花さか天使テンテンくん(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『花さか天使テンテンくん』とは、小栗かずまたによって1997年から2000年まで『週刊少年ジャンプ』で連載された漫画、及びそれを原作とするメディアミックス作品である。何の才能も持たずに生まれた桜ヒデユキの前に天使のテンテンが現れ、彼に与えられるはずだった才能の種「サイダネ」を探すことになる。マイペースなテンテンと優しいヒデユキという凸凹コンビによるヒデユキの才能探しを軸に、人間のみならず天使や悪魔を含めたキャラクターたちとの交流を描く。

『花さか天使テンテンくん』の概要

『花さか天使テンテンくん』とは、小栗かずまたによって執筆された才能と人の交流がテーマのギャグ漫画である。1997年から2000年まで『週刊少年ジャンプ』で連載され、1998年から1999年まで日本テレビ系列でアニメ化された。1999年にゲーム化をしている。
才能の種「サイダネ」の代わりに梅干しの種を与えられ、産まれてしまった少年・桜ヒデユキ(さくら ヒデユキ)。何のとりえもないまま小学4年生になったヒデユキの前に、事の発端のなった天使テンテンが現れる。神が誕生前の魂にサイダネを与えるタイミングでテンテンが梅干しの種を吐き、それがヒデユキに与えられたのだった。
テンテンは地の国と呼ばれる現世にとどまり、ヒデユキの本当の才能を探すこととなる。テンテンのいい加減な性格故にサイダネ探しは難航するものの、サイダネを一時的に花にまで成長させる「天翼じょうろ」を使い、時にその才能を使って人助け等をしながらヒデユキも少しずつ成長していく。
2012年6月より、単行本の中から勘当的なエピソードを収録した『花さか天使テンテンくん 感動セレクション』と題された文庫本全4巻が刊行。第4巻では、書下ろし漫画『12年後の花さか天使テンテンくん』が収録されており、ヒデユキの本当の才能が明らかにされている。

『花さか天使テンテンくん』のあらすじ・ストーリー

才能を与えられなかった少年と落ちこぼれの天使

降輪(ふらわ)小学校の4年1組に在籍する桜ヒデユキ(さくら ヒデユキ)は、取り柄のない少年だった。勉強、スポーツ、芸術など何にも特技を見出せないことに落ち込むヒデユキは、ある日学校の帰り道でテンテンと名乗る天使と出会う。
テンテンが言うには、人は皆誕生する前に神から才能の種「サイダネ」を与えられるという。サイダネは努力を重ねることで芽を出し、成長を続け、やがて「才能花(さいのうか)」と呼ばれる花を咲かせるに至る。ところが、自分に何の才能があるか分からないケースが圧倒的に多く、才能を育てる努力は尋常ならざるものであり、立派な才能花を咲かせられるのは100人に1人しかいない。世間で活躍しているのは、そうして才能花を育てた者たちだという。
しかし、ヒデユキはテンテンが吐き出した梅干しの種を与えられてしまい、何の才能もない状態で生まれてしまったのだ。誕生から10年経ってそのことを知った神は事の発端であるテンテンを地上に遣わし、ヒデユキの本当の才能を見つけるまで天の国に帰れないようにした。
サイダネを飲み、「天翼じょうろ(てんよくじょうろ)」と呼ばれるじょうろのような生物から出る「天聖水(てんせいすい)」をかけると、サイダネは一時的に花にまで成長する。テンテンはサイダネのことをある程度知ってはいるが、大食らいでやる気のない落ちこぼれの天使だった。
前途多難なサイダネ探しだったが、時に才能花の力を人助けに使うなどして、ヒデユキとテンテンは絆を深めていく。

悪魔デモモ

ヒデユキの母桜ミサキ(さくら ミサキ)が応援するプロ野球チーム「ジャイガンズ」は、ここ最近負けが続いていた。エースバッターの清川が不調なためであった。ヒデユキたちは、近所でバッティング練習をしていた清川を見つける。清川を励まそうと自身にピッチャーの才能を開花させ、彼に打たせようとしたヒデユキだが、清川は一球も打ち返せずに落ち込んでしまう。
サイダネの成長具合が分かる「望才鏡(ぼうさいきょう)」を覗いたテンテンは、清川の持つバッティングの才能花が刈り取られていることに気付いた。才能花は、悪魔が持つデビルカッターと呼ばれるアイテムによって刈られてしまうことがある。
しかし、天翼じょうろを使えば清川の才能花を戻すことができる。才能花を刈った悪魔のデモモの妨害に遭いながらも、テンテンは清川の才能花を戻すことに成功した。
デビルカッターは本来悪人の才能花を刈るためのもので、デモモが清川の才能花を刈り取ったのは、自身の応援するチームを勝たせたいためだった。テンテンとデモモは似た者同士の性格を持っていたのだ。

天使と悪魔の運動会

天使と悪魔の運動会が行われることとなった。天の国、地獄で1年交代で行われるこの大会に、ヒデユキは特別に観客として招待される。かつて天の国と地獄は戦争状態にあった。しかし、平和の使者の介入によって友好の像が与えられ、今の平和があるという。
毎年開催される運動会で勝った方が、1年間友好の像を管理することができる。天の国の長である神、地獄の長であるエンマ大王は、表面上はにこやかに話しながらも自分が友好の像を保管したいと考えていた。神とエンマの対抗心はどこか子供じみたものであったが、絶対に勝ちたいエンマは負けたら地獄のフルコースという罰を与えると言い、悪魔たちを鼓舞する。
そんな中、友好の像がアクシデントで壊れてしまった。友好の像の破壊により再び天の国と地獄に戦乱が起きることを怖れた神は、ヒデユキに天使のふりをさせ、運動会に参加させる。才能花の力を使えば、悪魔に勝てると踏んだ為だった。天の国が勝利すれば、1年間の保管期間の間に像を直すことができる。
天の国との平和状態を良く思わない悪魔イービルという強敵もいたが、ヒデユキは才能花の力を駆使して運動会の競技をこなしていく。
結果は地獄の勝利に終わったが、突如雷が落ち、友好の像が更に破壊されてしまう。神は「これは事故だ」と言い、天の国が責任を持って修繕するとエンマを言いくるめる。突然の落雷は、ヒデユキに助けられたことに恩義を感じたイービルが、天候を操り起こしたものであった。

テンテンの兄登場

ヒデユキたちの前に、ティレンツという天使が現れた。ティレンツは才能の天使たちを束ねる天使長と呼ばれる立場にあり、テンテンの兄でもあった。テンテンとは似ても似つかない美男子で、物腰柔らかな性格のティレンツにヒデユキは驚く。ヒデユキには優しく接するティレンツだが、弟のテンテンには厳しかった。それは、ティレンツ自身がテンテンと似た幼少期を送っていた為だった。一念発起をし、鍛錬を重ねて天使長にまでなった経緯を聞いたヒデユキは、ティレンツがテンテンを鍛えようとしていると悟る。
ミサキはテンテンが来たことで寂しさが軽減されたと言い、彼がおやつや食事を多くとることを許しており、ヒデユキもテンテンに友として接していた。そんなティレンツにとって、桜家での生活はテンテンの為になるものとは思えなかった。このままでは本当の才能が中々見つからず、ヒデユキの為にもならない。
そう判断したティレンツは、自分がヒデユキに本来の才能を与え、テンテンを天の国に連れ帰ろうと考える。そんな中、外出先で火災現場に出くわした。燃えている家に取り残された犬を救うべく、テンテンとヒデユキはサイダネを使用。犬を救出した。
ティレンツは自身のじょうろで消防隊員の才能花を開かせ、間接的ながら消火活動に協力。ヒデユキとテンテンの息の合ったコンビぶりを見たこともあり、ティレンツはひとまず彼らを見守ることにし、単身で天の国へと帰って行った。

期待に潰されかける才能

ある日、ヒデユキは6年生の雛(ひなげし)が短距離走の練習をしているのを見かける。ヒデユキのクラスメイトで友人の菊崎トラキチ(きくざき トラキチ)が言うには、雛は全国少年陸上大会の代表に選ばれるほどの俊足の持ち主だった。ヒデユキは、「雛のサイダネが順調に育っているのか」と羨ましく思う。
路上を走っていた雛が転倒するのを見たヒデユキは、慌てて彼を自宅に運び介抱する。目を覚ました雛に、「運動会でリレーのアンカーを務めるあなたを見て、憧れてました」と言うヒデユキ。ところが、雛は「走るのが嫌い」だと言った。
たまたま人より走るのが早かっただけだと語る雛だが、周囲はそんな彼に期待をかけ続けた。名門中学へのスポーツ推薦の話も来ており、雛自身も期待に応えようとした。それでも、本音は皆と同じ中学へ行ったり、学校帰りに遊んだりしたいという。
迎えに来た母と帰っていく雛を見たテンテンは、彼のサイダネは成長こそしているものの全く輝いていないと指摘する。本人にやる気がなくても成長してしまうケースは多々あり、その場合はある程度育ったところでストップし、枯れてしまうとテンテンは言った。
テンテンは「仕方のないこと」だと言うが、ヒデユキにはリレーの最中の雛がいやいや走っているようには見えなかった。何より、せっかくの才能が枯れてしまうことをもったいないと感じる。
翌日、ヒデユキは陸上のサイダネを飲んで才能花にさせ、雛に勝負を挑む。訝しがりつつも勝負に応じた雛は、引き離そうとしても追いつき、追い抜いていくヒデユキに驚く。皆にやらされるのではなく、自分が勝ちたいと感じて走り続けた雛は走る楽しさを思い出した。有名中学への推薦入学はやめたが、陸上を続けると雛は体育教師に伝えた。

天上オリンピア

「浮遊島」と呼ばれる場所で「天上オリンピア」というオリンピックが開催されることとなった。このオリンピックは100年に1度行われる天使と悪魔の祭典で、3人1組で参加する。
優勝チームの面々は、それぞれ「聖なる宝玉」に好きな願いをかけることができる。本当の才能を見つけるべく、テンテンに強引に連れてこられたヒデユキは、彼とデモモと組んで天上オリンピアに出場した。ヒデユキ一行は、浮遊島で「ヘビオカーン」という珍獣と遭遇。「ダル~…」という奇妙な声で鳴き、見た目も醜いヘビオカーンは何故かヒデユキたちについてきた。
才能花の力と機転を駆使して数々の難関をクリアする中、ヘビオカーンは美しい成体に羽化する。幼体時のヘビオカーンの姿は、血液に含まれる治癒能力を狙う者から身を守る術であった。世界征服を目論む悪魔ザタンに捕らえられたヘビオカーンは、ヒデユキたちを傷つけた彼や仲間の怪我の治療を拒み、致命傷を負ってしまう。
ヒデユキたちは天上オリンピアで優勝を果たす。宝玉でそれぞれの願いを叶えるテンテン、デモモに対し、ヒデユキはサイダネではなく、ヘビオカーンの復活を願った。「サイダネは自分で探す」と言ったヒデユキの優しさに、天上オリンピア主催者の天上王(てんじょうおう)は感心する。

本当の才能

神と、神に仕える大臣が「ヒデユキの本当の才能が分かった」と地上にやってくる。大臣が言うには、才能とはその人物の趣味や嗜好にいくらかの影響を与えるという。ヒデユキには、読書という趣味があった。この点から察するに、「ヒデユキの本当の才能は小説家」だと大臣は言う。小説家のサイダネを与えられたヒデユキは、テンテンと別れることになる。
ヒデユキの前ではいつも通りにしていたテンテンだが、天の国に向かう途中「ヒデユキと別れたくない」と泣き出した。ヒデユキもまた、テンテンとの別れを寂しく思う。そんな気持ちを振り切るように、才能を育てようと小説を書こうとするヒデユキ。
ところが、何も浮かんでは来なかった。そこに、テンテンが現れる。確認したところヒデユキの才能は小説家ではなく、未だ梅干しの種が入ったままになっていた。驚いたヒデユキだが、テンテンとのサイダネ探しを兼ねた生活が再会されることに喜ぶのだった。

12年後のヒデユキ

ヒデユキの本当の才能が見つかり、テンテンとの別れから12年後。22歳になったヒデユキは、編集者になるべく面接を控えていた。そこに、12年ぶりにテンテンや友人たちが現れる。テンテンは見た目も性格もあまり変わっていなかったが、友人たちはそれぞれの才能を育て、それぞれの道を歩んでいた。
皆の応援を受け、ヒデユキは面接に臨む。緊張でろくに話せなかったヒデユキだが、編集長がかつてヒデユキとテンテンに救われ一念発起した人物だった。ヒデユキへの恩を感じていること、編集者になりたい彼の意図を汲み取り、編集長はヒデユキを採用する。
天の国のルールにより、ヒデユキの才能に関する記憶は神によって消されてしまった。それでも、「自分の才能を探すこともきっと楽しい」と感じるヒデユキはそれを受け入れた。神は、天の国からヒデユキの才能が芽を出したことを確認する。

『花さか天使テンテンくん』の登場人物・キャラクター

主要人物

テンテン

CV:ゆきじ

主人公の1人で、才能の天使。一人称は「オイラ」。大食らいで自己中心的、自堕落な性格をしている。天使としては落ちこぼれなので、額の天印と呼ばれる文字は半人前に与えられる「天」の字。それでもサイダネの特性は理解しており、何の才能かを見分けることはできる。
10年前、ヒデユキがサイダネの代わりに与えられた梅干しの種はテンテンが吐き出したものである為、地上で彼の才能を探すこととなった。サイダネ探しにはあまり熱心ではなく、ヒデユキ共々マイペースに行っている。ロボットのおもちゃを好むなど子供っぽい面が目立つ。
かつては直毛だったが、鳥に引っ張られたせいで髪の毛が丸まってしまった。この一件で恋人の天使キューピにフラれた為、鳥が大の苦手。鶏肉を見ただけでも青ざめてしまうが、調理済みのものは「おいしいから」と普通に食べる。
ヒデユキに梅干しの種が与えられたのはアクシデントだったが、読み切り版では神の家に忍び込んだテンテンが、いたずらでサイダネの箱に梅干しの種を入れたことになっている。

えどまち
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@edono78

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