フェルマーの料理(漫画・ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『フェルマーの料理』とは、小林有吾が2018年より『月刊少年マガジン』で連載している料理をテーマにした漫画、ドラマである。数学者になる夢を諦めた高校生の北田岳(きただがく)が、若き天才シェフ朝倉海(あさくらかい)と出会い、数学の才能を料理に活かしながら、料理人の道へ進む物語だ。数学と料理という異色のコラボが魅力で、料理の才能を開花させていく岳の成長が見どころ。

『フェルマーの料理』の概要

『フェルマーの料理』とは、小林有吾が2018年より『月刊少年マガジン』で連載している料理をテーマにした漫画、ドラマである。
数学者になる夢を挫折した高校生の岳は、若き天才シェフの海との出会いを機に料理への道へと進む。岳が数学的思考で周囲を驚愕させる料理を作り出し、料理人として成長していく姿を描いた料理漫画である。料理の細かい知識や、家庭でもできる工夫を知ることができるのが魅力だ。
タイトルの由来は「フェルマーの最終定理」に由来しており、「数学」と「料理」という異色の題材がSNSで話題となった。
2023年10月より、TBS系列にて、高橋文哉が主演のテレビドラマの放送が開始された。

『フェルマーの料理』のあらすじ・ストーリー

岳と海の出会い

私立ヴェルス学園に通う天才数学少年の北田岳(きただがく)は、数学オリンピック選考会に参加していた。しかし、ライバルであり同級生でもある広瀬一太郎(ひろせいちたろう)の圧倒的な数学の実力を目の当たりにし、自分が偉大な数学者になれない事を悟る。岳は数学オリンピックの答案用紙を白紙で出し、学園の名誉を傷つけたとして理事長の西門の怒りに触れる。奨学金を廃止され、学費を稼ぐため仕方なく学内の学食でアルバイトをしていた。
同僚の魚見亜由(うおみあゆ)に、バイトの賄いとしてナポリタンを出すと、亜由はその味を「うますぎる」と絶賛した。学食に足を運んでいた若き天才シェフである朝倉海(あさくらかい)は、岳がナポリタンを作る工程を目の当たりにする。作ったナポリタンを口にすると、岳に料理の才能を感じ、興味を持った。
その後、岳は理事長の提案する数学オリンピックの打診を断ってしまい、再び理事長の怒りに触れてしまう。翌日、理事長に奨学金の返済を命じられ、あげく退学処分にされてしまい途方に暮れていた岳の前に再び海が現れた。
海は、西門が主催する食事会でナポリタンを振る舞うよう岳に指示した。岳は戸惑いながらも、食事会に出て、いつも通り作ったナポリタンを客に振る舞う。すると、招待されていた客たちはあまりの美味しさに驚く始末だった。岳は、客が手に持つスプーンの温度まで当たり前のように管理し、作り方も無意識にこだわっていたのだ。岳がナポリタンを作ったことを海が発表すると、ナポリタンを口にした客らは次々に学園への投資を決定すると理事長に告げる。自分の体裁を守るため、理事長は岳の退学処分及び奨学金の廃止の撤回をした。一方で岳の出した料理に衝撃を受けた海は、後日自身も岳にナポリタンを振る舞い、「いつか俺のところへ来ないか? お前の数学的思考は、料理のためにある」と提案を持ちかける。
数学者になる夢を応援してくれた父の為に東大へ進学する予定だった岳だが、料理の道に行きたいと気持ちが揺らぐ。後日海の経営する店「K」に招待され、足を運んだ。そこでは、「K」の料理人の1人である赤松蘭菜(あかまつらんな)がカニ料理を岳に振る舞い、岳はそのレシピについて説明するよう蘭菜から命じられた。答えられなければ、海からの誘いは白紙になると言われたが、岳は見事使っている食材や調理法を言い当てる。蘭菜の料理に感銘を受け、岳は料理の世界をもっと知りたいと思うようになり、海の店で働くことを決意した。
決意したすぐ後、西門主催の食事会に参加していた武蔵魏一(むさしぎいち)が、娘の神楽(かぐら)を連れて来店した。神楽は数学オリンピックで金メダルをとっており、岳とは幼い頃からのライバルだった。料理の道に進むと決めた岳に、神楽は冷たい視線を向けた。海はその様子を見て、神楽に1品料理を提供するよう岳に命じる。
蘭菜の料理で味の相乗効果について知った岳は、それを利用して、父との思い出の料理である甘鯛のお茶漬けを神楽に出した。神楽は岳が料理を通して伝えてきた数学式に感銘を受け、料理の道に進む彼を受け入れたのだった。

「K」の難関な試験

その後岳は私立ヴェルス学園を卒業し東大受験も合格したが、大学の道を蹴って海のいる「K」で働く道を選択する。海はそんな岳に対し、正式な仲間になる条件を出した。その条件は、1週間以内に「K」で働く15名程のスタッフ全員から認められる賄いを作ることであった。2つ星レストランのため、スタッフ全員から認められないと戦力外とみなされ、クビになるという厳しい掟があった。加えて「K」の厨房は岳の想像以上に戦場のような場所であまりの回転の速さに追いつけず、岳は賄いを考える余裕もなく開始1時間で追い出されてしまう。その後疲れ果てて帰宅した岳に対し、マンションの掃除に来ていた福田寧々(ふくだねね)が「誰でも疲れる」と労いの言葉をかけ、岳はその何気ない一言をヒントに滋養のある肉じゃがを作って賄いとして提供した。しかし、これを認めたのはたったの2人。まだまだ全員には至らなかった。「K」の料理人は賄いに滋養など求めておらず、なぎ倒されるようなパンチのある料理を欲していたからだ。さらに、「K」の料理人は世界各国から集められている。滋養のある家庭の味と一言で言っても、国によってそれを想像させる料理はそれぞれ違うのだ。その後も、岳は毎日激務に追われながら試行錯誤を繰り返して賄いを出すが、全く評価を得られず1週間が過ぎようとした。途方に暮れている岳に、たまたま近くまで来ていた亜由が声を掛け、手作りの弁当を差し出した。それを見た岳はアイデアを閃き、店に戻って再び肉じゃがを作り出して勝負に出た。岳は、日本の味である普通の肉じゃがを出しても何も感じてもらえないと気付き、「世界中の誰もが食べても美味しい」と思えるユニバーサルな肉じゃがを考えて出したのであった。それは肉じゃがの味を牛ヒレ肉にぎゅっと閉じ込めた新しい形の肉じゃがだ。さらに岳は従業員の動きを計算し、厨房での立ち回りまで完璧にこなす。「K」のスタッフ全員、岳の計算の高さを評価し、岳の肉じゃがを満場一致で認めた。岳は晴れてレストラン「K」の一員となったのだった。

ライバルに料理を出すため葛藤する岳

それから半年、岳は海の元で忙しく働く日々だったが、まだ客の為に料理を作らせてもらえていなかった。そんな中、同級生である広瀬の参加する授賞式で「K」が料理を提供することが決まる。
岳はかつて惨敗した数学者である広瀬に対して苦手意識があったが、海が岳に授賞式で1品作るよう命じた。広瀬が満足する料理が自分に作れるのか悩む岳は、同級生であり、友人でもある神楽に相談をする。神楽から「楽しいに支配されたあなたは無敵」という励ましを受け、岳は広瀬に料理を作ることを決意した。しかし、授賞式で料理を作る人はオーディション制で決まる。「K」の従業員は皆、料理を振る舞う機会を得る為奮闘していた。岳は先輩である料理人の乾孫六(いぬいまごろく)とスープの試食をし合い、オーディションで出す料理の案を考える。授賞式で料理を作る枠に1つでも入るため、岳は前菜、スープ、肉料理全てのパートを1皿で完成させオーディションに出したが、「誰でも作れる料理だ」と海から酷評を受け結果は惨敗だった。さらに海から与えられた命によって、岳はデザートを担当することになってしまった。しかしデザートの知識も作ったこともない岳は、海がなぜ自分を指名したのか分からなくなり部屋に引きこもる。理由を聞いても「さあ、なんででしょう?」ととぼける海に嫌気がさし、実家に帰ろうかと頭をよぎった岳は1人で考えるためふとカフェに入った。そこで父からのメールを見ると、広瀬が賞をとった整数論についての論文が添付されていた。岳は論文から広瀬の孤独を感じ取り、今の自分と重ね合わせた。我に返り、デザートのアイデアを得るため無意識にカフェへ足を運んでいたことに気付いた岳は、海の元で修行してデザートを作り上げることを決意したのだった。しかし何から何まで初めてのデザート作りに苦戦し、岳は再びスランプに陥った。そんな彼に海はイチゴタルトを振る舞う。タルトを食べた瞬間、感じたことの無い感覚が岳の全身に走り、授賞式に出すデザートのアイデアが湧いてきたのだった。
その頃、広瀬はビデオ通話で武蔵にプロポーズをしていた。武蔵は自分より遥かにレベルの高い数学者である広瀬に恐怖を感じ、返事を戸惑う。さらに広瀬は岳と神楽を将来自分の助手にしようと考えており、岳が料理の道を選んだのも数学の為だと信じ込んでいた。そんな状態の中、ついに授賞式当日となったのだ。

『フェルマーの料理』の登場人物・キャラクター

主人公

北田 岳(きただ がく/演:高橋 文哉)

私立ヴェルス学園の高校3年生。数学の天才であるが、周りのレベルの高さに怖気づいてしまい、子供の頃から憧れていた数学者の道を挫折してしまった。
無意識にしていた料理の工夫が天才シェフである朝倉海の目に止まり、料理の道へ進むことを提案された。学園を卒業後は海の経営する「K」で料理人として働く。
温厚でのんびりした性格だが、数字や細かいことに鋭く、そのことに自覚がないことが多い。あらゆることを数学的に考え、料理に関してもレシピや材料を逆算して考える癖がある。

朝倉 海(あさくら かい/演:志尊 淳)

23歳の天才シェフ。都内にある2つ星レストラン「K」のオーナー。各国で料理の修行を積み、史上最年少で星を獲得したシェフとして有名になった。
ヴェルス学園の食堂に寄った際、岳に対し数学の才能と同時に料理の才能もあると見抜く。自身の技術をさらに高め、料理の真理にたどり着くため、岳を「K」の料理人として雇う。
普段はクールで冷静な性格だが、料理に関しては少年のようにはしゃぐ様子も見せる。邪魔だと判断すれば、女でも容赦なく追い出す冷酷さも持っている。
自ら他人を遠ざける行動をとっていると布袋は指摘している。

「K」の料理人

赤松 蘭菜(あかまつ らんな/演:小芝風花)

「K」で働く唯一の女性料理人。
盛り付けを得意分野とし、前菜を担当する。思ったままを口にする素直でクールな性格である。
突然料理人としてやってきた岳を最初は認めなかったが、次第に興味を持ち始める。時に優しく、時に厳しく岳を指導する。
海に好意を抱いており、海に認めてもらうべく「K」の料理人として働くことに執着している。

乾 孫六(いぬい まごろく/演:板垣 李光)

レストラン「K」の料理人。
京都の老舗割烹の息子である。のんきだが、料理に対する姿勢は真っ直ぐ。「K」で修行し、実家の割烹に戻ることを目標としている。
不器用ながらも、蘭菜に恋をしている

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