィラ・ローザ笹塚に突如エンテ・イスラに通じるゲートが開き、中から巨大なリンゴの実が転がり出る。中から現れたのはアラス・ラムスと名乗る不可思議な女の子で、あろうことか言合わせた一同の前で「パパは魔王、ママは恵美」だと断言する。まさかの隠し子の登場に取り乱す千穂とアルシエル、違うと否定する魔王、自分が忌むべき相手との間に子を成したように扱われてショックで放心する恵美。各々が困惑する中、新たな波乱が始まろうとしていた。

衝撃の親子デート

幼いアラス・ラムスを放置することもできず、細かい事情について聞き出すこともできず、魔王たちは彼女を保護して育て始める。千穂や鈴乃もこれに協力するが、それを知った木崎は「若い娘が男所帯に入り込んで赤ん坊の世話をすること」が世間からどう見られるかについて語り、迂闊に過ぎると魔王に釘を刺す。それでも魔王としては地球での女性の知己にも頼るしかなく、木崎の指摘をもっともだとは思いつつも「力を貸してほしい」と改めて千穂たちに頭を下げる。状況が状況だけに、千穂と鈴乃はこれを了承する。
一方、恵美は恵美で困惑と混乱の中にあった。アラス・ラムスを放っておけないのは千穂たちと同様だが、そのために魔王と疑似夫婦になるというのは彼女にとって簡単には受け入れられない話だった。大雑把に事情を聴いた恵美の同僚の鈴木梨香(すずき りか)は、その子を見捨てられないならある程度は我慢するべきだとしつつ、いずれ本当の親元に返した時に喪失感を持て余さないよう程々に付き合えと助言する。

遊園地の割引券を入手した魔王たちは、アラス・ラムスに楽しい思い出を作ってあげようと、ここに彼女を連れていくことを決める。そのアラス・ラムスの希望で魔王と恵美が疑似親子という形で彼女をエスコートする一方、心配したアルシエルと千穂と梨香がこれにこっそりついていく。アラス・ラムスの相手をする内、その言葉の断片から、魔王と恵美は彼女がエンテ・イスラそのものを構成する世界樹セフィロトの果実イェソドに縁の深い存在なのではないかと類推する。同時に恵美は魔王との何気ない会話の中で、「魔族の中にもただ平和で幸せに生きたいと願う、戦争も戦うことも望まないごく普通の民がいる」という当たり前の事実に今さら気付き、ただ魔族を憎み続ける自分と、恐らく今も続いているだろうエンテ・イスラの魔族殲滅戦争に複雑な思いを抱く。一方、魔王たちを追う中でアルシエルと2人っきりになってしまった梨香は、彼を妙に意識し始める。
その頃、ルシフェルはエンテ・イスラから何者かが大規模なゲートを開いて日本にやってきたことを感知する。魔王たちの読み通り、アラス・ラムスはイェソドの欠片から生まれた存在で、その回収のためにエンテ・イスラからガブリエルという天使が部下と共にやってきたのだ。勝てないと判断したルシフェルがあっさり降伏したところに魔王たちが戻り、アラス・ラムスを巡って押し問答が始まる。一触即発となったその時、また魔王や恵美が傷つくことになると恐れた千穂が割って入り、どうか引き下がってほしいとガブリエルに頭を下げる。無関係の地球の人間を巻き込むことを良しとできなかったガブリエルは、明日の朝まで待つといって引き上げていく。

部下を引き連れて押しかけてきた強力な天使が相手では、本調子ではない魔王たちや対悪魔用の技しか知らない恵美や鈴乃が力を合わせたところで勝ち目は薄い。それでもアラス・ラムスのことをすっかり娘として受け入れていた魔王は徹底抗戦を主張し、恵美にも自分の部屋に泊まるように指示する。その意図はともかく“魔王の部屋に誘われる”という状況に恵美は思い切り嫌そうな顔をするも、アラス・ラムスのためだと渋々承諾するのだった。
翌朝、宣言通り押しかけてきたガブリエルを相手に奮闘するも、力及ばず追い詰められる魔王たち。しかし「パパとママがイジメられている」と感じたアラム・ラムスがイェソドの欠片としての力を解放し、恵美の聖剣と一体化したことで、からくもガブリエルを退ける。当面の危機を切り抜け、アラム・ラムスを守れたことを喜ぶ魔王たちだったが、ガブリエルも諦めたわけではなく次の手に打って出る。アラム・ラムスの周囲で暗躍していた謎の女性こと、恵美の本当の母親であるライラ・ユスティーナに接触しようというのだ。

海の家で過ごす日々

ガブリエルとの戦いで損壊したヴィラ・ローザ笹塚には修理が入ることとなり、その間魔王たち住人は一時的に退去するよう要請される。おりしも魔王が務めるマグロナルドも改装が始まり、住居と仕事を一度に失った魔王たちは途方に暮れる。そこに「海の家での住み込みのバイト」の話が持ち込まれ、魔王、アルシエル、ルシフェルの3人はこれに飛びつく。
その間アラス・ラムスは恵美が預かることで決着したが、千穂はこれを「魔王と恵美が、せめて日本にいる間だけでも争わないでいられるようにする良い機会だ」と考える。2人がいつか雌雄を決する定めにあるとしても、何度も自分を助けてくれた知り合い同士が殺し合うようなことは避けたいという千穂の想いに恵美も一定の理解を示し、彼女の提案で魔王の周囲の女性陣も海の家に3日間だけ向かうこととなる。

初めての海に大はしゃぎするアラス・ラムスだったが、漁火を見て怯え始める。海の家の臨時店長である大黒天祢(おおぐろ あまね)から、「漁火とは死者の魂が生者を脅かすために現れるものだ」という現地の言い伝えを聞き、何かの予兆かもしれないと警戒を強める魔王たち。果たしてその夜、どういうわけかエンテ・イスラの魔物が浜辺に現れ、それを謎の疾風が飲み込み命を奪っていく。その中に知り合いの姿を発見した魔王たちは、力を合わせてなんとかこれを救出する。
彼の名はカミーオ、魔王がエンテ・イスラにいた頃に頼りにしていた鳥人族の軍師にして参謀である。負傷し、衰弱し、ただの鳥の姿になってしまったカミーオから無理に話を聞き出すこともできず、魔王たちは彼の回復を待つこととなる。ルシフェルは「この世界でカミーオにあそこまでの傷を負わせられるのはオルバくらいではないか」と推理するが、回復したカミーオは意外なことを語る。彼らを襲った疾風の使い手は、天祢だというのだ。

魔王が地球に逃れて以降、魔物たちは大混乱に陥り、カミーオは必死にそれを抑えていた。しかしそこにオルバが現れ、「二振りの聖剣を手に入れた者が世界を制する」、「聖剣の一振りは地球の東京という土地にある」と魔物たちを扇動し、収拾がつかなくなってしまったという。魔物たちの一派が聖剣の奪取のために日本への侵攻を目論んでいると知ったカミーオは、魔王にそれを伝えて阻止してもらおうと地球にやってきたのだった。
エンテ・イスラの問題を日本に持ち込むことは避けるべきだとの見解で一致した魔王と恵美は、協力して魔物の軍勢を抑え、過度に傷つけることなく彼らをエンテ・イスラに送り返す。これを見届けた天祢は、その正体についてはぼかしたまま、地球にもエンテ・イスラの存在に対抗しうる力が存在することを見せつけつつ一行の前から姿を消す。さらに情勢が複雑化する中、しかし魔王は天祢がきっちり払っていってくれた給金に素直な喜びを表すのだった。

覇道と農作業

Toshi5
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@Toshi5

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