戦争は女の顔をしていないとは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『戦争は女の顔をしていない』とはスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチによるノンフィクション小説、またこれを原作とした漫画。第2次世界大戦の独ソ戦争に参加した従軍女性のインタビューをまとめたものである。原作は1985年発行され、2015年にノーベル文学賞を受賞。その原作を元に小梅けいとが作画を担当した漫画が、2019年から電子コミック配信サイト『ComicWalker』にて連載を開始した。

クラヴヂヤ・グリゴリエヴナ・クローヒナ

階級は上級軍曹で、狙撃兵を務めた女性。初めてドイツ兵を狙撃した際に、殺してしまったことに震えて涙を流すこともあったが、ウクライナの小さな村でドイツ兵に惨殺された同胞を見て以降は、敵に対して気持ちが動くことはなかった。戦争が終わった頃は21歳という若さにも関わらず、戦争のストレスからか白髪になってしまっていた。また、戦争中の負傷での脳挫傷が原因で片耳が聞こえない。終戦して自宅に帰り、母と再会した際に母から「女の子が不具にならないように、負傷してしまったら殺してください」と毎日お祈りしていたことを聞かされると、複雑な面持ちを見せた。終戦後もPTSDに苦しみ、採掘場の発破音を聞くと襲撃と勘違いをしてパニックを起こしていた。身体の痛みよりも心の痛みのほうがとても辛いのだと、取材に訪れたアレクシエーヴィチに訴えた。

マリヤ・イワーノヴナ・モローゾワ(イワーヌシュキナ)

階級は兵長で、狙撃兵を務めた女性。クラヴヂヤと一緒の部隊に所属していた。所属していた部隊の進軍が早いために、補給が間に合わず食糧不足に陥った際に、野生の仔馬を狙撃した。射殺された仔馬を見て可哀そうだと涙を流す相棒の姿に、仔馬への罪悪感が湧き思わず相棒を叱責してしまう。その後、料理番によって運ばれてきた仔馬のスープに同僚の女の子たちが手を付けないことの意味を察して、泣きながら土豪を飛び出すなど、繊細な面を持つ。一方で、敵の動向を見張るためにドイツ兵士の声が聞こえるほどドイツ軍塹壕の近くまで行き、陣を構えるなど肝の据わった一面も見せる。終戦後、軍では配給制であったため、店で買い物をするときに金を払い忘れたり、スカートに違和感を感じたりなど、元の生活に戻ることにとても苦労した。取材が終わるとアレクシエーヴィチを抱きしめて、涙を流しながら「ごめんよ…」と声をかけるなど若い人に対して複雑な思いを抱えている。

マーシェンカ・アルヒモワ

クラヴヂヤ、マリヤと同じ部隊に所属していた狙撃兵を務めた女性。戦闘中に歩兵師団長が負傷したため、その救出に向かった。しかし、マーシェンカの目の前で砲弾が破裂したため、歩兵師団長は即死、マーシェンカも両足を失う重傷を負う。救護所に運ばれるときに、両足を失ったまま生きたくないから殺してくれと懇願した。その後、戦後30年もの間、身体障害者施設を転々としながら足の手術を繰り返していた。不具の姿で母に会うのを恐れて、母に生存を知らせていなかったが、マリヤの計らいで母と再会した際には、涙を流して喜んだ。

マリヤ・ペトローヴナ・スミルノワ

衛生指導員をしていた女性。戦争が始まったばかりの頃に、自国の軍が退却している事実をラジオで聞いて、自身も戦うために徴兵司令部に駆け込むが、断られてしまう。その後、村を通過していた退却部隊に召集令状なしで同行するという行動力を見せる。半ば無理やり戦地に赴き衛生指導員として負傷者の手当てに従事した。ドイツ軍との激しい戦闘に入った際に、負傷者を助けるため自身に戦意がないことを表わすために軍帽を脱いで両手をあげて、ドイツの狙撃兵の前に立った。そして、戦前に人気の曲であった「貴方が手柄を立てるように祈って見送った」という歌を歌いながら負傷者の元に歩み寄る。撃たれてもおかしくない状況下であったが、無事に負傷者の救出に成功した。最終的に戦火のなか、481人の負傷者を救い出した。

アンナ・イワーノヴナ・ベリャイ

看護婦をしていた女性。ドイツ兵の爆撃から逃げ惑う中で、負傷者の手当てに当たるなど勇気があった。幸せとは何かと聞かれた際には「殺された人たちのなかから生きた人が見つかること」と答えるほどに、人を救いたいという気持が強い。

クララ・セミョーノヴナ・チーホノヴィチ

階級は軍曹、高射歩兵を務めた女性。戦争が始まり、村の男性が負傷して戻ってきたため、代わりに戦地に向かうことを決めて入隊した。入隊直後は男性のようになろうと髪を短く刈り上げたりなどしていた。しかし、やがて別の女性兵士を見るうちに女の子らしい外見に戻っていった。軍での配給に女性の生理用品がなかったため、草葉の陰で草を使って経血を拭いていた。また、下着も余分に貰えないために袖を千切って使っていた。戦いに行きたいと望む女は何かが欠けているという言葉聞いたことに対して、自国のために戦おうと思うのは人間として当然であり、何千回であろうと自身は闘うことを望むだろうと考えている。

マリヤ・セミョーノヴナ・カリベルダ

階級は軍曹で、通信兵を務めた女性。戦争に参加することで、やはり女は使えないといった誹りを受けないために、男よりも働いた。男に劣らないことを証明するために努力していたが、体は女であるため生理期間中は辛いものであった。真夏に経血を垂れ流しながら進軍しなければならない場面では、経血がしみ込んだズボンがガラスのように固まり、太ももを切りつけられる痛みに耐えていた。渡河点についた際に敵からの爆撃を受けて男性が物陰に隠れる中、戦いの最中でも死の恐怖より恥ずかしい気持ちが勝り、ズボンに付いた血を洗い流すために川へ飛び込んだ。

リュボーフィ・イワーノヴナ・オスモロフスカヤ

階級は二等兵で、斥候を務めた。17歳で戦地に赴いていた。泥の中で倒れる同僚の女の子たちを見て、泥の中では死にたくないと思うようになった。死ぬならば、空色の待雪草に囲まれたいと願うようになった。

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