私、能力は平均値でって言ったよね!(のうきん)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『私、能力は平均値でって言ったよね!』とは2016年よりFUNAが連載を開始した日本のライトノベルおよびそれを基にした漫画・アニメ作品である。公式略称は『のうきん』。異世界に転生することになった女子高生が望んだのは「平均的な能力」で平凡に生きること。しかし転生特典として授かった能力は、全生物の最大値と最小値の平均、最強の古竜種の約半分であった。「普通の女の子」を望む少女が、強すぎる能力と便利すぎる魔法を隠そうとするが故に巻き起こすドタバタの冒険ファンタジーとなっている。

『私、能力は平均値でって言ったよね!』の概要

『私、能力は平均値でって言ったよね!』とは2016年よりFUNAが連載を開始した日本のライトノベル。WEB小説版は『小説家になろう』にて連載。イラストを亜方逸樹が担当した書籍版は1~13巻までは『アース・スターノベル』から、第14巻以降は移籍した『SQEXノベル』から刊行されている。
メディアミックス作品としては、『コミック アース・スター』にてねこみんとが作画を担当したコミカライズ版が、『SQEX』からもiimAnによるリブート版が連載されている。2019年10月から12月まではテレビアニメがAT-Xで全12話放送された。
また、森貴夕貴が作画担当をしたスピンオフ4コマ漫画『私、日常は平均値でって言ったよね!』が『コミック アース・スター』から全4巻刊行されている。

著者・ファンによる公式略称は『のうきん』。著者のFUNAが初期の頃「平均値」と略していたことがあり、これを使用するファンもいる。

『私、能力は平均値でって言ったよね!』は、主人公・栗原海里(くりはらみさと)が異世界に転生し、新しい生を満喫する物語である。一般に異世界転生ものの小説では転生特典として強力なチート能力を授かり無双するストーリーが多い中、この少女が望んだのは「普通の、平凡な女の子」として生きることだった。しかし、平均値になるようにと願った能力は、転生先に存在する全生物の能力における最大値と最小値の平均で、人間としては破格。魔力だけでも普通の人間の魔術師の約6800倍と、最強の古竜種の約半分というチートスペックだった。「普通の女の子」を望む転生女子高生が、その強すぎる能力と便利すぎる魔法を隠そうとするがゆえに巻き起こすドタバタの冒険ストーリーが描かれている。剣と魔法の異世界でうっかりS級ハンターなんかにならないようにと気をつけて、仲間たちとともに楽しく普通に生きていこうとする少女の成長や友情を描いたファンタジーである。
パロディ要素が多く気楽に楽しめる作品ではあるが、80~90年代の古いのネタが中心なため賛否の分かれる作品でもある。

『私、能力は平均値でって言ったよね!』のあらすじ・ストーリー

新天地でやり直し

ブランデル王国のアスカム子爵家長女アデル・フォン・アスカムは、10歳になったある日、自分が以前、栗原海里(くりはらみさと)という名の18歳の女子高生で、トラックに轢かれそうになった少女を救おうとして命を落としたことや、創造主である神様に出会ったことを思い出した。
平均より出来る子であったために周りの期待が大きく、普通の幸せな日々と縁遠かった海里は、「次の人生、能力は平均値でお願いします!」と神様にお願いしたのであった。
しかし、神様の気まぐれか、世界救済への期待なのか、与えられた能力は人間としては破格のステータス。転生先に存在する全生物の能力における最大値と最小値の平均で、魔力だけでも普通の人間の魔術師の約6800倍と、最強の古竜種の約半分というチートスペックだった。

目立たず「普通の女の子」として暮らそうとするアデルだが、思わず使ってしまった魔法のことが王族にバレ、母国を追われてしまう。隣国へと逃げると名前をマイルと変え、ごくありふれた一般的で平凡な職業であるハンターとして新しい生活を始めることにした。

Fランクの新人ハンターとして登録すると、強すぎるチカラを制御するために魔法の練習を行うマイル。ギルド職員の紹介でハンター養成学校へ入学できることになったものの、平凡なハンターとして過ごすためには加減を覚えなければならない。

マイルは転生の際に、創造主からこの世界のことについて聞かされていた。転生した世界は過去に幾度か文明崩壊を起こしており、創造主が大規模な干渉を加えている。生物の思念波に反応して化学変化や魔法変化を起こす「魔法」のようなものを実現するために、大気中にナノマシンを散布したのだ。
この世界での魔法は呪文を詠唱することで生じるとされているが、実際のところは、ナノマシンが聞き取って起こす事象であった。人を含めた一般的な生物はナノマシンの存在に気づくことはでない。むしろ魔法を扱える者ですら稀である。しかしマイルは、ナノマシンの利用権限が創造主のレベル10と0との平均で5。古竜ですら権限レベルは2か3であり、地上の生物では最大である。だからナノマシンと会話し指示を与えることすらできた。

ナノマシンとのコミュニケーションにより、数々のオリジナル魔法を習得できるという大きな収穫もあった。ひとつは「アイテムボックス」。時間停止の機能付きで、無限にモノを収納することができる。小さな容量の収納魔法を扱える者は一定数いるが、マイルの場合は規格外である。そして「探索魔法」。思い描いた人や魔物、アイテムを探す魔法だ。最初はカーナビのような動きであったが、アクティブ・ソナー方式を採用したことで数キロメートル先でも感知できる性能へと進化した。

自身の能力を確認したマイルは、いよいよハンター養成学校へ入学するべく、ティルス王国の王都へと向かう。ナノマシンとの会話が他人からは独り言にしか見えず、イタイ少女と思われているのはご愛嬌だ。宿を取り街並みを探索していると、マイルはあることに気づいた。王都には歩いている子供がほとんどいないのだ。聞いてみると、最近子供の行方不明事件が増えているのだとか。

宿屋の娘・レニーの帰りが遅いと聞き心配したマイルが探しに出かけると、いかにも悪党面した誘拐犯と思われる一団を発見した。さらに誘拐犯の元へ現れたのは、マイルと同じく事件を追っていた3人の少女。誘拐犯とマイルを含めた4人の少女の戦いが始まる。

果敢に剣で斬りかかるイケメンの少女・メーヴィス、誘拐犯に火魔法で攻撃する赤髪の少女・レーナ、傷を治癒魔法で治すポーリン。しかし3人の力では誘拐犯には歯が立たなかった。

誘拐犯の目的は、美少女ハーレムをつくること。誘拐犯のボスはそのハーレムに、美しい顔立ちに薄い胸であるマイルを連れていきたいらしい。実はマイルの容姿はヒト族の平均値、人間やエルフ、ドワーフなどの美要素が平均化され、誰からも親しまれるような愛嬌のある顔立ちになっていたのだ。一方胸は、悲しいほどに平坦で、母性が全く感じられない状態であった。
薄い胸と言われ激怒したマイルは、思わず強力な魔法を放ち、誘拐犯たちを吹き飛ばす。子供の救出にも成功し一件落着、事件が解決したのであった。

翌日、ハンター養成学校の寮へ向かうと、ルームメイトとしてそこにいたのは昨日一緒に誘拐犯と戦い、マイルの有り得ない威力の魔法を見た3人の少女。4人はパーティーを組み、学校での時間を過ごすことになる。最初はマイルの特異な能力に興味津々な3人ではあるが、マイルの隠そうとして隠せていない姿に呆れ、親しみを持つようになる。

平凡な生活を望むマイルは、周りが強ければ自分が目立たなくなるということを思いつく。レーナとポーリンに魔法の効率的な使い方を教え、騎士を目指すイケメン貴族令嬢・メーヴィスにはマイルが剣の特訓をすることにした。

半年が過ぎ、格段に実力を上げた3人は、ついに卒業を迎えることになる。共に数々の依頼をこなし、ハンター養成学校創立以来の実力派パーティーとなった4人は、卒業検定を前に学校長のエルバートに呼び出された。その内容は、卒業検定におけるBランクハンターとの試合で勝ってくれというものだった。負けた場合学校が廃校になるというのだ。
卒業検定当日、マイルたちの前に現れたのは例の誘拐犯だった。マイルのことを諦めていない誘拐犯のボスが、有力貴族という身分を使い圧力をかけてきたのであった。

しかし、誘拐犯の一味など強化された少女たちの敵ではなかった。マイルのスピードとパワーを相手に剣の特訓を重ねたメーヴィス、マイルより血管や神経、内蔵など医学的な知識を教わり伝説級の治癒魔法を使用できるようになったポーリン、得意な火魔法だけではなく氷魔法も習得し、相手の魔術師の攻撃を完全に防ぐレーナ。3人はあっさりと対戦相手を撃退する。

マイルと対峙するのは有力貴族である誘拐犯のボス。美少女ハーレムをつくるためにマイルを狙っている本人だ。目立ちたくないために地味に戦うつもりのマイルであったが、やはりというかお約束というか、またもや言われてしまった薄い胸の一言にプッツン。レーザービームのような魔法を相手にかすめさせ、降参させた。

Cランクパーティー「赤き誓い」の始動

ハンター養成学校を目立ちまくって卒業した4人はCランクのハンターになった。パーティー名を「赤き誓い」として活動を開始する。岩トカゲ討伐などの依頼をこなしつつ、目についたのは商隊の護衛依頼だ。近隣の町への街道において盗賊が多発しており、商品を運ぶ馬車が襲われているというのだ。戦闘の相手が盗賊、つまり人との殺し合いということでギルドの受付嬢は受付を渋るが、レーナは依頼を受けたいと言う。

レーナは街を転々としながら商品を売り歩く行商人の娘であった。レーナが幼い頃に盗賊に襲われ、父を殺されるという過去を持つ。その後助けに入ったハンターパーティー「赤き稲妻」に拾われて幼少期を過ごすのだが、そのパーティーも護衛任務中に依頼主に裏切られ、全員命を落としてしまった。そのため盗賊に対して、並々ならぬ恨みを持っていた。

盗賊を皆殺しにしたいという思いから護衛依頼を受けたレーナ。しかしマイルたちは、復讐は何も生まず人殺しには賛同しかねると言う。家族を失う悲しみを知っているのは、レーナだけではなかったのだ。

ポーリンはティルス王国のボードマン子爵領都・タルエスでは名が知れた中規模商会・ベケット商会の長女だ。両親と弟との幸せな時間を過ごしていたが、ある日賊が押し入り父が殺された。番頭が領主と結託して商会を乗っ取り、弟を人質に母を愛人としたのだ。ポーリンは魔法を使えたことから、将来的に貴族や大商人への貢物として商品価値が上がるようにとハンター養成学校に入れられていた。

マイルの、子爵令嬢・アデルとしての過去も、レーナやポーリンに負けない悲惨なものだ。これは栗原海里の人格が覚醒する以前のこと。8歳のときに祖父と母が盗賊に襲われて殺された。両親が行くはずだった近隣領主家のパーティーに、当日になって父親が突然の体調不良。急遽祖父が出席したのだが、何年も盗賊など出たことのない治安のいい場所での1回だけの盗賊被害だった。
葬儀の翌日には父の愛人とその娘が屋敷に入り込み、アデルは存在しないものとして扱われるようになった。貴族のパーティーで父は義母を妻として、義妹を娘として紹介するようになったことから、父が祖父と母を殺した犯人であると察知した。
10歳の誕生日を迎え学園に入学できるようになると同時に、前妻の娘であるアデルは厄介払いとしてエクランド学園に放り出されたのであった。

平凡な生徒を装おうと、入学試験で手を抜くアデル。しかし、実技試験で真似をした生徒が全生徒の最高成績をマークしていることに気づかない。さらにはうっかり無詠唱魔法を使ったり、うっかり腕自慢の生徒を倒したりと、数々のやらかしにより全力で目立ってしまい、男子にもモテモテであった。
男子にちやほやされるアデルが気に食わず近づいたのは、貧乏男爵家の三女・マルセラと、その取り巻きの商家の娘・モニカ、農家の娘・オリアーナの3人組。アデルの秘密を探ろうとするものの、両親に捨てられた身の上を知ると同情し、マイルを気にかけるようになった。マルセラたちと友達になったアデルは、魔法が上手に使えない3人に魔法を教えることにする。

マイルが教えた魔法の真髄とは、魔法の行使に詠唱は必要なく、魔法のイメージつまり思念を正確に思い描くというこの世界の魔法学とは全く異なるものだ。しかし、魔法を使えなかったモニカ、そしてオリアーナが魔法の行使に成功する。商家の娘であるモニカにとって、いつでも水を出せるということは大きな価値である。有力者への愛人要員から、中規模商家への跡取りクラスまで格上げされた。

微弱な魔法を使えるだけだったマルセラは、攻撃魔法を操れるようになった。政略結婚として中年オヤジの後妻に送り出される運命だった低位貴族の三女が、逆に相手を選ぶ立場になった瞬間だ。妻にするだけでパーティー会場だろうがプライベートだろうが寝室だろうが、常に護衛を兼ねられる貴族の美少女。敵の多い上位貴族家にとって、マルセラは最良の妻候補となったのだった。

マルセラたちとの幸せな学園生活が1年2ヶ月ほど続いたある日、アデルが王都で第三王女・モレーナ姫一行の行進に出くわす。すると目の前で、観衆に押し出された男の子が豪華な馬車の行く手を塞いだ。兵士に槍を向けられた男の子を庇おうととっさに飛び出すアデルは、この世界には存在しないバリアの魔法を使ってしまう。王族そして大観衆を前にしてのうっかりに誤魔化し方を考えたアデルの脳に浮かんだのは、更なる混沌でなかった事にしようとするものだった。

大きな羽をつけて天に浮く女神の姿をイメージ放射し、ナノマシンがアデルを光り輝かせる。更に雷の魔法で天罰を加えようとする。本人はうまく誤魔化したつもりであったが、当然、エクランド学園の生徒が女神の依代であるという噂が王都中に広まり、アデルのもとに王宮からの召喚状が届く。普通の生活が困難になり、アデルはブランデル王国を脱出し、隣国ティルス王国にてハンター・マイルになったのだった。

赤き誓いの友情は不滅です

護衛依頼を無事に終え、ハンター活動を続けていた赤き誓い。そんなある日、ポーリンが行方不明になる。同時に、メーヴィスの元へ届いた手紙には、メーヴィスの一番下の兄が結婚すると書いてあり、その相手がベケット商会の娘・ポーリンと書かれていた。

ベケット商会の商会長は、ポーリンの父を殺し母を愛人にしている元番頭だ。領主であるボードマン子爵と組んで悪事を尽くしており、メーヴィスの実家であるオースティン伯爵家との関係を作るためにポーリンを貢ごうという魂胆であった。
母と弟を救い元番頭を倒そうとするポーリンの元へ、マイルたちが駆けつける。圧倒的な実力差で商会の悪党を倒すと、メーヴィスの父・オースティン伯爵が裁きを下し、ベケット商会は無事にポーリン一家が取り戻すことになった。

ただ今回の結婚騒動、伯爵の目的は商会の悪事を捌くことではなかった。相手がポーリンと聞き、友の窮地に赤き誓いは必ずが駆けつけると考えた。つまり愛娘であるメーヴィスを連れ戻すチャンスと見越したのだ。剣の修業は実家でこそできるとメーヴィスを説得しようとする伯爵と、自分の師匠であるマイルについていくというメーヴィスの交渉は平行線であった。そして、伯爵とマイルの一騎打ちにより、メーヴィスの命運が決まることとなった。屈指の武人である伯爵との一騎打ちは、マイルにとって楽しかった。あまりの楽しさについつい本気になってしまい、勝利したのはやはりマイルであった。

レーナの過去のトラウマ、ポーリンとメーヴィスの実家問題を解決し、4人での活動を再開した赤き誓いは、精力的にギルドの依頼をこなす。ファンタジーの定番とも言えるワイバーン退治に向かえば、生きたままでの捕獲に成功。多くのハンターが失敗し続けている依頼をも完璧にこなし、期待の新人パーティーどころか、ハンターギルドの次期エースとも目される破竹の快進撃を続けていた。

そんなある日、レーナは1枚の依頼書を目にする。多くのパーティーが失敗し成功報酬が何度も釣り上げられた危険な依頼、いわゆる「赤い依頼」だ。依頼内容は、森の異変の調査と調査団の捜索。最近森の魔物の様子や生態系がおかしくなっており、調査に向かった学者先生をはじめとした調査団が行方不明なので探し出してほしいというものだった。

赤き誓いが森へ入ると、小型の魔物がいなかったり、外縁部に本来奥にいるはずの中型以上の魔物がいたりと、魔物の分布が本来とは変わっていた。勢力範囲が変わる理由としてもっとも可能性が高いのは、より強力な魔物、地竜やフェンリルクラスが現れた場合だ。さすがに4人で対応するのは危険かもしれない。

本来であれば一度引き返し体制を整えるところであるが、赤き誓いが請け負った依頼は調査隊の捜索である。危険な森をさまよっているかもしれない調査隊を長く放置することはできず、赤き誓いは森の奥へと進み続けることにした。

森の奥で見つけたのは、古代遺跡の発掘現場のような場所だった。獣人たちが作業を行っている。しかも、調査隊と思われる人々や、多くのハンターが囚われていることもわかった。

夜更けを待って人々の救出を試みる赤き誓い。マイルが睡眠魔法で見張りを眠らせ、メーヴィスが脱出路をひらく。人々の救出には成功したものの、肝心の学者先生は遺跡の奥に連れて行かれていると言う。途中で出会った獣人をなぎ倒しながら遺跡の奥に到着すると、学者先生であるエルフ・クーレレイアを発見した。

一緒に逃げようとクーレレイアに同行を促すものの、この遺跡を支配しているのは獣人たちではないから逃げられないとクーレレイアは言う。するとその時、説明を遮るかのように轟音が響き、竜が舞い降りてきた。

メーヴィスの神速剣、レーナの炎弾、ポーリンのウォーターボール、さらにはマイルが爆裂魔法を飛ばすが、竜には傷ひとつつかない。それもそのはず、この竜はマイルがその半分の能力を与えられている、この世界最強の生物・古竜なのだ。

軽く降った古竜の尻尾に、マイルが吹き飛ばされる。たったの一撃でマイルは致命傷を負い、意識を失った。

マイルの復活を信じて時間を稼ごうと古竜に立ち向かうメーヴィスとレーナ、ポーリン。しかしチカラの差は歴然である。3人の全力の攻撃とはいえ、古竜にとっては小虫にたかられている程度の感覚でしかないのだ。

一方のマイルは、諦め現実逃避していた。自分は古竜の半分の能力しかなく、どうやっても古竜には勝てるはずがない。もし地球での暮らしが続いていたら、もしマルセラたちとの学園生活が続いていたら、どんなに幸せだったのだろう。
心が折れかけたマイルの耳に聞こえたのは、マイルを信じて奮闘するレーナたちの声だった。

いくら奮闘しようと所詮は時間稼ぎ。いよいよ追い詰められたレーナたちに、古竜がトドメの一撃を放とうとする。しかしそこに、一筋の光が走り古竜の肩を貫いた。マイルの復活だ。

冷静に考えればわかることである。マイルの能力は最強の古竜の半分だが、目の前の古竜が最強だとは限らない。実際のところマイルと今戦っている古竜では、そう大きな違いはなかったのだ。
古竜の半分という思い込みや最初に殺されかけた恐怖を、仲間を殺されそうになった怒りでねじ伏せたマイルは、まさに最強なのであった。

そして放たれた極大魔法。女子高生・栗原海里、貴族令嬢アデル・フォン・アスカム、Cランクハンター・マイル、3人分の想いを込めた一撃は、古竜を吹き飛ばした。

降参した古竜から聞き出したことは、古竜が失われた文明・先史文明の遺跡を探しているということであった。転生の際に神様から聞いた話によれば、この世界は何度も文明が崩壊し、神々が管理を放棄した世界であるということ。しかしその事実を知る者は、他にはいない。

最強の古竜が失われた文明の叡智を探してまで何かをしようとしている。それだけの危機的な何かが、この世界に起ころうとしているのかもしれない。普通の女の子の普通の幸せを目指しながら世界を救う。マイルの冒険は、まだまだ始まったばかりだ。

『私、能力は平均値でって言ったよね!』の登場人物・キャラクター

赤き誓い

マイル/アデル・フォン・アスカム/栗原 海里(くりはらみさと)

CV:和氣あず未/小出ひかる
前世は栗原海里という名の18歳の女子高生。高校の卒業式の帰り道に少女をトラックからかばって事故に合い、転生する。ブランデル王国のアスカム子爵家の子爵令嬢アデル・フォン・アスカムとして転生し、転生後10年目の誕生日に前世の記憶を思い出した。転生時に創造主によって世界の本質を知らされており、魔法の行使のために散布されているナノマシンと会話・指示命令できる権限を持つ。
創造主に転生特典を聞かれた際に「私、能力値は平均値でお願いします」と伝え「普通の女の子」として転生したつもりであったが、実際の能力は、転生先の世界最強の生物である古竜の約半分くらいで、魔法行使のための思念派出力は一般的な人間の約6,800倍と規格外なものであった。
アスカム子爵家のお家騒動に巻き込まれ下級貴族の通うエクランド学園に入学させられると、「普通の女の子」として暮らすべく能力を隠そうとするのだが、今度は馬車の前に飛び出した少年を助けるべく能力を使ってしまい、「女神の依り代」として王家に目をつけられ逃亡やむなしに。魔法の真髄を教えるほどに仲良くなった友達のワンダースリーへの手紙を残し、母国を離れた。
隣国のティルス王国につくと、たまたま通りかかった街のギルドでハンター登録し、名前もマイルに変える。収納魔法に見せかけたアイテムボックスをフル活用して稼ぎまくっていると、ハンターギルド長の推薦により王都のハンター養成学校へ通うこととなった。
ハンター養成学校で「赤き誓い」のメンバーに出会うと、自分が目立ちたくないという理由から仲間を育成。魔法や剣術の訓練を行うと、赤き誓いは近年稀に見る実力派パーティーとして一目置かれるように育った。
「普通の女の子」と言い張るマイルを気遣い、氷魔法で冷し続けているという収納魔法から温かいスープが出てくるなどの異常さについては、赤き誓いのメンバーは見ない振りをしている。マイルが実は隣国の貴族令嬢であることがわかってからも、レーナたちが実家の秘伝を深く問い詰めることはない。

レーナ

CV:徳井青空/中島由貴
赤髪で「赤のレーナ」の異名を持つ魔術師の少女。年齢の割に小柄で胸にコンプレックスがある。幼少の頃から父の行商に付き添い旅をしていた。性格はツンデレで仕切り屋。実際の赤き誓いのリーダーはメーヴィスであるが、戦闘時などは後衛のほうが指揮に向いていることなどから、実質的にリーダー的な態度を取ることが多い。
首のチョーカーは父が盗賊に襲われた際にレーナを助けたハンターパーティー「赤き稲妻」のオーガストにもらったもの。赤き稲妻が雇い主の裏切りにあった際に、命がけでレーナを守った恩人である。赤き稲妻のメンバーが盗賊に皆殺しにされた怒りから魔法に目覚めたレーナは、盗賊と悪徳商人を焼き殺した。

メーヴィス・フォン・オースティン

CV:内村史子
赤き誓いのリーダーであり、ティルス王国の騎士の名門オースティン伯爵家の長女。蝶よ花よと可愛がられて育てられたが、3人の兄を見て騎士に憧れ、家を飛び出しハンターになる。実家から持ち出した家宝の剣はハンター活動中に折れてしまったが、マイルが魔法で修理し、絶対に折れない最強の剣として生まれ変わった。普段はナノマシンの偽装によって性能が抑えられているが、メーヴィスが血の祈りを捧げることで本来の性能を発揮するようになっている。
剣技を追求しそのスピードはハンタートップクラス。またマイル謹製の謎剣を使用することで擬似的に魔法での攻撃や治癒魔法を使えるほどに成長するが、本人は魔法を使えないと思いこんでいるため、修行により気の使い方を極めた成果と勘違いしている。
騎士を目指すだけあって曲がったことは嫌いで、常に正義を追い求める性格。後にクーデターにより逃亡している某国の姫を単独で護衛し騎士の臨時叙勲を受けたり、神の御使いの聖騎士、実際にはマイルの騎士になったりと、着実に夢を叶えていく。

ポーリン

CV:田澤茉純
ティルス王国の中堅商家ベケット商会の娘。巨乳。一見気が弱そうなふわふわした印象の少女だが、ギルドの誰もが恐れる腹黒の守銭奴である。
領主と番頭の裏切りにより父を殺害され店を奪われるだけでなく、母を愛人に取られ、弟を人質にされ、自分は貢物としての価値を上げるためにハンター養成学校に送り込まれた。
支援魔法と治癒魔法が少し使える程度であったが、マイルに魔法の使用法と医学的な知識を叩き込まれたことで、部位欠損すら余裕で治療するほどの宮廷魔術師を超える治癒魔法使いとなった。レーナのように派手な攻撃魔法は使用できない反面、熱湯や香辛料を駆使しての相手を無力化する魔法に特化している。
共同で作戦にあたったハンターたちを無償で治療したりと聖女のような活動をしているが、その内側からあふれ出す商売人のオーラからあまり人に寄り付かれることはない。

ワンダースリー

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