ヒストリエ(Historie)のネタバレ解説まとめ

2003年から「月刊アフタヌーン」で連載されている岩明均による歴史漫画。マケドニア王国のアレクサンドロス大王に仕えた実在の人物である書記官エウメネス。古代オリエント世界を舞台に、名家の息子として育てられた彼が陰謀によって一時は奴隷に身を落としながらも徐々にその才能を開花させていく様が描かれる。

概要

ヒストリエ(Historie)とは、2003年から「月刊アフタヌーン」で連載されている岩明均による歴史漫画である。作者がデビュー前から構想を温めていたという本作品では、古代オリエント世界を舞台にマケドニア王国のアレクサンドロス大王に仕えた実在の人物である書記官エウメネスの波乱の生涯が描かれている。
第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第16回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作品。

あらすじ・ストーリー(第一部)

プロローグ

紀元前343年小アジア。
スパイ容疑で軍に追われるアリストテレスは、ダーダネルス海峡を小舟で渡ろうとしていた青年エウメネスと出会う。すんでのところで追手から逃げ切り、船に乗り込む一行。海峡を越えたところで別れ再び一人になったエウメネスは一路、故郷であるギリシアの植民市カルディアへ向かう。
到着すると城塞都市カルディアを包囲するマケドニア軍の姿があった。十重二十重に取り囲む重装歩兵部隊。しかし、手にしている武器や鬨の声の不自然さからそれが単なる示威行動に過ぎないことを見抜いたエウメネスは、隊列の間を難なく通過、さらに巧みな弁舌を駆使して固く閉ざされていた城門を開けさせ街に入ることに成功する。同じく街へ入ろうとしていた隻眼の商人アンティゴノスに頼まれヒエロニュモス邸へ案内するが、そこはすでに廃墟と化してしまっていた。当てが外れ別の目的地へ向かうアンティゴノスと別れ、屋敷の前で一人佇み過去の記憶に思いを馳せるエウメネス。そこはエウメネスが少年期までを過ごした思い出の場所だった。

少年期(カルディア)

カルディアの顔役であるヒエロニュモス家の次男として育てられたエウメネスは、子供の頃から大人顔負けの利発さを備えていた。読書が好きな彼は、オデュッセウスの英雄譚やヘロドトスの歴史書を読みふけり、満ち足りた少年時代を過ごしていた。
しかし、カルディアで起こった一つの事件がそうした日々を一変させた。ある日、拘束を解かれたスキタイ人奴隷・トラクスが主人一家を惨殺し、街からの脱走をはかる。多数の犠牲は出したものの、何とかトラクスを討ち取ったことで事件は収束したかに見えた。しかし、この事件の背後ではある策謀が動いていた。ヒエロニュモスの部下ヘカタイオスとゲラダスは混乱に乗じて主を殺害、そしてトラクスにその罪を着せようとしていたのだ。それを見抜いたエウメネスは査問会でヘカタイオスたちの陰謀を追及するが、逆にヘカタイオスはエウメネスは自身も知らなかった出自に関する秘密を暴露し攻勢に出る。エウメネスはヒエロニュモス家の子ではなく拾われ育てられたスキタイ人奴隷の子だった。愕然とするエウメネス。そしてエウメネスは奴隷身分に墜とされ、商人に大金で買われカルディアを去ることになる。

少年期-青年期(パフラゴニア)

エウメネスは思いの外早く奴隷の身分を脱することになる。カルディアからの航海の最中奴隷たちによる反乱が起こり、操船のための最低限の人員以外ほとんど殺してしまった船はあえなく沈没し、エウメネスは瀕死の状態でパフラゴニアにあるボアの村に流れ着いたのだった。思わぬ形で自由の身になったエウメネスはその村で働きながら剣を学び、見返りにヘロドトスをはじめ書物で得たギリシアの知識を教え、彼らと共に暮らすこととなる。
貧しいながらも平和で穏やかな日々をすごし村に流れ着いてから数年、すっかりエウメネスも村人の一員となっていたころに事件が起こる。もともと移民の村であったボアはギリシア人の街ティオス市の庇護を受けていたのだが、ティオスの顔役の息子ダイマコスが、穏健な父が病に伏したのをきっかけにボアの村を征服しようと企てたのだ。兄ダイマコスの行動を見かねた弟テレマコスが内密にボアの村にそのことを伝え退去を促すが、根を下ろした土地を離れることはできず村人たちは籠城戦を決意する。戦力的には圧倒的に不利なボアの村だったが、エウメネスの作戦により巧みに罠を張った村内へとティオスの兵たちを誘い込みダイマコスを討ち取る。当初兄ダイマコスの暴挙が返り討ちにあったものと思っていたテレマコスは、実は謀略の末に兄が陥れられたことを知り激高する。このままではティオスとの和睦を損ねないことを悟ったエウメネスは、謀略の発端を自身に集約しテレマコスの怒りを一手に引き受けたまま村を離れることを決意する。恋仲になっていたサテュラや共にすごした村人たちに別れを告げ、エウメネスは故郷カルディアへの帰路につく。

故郷カルディアへ

廃墟となったヒエロニュモス邸でここまでの道のりに思いを馳せたエウメネス。その後、旧友や義兄たちと再会。両親の墓参も終え、カルディアでの当面の目的を果たしたところ、復讐を恐れたゲラダスに襲われてしまう。返り討ちにし事なきを得るが、結果的にカルディアに舞い戻った復讐者としてヘカタイオスに追われる身となってしまう。逃亡を余儀なくされたこともあり、カルディアに入る際の機転にいたく感心し一目置いていたアンティゴノスの誘いにのり城外に出ることに。門の外に出たところでマケドニア兵たちに恭しく迎えられるアンティゴノス。彼の正体はマケドニア王フィリッポスであった。

あらすじ・ストーリー(第2部)

マケドニア首都ペラへ

フィリッポスの薦めにより、エウメネスはマケドニアの首都ペラで書記官見習いとして王に仕えることになる。マケドニアの名門貴族アッタロス邸に身を寄せ、アッタロスの姪のエウリュディケや兵器開発工房の職人たちとも仲良くなり、ペラでの生活に馴染んだエウメネス。ほどなくして王宮で顔にヘビのような形のあざを持つ少年と出会うことになる。王子アレクサンドロス、フィリッポス王の後継者である。

アレクサンドロスとヘファイスティオン

ミエザの学園で日々学問に励むアレクサンドロス。彼はマケドニアの将来を担う人材となるべく期待され集められた貴族の若者たちの中においても、文武共にその才能は際立っていた。驕ることなく、身分の別け隔てなく接する謙虚な人柄は非の打ち所のないものだったが、その内面には別人格「ヘファイスティオン」が潜んでいた。
紛うことなくフィリッポスの第4王妃オリュンピアスの子宮から産み落とされたアレクサンドロスに対して、ヘファイスティオンは彼女の手の中から作り出された。ある晩、愛人との情事をアレクサンドロスに目撃されたオリュンピアスは、愛人に斬りかかり首を切り落とす。そして衝撃の余り呆然と震える息子に、あなたは強くならなければならない、そのための心の友を授けると言い化粧を施す。鏡には化粧で目の上のあざを隠されたアレクサンドロスの顔が映っていた。語りかけてくる鏡の中の少年ヘファイスティオン。聡明ではあるものの雄大なる王フィリッポスとは似つかない気弱な少年アレクサンドロス。お前は本当に王の息子なのか?目の前に転がっている愛人の落とし種ではないのか?オリュンピアスの飼う大蛇によって飲み込まれていく愛人の生首とともに出生の真実は葬り去られるが、それ以降アレクサンドロスの中には冷淡で粗暴なヘファイスティオンの人格が宿ることになった。

ペリントス、ビザンティオン遠征

紀元前340年、フィリッポスはマケドニアによるギリシア統一に抵抗するアテネの重要拠点、ペリントスとビザンティオンの攻略に乗り出す。マケドニア軍は陸海両面から包囲するがアテネの支援を受けた両都市の守りは堅く戦況は膠着状態に。そのうちに他の戦場から戻ってきた将軍フォーキオン率いるアテネの艦隊との海戦に破れ、フィリッポスはやむなく撤退を決意する。マケドニア軍は本国へ向かう途中スキタイの部族を打ち破るが、その戦果を狙った蛮族に強襲されフィリッポスは重傷を負う。エウメネスの機転により出された指示によって敵を退散させることには成功するが、結果的にマケドニア軍の遠征は散々なものとして幕を閉じる。

カイロネイアの戦い

勝利に気をよくしたアテネではマケドニアとの決戦を望む強硬論が沸騰し、フィリッポスも決戦を決断する。その頃にはエウリュディケと恋仲になっていたエウメネスは、決戦に先立ってアンティパトロスから密命を受けアテネに潜入する。密命とは敵軍最大の脅威フォーキオンにマケドニアとの内通説を流し、将軍職から追い落とすことである。しかし、もともと反戦派のフォーキオンはほぼ主戦論一色の世論の中ですでに孤立しており、ほどなくして将軍職から退くことになる。
紀元前338年、いくつかの小競り合いを経た後、軍事同盟を結んだアテネ・テーベ連合軍とマケドニア軍はついに中央ギリシアのカイロネイアで激突する。マケドニア軍の敷く斜線陣の弱点を突くべく、テーベ軍は攻撃の要と見られるフィリッポス直属の精鋭部隊に目標を定める。しかしマケドニア軍の攻撃の要はまったく別の場所に位置する将軍クラテロスの部隊であった。
そしていよいよ進軍のときが来る。

主要登場人物・キャラクター

エウメネス

本作の主人公。幼少の頃より周囲の大人達から一目置かれる利発さを備えており、成長してからも至るところでその知力を発揮している。読書が好きで「オデュッセイア」やヘロドトスの書などを好んで読み、特に「オデュッセイア」に登場する狡猾な王オデュッセウスに憧れていた。カルディアの名家ヒエロニュモス家の次男として何不自由なく育つが、出自がスキタイ人であることが暴露されたことで奴隷身分に墜ち故郷を去る。その後様々な流転を経てマケドニアの書記官となる。

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