Sonny Boy(サニーボーイ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『Sonny Boy』とは夏目真悟の原作をもとに、 2021年7月からTV放送された、全12話のSF青春群像劇アニメーションである。主人公・長良を含む中学生36人は気がつくと真っ黒な異世界にいた。超能力の有無や理不尽な異世界のルール、変化する世界を漂流しながら、元の世界に戻るべく謎を解明していく。BGMも少なく、世界観や説明的なセリフもない「わかりにくいが、なんかいい」異色なSFアニメだ。

『Sonny Boy』の概要

『Sonny Boy』とは『ワンパンマン』や『ブギーポップは笑わない』などを手がけた夏目真悟によるオリジナル作品で、 2021年7月から全12話で放送されたSF青春群像劇アニメーションである。MADHOUSE(マッドハウス)が制作、漫画家の江口寿史がキャラクターデザインを担当した。第25回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞受賞を受賞している。
BGMも少なく、世界観や説明的なセリフもない「わかりにくいが、なんかいい」異色なSFアニメだ。
夏休み中の8月16日に白糸第二中学の教室に集まっていた主人公・長良(ながら)、転校生の希(のぞみ)たち中学3年生の36人は突然異世界に飛ばされてしまう。
各話ごとに世界観・視点が変わっていき、異世界を漂流していく。話自体に繋がりがなく、独立したテーマでストーリーが進むが、少しづつこの世界の謎を解き明かしていく。

異世界では不思議な能力を持つものが現れ、独自のルールがあるようだ。終わりの見えない漂流生活でそれぞれの思惑が絡み合う。主人公・長良たちは漂流の謎を解き明かし現実世界への帰還を目指す。

『Sonny Boy』のあらすじ・ストーリー

漂流の始まり

中学3年の夏休みの半ばをすぎた8月16日。36人と猫は、学校ごと突然真っ暗な異世界に飛ばされていた。
目立たず、諦めたように寝転ぶ主人公・長良(ながら)。変わり者の帰国子女の転校生・希(のぞみ)は長良に「楽しい?」と話しかけてくる。
不良少年・朝風(あさかぜ)は重力を操る「スローライト」、上海語を話す・上海は「電気ビリビリ」などの力を持つものは能力を使い、憂さ晴らしで力を試すように学校を壊している。いくら壊しても元に戻るからだ。

規律ある集団をめざす生徒会長・ポニー、野球部員・キャップ、明星(ほし)は規律を守らないものは罰を与えると言い渡し、破ったものにはキャップから罰を与えられた。計算問題や腕立て伏せといったくだらないものばかりだが、生徒会への反感は高まる。
朝風らともめた生徒会のメンバーだが、キャップがルールを破ってしまい、キャップ自身も罰を与えられる。罰を与えているのはキャップではなく、この世界のルールそのものだった。

生徒会がみんなと揉めている間、長良は希に手を引かれ、屋上にいた。
希は「光が見えた」と言って屋上から長良とともに飛び降りた。落ちた先は海だった。

ハテノ島の生活

世界は真っ黒な闇から、まるで南国の無人島に変わっていた。
一ヶ月に渡る無人島生活でそれぞれが生活を始めるとメンバーが消えたり、突然火事が起きたり、島から世界を転々と移動したりと不可解な事件が起きる。

またサバイバル生活の中で、能力を持つものはそれぞれの能力を発見していた。
気が強く集団から孤立する少女・瑞穂(みずほ)と飼い猫3匹は、注文を受け取り元の世界のものを取り寄せられる「ニャマゾン」、頭脳明晰なインド人・ラジダニはプログラムを実物化する「ポケコン」、野球部のスター・エースは「どんな水も美味しい」など様々だ。
希には光が見える「コンパス」の能力があるものの、その光が何かはわからないが、希は出口だと信じているようだ。
長良には特別な能力はないが、消えたメンバーが隠れていた場所の入り口や、別の世界とつながる扉を見つけるのが得意だった。「偶然だ」とは言うが、重力を操る「スローライト」の能力で皆から頼られていた朝風は、それが妬ましかった。

事件を解決するたびに、ラジダニはこの世界の謎をひとつづつ解き明かし、帰還できる方法を模索する。
取り寄せられる物が現実世界に即していることや、漂流世界に点在する扉のつながりについて考えたラジダニは、この世界からの帰還計画「ロビンソン計画」を皆の前で発表した。

人に無関心だった長良は、希と話すことで自分と向き合い、気持ちを言葉にするようになる。
島で瀕死のカモメを見つけた希は、学校の中へ抱えていく。それを見た長良は「無駄だよ」と声をかけた。漂流が始る前、長良は学校で瀕死の鳥を見捨てた。助からないだろうと鳥の命を諦めたのだ。しかも担任から鳥殺しを疑われた。長良は疑われても諦めの気持ちで抗うことをせず、ただ黙っていた。希はその様子を職員室の外から見ていた。
期待されず、見捨てられることに慣れた長良は、諦める事にも慣れてしまっていたのだ。自分の不幸は鳥を助けなかった理由にはならない、と希に気付かされた長良を少し変えたようだった。

集団から孤立し猫3匹と生活をしていた瑞穂も、長良やラジダニ、希らに心を許すようになっていた。
謎の発火事件で島が燃えた時、長良に「自分たちの無力さと世界は変わらないから多少の失敗は些細なことだ」と気付かされてから、頑なさがなくなったようだった。
瑞穂は既婚の教師に恋愛感情を抱き、自分は他のみんなと違うと思っていた。生徒会長選挙の不正に気付いたときも、直接の抗議はせずにインターネット越しにポニーに嫌がらせをし続けた、ひねくれた少女だった。しかもその嫌がらせも、力のある生徒会に規則通りに対抗され、負けを認めざるを得なかったのだ。

漂流前に学校では、オーロラが見えたり3億円があったり、謎の事件が起きていた。
瑞穂は漂流前から能力を使えたことを長良に告白する。
明星(ほし)も以前から能力を持ち、不思議な声(ヴォイス)で漂流を予言されていたことが示唆される。

分裂し始めるメンバー

遊びの最中に岩場で突き落とされた長良は、気を失ったと同時にハテノ島から移動してしまう。
長良の能力は移動できる「テレポート」だとわかるが、自分の意思で移動できるわけではないため、皆から呆れられてしまう。
それでも帰還の可能性を諦められず何回も移動を試す長良だったが、突然海からあき先生が現れ「お前らは帰れない!」と断言されてしまう。

あき先生の登場で集団生活に変化が現れていた。
ラジダニの帰還計画「ロビンソン計画」を推す、長良、瑞穂。
明星は循環機能でエコなシェルターを作り島にとどまる「シェルター計画」進めていた。明星はヴォイスと密会をしていた。皆を守るのが自分の使命だと信じ、皆のためだと疑わずシェルターを作っていた。
ヴォイスは校長であり、この世界の神だ。校長は事前に明星に校長の意思で漂流を始めることを教えていた。明星は自らの意思で漂流を選んでいたのだ。
その他大勢の意見がないものは、あき先生の制御下に集まった。あき先生は朝風の長良への嫉妬心を利用し、その他大勢のリーダーに育てるべく「お前は特別だ」と朝風に言い聞かせていた。
希はどこに属すか決めきれないようだ。

分岐した世界

校舎で古いフィルムを見つけたラジダニ。
漂流前の長良の視点の映像だった。逆再生で戻れるかもと試みるがそれはルール違反のようでできない。そこでラジダニはフィルムをつなぎ合わせ再編集して世界を作り変えようとする。
上映を始めるとフィルムの中で長良の視点の世界は進んでいく。元の世界では卒業式が行われていた。希は「コンパス」の力で光を見つけフィルムの中に入った。校舎の中を歩いていた希は自分が死んだことを知った。
校長は、漂流した自分は元の世界の自分に選ばれなかった自分のコピーであることを明かす。選択を繰り返し世界は分岐しているのだ。

漂流世界の中の別の世界

長良は島に突然現れた鉄棒を見つけ何気なく逆上がりすると、バベルの塔を作る作業場に飛ばされていた。
漂流世界にはクラスメート以外にも漂流者がいた。
別の漂流世界では「漂流被害者の会(ビートニク)」なるものが200年も開かれ、「漂流は長良のせいであることがついにわかった」「長良を許すな」と演説していた。
別世界に飛ばされて気を失った長良を起こしてくれたのは、「それだけだ」が口癖の二つ星と名乗る少年だった。
厳しい監視のもとで行われる作業は、天国に行くために塔を作っているというが、石を地下に運んでいた。誰も疑問は持っていないようだった。
夜眠れない長良に、二つ星は願いが叶うという流れ星を探しに行こうと誘う。
山を登り、洞窟の中で二つ星は流れ星を見つけたと走り出したが、以前ラジダニが教えてくれた光る液体でアリを誘い食らう虫だった。長良は止めたが二つ星は食べられてしまう。この世界はアリの世界だったのだ。
翌朝、長良は監視に逆らいブロックを上に運びだすと、世界は再びひっくり返りハテノ島に戻った。

瑞穂は買い出しの途中で、黒い犬と出会う。犬はやまびこと名乗り、この世界を5000年旅しているという。
話を聞くと、やまびこは長良たちの2年後輩で共に来た漂流者たちと別れ1人で旅をしていたが、万物を司る少女・こだまと出会い「祝祭の森」に住処を見つけた。
こだまは優しく、強く、美しい少女だった。
その村では、体に赤い石ができる病が流行した。病気の治療もできるこだまは皆に「大丈夫」と声をかけ続けるが、事態は悪化していく。
自身も発病したこだまに、やまびこは目をそらし「君は美しくて正しい」と嘘を言い続けた。
村民が洞窟に潜む戦争と名乗る男を見つけ「こいつが病を持ち込んだに違いない」と疑いこだまに戦争の追放を迫る。こだまは自分を見て「醜い」と本当のことを言った戦争を追放したくないと言う。正しい選択かと問われ、また「正しい」と嘘をついたやまびこは彼女のためならなんでもすると誓い、犬になってしまった。
戦争を追放しなかったこだまは、最後に「やまびこと一緒に外の世界を歩きたい」と言い倒れた。「祝祭の森」の村民は全滅した。
戦争はこの世界はやまびこが作ったと言い、心の傷を具現化する赤い石(キズアート)はやまびこの心の傷だと言う。やまびこだけが発病しなかった理由が明らかになる。やまびこは自身が作った世界を彷徨っていたのだ。

漂流の世界は長良たちがいる世界ひとつではなかった。
別の時間軸で動く別の世界ではあるが、長良のいる世界とも繋がっている。

それぞれの旅立ち

エースが森でこだまの残した「能力異物・M」を見つけた。明星たちはMを使いシェルターと方舟を完成させ、賛同するものを連れて旅立っていった。
ラジダニも自身で作った船で、1人で旅に出ることを決めたようだ。別れ際にずっといい匂いがする「能力異物・サル毛玉」を長良に渡した。
長良と瑞穂は島に残った。
希は相変わらずどこにも属していなかった。
朝風は光しか見えない希に「役立たず」と言ってしまう。朝風は希に片思いをしていたが、思い通りにならない苛立ちで言ってしまったのだ。希は朝風と行動を別にした。

骨折をしたまま漂流してしまった少女・骨折の視点で語られる。骨折の能力は、心の声が聞こえる「モノローグ」であるが、みんなが恥ずかしい思いをしないよう気遣い秘密にしている。
あき先生は「義務教育の終了」として、打ち上げをしていた。
骨折を好いている冴えない男子生徒の声が聞こえてうんざりする。骨折が冴えない生徒ばかりが集まるあき先生の集団にいるのには理由があった。
骨折は朝風に片思いをしていた。朝風と話すたびに希に片想いしていることも知り、自分は利用されているだけなのを知って傷つくのに好きなのだ。
打ち上げの後朝風を追いかけると、あき先生とともに使命を果たしに行くと言う。
朝風があき先生にそそのかされているのは知っていたが、戦争を見つけて終わらせる旅に出たいから、骨折には希を誘って欲しいと頼んだ。
骨折の頼みを聞いた希と、朝風、骨折、あき先生の4人は岩場を歩き続け、ついに戦争にたどり着く。朝風のスローライトの力で岩場を降りていくと、空っぽの男が底のない谷間を落ちつづけていた。ここが戦争だと言う。

あき先生は骨折の能力を知っており、バラしてしまう。今まで骨折に心の声を聞かれていたことを知った朝風は羞恥心に苛まれ、あき先生に泣きつく。
心の声が聞こえる骨折は誰からも戦争の話を聞いていない。骨折と希は「戦争に向かうものはいるけれど、戦争は本当にあるのか」という疑問をもった。
ポストカードに底のない戦争の谷間を描きながら話した。2人は笑ってスマホを谷間に投げ捨てた。
空っぽの男はしばらく行動を共にしたが、何も話さないまま能力異物・銃になった。
片思いがバレた朝風だが、希に「尊敬できない」と言われ振られてしまう。「さよなら」と言う希に朝風は空っぽの男が残した銃を向けた時、希の足元の岩場が崩れ崖に落ちてしまった。朝風は自身の能力で助けられたはずの希を助けようとしなかった。
あとには能力異物・コンパスだけが残った。

コピーされた世界との融合

白猫・さくらの回想。ニャマゾンはトラが注文し、さくらがコピーして、ゲンが運搬する。
ラジダニから注文された、世界に一つしかないゲームを2つ配送してしまうミスをしてしまったことから、さくらの能力がコピーであることがバレてしまっていた。
さくらは寂しい思いをして育った瑞穂を幼い頃から、母親のように見守りたいと思っていた。寂しい思いはさせたくないから、いつか死んでしまう生き物はコピーしないのだ。
長良の実験によって、瑞穂の能力は「静止」だと突き止める。死を見たくなかった瑞穂は世界を止めたのだ。
静止した世界にいれば死ぬこともないが、骨折も治らないし成長もない。

骨折から届いたハガキで、希の消失を知った長良と瑞穂は文化祭さながらに、見よう見まねの希の葬式を行った。
夜が明けると香典を持ったラジダニが現れた。ラジダニは2000年を過ごしていて、少し大人びた様子も見て取れた。

三人は再びロビンソン計画を練り直しVer.5にて完成した。決行するため、ロケット発射台を建設していく。
瑞穂は「やり残したことがあるから帰る」と決めた。
ラジダニと瑞穂は建設現場へ移動する車内で、話をする。
2000年も旅をしてホームシックを感じたか聞かれたラジダニは、「元の世界は現実より美化されている」と語り、「ここに残ることにした」と答えた。
一方で、ラジダニは長良に死の発明家の話をしていた。
死とは自我や衝動の死のことで、肉体は死ななくとも死ぬ、元の世界でも死は変わらないと言う。
長良は希と帰ったら何をするかを話していたことを思い出していた。「ケーキを食べたい」などと笑っていたが、最後に希は「戻ったら覚えていた方が『もう一回友達になろう』って言うって約束しよう」と言った。希はもういないことを再確認し、長良は泣いていた。

ロケットが完成した。ラジダニ、やまびこ、猫たちに別れを告げ、長良と瑞穂はロケットに乗り込む。希の残したコンパスは一点を指し示している。
長良はラジダニに「能力異物・サル毛玉」を渡した。
ロケットは発射された。長良と瑞穂は宇宙へ向かい光の速度を超えていく。

帰還した世界

帰ってきた世界は漂流から2年経っていた。
長良は高校生になっていて、いつも通りの日常を過ごしていた。クラスメイトのハワイ旅行の写真を見て、ハテノ島を思い出していた。
探し当てた瑞穂を見つけて声をかけるが、漂流を覚えていない様子に逃げ帰る長良。
世界は何も変わらず理不尽なままで、店長に怒られた長良はバイト先でゴミ袋を蹴っ飛ばす。
バイト帰りに駅でツバメの巣を見つけた。ツバメは親がいないようだ。巣を見上げ、視線を戻すと死んだはずの希がいた。
長良に気づいたのかと思い声をかけようとしたが、違った。長良の背後にいた朝風に走り寄ったのだ。2人は付き合っているようだ。

長良は家族のいない部屋で、半額のコンビニ弁当を食べる。
瑞穂も希も自分など覚えていなかった。
漂流世界を懐かしく思い希のコンパスと、ロビンソン・クルーソーの本を見つめながら、漂流からの帰還を思い返した。
ロケットから乗り換えた観覧車を出ると、朝風がいた。
朝風は漂流世界のことを教えてくれた。骨折は明星に合流し、あき先生は消えたらしい。ラジダニは森になって動物と暮らしているそうだ。朝風は長良にコンパスを手渡し、見送った。漂流した朝風はこの世界に残ったのだ。
時空間を走り出すと学校に着いたが校長から「ここから出てはいけない」と言われる。出てはいけないが出られないわけじゃない。校長の声を振り切って更に走り、光の速さを超えて光の中に向かっていく。

瑞穂は帰還した後、祖母の葬式を行なっていた。猫も引き取り手を見つけていなくなっていた。
瑞穂は卒業した中学校に侵入した。まだ能力は残っているのか確かめた。落としたグラスは割れた。能力はなくなり、世界は静止していないので壊れたままだ。

再び長良に会った瑞穂は、自ら声をかけた。「ラジダニのオウムは笑う」。瑞穂は覚えていたのだ。
公園で現実の報告をしあった。2人は「ハテノ島のあんたが残ってれば大丈夫だ」と言って別れた。

長良は再び駅でツバメの巣を覗き込み、ヒナを探したが巣は空だった。先に助けていた希がヒナを抱えて声をかけてきた。
希に「面倒見てくれる?」と聞かれたが断った。希は朝風に走り寄って行き、楽しそうに話しだす。
2人を背に、長良は歩き出す。

『Sonny Boy』の登場人物・キャラクター

主人公

長良

CV:市川蒼
主人公。家庭に恵まれていない。暗い性格でコミュニケーションを取るのがうまくいかず、周りからもひどい扱いを受けている。
野球をやっていたが、大事なところで連続エラーをし、やめている。
能力は世界を移動する「テレポート」。

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